「ポピ横」「メゾン荘」コラボコースの『ゆるふわボックスカートレース』参戦ッ!こだわりのコースを詳しく紹介!

それっぽい箱を身に着けて、ひたすら坂を転がっていくレース(?)イベントの『ゆるふわボックスカートレース』が2024年3月3日に開催されました。※開催概要は過去の告知記事をご覧ください。

細かい動作調整が可能で、『VRChat』上の実装でありながら本格的なドライビング体験を構築できる『CVS2(CHIKUWA VEHICLE SYSTEM 2)』を使用したレースですが、今回は敢えてそこからエンジン機構を外してひたすら坂を転がっていくというもの。

その代わりに外装部分を参加者が自作し、アバターのボディ部分に取り付けて、それっぽい車としてコースを進んでいくこととなります。もしかしたら「SOAPBOXレース」と聞いてピンとくる方もいるかもしれません。

『ゆるふわボックスカートレース』には25組が出場し、筆者も個人として参加しました。あくまでも車両としてゲーム処理されるのはCVS2で用意した車体のみなので、参加者が用意したボディ部分は多少大きかったりしても問題ありません。

そして、今回のコースは『VRChat』でも特に有名な「ポピ横」と「メゾン荘」とコラボし、この日のために特別につくられたワールドです。本番ではWithVRによる配信が行われていましたが、イベントのみの登場というにはもったいないこだわりが詰まっていましたので、本稿では製作者によるコース解説と併せてレース結果をお伝えします。

アバターアップロードに挑むまめひなたを追うストーリーコース!

面白さと合理さを併せ持った「設計」が光る

主催のDJ_DAIさん(左)とコース設計のけーけー(右)さん

大会運営と配信をも視野にいれたワールドは、走行コースのスタート地点と司会の部屋が合わさった「メゾン荘」からはじまります。本家は201号室ですが、ゲスト達が賑わう部屋は404号室という設定があったようです。実際に、スタート位置は建物の4階の位置にあります。

初めての試みだらけのイベントなので、主催がいつでも駆けつけられるようにしたギミックがこちら。ゲスト達が囲うコタツのど真ん中にしたのは、配信のインパクトはもちろん、ゲスト達への連絡の確実さや、いざという場合に直接スタートボタンを押してしまえるという、実は理にかなった配置だったようです。

スタートボタンが押されると、404号室(つまり本来存在しないNotFoundなお部屋)から、コラボ元・本来の201号室へ一気に落下しレースがスタートします。メゾン荘とのコラボを決めた時、スタート位置とすることは想定していたようですが、この形になるまでは色々と悩んだそうです。

404号室の真下の部屋をよくみると、DJ_DAIさん用のギミックがあったりする
スタート直後にあるポールはリアルと同様にきちんと曲がる!!

初心者を意識した配慮はスタート位置から細部に込められている

けーけーさんによれば、VR世界の中であったとしても「物理的に無理のある表現」にはしたくないという思いがあるそうです。スタート位置のスロープには柱が配置されており、こだわりが感じられます。

また、このスロープはスタート直後から落下してしまいそうですが、手前のポール部分を除けば実は透明なコライダーが壁のように配置されていて、落下しないようにしています。

ただ配置されているだけではない、走りやすさを与えるためのバス
障害物として配置されている車の先端のコライダーは甘めに設定されていた

スタート切って加速すると、すぐにS字カーブが待ち受けています。メゾン荘周辺の駐車場に似合うゆるふわカーがその障害となるわけですが、実はS字のように見えて、その先端にはコライダーが敢えて設定されていませんでした。

気軽に走れるというコンセプトを持つイベントから、そもそもCVS2を触れたことがなかったり、レースに不慣れな人が参加する可能性があります。スタート直後から詰まってしまうのは配信としても盛り上がりにくいという懸念があり、仮にうまくS字カーブを切れなくても実は走行できてしまうように設計していたようです。

また、手前に配置されている大型バスには無意識に外側からのライン取りをするような狙いがあるとのことでした。ドライバーの視点ではスタート直後から数秒の出来事となる部分ですが、それだけでもたくさんの細かな配慮が散りばめられていたのです。

Unityの世界へ飛び出そう!

実はゲーミングPCに突入していた

S字を過ぎると待っているのはゲーミングPCと、インストールされたCreatorCompanion、そしてUnityでした。レース中や配信ではなかなか気づけませんでしたが、ここからアバターアップロードを開始するという道のりだったというわけです。

PCゲートを通り抜けると奥にはCreatorCompanionの起動画面が。道中にはUnityのカメラや証明のアイコンが表示されていましたが、これは見ためだけではなくコース上にも実際に配置されており、配信時のライブカメラとしても使われていました。

アバターを購入した演出が続きます。配信ではちょうどカメラの切り替わり地点でもあったことから、気づきにくかったかもしれません。

いよいよアバターセットアップに挑戦だ!!とコースの視界も開けたところで、大きなUnity画面を操作するまめひなたが登場。楽しそうな作業風景ですが……

全然うまくいかない作業にご立腹。イベントではコースを走る出場者もここを通過する時には、ピンク色の「マテリアルエラー」状態で描写される演出となっていました。

けーけーさんによると、このピンク色は「正しく処理できないシェーダー」を配置して、実際にエラーを起こさせているそうです。この色をみるだけで恐怖におののくVRChatプレイヤーは多いとか、多くないとか……。

この区間では、アップロードの準備を整えたまめひなたに襲われ(?)て最終カーブを迎えます。ここは「加速板(コース上の青いライン)」を踏んですぐに、登り坂のヘアピンカーブとなっているので、コースの中で最もハンドリング能力を求められる場面でした。

フェンスにぶつかる選手はほとんどいませんでしたが、車体にエンジンが搭載されていないので、ここでのハンドリングで減速してしまうとタイムに大きな差を生んでしまうこととなります。

VRChatへログインして「ポピ横」へ行こう!

ヘアピンを超えればアバターのアップロードのみ!SDKのアップロード画面を突き抜け、そのままコースはVRヘッドセットに飛び込んでいきます。

VRChatのログイン風景を模したコースを進み、ポピー横丁へJoinする演出。ここでは、いつものBGMも流れていました。まめひなたが動作するギミックもそうでしたが、CVS2の車両が一定の場所を通過することでトリガーとなるように配置されています。

トンネルを抜けるとそこは……飲み屋街でした。

いよいよラストのポピ横エリア。細めの90度カーブを進めば、あとはゴールまで一直線です。

爆発オチでゴールし終了!!!

ちょうどぶつかる部分には特定のお店がなかったということもあり、爆発させやすかったとかなんとか……ともかく!レースイベントとしてはたくさんの仕掛けがあり、VRChatだからこそのネタもありの、楽しいハチャメチャなコースでした。

「ポピ横」にも丁寧な配慮あり!?コース制作までの苦悩も

ラストの一直線は建物に車両が引っかからないよう、透明なコライダーで素直な直線として構成されています。また、コース上のモデルは丁寧にテクスチャを軽量化したり、提灯などのライティングをキレイに整えたりと、ガヤガヤした印象のポピ横ですが、様々な工夫が入っています。

本来の「ポピ横」入口にあたる部分はコースのために壁が存在しない
急に閑静な住宅街へと暗くなっていく道はむしろリアルさすら感じられる

「ポピ横」「メゾン荘」とコラボしたコースの制作はどのように進められたのでしょうか?

それぞれの製作者と元々の繋がりがあったとはいえ、ただそのまま借りてくるわけにはいかないはずです。主催のDJ_DAIさんによれば、お話を持ちかけた際に快くデータを提供していただいたとしつつも、細かい権利関係のチェックは外せない、とのこと。

ポピー横丁は一般に販売されている住宅風モデルアセットが使用されていたこともあり、今回のコース制作においては購入が必要だったことや、はっきりと文字が見える看板をどのように外していくか、といった細かい悩みをひとつひとつクリアしながら丁寧に制作を進められたようです。

雰囲気を強化するため、アセットのテクスチャに錆び風の加工が施されている
けーけーさんはライティングへ特にこだわりを入れているようだ

レース参加者のデザインなども「配信事故」を防ぐべく、様々にチェックを挟んでいました。結果として、全ての参加者がリタイアなく完走し、発生したトラブルも「配信映え」として面白さに昇華していました。

個性しかない!?カートデザインたち

選手の中には参加を決めてから初めてBlenderを触ったというツワモノも

『ゆるふわボックスカートレース』は、ゴールまでのタイムを競うレースではありますが、むしろ「モデル」こそが主役だったりします。

筆者はモデリングの知識がないので、友人が作成していたボートのモデルを借りて出場しました。参加してみると、本格的なレースカーとしか思えない精巧なデザインから、かわいらしいミニカーが実はダンボール製であるかのように整えられているものなど、一度のレースだけに登場させるにはもったいない程のクオリティだったと思います。

ギャグに振り切ったものや、集団参加のインパクトなど、どの走者も見どころが強く、レースとしては短めでありながら濃密な展開でした。

入賞者とゲストの面々

『ゆるふわボックスカートレース』は、レースとしての手軽さ、参加のしやすさを確保し、参加して楽しい、見て面白いイベントでした。ドライビングテクニックでタイムを詰めるのは自信がない……と感じていた筆者も、これならばと飛び込むことができ、とても素晴らしい機会をいただけたと思います。

コース横の応援席でワチャワチャしていたティグリばすのみなさん(4人1組での参加)

手軽に本格的なドライブを楽しめる!CRAに参加しよう!

CRAではCVS2を活用し、オリジナルのコースを制作したり、レーシングイベントを開催しています。WithVRとのコラボレーションでは、メタリンピックの種目として採用されるなど、その実績も折り紙付きです。

オリジナルのコースワールドは時期により変動がありますので、まずはCRAのDiscordへ参加しましょう!!詳細は主催のDJ_DAIさんのXアカウントをご確認ください。

配信・撮影協力

WithVR(X: @WithVR_official)

仮想空間を専門とする映像制作プロダクション。
独自の配信以外にも、幅広いコミュニティとのつながりを持ち、協力体制を築きながら配信支援に取り組んでいる。

主催団体

CRA[Cucumber Rally Association]
(主催X: @DJ_DAI_VR)

CVS2[CHIKUWA VEHICLE SYSTEM2]が導入されたワールドを中心に、レースイベントや走行会を通して、VRChatにおけるモータースポーツの普及活動を行っている。