アバターやアセットの海外展開ってどうするの?個人勢アセット年商1000万円達成のイカめしさんと株式会社Vが対談!『ホロライブ』グッズの海外展開を手掛ける『GeekJack』が多国籍イベントを主催【寄稿】

2025年4月25日、トランスコスモスが運営する『GeekJack』は『海外展開はじめました。』と題する多国籍な対談イベントをVRChatで開催しました。『GeekJack』は日本のエンターテイメントを海外へ展開する“越境EC”事業を運営しており、公式に『ホロライブ』のグッズやデジタルコンテンツを海外向けに取り扱うなどの実績があります。

VRChat向けの3Dアセット販売を通して、個人勢クリエイターでありながら年商1000万円を達成したとされるイカめしさんは、『BOOTH』での販売を中心としつつもGeekJack』で海外展開をされているひとりでもあります。(※上記リンクは共にイカめしさんの販売サイトです)

そんなイカめしさんをゲストに迎えて対談するのは、多角的なVR参入支援事業を担う株式会社V。大丸松坂屋百貨店がVRChat用アバターを直接販売することで話題となりましたが、このアバター制作を担ったのが株式会社Vです。

イベントは日本人はもちろん、タイをはじめとする多国籍な参加者が集まり、司会には通訳が用意されるなど、意欲的なものとなりました。本稿では、そのイベントの模様をお届けします!

文化や環境の違いを超えて日本の文化を親しむ人々へ

日本のエンターテイメントコンテンツに対する海外からの感心は高く、熱意ある海外のファンがひとつのイベントで“爆買い”する為だけにやってくるような例もあります。VRChatにおいても、日本のクリエイターが制作したアバターなどを使用する海外ユーザーは珍しくありません。

しかしながら、言葉や文化の違いは依然として大きな壁として存在します。自ら問題を解決するタイプが集うVRChatのプレイヤーであれば、そうした壁も乗り越えられるのかもしれませんが、それでも難しい場面はどうしても存在します。

今や安定的な販売ジャンルとなったアバターひとつを考えても、そこに至るまでの文化的背景や細かい利用規約の成り立ちには複雑な歴史があります。いわんや、日本発のコンテンツを楽しみたい海外ファンにとっては把握するだけでも困難なはずです。

『GeekJack』は、そのような様々な壁による問題を超えて互いのファンが安心して楽しめるように、架け橋となるような“越境EC”を運営し続けています。

個人と法人の視点で語るクリエイター活動の実際

──この度はご参加いただき、ありがとうございます! まずはゲストのお二人から自己紹介をお願いします。

イカめし

人間をやめて
会社もやめて
VR界に住み着いたイカ

ことイカめしで~す よろしくおねがいします!

普段は3Dモデラーとして個人で活動しており、VRChatなどで遊べるアセットを作って販売しています。企業さんとのお仕事ではプロップ制作に携わったりといった活動をしております。

気楽にイカやってま~す🦑

株式会社V
UMINO

皆さんこんにちは!

会社もやめてないし、人間もやめてない、UMINOと申します。

イカめし

株式会社V
UMINO

私は株式会社Vにてクリエイティブディレクターを担当しています。主にデジタルアセットの制作・企画・監修などをしております。

私達、株式会社VはVRChatを中心にメタバース空間で様々なクリエイティブ事業を展開している企業でございます。

具体的にはVRChatに興味を持っていただいている企業様へのコンサルティングですとか、プロモーションの企画運営、他にはVRChatプレイヤー向けにアバターや衣装の制作も行っております。

また『メタカル最前線』というメディアや、『kaihen』というサービス、また『VRC-JP』というDiscordサーバーは、実は弊社が運営しています。

他にも、弊社はBtoB事業も取扱いが多く、アバターを通じたファン層の拡大、企業ブランディングに関する事業サポートも行っています。

こうしたワクワクするような未来をVRChatのみなさんと一緒に作っていきたいと考えている企業です。どうぞよろしくお願いします!

テーマ:日本国内ではどんなことをしているの?

イカめし

自己紹介の時点で規模の差がヤバい!!
なのでイカからいきますね(笑

個人の活動としては主に“アセット屋さん”として3Dグッズをひたすら作っている、ごくごくシンプルな活動を続けています。

企業さんとのお仕事ではプロップ制作ですね。日産さんですとか、モスバーガーさんの建物や食べ物といった部分でお手伝いをしたことがあります。

VTuberさんの背景に使うお部屋の制作ですとか、自治体のメタバース参入をお手伝いしたり、けっこうなんでもやってます!

株式会社V
海野

具体的な事例としては、IPコラボレーションが多いですね。

先ほどお伝えした事業と共に、アニメ『無職転生』とタイアップして行った、キャラクターをイメージしたVRChat向け衣装の制作がわかりやすい事例かと思います。

自分が楽しめることを維持し、広げるために

──ありがとうございます。VRChatは長く遊んでいる人ほど「なんでも自分たちの手で作り上げてきた」という思いを持つ人が多いのではないかと考えています。そして時代が進み、VRChatの中で仕事をする人も増えてきました。そうした状況の中にあって、お二人が“気をつけていること”を教えてください。

イカめし

イカの場合は……

金額や売上に囚われず、自分が楽しく続けられるものを作る」というルールで今もやってます。

株式会社V
海野

私からは企業の視点でお話したいと思います。

もちろん企業である以上、収益は大事な追い求めるべきものであるとは間違いないと思います。ですが、あくまでも“VRChatというコミュニティに参加させていただいている”という意識をまず持つようにしています。

そんな感じで、ワクワクするようなものをVRChatユーザーの皆様と一緒に作っていきたい。そんな想いをお伝えしたいですね。

──ありがとうございます! 司会者の私もビジネスとしての活動に悩むことがありましたが、色々試していく中で「楽しめるように」ということを大切にしはじめてから、色々な繋がりが生まれるようになったな、という実感があります。

株式会社V
海野

イカめしさんのように個人クリエイターとしてご活躍され、その上でしっかりと収益もあげながら、ご自身の楽しいこととして実現されているというのは、とても素晴らしいことだと思います。

ですが…… 実際の所は“好きなことをやろうとするとお金がかかる”んですよね(笑

──身につまされますね~

株式会社V
海野

好きなことでお金を稼ごうと思えば、どうしても“やりたくない部分”だって出てきます。「VRで暮らしていこう」というところまでを考えてみるならば、それを実現するためのお仕事や楽しいことが無いとどんどん狭まっていってしまうのではないでしょうか。

そこで、企業としてできることは何かと考えると、個人の範囲では難しい事業を通して、様々な仕事を生み出したり、楽しいことを作っていくことが、結果としてVRChatの可能性を広げていく……なんていう風に考えています。

テーマ:海外展開はどうしてる?

──VTuberが海外でも盛り上がっていて、VRChatを使った撮影といった事例も出てきています。日本の素晴らしいクリエイターの活動を、どう海外へ伝えていけるのだろうかと思ったりします。そこでお二人には、海外展開への想いを伺いたく思います。

イカめし

イカに関してはこれまでほとんど海外に行ったこともないですし、日本でも田舎も田舎!!って場所で生きてきたので、逆にその状況を活かすのが強みになるのかな、なんて考えています。

日本での経験は私だとマンガとゲームしかないんです。けっこう、この文化って英才教育だな~なんて思ってて、この強みは活かしたいですよね。

私は食べ物のアセットをよく作っていますが、日本人は食へのこだわりが強いと思うんですけど、「おいしそう!」っていう感覚の中には「カワイイ!」っていう感覚も入ってるんじゃないかな、とか思ってます。そうした日本人独特の感覚を大事にしたいですね。

株式会社V
海野

イカめしさんからは、日本のクリエイティブを発信していくといったお話をいただきましたので、また違った視点でお話できれば。

先ほどは国内のお話でしたが、日本の中のことだけを考えても、まだまだ認知を広げられる余地はたくさんある、そんな状況だと思います。

その上で、グローバルに目を向けると、日本人ユーザーは多くても10%程度なのではないでしょうか。VR文化の全体を捉えた場合に、世界への発信を行う上では様々なバックグラウンドの違いといったものが見えてくるはずです。

ひとつの例として、インドネシアという国があります。日本と同じ島国ではありますが、島々の数も、そして人口も非常に多い国です。そんなインドネシアでも日本のコンテンツのファンだという方がたくさんいると聞いています。

一方、インドネシアはイスラム教を信仰する人の割合が多いという国でもあります。日本ではウィッグを使ったコスプレなど、キャラクターを楽しむ文化がありますが、インドネシアの女性は“布”を使ってキャラクターの表現をするといった楽しみ方をしていると伺ったことがあります。

宗教観もそうですし、そこまでではないにしても、基本的な価値観に違いがあることから「日本のコンテンツを広めることへの配慮」が必要になる、そんな場面もあるはずです。

弊社もまだまだ国内市場で頑張らねばならない段階ですので、具体的な実践にまでは至っていませんが、私個人の思いも含めて、そうしたことにも目を向けていけたらと思います。

──今回、“海外展開”について伺うと一言にしてしまいましたが、そんな簡単にくくってしまえるものではありませんね。

質疑応答

Q:イカめしさんへ質問します。先ほど、海外でも販売をされていると仰っていました。もし自分が何かを販売してみようと考えた時、海外に向けてお店を構えると言っても、何をどうしたら良いかわかりません。海外に行かれた経験もあまりないとのことでしたが、具体的にどのようにして販売体制を整えられたのでしょうか?

イカめし

GeekJackさんのように「海外展開を手伝いますよ!」と言ってくれている所に思い切りお願いしちゃってます!

私も何もわかりませんでしたので、やってくれる所に頼ってしまって良いんじゃないかな、なんて思います。

あとは、国内かどうかに関わらず、日本語ではない形で問い合わせが来たりするんです。そんなときは、もうChatGPTに丸投げしてどうにかしちゃってますね!

でも、お願いするにしてもどこでもいいって訳にはいきませんよね。意外と“営業”のようなお話をいただくことはあるんですが、正直「なんか騙されちゃうんじゃないか?」って心配になることもあります。ですから、きちんと見極めないといけないですね。

「稼げますよ~~!」なんてお話をされると、怖いな~って思います(笑

イカは基本、疑ってかかってます!!

あとは、実験的に色々試しています。何がちゃんと当たるかはわかりませんし、方法から模索しています。数やればどれか当たるだろ!みたいな(笑

Q:制作や活動を進める上で、色々なことへ手を広げていくことも大事だと思うのですが、その匙加減に悩むことがあります。おふたりはどうしているのかをお聞かせください。

株式会社V
海野

クリエイティブに時間をかけられる時間って、人生の中ではとても少ないんじゃないかと思います。限られた中であるならば、選択と集中……はどうしても必要だと思います。

それでも仰るように、例えば事業ならば「ハズレてしまったらどうしよう?」なんて悩みはでてきますよね。ですので、今後5年、10年先はどうなるのだろうといったことを想像してみて、何を手掛けるかを考える必要はあるかもしれません。

また、どんなクリエイティブの種類かにもよりますが、どの分野にも“根幹となる技術・知識”はあると思います。3Dモデリングやイラストにしても、たとえばデッサンであるとか、そうした技術は常に活かせるものだと思いますし、別の分野でも活きてくる可能性はありますから、そうしたものを学んでみるのは大事だと思いますね。

イカめし

なんと素晴らしいおはなし……

イカはもう邪道も邪道な人間ですから!! そういう意見ということで聞いてくださいね!!

“稼ぐ”という視点で考えるならば、イカは効果のあることに絞るということをやっています。「努力さえすれば実る」というのはあまり好きな考え方じゃなかったりするんですよ。

何か目的があるなら、それが実るように絞っていく。いくら稼ぎたいというのがあるなら、どんなことをすべきなのか。モデリングで稼ぎたいなら、1日何時間Blenderを触ったらいいのかなとか。そんな仮説を立てていきますね。

なので、その仮説と実行の中ではとにかく手広くなることもあったんです。

“目的のためにやったらよさそうな100個の方法”なんてものを自分なりに挙げたりして、それをとにかく上からやっていくなんて時期もありました。

実際は100個もできないんですけど(笑

そのひとつひとつも、何回か試してみてやれそうか?と思ったら数回重ねてみて、ダメそうなら次いっちゃお~みたいな感じです。ちゃんとしたビジネス!みたいな感じじゃなくて、泥臭いんですけど。

株式会社V
海野

イカめしさんの方法、邪道だなんて仰いますけど、実は王道だったりするんじゃないかって思いますよ。

イベントは、日本、タイ、アメリカ……と多くの参加者が集まりました。様々な垣根を超えやすいVR文化と言えど、まだまだ言語の壁は大きく、国を超えての交流は簡単とは言えません。

そんな状況を打破できる力を持っているのが“クリエイターの創作物”だと感じます。日本のコンテンツに魅力を感じて、言葉はわからずとも飛び込んできてくれる海外の人々は想像以上に多いのです。

クリエイターを支えるサービスも、多種多様なものがあります。その中でも、GeekJackは海外展開を目指すクリエイターに目線を合わせ、安心して挑戦できる環境を整え始めています。

『GeekJack』からのメッセージ

私達は日本クリエイターの海外進出を全面的に支援していきたいと考えています。この理念は『GeekJack』へ出展してくださっているクリエイター様向けに提供しているサービスで感じて頂けるかと存じます。

GeekJackでの販売における大きな特徴は、弊社スタッフが商品説明文だけでなく、商品画像内の文言までネイティブレベルでの英語と中国語に翻訳し、クリエイター様の意図を正確に伝えるという部分です。

また、お客様からのお問い合わせについても一次対応を私達が行うことで、クリエイター様が本業に集中できる環境を作っております。

更に今後は、オンライン上で問題となっている違法コミッションや、違法コピーの抑止を目的とした施策を検討しており、安心してクリエイター活動を行える環境を整えていきたいと考えています。

海外から日本のクリエイターの商品を購入したいユーザーの利便性を向上することに注力しています。言語に関する部分ですと、商品部分の記載だけでなく、お客様とのやりとりも英語・中国語で行っています。ネイティブレベルの翻訳スタッフが言語の壁を解消しスムーズなコミュニケーションを促進しているわけです。翻訳ツールを使うことなく日本で販売されている商材を購入するという体験は、皆様の作品を世界に発信する上で必須になると考えています。

また、GeekJackの取り扱う商品のクリエイター様から許諾を得た上で、改変済みのセット商品を販売し、VRをはじめたてのユーザーに向けて、改変の壁を取り払う試みや、手間を軽減できる販売形態にも挑戦しはじめました。

更に、日本国内のプラットフォームでは取り扱っていない海外の電子決済手段も多数用意し、より多くのユーザーにアプローチできるよう努力を継続していく所存です。

VR業界を盛り上げる為に尽力していく次第です。VR以外のGeekJack取り扱い商材であるVTuberや音楽商材など、VRと親和性の高い分野とのクロスオーバー商品の展開やイベントも企画・予定しております。

また、VR活動を行う団体や法人とのコラボレーションを募って、競合よりも協業を重視し、VR業界全体の規模を大きくしていくことを目指していきます。

私達GeekJackはこれからも日本を含めた世界のクリエイターの皆様と共に成長し、世界中のユーザーに素晴らしい体験を提供していく所存です。

寄稿者紹介

GeekJack

GeekJackは、日本発のクロスボーダーECサイトで、VTuberなど日本ポップカルチャー関連のデジタル&物販を世界に届けます。

投稿者プロフィール

バーチャルライフマガジン編集部
バーチャルライフマガジン編集部