去る7月23日から27日にかけて、石川県金沢市にある金沢21世紀美術館においてバーチャルフォトの展覧会である「Virtual Photography Showcase 2025(VPS 2025)」が開催されました。

目次
『Virtual Photography Showcase(VPS)』とは?
VPSは『VRChat』を始めとしたソーシャルVRの世界で撮影された写真(バーチャルフォト)を物理空間(フィジカル)で展示するプロジェクトであり、第一回は2024年春に東京都恵比寿にある弘重ギャラリーで開催されました。
会場になった『金沢21世紀美術館』とは?
今回VPSが開催されたのは、石川県金沢市にある『金沢21世紀美術館』。

現代美術を収集・展示する美術館であると同時に地域に開かれた美術館としても知られており、2024年度の入場者数は約190万人と東京都美術館(同約199万人)とほぼ同程度。国内でも有数の年間入場者数が多い美術館となっています。

そんな金沢21世紀美術館で、バーチャルフォトの展覧会であるVPSが開催されたのです。

展示会の様子
展示内容は大きく分けて・一般公募作品・招待作家による展示・協賛の大丸松坂屋百貨店による「Daimaru Matsuzakaya Virtual Photo Awards vol.2」の展示 の3つに分かれていました。その様子を紹介します。
一般公募作品(“LaV作戦”参加作品)
最初の展示は「バーチャルフォトとは何か?どんな種類があるのか?」を紹介したコーナー。


LaV作戦(Operation Look at Virtual)と銘打って募集した作品を「バーチャルフォトって何?」「ワールド風景」「イベント」「自撮り」「アート」といったカテゴリごとにまとめ、ソーシャルVRを知らない人にもわかりやすく二か国語で説明した文章と共に展示されていました。


招待作家による展示
次の展示コーナーは招待作家8名による展示。
VR上でフォトグラファー(写真家)として活動している人のみならず、SNSなどでPhotoshopについての発信を行っているPapaさんや「COMPLEX 7」などのVRChat内ワールドの製作者のFinsさんなど多方面で活躍している作家たちが招待。作家それぞれの個性を強く感じる展示となっていました。
ここからは、招待作家さんの展示作品を紹介していきます。(作品写真の提供:AmaNekoさん)


左:ecochinさん。「和紙×バーチャルフォト」をテーマにしており、光のにじみや柔らかさが特徴的でした。
右:BISさん。チェキフィルムで現像されており、小ささと余白をコンセプトとした作品群となっていました。


左:chochiさん。ぼかしを効果的に使用した作品が多く、独特の空気感を感じました。
右:Maido39さん。フィジカルの写真とバーチャルの人物を組み合わせた写真はお互いの世界の美しさを引き立てているようでした。


左:TATAMIさん。普段『VRChat』内でファッション特化の写真や動画の撮影を行っているというTATAMIさんの撮る衣服の質感の高さには目を見張るものがありました。
右:papaさん。風景が映りこんでいる瞳が大きく描かれた三枚の作品からは、それぞれの人物の生命感や物語を感じるようでした。


左:Kaerunさん。音楽イベントを中心とした多くの作品からは、『VRChat』の世界で活動する人々の活気や躍動感が伝わってくるようでした。
右:Finsさん。8枚の写真全てに同じ3匹の猫が登場しており、幻想的かつ緻密な世界を冒険する猫たちの物語を感じる作品群となっていました。
Daimaru Matsuzakaya Virtual Photo Awards vol.2
最後の展示は、前回のVPSに引き続き同時開催された『Daimaru Matsuzakaya Virtual Photo Awards vol.2』。


「epoch ~時代を彩る一枚~」をテーマに募集した作品から10作品の入選作品が展示されていました。 “LaV作戦”参加作品の展示コーナーを見ている時にも感じましたが、VRユーザーの皆さんの撮った写真のクオリティの高さに驚かされます……

(※入賞作品のうち、VPS招待作家及び協賛の株式会社ホビージャパンが選出した「審査員特別賞」の5作品。入賞作品は『VRChat』ワールド『ART Frame -Daimaru Matsuzakaya-』でも見ることが出来ます)
バーチャルフォト体験コーナーも!
VPSでは展示のほか、公式図録などの物販やバーチャルフォト体験コーナーも行われていました。

取材時(7月27日)は、スタッフの案内の元(VPSの招待作家である)Finsさんの最新作である『Paradisa』のワールド内を自由に散策し、写真撮影を体験することが出来ました。
撮影した写真は体験コーナーの横にある『ホロアートフレーム』で見ることが出来るようになっていました。


『ホロアートフレーム』はVPSに物品協賛している株式会社Gugenkaの開発中モニターで、通常の液晶モニターとは異なった方式で出力しており油絵のような印象と質感となって出力されます。パソコン上で撮影したばかりの写真が液晶モニターとは全く違った質感の画像となって出力されるのは面白い体験でした。
主催者にお話を伺ってきました
今回のVPSについて、主催者であり自身もバーチャルフォトグラファーとして活動されているAmaNekoさんにお話を伺ってきました。
――VPSを開催するに至ったきっかけについて改めて教えてください。
――実際に開催しての手ごたえはどのようなものでしたか?

おかげさまで目標よりも多くの人に来ていただけました。それとともに、「この写真はどうやって撮ったの?」といった前向きな感想とか質問も多くありまして、当初想定していたよりも良い反応をいただけたと思っています。
――近年ソーシャルVR関連のイベントが開催される機会が増えていますが、その多くは東京や大阪といった大都市で行われています。今回VPSを地方都市である金沢市で開いたのはどのような理由なのでしょうか。

これまで2023年に個展(『偽物の写真展』)を、2024年にグループ展(VPS 2024)をギャラリーで開催させていただいたのですが、その一方で「バーチャルフォトグラフィーの展覧会を美術館で開きたい」という思いを持っていたんです。今回、金沢21世紀美術館さんの市民ギャラリーに応募させていただき、その思いを実現することが出来ました。
なので、『美術館で開催したくて動いた結果、金沢市で開催させていただく事となった』というのが実際のところですね。
――VPSの今後の目標について教えてください。

実は(『VRChat』の)フレンドと「VPSを10年続けていく」と約束しているんです。色々とお世話になっている方でもあるので、それは守っていきたいなと。美術館での開催も続けていきたいですね。
――最後に、読者に向けてのメッセージなどがありましたら教えてください。

見に来てくれた方、LaV作戦に参加してくれた方、招待作家の皆さん、そして(会場案内や受付などで協力してくれた)有志スタッフの皆さんに感謝したいです。
第一回のVPSを企画した時、最初は僕一人で全部まかなうつもりで動いていたんですが、結局それが不可能なレベルにまで大きくなりまして。なので、協力していただいてる皆さんには本当に感謝したいです。
VPSを振り返って

筆者は参加したイベントの記録や紹介の目的で『VRChat』内で写真を(物理空間以上に)多く撮っていることもあり、VPSの展示作品を興味深く見させていただきました。
被写体である人物やワールドの美しさだけでなく、カメラのさまざまな機能を駆使して撮ったであろう作品は本当にどれも個性的であり、「これは本当に僕の知ってるのと同じVRの世界で撮られた写真なのか……?」と感じた作品も多くありました。そして招待作家の皆さんだけでなくLaV作戦や『Daimaru Matsuzakaya Virtual Photo Awards vol.2』参加作品のクオリティも本当に高く、バーチャルフォトグラフィーの世界のすそ野の広さも感じました。
VPSは、単なるコンピューターグラフィックともフィジカルを写した写真とも違う『バーチャルフォトグラフィー』という表現が(ソーシャルVRに触れたことの無い人たちも含めた)より多くの人に知られるきっかけになろうとしているのを展示から、そして主催のAmaNekoさんのお話から感じました。今後のVPS、そしてバーチャルフォトグラフィーの発展に期待し、注目したいです。
投稿者プロフィール

最新の投稿
イベント・マーケット2025年8月14日第二回は石川県金沢市の『金沢21世紀美術館』で開催。バーチャルフォト展覧会『Virtual Photography Showcase 2025』を見に行ってきました。
VRChatイベント2025年7月21日『RAINDANCE IMMERSIVE 2025』Best Live Performance部門を受賞。人類のルーツを探す音楽の旅「RHYTHMIC ROOT」が7月26日(土)と27日(日)に再公演決定!
エンタメ2025年6月11日【フォロワー1万人&法人化記念】1万秒でどこまで行くことが出来るのか??
VRChat2025年6月7日今週末より開催!イギリス最大規模のインディペンデント映画祭のXR部門“Raindance Immersive 2025″ にノミネートされた日本関連のVR作品を紹介!
バーチャルフォトグラファーとしての活動をしていく中で、他業界に関わる機会があったんです。そこでボーカロイドのイラストを発表している方が物理空間で展示会をしている事を知って、「ボーカロイドのイラストが『ニコニコ動画』の外の世界で発表されるのと同じように、バーチャルフォトグラフィーも『VRChat』以外の世界での展示の機会が設けられれば」と思ったのがきっかけですね。