『MANIAC_VRC』で第2回 90sテクノパーティ開催へ 実在クラブをVR再現した主催者に聞く【寄稿】

前回、バーチャルライフマガジンにて「MANIAC_VRC」のイベントレポートを寄稿しました。記事では会場の熱気や盛り上がりの様子をお伝えしましたが、ありがたいことに多くの反響をいただきました。

次回、10月4日の開催に向けて、ワールドの製作者でありイベント主催でもある、む(mu)さんに、制作への思いやこだわりについてインタビュー形式で伺いました。本記事を読んでからイベントに参加すれば、より一層深く楽しんでいただけるはずです。

む(mu):きぐるみTECHNO DJ

当時を知る世代へ

(Maniac Love コンピアルバム「JOURNEY INTO THE SOUND」ジャケット画像:寄稿者所有)

―― まずは、むさん自身の「Maniac Love」との出会いについて聞かせください。当時のフロアの雰囲気やカルチャーを、今の若い人に伝えるとしたら、どう表現しますか?

む(mu)

最初はテクノミュージックを取り扱う雑誌で知りましたが詳しい情報は非公開だったため行き方もわからない状態でした。アフターアワーズという、土曜夜からのクラブ明けでも踊り足りないクラバー向けに日曜の朝から開催されていたパーティーに、友人に連れられて行ったのが初めてのManiacでした。
満員のフロアは酸素不足でライターも点かないし、天井から熱気で溜まった水滴は落ちてくるし。その中でみんな踊り続けていたのは刺激的でしたね。

―― 数あるクラブの中から、なぜ「Maniac Love」をVRChatで再現しようと決意されたのですか? その衝動やきっかけとなった具体的な出来事があれば教えてください。

む(mu)

VRChatを知った時に最初に思ったのが、自作アバターを動かしてみたいと、そのアバターでManiacで踊ってみたいということでした。思い出に強く残っていたもう無くなってしまった場所に、バーチャルならまた行けるんじゃないかと思い、制作しました。

再現へのこだわりと舞台裏

―― VRChat上で「Maniac Love」を再現していく中で、特にこだわったディテールはどんなところですか?

む(mu)

DJブース内のDJ向けの注意書きや、機材類はこだわりましたね。既存のアセットでは再現できなかったので、DJミキサーやアイソレーターなどは完全に自作しました。DJからしか見えないのでイベントに来てもらっても見てもらえないのが残念ですが、プレイするDJの気持ちを盛り上げるためには必須だと思って気合を入れて作りました。

前回の反響と手応え

―― 第一回のイベントを終えて、率直な感想はいかがでしたか?想像以上の手応えだった点、あるいは予想外の反応があった点などを教えてください。

む(mu)

イベント中に不具合も見つかってしまい、とにかく疲れたというのが率直な感想ですが、Maniacに行ったことのない方からも箱のサイズや雰囲気がいいと何人にも褒めていただけたのは自分のワールドを褒めてもらったというよりも好きだったManiacを褒めてもらえたようで嬉しかったですね。

―― VRでクラブイベントを実現したときに「現実のクラブ体験」と一番違うなと感じた点はどこでしたか?

む(mu)

一番違うのはスピーカーの大きさですね。Tシャツが震える低音は現実でしか味わえないので、その点はバーチャルでは物足りなさはあります。その代わりに手軽に集まれるのは大きいですね。Maniacで会っていた、今東京にはいない古い友人にも来てもらえたのは嬉しかったです。

今回のイベントの見どころ

―― 10月4日の本イベントでは、来場者はどんな体験を楽しめるのでしょうか?特に「音」「フロアの雰囲気」「演出」など、注目してほしいポイントを教えてください。

む(mu)

90年代当時盛り上がっていたテクノミュージックをプレイできる方々ばかりDJに集まっていただいたので、当時を懐かしむも良し、知らない新しい音楽として楽しんでもらうのも良しで、とにかく音楽を楽しんでほしいです。
演出面では照明やミラーボール、スモーク、ストロボなどライティングにはこだわっているので楽しんでもらいたいです。激しい明滅があるので、そういった表現がダメな方はフロアから離れた場所にいていただくなどの注意が必要です。

VRならではの体験と未来像

―― VRChatというプラットフォームは、物理的なクラブ体験をどのように拡張していると感じますか?

む(mu)

「MANIAC_VRC」は現実の再現の方向で制作・運営をしていますが、天球スクリーンやパーティクルライブなど現実では難しい映像表現にこだわったものは一参加者として楽しんでいます。あとは何より手軽さですね。30分だけ海外のクラブイベントに行ったあとすぐにベッドに横になれるのは、VRChatならではの素晴らしさだと思います。

―― 逆に、当時の「maniac love」のストイックな空気感を出すために、あえてVRの機能を制限するなど、「引き算の美学」を意識した部分はありますか?

む(mu)

他のDJイベントでは多い映像の表示は無く、照明などの演出に集中してもらうことを心がけました。

―― 今後の展望について、この「MANIAC_VRC」を通じて、どのようなコミュニティを育てていきたいですか?

む(mu)

第一回ではそれまでVRChatを知らなかった方にも来ていただけました。現実の再現イベントとしてVRやリアルの垣根を越えて、テクノミュージックを好きな色んな方々に楽しんでいただきたいですね。

―― 最後に、この記事を読んで「ちょっと興味あるな」と思った人へ、主催者として一言メッセージをお願いします。

む(mu)

テクノミュージックが好きな方、興味がある方なら楽しんでいただけると思うので、ベッドに横になる前に少しだけでも覗いてもらえると嬉しいです。現実を再現したワールドに興味がある方も、ラウンジフロアでくつろいだりもできるので是非足をお運びください。きっと楽しいですよ。

マニアックな、もっと夜を

90年代にリアルでクラブ文化を体験した世代にも、初めてテクノの世界に触れる若い世代にも ―― 現実のクラブはもう存在しなくても、その魂はバーチャル空間に受け継がれています。音楽と空間が交わる「MANIAC_VRC」での一夜は、あなた自身の新しい記憶になるかもしれません。

関連リンク

主催者X(Twitter):https://x.com/mu_uumm
イベントハッシュタグX(Twitter):#MANIAC_VRC

寄稿者紹介

505uke

そうすけ、と読みます
VRChat内でテクノDJをしています 私自身も、クラブイベント「テクノマニア」を不定期で開催しています

投稿者プロフィール

バーチャルライフマガジン編集部
バーチャルライフマガジン編集部