単なる観光地のメタバース化にとどまらない横須賀市の取り組み。メタバースヨコスカ内覧会レポート

古くから軍港として栄え、現代でも米海軍や海上自衛隊の港町として知られる神奈川県横須賀市が、「メタバースヨコスカ」(通称メタスカ)プロジェクトを実施。その第一弾として、DOBUITA & MIKASA Worldが制作され、10月19日にメディア向け内覧会が行われました。
そこでは、単なる観光地をVRChatで再現するだけじゃない横須賀市の狙いを聞くことができました。

内覧会では「DOBUITA & MIKASA World」のうち、当日の時点でプレオープンしていた「ドブ板通り商店街」のエリアを、担当者の方に案内していただきました。

ただの再現じゃない!近未来な雰囲気の「ドブ板通り商店街」

ドブ板通り商店街は横須賀市のシンボルである商店街です。もともと通りの中央に流れていたドブ川が人や車両の往来に邪魔だったので、旧日本海軍の施設から厚い鉄板を提供してもらい、ドブ川にふたをしたことから、いつの日かドブ板通りと呼ばれるようになったとのこと。

写真素材:YOKOSUKA MEDIA LIBRARY

そのドブ川は埋められてしまいましたが、今でもドブ板通り商店街として、多くの市民や観光客に親しまれています。

VRChatに登場したドブ板通り商店街は、現実世界の建物を再現するのではなく、近未来的なテイストでアレンジして再現されています。上下の写真を見比べていただくと、元の雰囲気も残しつつ、近未来な雰囲気も感じられるように作られていることがお分かりいただけると思います。

ドブ板通り商店街で横須賀グルメを満喫!

VRChat上のドブ板通り商店街では、実際の雰囲気を再現した店舗で横須賀を代表するグルメ「よこすか海軍カレー」「ヨコスカネイビーバーガー」などを楽しむことができます。

よこすか海軍カレー

航海中の脚気(栄養不足に伴う病気)を予防するために、旧日本海軍によって考えられたカレーのレシピが海軍カレーの原点と言われています。そのレシピをもとに現代に再現したものがよこすか海軍カレーです。牛乳とサラダをセットにして提供される、どこか昔懐かしい雰囲気が特徴です。

ヨコスカネイビーバーガー

2008年に横須賀米軍基地から友好の象徴として横須賀市に提供された、米海軍の伝統的なハンバーガーのレシピをもとに誕生したローカルグルメです。牛肉本来の味を損なわないシンプルな味付けで、好みでケチャップやマスタードをかけて食べる、本場アメリカの伝統的なスタイルのハンバーガーです。

カレーはスプーンを手に取ると実際に食べることができるギミックが実装されています。完食すると……?

ハンバーガーは自分の手で作って食べることができます。

ほかにも地元の素材を使った横須賀ビールや、ヨコスカネイビーバーガーと同じく米軍横須賀基地からレシピが提供されたヨコスカチェリーチーズケーキも置いてあるので、こちらも合わせて横須賀グルメを楽しんでみてくださいね!

ドブ板通り商店街発祥のスカジャンを着て散策しよう

ドブ板通り商店街は「スカジャン」発祥の地ともいわれています。戦後間もないころ、横須賀に駐留するアメリカ軍兵士がお土産として背中に刺繍の入ったジャンバーをオーダーしたことが始まりなんだとか。

15アバターに対応したスカジャン

今回のメタバースヨコスカでは、アバター向けスカジャン衣装や、オリジナルVRoidモデルの配布も行われます。

スカジャン背中の刺繍も忠実に作られています。

こちらのスカジャン衣装は、VRファッションブランド「EXTENSION CLOTHING」を展開するアルティメットゆいさんが制作を担当しました。


男女合わせて15アバターに対応し、18種類の色展開があるため、きっと自分にピッタリな一着を見つけられそうです。

また、スカジャンを身にまとったVRoidモデルも配布予定となっています。こちらはVRoidクリエイターのLUCASさんが、VRoid史上最高のスカジャンを目指して制作されたとのこと。

これらのアバターの制作やコーディネーションなどは、Virtual Fashion Collection “Voyage”代表のゆいぴさんがファッションディレクターとして監修に入っています。
各種アバターへの衣装対応なども含め、多くのクリエイターと協力して作られたこちらの衣装やVRoidモデルは、10月27日にBOOTHにて無料でダウンロードできるようになります。

また、「DOBUITA & MIKASA World」グランドオープンの際には、ワールド内にもスカジャン衣装の展示が行われるとのことですので、まずは一目見に行ってみてはいかがでしょうか?

横須賀の雰囲気たっぷりなドブ板通り商店街エリアはスカジャン衣装と相性バツグン!撮影ワールドとしても最高だと思います。

VRChatの多くのクリエイターとともに作り上げたメタバースヨコスカ

こちらの「DOBUITA & MIKASA World」は、ワールドクリエイターのVoxelKeiさんをはじめ、VRChatで活躍する多くのクリエイターと共に制作されました。

三笠公園エリアは10月27日オープン予定!

「DOBUITA & MIKASA World」の残りの部分である三笠公園エリアは、10月27日(金)のグランドオープン時に公開される予定です。

三笠公園は、日露戦争時の戦艦三笠が記念艦として保存、展示されている公園です。メタバースヨコスカではこの記念艦三笠ともに音楽ステージが設けられたエリアになるようです。

現実の三笠公園 写真素材:YOKOSUKA MEDIA LIBRARY

クリエイターとともに作り上げ、コミュニティを盛り上げることを目指すメタバースヨコスカ

今回のメタバースヨコスカは、横須賀市などによる横須賀集客促進・魅力発信実行委員会により企画されました。
横須賀市の担当者である小山田さんによると、観光地をそのまま再現する、よくあるメタバース化ではなく、VRChatの文化に受け入れてもらいやすいような場を作って、そこでコミュニティをつくってもらいたいという想いでこのようなワールドを企画したとのこと。

メタバースヨコスカを企画した小山田さん

ワールドに来てもらうことよりも、スカジャンやよこすか海軍カレー、ヨコスカネイビーバーガーなど、横須賀のコンテンツを多くのユーザーに使ってもらうことに重きを置くことで、よりコミュニティを盛り上げたいという想いを語っていただきました。

メタバースヨコスカを通じて、横須賀市をより魅力的な都市に

メタバースヨコスカは観光客を増やすことだけではなく、魅力的な都市づくりに向けて様々な取り組みを行っていることを様々な面から発信していき、メタバースのコミュニティに限らず横須賀市全体を巻き込んでいく大きな取り組みにしていきたいと小山田さんは語りました。

市内の若年層や大人に向けてBlenderやUnityの講座を予定しているなど、メタバースヨコスカをきっかけに、様々な取り組みが行われるようです。

神奈川県にはほかにも魅力的な都市や観光地があり、変わったことをやらないと横須賀は目立てないという意識が市役所のなかにあるのだそう。新しい技術は時代が後からついてくるかもしれないので、とりあえずやってみようという雰囲気があるとのことでした。

横須賀市はこれまでも、位置情報ゲームのIngressやPokémon GOとコラボしたイベントを行ったり、市内の高校へのeスポーツ部設立支援などの「Yokosuka e-Sports Project」を行ったりするなど、先進的な取り組みを行ってきました。

横須賀を魅力的な都市にしたいという小山田さんの熱意と、先進的な取り組みでもとりあえずやってみようという雰囲気がある横須賀市だからこそできたメタバースヨコスカなのではないかと感じました。

メタバースヨコスカグランドオープンは10月27日。第2弾のワールドも制作中

この「DOBUITA & MIKASA World」は記事公開時点では仮オープン状態で公開されています。
ワールドはQuest対応しているので、Quest勢でもメタバースヨコスカを楽しめるのはうれしいポイント。
今回ご紹介したドブ板通り商店街エリアに加え、三笠公園エリアや、スカジャン衣装、VRoidモデルが公開されるグランドオープンは10月27日(金)で、当日はお披露目イベントが行われる予定です。
また、三笠公園エリアに設けられたステージを使った音楽イベントが11月4日(土)に行われる予定となっています。

さらに、第2弾のワールドとして、ミステリアスな空気をたたえた「SARUSHIMA World」の制作が進められており、年内に公開される予定です。今後の動向にも要チェックですね!

ワールドはこちらから!
関連リンク

メタバースヨコスカ 
公式サイト 
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BOOTH(10月27日公開予定)