これからのVR社会ってどうなるの?『ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記』レビュー


「VRには無限の未来が待っている!」こんなことを思ったことはありませんか?

いろんなワールドを旅したり、ゲームやイベントで盛り上がったり、フレンド同士の団らんを楽しんだり…なんでも出来ちゃうVR生活には、まさしく無限の可能性があると思います。

とはいえ、VRは良くも悪くも可能性が広すぎる分野です。どんな未来が待っているのか具体的に想像がつきにくい方も多いと思います。

そこで今回ご紹介するのはGOROman氏著の『ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記』という本です。

VRはどういう未来を切り開くのか、社会にどんな変化をもたらすのか。元Oculus JapanリーダーのGOROman氏がさまざまな疑問を分かりやすく解説するイチオシ本です。

また、本書の改訂にあたってウイルス社会を取り巻く話題が追記されており、より現実に足が付いている内容になっています。

本書の序章ではVR活用例がいくつか紹介されています。カラー写真も掲載されており、ワクワクした気持ちで本編の中に入れると思います。

VR界最前線に立ってきた男、GOROman氏の半生

さて、本書の前半部分にあたる第1章と第2章では、筆者であるGOROman氏の幼少期からOculus Japan退社までの自伝が書かれています。

レトロPCと出会った幼少時代、パソコン通信やインターネットに青春をを燃やした学生時代、そしてVRとパルマー氏(元Oculus社CEO)との出会った時のことが詳細に描かれています。

VRと出会ったときの衝撃について筆者は、パソ通やネットと同じくらい「脳天に「ビビビ!」と電撃が走るような直感的な感覚」を覚えたと記しています。

本書の約半分に渡って展開される自伝ですが、それだけ筆者がVRに人生を懸けているということが十分に伝わる内容でした。パルマー氏の人柄が分かる後半部分はとくに興味深かったです。

少なくとも、この自伝から「ブームだからなんとなく便乗してみた」というレベルでないことが伝わりました。

VRがつくる未来って、どんなミライだ!?

VRミライの疑問、お答えします。

第4章~第5章では、いよいよ本格的にVRの普及や発展に向けた議論が展開されます。本書のメインコンテンツと言えるでしょう。Q&A方式でテンポよく読み進められます。

VRC民の方は「いつでもどこでも色んな所へ誰とでも行ける」という感覚を肌で体感している方が多いと思います。この感覚がもし一般社会の常識になったら、社会はどう変化するでしょうか?

働き方はどう変わるのか?どんなエンタメがブームになるのか?そしてVR国家も誕生するのか…?

個人的に一番新鮮だったアイディアは「音」の臨場感の重要さです。視覚が注目されがちなVRですが、音が加わることでより没入感が加わるということです。

例えば、仮にフェラーリの公式ワールドに行ったことを考えてみましょう。高品質な自動車のモデルが展示されているのは容易に想像できます。そこでさらに胸に響くエンジン音を体験できたらどうでしょう?また、ドアを閉めるときに「ボフッ」と高級感ある音が鳴ったら?単にモデルが置いてあるよりもずっと「本物のフェラーリに触れている」感が増すと思います。
これをフェラーリ以外の製品に置き換えれば、いろんな企業のオンライン販売が発達することでしょう。

この章では筆者の未来予想図が鮮明に描かれています。読んでいるとこちらのイマジネーションもどんどん刺激され、個人的に本書で一番おもしろい部分でした。先程のフェラーリの例え話もこの章にインスパイアを受けてぼくが書いてみたものです。

どうすればVRが社会に普及するのか!?(VR元年は終わるのか!?)

話は前後しますが、第3章や第4章の一部では、VRが一般に普及するにはまだ便利さと快適さが足りないということにも触れられています。

思えばVRはかなり不便な道具です。高い要求PCスペック、重たいHMD、手間のかかるキーボード入力、長い読み込み時間…。そもそもスマホのような生活必需品なのか…。VRに慣れていると忘れがちですが、社会にVRが普及するにはまだまだハードルが高い時代かもしれません。

そこで本書では、スタンドアローンで起動する初代Quest(注:本書の発売日はQuest2発売前)について、VR普及に向けた「ターニングポイント」として紹介されています。

そう考えると、その後発売された発売されたOculus Quest2は、よりVR参入へのハードルを下げた画期的な製品だったと思います。

このままVR機器が小型化・高性能化して24時間VRを付けられるようになったら、全人類VR社会なんて日が来るかもしれません。

まとめ:あなたはどんな「ミライ」を想像しますか?

『ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記』は、VR社会の未来について想像力が刺激される一冊でした。

全体の文量もほどほどで専門知識もほとんどいらないので、サクサク読めると思います。

VRChatなどでの生活に慣れた方でも読み応えのある本になっています。むしろ、VR生活を肌で体感している方にこそオススメの一冊といえるでしょう。

この記事で少しでも本書に興味を抱いていただけたら幸いです。

あなたが思い描くVRのミライを、誰かと語り合いませんか?