トラスク、『Re˸collection2 – リコレクション2 -』について語る
リアルとバーチャルの垣根を超えて、数々の実績を堂々と重ねゆく、偉大な先達に教わること三度。
私は「バーチャルフォトグラファーから写真技術を教わる者」として、連載記事の登場人物となっていた。
いまから遡ること4ヶ月、連載への取材を前に私は『Re˸collection2』というワールドを訪れていた。
第2回の記事でゲストとして指導をしてくださったrocksuchさんによる制作のVRフォトギャラリーだ。
指導を受ける前と後とで、私にどんな変化が生まれるか。それを確認するための鑑賞である。
絞りやシャッタースピードといった、カメラの構造的知識は頭の中にあった。
三分割法といった定番の構図がどんな効果を持つのかも理解はしていた。
しかしながら、数多く並ぶ写真を見ても私には何をどう評価すべきなのかがわからなかった。
もちろん「きれいな写真だな」といったような感想を持たなかったわけではない。
それでも気がつけば、全てのフロアを素早く眺め過ぎてしまっていた。
鑑賞しながら思い出したのは、友人が連れ出してくれた写真展での出来事。
やはり同じように、ほとんどの写真にあまり興味を惹かれなかった。
正確にいえば、何が良いのかということがまるで分からなかった。
しかし、カメラに詳しく写真が好きな友人は、色々な写真を長い時間かけて感動しながら観ていた。
いったいそこにはどんな違いがあったのだろう?
そして今、全ての取材を終え、記事が出され、私自身が撮影した写真を、尊敬すべき三者に添削して頂いたのち、
改めてこの『Re˸collection2』の世界に立っている。
一度は観ている作品。結局、何の変化もなかったら…… そんな不安を抱きながらギャラリーを進む。
私は戸惑った。1枚目にして、心が動いたのだ。
ノイズが乗っている── まずそう思った。それが意図的なものであることを瞬時に理解できた。
写真に映る人物が抱えているカメラには僅かなボケがあることに気づいた。
背景の割合は少なく、光を透したカーテンらしきものが見えるに過ぎなかったが、
それだけでその部屋の空間が想像できるような気がした。
薄暗い雰囲気の中に、実ははっきりとハイライトが乗せられている意図が伝わってきた。
そこには試行錯誤の深さがあった。
ほぼすべての写真に、新たな発見ができていた。
多くの感動は、新たに知った技術的なことへの気付きであると、ひとことにしてしまえばそんなものなのかもしれない。
ただ、3名の先生から教わったことは、カメラの基礎知識というよりも、撮影への向き合い方が主立っていた。
そのどれもが納得を以て胸に落ちる。技術も、観察も、思索も、試行も、調整も、経験も、その一枚の中に込められることを理解できた。
私自身には、まだそのどれもが不足しているけれども、教わることによって
「そうした要素が存在する」と知れただけでも大きな出来事だったのだと言ってよい。
添削を受けるために試行錯誤して撮影し、はじめてドットレベルで修正を打ち込み、
提出する写真の選定に悩み、緊張して評価を待った。おそらく出来栄えとしては未熟だったに違いない。
それでも、その実践を通ったからこそ、これまででは取らない視点で写真を見るようになったのだと思う。
正直にいえば、指導を受けてから今に至るまで、むしろ撮影時は更に悩んでしまう時間が増えた。
VRChatで写真を取ると言えば、イベントの集合写真とか、とりあえず記念で取っておく程度のものだった。
そこにあるものをただ写すだけの、何の変哲もない写真。それもひとつの大切な思い出なのだけれど。
それまでは誰のために撮ったわけでもなく、自分のためという意識すらも薄かった。
添削へ臨むべく「誰のために」という意識が生まれ、「自分のために」やるという感情との狭間を行き来した。
他人へ見せることへの気恥ずかしさや滑稽さ、それでもできれば強い印象を受けさせたいという欲求。
構図に縛られすぎてはいけないという逡巡、効果的な道具は活用すべしとの思い切り。
掴めない距離感、光との格闘、後から調整できるだろうという誘惑と、ここからどう良く変化させてやろうかという面白さ。
ああ、これが写真を撮る時の楽しさなのかもしれないと思えた。
私が今、撮影で迷ってしまうのはそのほとんどが未熟さ故のものであることは間違いないが、
悩みとともに撮影することそれ自体が価値的なのだと感じられるようになった。
その時にとりあえず撮るという行為だったものが、立体的になった。
周囲を観察し歩き回り、完成図を想像しながら準備をすすめる前段階。
様々な角度や場面、構図、ポーズなどをひたすら試行錯誤する撮影の現段階。
生まれる不都合を直し、より魅力を際立たせる知恵と工夫の後段階。
そのどれもが写真撮影という行為であって、私のような初心者でも挑めるもの。
時間的にも、技術的にも、思想的にも、その平面には重ねられていたのだ。
『Re˸collection2』をゆっくりと一周して上から眺めた時、
その回廊がカメラレンズの形を模していることに、私はようやく気がついた。
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