Gunberryさんは主にJapan Talk Roomを中心に活動しているVRChatユーザーの方。
特技は、VRChatユーザーなら見たことのあるペン「QvPen」を使って「絵」を描くこと。
その絵も一風変わっており、VR空間に立体的に描くのが特徴です。
そんなQvPenを使い絵を描くGunberryさんに、描いている絵やこだわりについてインタビューさせていただきました。
目次
Gunberryさんインタビュー!
GunberryさんとVRChat
私はVRChat始めて1年ちょっとぐらい(取材時)なんですけど。始めて1週間ぐらいのときにはもう龍を描いてましたね、Qじゃぱん横丁で。
暗い夜のワールドで、赤とか黄色の原色のペンで当時は龍を描いていましたね。
最初は、Qじゃぱん横丁で歌ってる人見て、僕もなにかやってみようと思って歌ったり絵を描いたりしてました。
VRChat始めて次の日には、もう絵を描いてました。始めて1週間ぐらいの初期に描いていたやつは、入れ墨の絵とか中華料理屋の看板みたいな感じで全体で描いてましたね。
始めて5ヶ月ぐらいはQuest単機で描いていたんです。
背の高いところはもう届かなくて、絵が横長になっちゃうので背の高いアバターとかよく使ってましたね。
日を追うごとにだんだん迫力とかを求めていって、ちょっと前にTwitterで101匹目の龍っていう、大体101体目の龍として描いた絵があるんですよ。
本気で描いたら自分が今どれくらいQvPenで描けるのかなって描いてみたのが「101匹目の龍」っていう絵で。
Gunberryさんは作りながらQvPenに慣れていったって感じですか?
最初の頃は、なんだこれ描きにくいなって思いましたよ。こんなもん無理だって。描いているうちに何か自分意外とこういうのに向いてるのかな…って思い始めましたね。
今は、QvPenの可能性の10%ぐらい引き出せるようになったのかなって思いますが…。
ワールドやペンによって変わる絵
同じQvPenだとしても、ワールドやペンの設定によって、テイストが大きく変わるそうです。
普段は、Japan Talk Room(以下、JTR)で活動されてるんですか?
JTRが多いですね。ここで描いた時の黒色・白色が一番好きなんですよ。壁もグレーで、ちょうどグラデーションになるっていうか。
Qじゃぱん横丁やFUJIYAMAなどいろんなところで絵を描いていましたが、JTRに落ち着きましたね
普段はこの辺を歩いて、いたるところで描いてますね。今までに100回ぐらい描いてるんじゃないかな?
QvPenって明るい色が出るので、蝶々が飛んでたりとか、魚とかそういう絵を描くときは、暗いワールドで描いています。
今までだとSpirits of the Seaとかが多いですね。
写真として撮るのならワールドとペン選びが重要で、ワールドには原色みたいなQvPenが多いですが、JTRの色はパステルカラーでちょっと白みがかった色なんです。私が2Dの絵を描く際はここがしっくりきています。
JTRの壁を選ぶ理由がありましたよね。白っぽい壁なのに白いペンがよく見えるようになってるって。
そうですね。ペンにグラデーションが出せるんですね。QvPenっていうと線画のようなイメージがあるんですけど、グラデーションがあればちょっと陰影をつけられる。そんなに色同士も変化しないというか、白もハイライトみたいにちょっと入れてみても…。
QvPenというアセットは一つなのですが、設置されているワールドによって色や太さが違うことがあるんですよね。私はこのパステルカラーのグラデーションを好んで使っていて、理由は色同士が喧嘩しにくいっていうか、何となく繋がっている色じゃないですか。
原色のペンだと色同士が赤と青っていうとすごいかけ離れた色で、色同士がぶつかっちゃって、統一性のある絵にならないんですよね。こういうペンを使うと、色だとかもすごく自然に綺麗に描けるんですよね。
原色は、ちょっと違った雰囲気になって、それはそれで一つの作品になるとは思うんですけど、私はグラデーションカラーの方が好きなので好んで使ってます。
いろんなワールドがありますけど、Qじゃぱん横丁とかSpirits of the Seaとかでたまに描くんですけど、JTRと同じテイストで描こうと思ったらちょっと無理ですね。
なのでこういう濃淡というか、本当に1枚の絵を描きたいときはJTRの壁を使ってますね。あとペン選び・色選び・ワールド選びっていうのはあります。例えばここのワールドだったらこういう絵が描けるなぁっていう。
このワールドの製作者、やがて捨てられる補助輪さん(以下、補助輪さん)とQvPenの作者のureishiさんに相談してみたことがあって、ペンの色とか太さとかって変えられないんですか?っていうのを。
このワールドの作者は、補助輪さんなので、そしたら「私個人のためではなくてみんながやっぱりいろんな色があったら楽しめる」し、壁に穴を開けて遊んだりするJTR穴あけ部と呼称が付いているネタムーブもあって、QvPenを壁に刺してここから水が出てくるかのような遊び絵をここで描く人をちらほらと見かけるんですよね。
そんな文化があるんだ!面白いな~!
そういうのもあってお絵かきする人がJTRには結構多いので、補助輪さんも色を増やすことに賛成してくれたんです。
それで私もこれくらいの色があったらいいんじゃないかっていう相談をして、普通は12本分のペンを用意しているワールドが多いと思うんですけど、ここは19本あるんですよ。他と比べてちょっと多いんですよねここのペンは。
QvPenの使いこなし
QvPenって狙ったところに線が置けなかったりするんですよね。
奥行きだったりまっすぐだったり。どんな感じでQvPenを使いこなしてるんですか?
とにかく客観的に見ることが大事なので、立体だったらまずは周りからよく見る。1ヶ所に留まっていると、描いた絵が曲がっててもわからないので、色んな角度から見るようにすると描きやすいかなと思います。
1ヶ所にとどまってると視点が1ヶ所なので、どんどんどんどんずれていくんですよ。描いていくと自分を中心として絵が丸くなっちゃうので。
なので、とにかく一度離れる。そして、客観的に見る。で、また戻っていろいろ付け足して、こうだなこれくらいかなここの角度どうかなって思ったらまた離れる。OVRでも視点を合わせて、描くところを真正面に持ってくるのが大切です。
VRで描くと、そういう修正ができますね。
例えば何かもうちょっと大きく描けば、この絵の空間に自分が挟(はさ)まることもできるし、立体的な写真を撮ることもできるし、私の絵にはそういう写真結構あるんですけど。
この辺に風描いて、自分がその後ろにいる風にしたりとか、この辺に水の流れを書いておいて、全部こう塗って自分がそこでポーズとったりとか…
描いた絵の中に入って写真を撮れるのもVRならではの楽しみですね。
そうですね。例えば背景が寂しいなってときに花を描くこともできる。ここに描くと空間用ですよね。見てる人用ですよね。写真に撮ってしまうとほとんど変わらないというか。
そうですよね。VRでのお絵かきだから、しかも壁に描いてるんじゃなくて人が実際にいる現場で描いてるから、この床から生えてるものとかもすぐ近くで目の当たりにできますもんね。
ちょっと見てて思ったんですけど、まっすぐの線で構成してることってあんまりないですね見た感じ。曲線を描いてる方が多くて。QvPen特有の何か描き方みたいなのってあるんですか?
右手の描きやすいラインっていうのを意識してますね。
その描きやすい方向に自分を持っていって、これは描きやすい線。これも描きやすい線。っていう感じに。
それとはまた別の理由なんですけど、生物の体って直線よりは曲線の方が多いと思うんですよね。らせん構造っていうか、骨も真っすぐじゃなくてちょっと曲がってて、筋肉もらせん的になっていたりしますし。
なので構造物のビルを描くとかじゃなく、生物を描くときは、曲線を多用します。
自分は鯉とか龍とかの「和」の絵をよく描きます。
彫師さんと交流があって、そのときに影響を受けて、龍とか鯉とか入れ墨の絵をよく見るようになって。
そこで気づいたのが、和彫の刺青は余白を埋めていく傾向の作品が多いんですよね。埋める時に、雲とか水とかで埋めていったりとか。
私の絵も空気感を出したいときとかは、そういった雲や水の表現のため曲線を多用します。
平面絵と立体絵
Gunberryさんリアルでも絵を描いていらっしゃるんですか?
そうですね。鉛筆と墨を使いますね。デジタルは使わないです。
イメージとして、彫師さんが描いているものに近い感じですかね。なのでみんなが描いているような、デフォルメして可愛い女の子描くじゃないですか、ああいうのはちょっと苦手ですね。
リアルの方はアナログで描かれてるってことだったんで、もしかしてQvPenのイラスト描きって、デジタルよりはアナログのそれに近いんすかね?
私の感覚としてはまさにそんな感じですね。
2D絵を主に描かれてた感じだったと思うんですけど、立体絵もできるんですよね?
できますね。3Dのほうが描きやすい場面もありますね
あまり写真は撮らないですけど、描きますよ。
私の場合は、3D絵はあまり描き込まない方ですが、一方の2D絵は絵自体を大きく描くし、かなり描き込み続けられるから、こだわった絵は何時間もかかることもあります。
私の3D絵は大きく空中スケッチのように描いてあまり塗りはないので、いまのところ針金アートのような感じなんですよね。塗るのが億劫で。
PNGミュージアム
製作には、数時間以上かかることもあり、それに加えインスタンスの限界(時間経過やQvPenの大量描写など)と戦うことも。
この絵はPNGミュージアムに向けて、仕込んだんですけど…
だいぶこれでも手を抜いているんですよ。
っていうのはずっと絵を描いていると自分の動きがガクガクになってきちゃって、限界がくる時があるんです。
インスタンス人数や滞在時間や描きこみ量などの条件が関係あるかとは思うんですが、それでもういいかって感じで、70~80%くらいで終わりになった絵も多いです。
これもQvPenで?すごい!
龍本体の鱗を塗るときは、ちゃんと全部1枚1枚全部塗ってあって全部グラデーション入ってるんですよ。
鱗も本当は1枚1枚塗ってる色と縁取りしてる色と違うんですけど、グラデーションの法則は描き始めが濃くて描き終わりが薄いんです。これは一定なんですね。
最後に、全部の鱗に縁取りにもう1個薄い色を入れています。
やっぱり、このワールドのペンの使い方ありきなんすね、この絵って。
そうですね。虹色ペンの法則は、最後が赤になることだと思うので、線を描けば描くほどわかりやすいんですけど、最後が赤になる。最初は紫。だから、横に同じ短い線で描いてもほぼ同じ。
これがグラデーションペンの使い方として知っておくと使えます。
こういう和の絵ってある程度構図が決まってて。波は3Dにして、この辺は自分が入れるように…といった感じに。
本当はこの絵ももっと全部均等に描けたんですけど、ちょっとタイムリミットが来て描けなかった…ワールドのインスタンスの限界が来て。
本来なら、桜吹雪が散る予定だったんです。インスタンスの限界で諦めてしまったこの絵は完成度として3分の2ぐらいです。
カメラ撮影への憧れ
スペースに制限がないとこんなに面白くなるんだなぁ。立体絵、楽しそうですね。
そうですね。これはちょっと本当に異様なドラゴンになっちゃったな。ハリーポッター序盤に出てくるような。
描いた絵の動画とか撮りたいなぁとは思うんですけども。
実現するかわからないんですけど、動画撮りながら周りをぐるっと回って、立体で全部見えるようにして…
このワールドだとちょっと難しいんですよね。線が細いし、迫力が出ないので。
やるとしたら、暗いワールドでこのペンの3倍の太さぐらいあるワールドを見つけてやりたいですね。
今ここで多分絵は描けるんですけど、動画を撮る技術というか、カメラワークとかが私はわからないので、ちょっとためらってるというか駄作になってしまうかも知れない。
カメラワークが詳しい人にもう丸ごとおまかせしちゃえば、なんかいいものできそうですよね。
これを撮ってくれる人がいたら、とても面白そう!
透明アバターを着て、カメラを外に持って、回って撮ってるみたいな。
そういうのを入れながらこれで全体像を撮って、最後ちっちゃめのアバターで低めのラインからこう撮っていったら、多分面白いのになるんじゃないのかなとは思うんですけど…
Gunberryさんの回りでQvPen絵ブーム?
僕の身内にも描いてる方ちょいちょいいて、ちょっとしたプチブーム感があるように思います。ブームというかなんだろう。いち趣味として成り立つというか。
実際にそこに物があるということをイメージすれば、そんなに難しいことではないと思います。やったことないからか、何となくできないと思い込んでる方もいらっしゃると思うので。
多分、実際に手を動かしてやってみると、自分が想像してたより描くことができるし、何か一つの作品を仕上げたことそのものが嬉しいと感じるんじゃないかなと私は思ってます。
だからぜひまず試しでやってみてほしいなという気持ちはちょっとあります。
他に描かれている方もいらっしゃって、その一部を挙げますと青酸ペロさんとからうやさんとか、とても自由に創造的に描いてらっしゃるので、このお二人の作品も好きなんですよね。
おわりに
VRChatという、仮想空間に絵を描くGunberryさんのインタビューでした。
QvPenの色・グラデーション、ワールドの雰囲気などによって描ける絵も大きく変わり、その時々により使い分けているそうです。時にはインスタンスの限界に挑むことも。
Japan Talk Roomに行けば、そんなこだわりの詰まったGunberryさんの絵が見られるのかも?
QvPenでのお絵描き、一見難しそうには見えますがチャレンジして何かを描いてみてもいいですね。
取材後、絵を描く過程の動画を撮っていただきました。
タイムラプスでどんどんと出来上がっていく様子は圧巻です。
Gunberryさんって、VRChat始めていつからこの絵描きを始めたんですか?