2023年7月27日、VR業界の一線で活躍するクリエイターが集まるトークイベント「VR界現役クリエイターにきいてみた!行列ができるイベントのワールドづくりとは?」が開催されました。本記事ではYoutube配信で行われたイベントの様子をダイジェストでお届けします!
目次
登壇者紹介(敬称略)
ワールドづくりのポイント、重視する要素は?
最初のトークテーマである、「自己紹介」や「ワールド制作のきっかけ」の後、本題である「ワールドづくりのポイント」に話が進んでいきました。イベントやワールドによって見ている箇所は異なるもの。三種三様の答えです。
Caratの場合
enu.:Caratで一番重視したかったのは、商品のクオリティを下げない事。どんなに人数が入っても、販売物を買って、Unityで見た時と同じクオリティの物がショップで見れるというのは崩したくなくて。どうしてもワールド容量は大きくなってしまうものの、他の部分で負荷がかからないように軽量化を目指しています。
ただ、私もワールド知識があるわけではないので、調べたり、フレンドや知っている人に聞きながら軽量化をしています。
Vorufu:Caratは初心者・常連さんに問わず来ていただいていて、月によって中央のスペースに置くものを変えたりしています。例えば今年の夏はプールを作ったりとか。ハロウィンやクリスマスに合わせたりするので、僕が提案して、「それは可能なのか」というのをすり合わせています。植物系が重くて大変だったりすることもありますが、enu.さんが頑張って下さって快適なワールドになっていると思います。
Iteza:ショップがあるので、商品の価値が落ちないようにクオリティをワールド全体で担保しているという事ですね。
Vorufu:どうしてもBoothで見るときに2Dの画面でしか見れないと、どういう感じか分からないので……実際に間近で見て行くのが楽しいんじゃないかなって思うので、突き詰めています。
VOYAGEの場合
Iteza:まず、スタッフをはじめとする関係者含めて60人をワールドに入れるというのがあったと思うんですが……今のVRコンテンツでそれだけの人数入れるって言うのはかなり負荷が凄いと思うんですよ。その中でもワールドがガンガン動くし、水も出てくるというように演出もこだわっているのが伝わってきました。
坪倉:最後の方は気合で無理やりというのはあったんですが、アクターさんが動けないといけなったので軽量化はすごい考えていて。エントランスとランウェイは空間的に離して見えないようにしたり、LOD(レベルオブディテール)を導入して距離によって描画するポリゴン数を削減したり……
でもアクターとお客さんの間で見えているものは違っていてよいので、LEDモニターに映すカメラのテクスチャ解像度を下げていたり、出演者や配信担当カメラマンにはしっかり見せるので高解像度にしたりしています。
同期も必要最低限にしています。ピックアップしたものもずっと同期させる必要はなくて。普通にやると持っている間、位置同期がずっと走るので重くなってしまう。持った時と離した時だけ同期することで軽量化するとか、カメラ位置も全部じゃなくてアニメーション番号だけ同期するとか……話すと長くなってしまうんですけど。
enu.:私、VOYAGEに招待して頂いていたんですけど、めちゃくちゃワールドが気になっちゃって。どうやってんの?って主催のゆいぴさんにきいたりしていました。
坪倉:ワールド制作者の交流会があるんですけど、みんな負荷を抑えるために滅茶苦茶苦労してて、色んなノウハウがたまっていくんですよ。ぜひ出てみると面白いと思います。
Vketの場合
育良:やっぱり描画負荷……って言いたいんですけど、それは 散々話されたのでカットして(笑)展示会ならではというと、導線の設計とか、来場者の体験を重視しています。
ワールドがいわゆるオープンワールドのように何処でも行けると、複数個所に分岐があった時に片方に行くともう片方に行くのが大変で、全体を見るのに適していないじゃないですか。それって展示会として良くないよねってことで、今は分岐があるように見えて完全に一本道という導線になっています。
その導線設計……どこをどういう風に歩いて行って、何処に視線が行くだろうかとか、はいった時にただ見て回るだけだとお客さんが飽きてしまうとか、推しのサークルだけ見たらすぐ帰ってしまうような形だと全体を見てもらえないので、飽きずに見られるような体験を入れることで、最後まで見てもらうコンテンツとしての工夫があります。そこが物凄く時間をかけているところです。
Iteza:以前のVketって、順路が決まっている美術館型と、色んな所にいけるテーマパーク型があったと思うんですが、テーマパーク型が導線の面が難しくて一本道になっていると思うんですが、毎年開催される事でマンネリ感みたいなのが出てしまうので、そこで面白さをどう出せるのかが大変なところなんだろうなというのは感じます。
個人的な思いですが、テーマパーク型みたいな自由にどこでも行けるという形式にもチャレンジして欲しいなという思いがあります。テーマパークって導線やレベルデザインがめちゃくちゃ考えられていると思うんですよ。洞窟をここに作るとか。壁の向こうは見せないとか。そういう工夫で解決できる部分があるかもしれないと思っているので、もう一度チャレンジして欲しいなという思いがあります。
Vorufu:それはすごくわかります……いくたびに発見があって面白いという良さもあると思います。
人が集まるイベントを企画するポイントとは?
Vketの場合
育良:VketのPRはシンプルで、メインはSNS運用とプレスリリース(メディアリレーション)の2つです。
Twitterの場合は拡散されそうなものを投げ込みまくる。あとは色んな方とコラボさせていただいて、その方から発信してもらう事で、Vket単体では届かなかった人たちにも知っていただくというのがあります。もちろんVketを知っている方にイベントやブランドを広めるというのもあります。
メディアリレーションに関しては、ビジネス界隈や、記者さんに届けることでより一般向けに広げていくというのがあります。例えば日清食品さんが出展するとか、金融大手が参加するといったものをPRしたりします。
ワールドとしては「これしたら皆喜んでくれるんじゃないか」というのを基本的にしています。
Iteza:SNS凄い力入れてるし、ワールドを訪れた後の二次拡散もきちんと設計されているんと感じるので、SNSの強さと言えばHIKKYがダントツかなと思いますね。
育良:俺Twitter担当なんだよな~!(笑)ありがとうございます!
今はチームになっていて、僕の手を離れている部分もあるんですけど、実のところ東京クロノスがめちゃくちゃ上手いなと思って見ていた時があります。「このタイミングでこのキャンペーンするんだ!」みたいな。
Iteza:VR業界がこれから広げないといけないんだみたいな所があるので、弊社もそうですし、他の所もそうですけど、SNS運用とかマーケティングプランとかの輸入と輸出がめちゃくちゃ多いんですよ。
育良:僕が作ってVketで出した告知画像と、似ているテイストの告知画像が出てきたとき僕手叩いて喜んじゃって。僕としては大歓迎ですし、一丸となって広げて言った方がいいだろうなという思いがあって。
Vorufu:Caratも真似させていただいて……
Caratコーデというハッシュタグがあるんですけど、育良さんが考案されていた画像だと画像一枚にハッシュタグをバンと入れていて、ツイートでもハッシュタグを入れるというもので。後からリツイートした時も一発で分かって、凄い使いやすい形式だなと思います。
育良:VRSNSっていうぐらいなので、界隈の中でどうやって盛り上げて、外に広げてもらうというのを繰り返してますよね。
坪倉:VRChatとTwitterセットみたいなところありますからね。
VERTEX:VRCBattleRoyaleの場合
Iteza:VERTEXは沢山の人がいて成り立つワールドだと思うんですけど、人をたくさん集めるための工夫はされていましたか?
坪倉:皆コミュニケーションの場としてVRChatを利用しているので、そこが一番大事だなと思いました。VERTEXは3vs3で戦うゲームなんですけど、仲間とのボイスチャットは遠く離れていても聞こえる、敵は近くにいた時に聞こえるような形にしていました。
ボイスコミュニケーションも大事にしたかったし、他にはアバターもそのままで使えて、大きさによってハンデが出ないようにしたりとか。勝った時の表彰台も作って、乗ってる写真もワールドで自動で撮るようにして後から保存できるような機能を作っていました。
コミュニケーションが円滑になるようなことは意識して作っています。
Caratの場合
Vorufu:先ほどハッシュタグの話が出ましたが、それも考えてやっています。
毎月来て下さるお客様もいて、そういう方は毎月服を変えてくださる方もいて。何着ているのか教えてほしいし、他の方にも知ってもらいたいし、オーナーさんの服を買って翌月に店に来るとか。オーナーさんは気づくけど、スタッフは忙しくて気づけないこともあるので。ハッシュタグによって全員が知れるし、Caratが気になっている人に対してのアプローチの意味合いも込めて作った経緯があります。
さっきも話に出たんですが、毎月ワールドの内装をかえて見たりしているんです。オーナーさんのお店がメインになるんですけど、そこに人が来てもらわないと意味がないので、Caratとしてなるべく頑張って人を呼ぶというのをしていますね。
enu.:Caratに来る人はオシャレな人たちや、それを写真を撮る人が多いんです。リアルで言うとインスタグラマーみたいな人が多くて。写真を撮って楽しい場を作って、毎月そこでしか体験できない貴重さもあることで、飽きないように人が来てもらえるようにというのがあります。……ありますよね?
Vorufu:ありますあります。なんでそこで不安になっちゃってるんですか(笑)
そこで毎月更新がかかっているのでenu.さんが自分の店舗を更新できなかったりとか、負担があるのでそこは考えていきたいなと思います。
enu.:ありがとうございます!(笑)
坪倉:主催をやりつつ自分の展示物も作るというのは大変ですよね。VOYAGEもゆいぴさんが大変そうにしていたので。
Iteza:イベントに自ら参加するっていうのは、やりたいことがあるから後からイベントがついてくるのかもしれませんね。
育良:Vketスタッフにもよく言われますもん。Vketで忙しくてVket行けないって。
坪倉:矛盾が起こってる(笑)
enu.:私もお店に並べるものが無くなってきちゃって。作れなくなってきちゃって。
Vorufu:二人ともCaratを始める理由がenu.さんは「お店を作りたい/見せたい」で、僕は「接客をしたい」なんですが僕はほとんど接客してないという。
ワールド制作、何から始めればよい?
Iteza:VR世界の醍醐味ってやる側に回ることかなって思います。ワールドに関して言うと、新しくワールドが生まれ続けているから、この中でも遊びや楽しみが日々継続しているなと思うんですよね。
これからワールド制作を始める場合、はじめの一歩はどうすればよいと思いますか?
坪倉:もうあるものを買っちゃうのがいいんじゃないですか。プロジェクトごと入っているのがあるので、中見て「こういう風にできているんだ」というのを見ていくのが良い気がします。
Iteza:Vketでも色々なワールドそのものアセット販売みたいなのも増えましたし、そのままUnityで運用できそうなものもあるので、良さそうですね。
enu.:私も最初にワールド作ったのはUnityのアセットストアで買ったものをアップロードしたのが始まりで、今だと坪倉さんがおっしゃったようにVRChat用に最適化されたものがあるのでそれをポンとおいてみるのが良いと思いますね。
坪倉:最初にアップロードした時はモデリング全然できなくて、ワールド制作した時に作りたいものが出来て、そこからモデリングを始めたことがあるので。まずやってみるのがよいですね。
ワールド制作の次の挑戦は?
育良:次っていう意味で言うと、Vketをぶち壊すことですかね……
Vorufu:こわい。
坪倉:どういうこと……!
育良:Vketって今まで出店形態ってそんなに大きく変わってきてないんですよ。
Vketを捉え直して、色々な人がきっかけをつかんだり出来るような、新しい形をやりたいという話をしています。「俺は出店者じゃないしな」と思っている人が出店者になる未来を模索しています。
坪倉:僕は個人クリエイターなので、規模の大きなことはできないんですが……VR界のパナソニックみたいなポジションになりたいなと思っていて、皆のホームワールドの定番アイテムをつくって置いてもらうというのをやりたいです。
Iteza:メタバースがもっと広まっていく場だと思うので、高度経済成長期における3Cみたいな概念を持ってきてってことですね。
坪倉:皆の家にあるみたいな。シェアNo1になりたい。
Vorufu:Caratの次の挑戦としては、コラボを色々やっていくというのを思っています。服が好きな人の中でも、Caratを知らない方はまだまだ多いと思います。全く知らない層に届けるためにも、関わりの薄い層とコラボしていって多くの人に知ってもらう機会を作りたいと思います。
enu.:代表としてというよりもワールドを作る人としてなんですが……ワールドの軽量化をいっぱいしたくて。セーフティをかけたりすると、接客する人たちの見え方が違うんですよね。お店に立つ人は商品と同じぐらい重要だと思うので、そこが見えなくなるのは何とかしたいなと思います!
坪倉:軽量化沼へようこそ!
Iteza:最後まで軽量化沼というか、快適なイベント運営のためにという所でで付きまとう問題ですね。
アーカイブはこちら!
最後に質疑応答を挟んで放送は終了となりました。
本記事でお届けした内容はほんの一部。気になった方は是非アーカイブもご覧ください!
また、9月の中旬に第4回も予定されているとか……?詳細はMyDearest社の公式Twitterアカウントにて発表されます!続報をお楽しみに!
主催
●VRアジト (http://discord.gg/vragit)
VRアジトは、VRを習慣的に楽しめるためのみなさんの拠点を目指す、Discordパートナーサーバーです。 VR好きな人が集まり、一緒に遊ぶイベントを開催したり、制作の相談をしたりする場所です。 イベント参加はもちろん、イベントの主催・開発中のコンテンツのテスター募集など、クリエイターによる宣伝や制作活動の相談にもご利用いただけます。
また現在、極秘のVRゲームづくりプロジェクトも進行中です。
是非ご参加ください!
スピーカー
・育良啓一郎 / 株式会社HIKKY PR統括(https://twitter.com/ikr_4185)
・坪倉輝明 / メディアアーティスト(https://twitter.com/kohack_v)
・enu. / バーチャルショッピングモールCarat代表(https://twitter.com/enu_001)
・Vorufu / バーチャルショッピングモールCarat広報・PR(https://twitter.com/Volf_1854)
司会進行
・Iteza / MyDearest株式会社 PR・VRコミュニケーター(https://twitter.com/Iteza_JPSF)