写真をもっと上手く撮りたい!『VRChat』バーチャルフォトグラファーへの道 ~撮影編~

写真をもっと上手く撮りたい!でも何をすればいいの?みんなは何を考えて撮ってるの??そんな一つ上を目指す方に向けてお送りする連載企画がスタート!フォトグラファーさんをお呼びして、写真で気になるアレコレをお聞きします。

第一回のゲストはBISさんです!

バーチャルフォトグラファー
BIS(@Bismuth833

カメラ片手にどこへでも。写真歴10年超の趣味フォトグラファー。
リアルでの撮影経験を活かし、バーチャルフォトグラファーとしてVRChatで作品を撮り続けている。

「最低限これだけは知っておいてほしい!」という基本的な部分から、撮るときに何を考えているのかなど、一歩先のところまでうかがいました!

(聞き手はトラスク、寝る間をオシムの2名)

最低限身に着けたいのはズームの感覚と距離感!基礎知識について

寝る間をオシム(以下、オ):本日はよろしくお願いします。早速色々伺いたいのですが、まず最初に……最低限これだけは知っておけ!という知識はありますか?BISさんがカメラを始めた時に、何から学んでいったんでしょうか。

BISさん(以下B):私は元々リアルでカメラをやっていたので、VRChatで写真を撮るときにはすでに基本的な知識がついていた状態でした。ただ、リアルもVRChatも大きくは変わらなくて。

ズームの強弱というか……カメラを引いて撮るか、目いっぱいズームして撮るかで表現したいものが変わりますよね。自分が何を撮りたいかによって、ズームの程度を変えると、良い感じに撮れます!

VRChatのデフォルトカメラだと、初期値が結構広角になっているんですが、そうすると画面の端が歪んでしまうので、少しズームして……1/4ぐらいかな。それぐらいで自撮りすると、背景とアバターがバランスよく見せられます。逆にアバターしか撮らない場合はもっとズームする。

トラスク(以下、ト):例えば集合写真などで、みんながカメラを置く位置って意外と近いですよね。もっと引いてズームして撮ると結構よい感じになるってことですかね。

B:そうすると、端の人まで歪まずに入れられるというのはありますね。逆にあえて広角でダイナミックに映したいって時は広角にする事もあるかもしれません。あくまで自分がどう撮りたいかによりますね。

オ:その理屈みたいなのはなんとなく分かるんですが、「この時はこれぐらいの引きでやろう」とか、「ぼかし具合はこれぐらいにして」とか、色々考えることがあると思うんですが、その塩梅はどうやって決めてるんでしょうか?

B:もちろん自分で理論をもってやってる方もいるんでしょうけど、私は完全に感覚でやっていますね。なんかいいやん!てバチッとはまるポイントがあるんですよ。ここ!みたいな。

ト:へぇ~!撮ってる間にパラメータを動かして「これだ」ってやるんでしょうか?

B:私の場合は先に決めてしまいますね。自分で撮りやすい画角があって……さっき言ってたスライダーの1/4のところ、ここで撮ることが多いです。少し広角で撮りたい場合はデフォルトの値ですね。

オ:人によってもスタイルが違うと思いますが、臨機応変にパラメータを触るのではなくて「あらかじめ画角を固定して撮る」というのは結構勇気がもらえる話ですね。それでもいいんだ!って。

B:画角固定でも全然いいと思います。それでも色んなパターンがとれるし。何で変わるかって言うと、カメラと、モデルさんとの距離。距離感で全然表現したいものが変えられます。

ト:画角が固定だと、足で稼ぐみたいな?自分で寄るんですね。

B:そう、足で稼ぐ。リアル撮影だとズームが出来ない単焦点レンズしか使わないので、それが染みついちゃってるんですよね。アバターを小さくしたいときは下がるし、大きく映したいときは近寄る。

写真をどう撮るのか。

オ:ちなみに、構図とかもある程度自分の中で決めてやっている感じなんですか?

B:私の場合はワールドを眺めているとイメージが降ってくるんですよ。これぐらい背景入れて、アバターがここにいたらいいんじゃない?って。完成図があって、それに合わせてカメラを調整する感じです。

オ:逆算してるんだ……

ト:(リアルで)カメラを始められたころから、そういう感じなんですか?それとも経験を重ねるうちに出来るようになっていったんですか?

B:経験の方が大きいかなぁ……。だけどその感覚が強いのが(リアルではなくて)VRChatの方なんですよね。ワールドのどこ見てもきれいだし、イラストの世界にいるみたいじゃないですか。私はイラストも描くので、イラスト描く感じで頭の中にイメージが出来たら撮るみたいな感じです。

ト:ということは、最初からカメラを構えるというよりは、ワールドを観察して「この辺がいいかな」って探す時間があるんですか?

B:そうです!私の場合はまず光を見るんですよ。光がここら辺から来てるじゃないですか。私は逆光が好きなので、光を背にして。ワールドによってはリアル影システムや落ち影システムを使って、影を光源と合わせて調整してから撮るみたいなことをしています。

影から光の向きが把握できる

例えばこのワールドだと、並木道の景色がいいなと思ったので、建物を入れつつ斜めにして、画面の右下に道が続くような構図作っておいて、ここにアバターがいたらいいな、と想像しながら……ギミックの位置や向きを合わせて……

BISさんによってその場で撮影された写真

並木道を歩いてる主人公みたいなイメージで撮っています。今はフォーカスを使ってないんですけど、ちょっとだけボカしても良いかなって感じです。

ト:後ろの建物をぼかす感じですかね。

B:そうそう。ただ、デフォルトカメラだとボケ始めがあまり綺麗じゃないので、気を付けてたいですね。ちょっとカクってなるというか。最近のアプデでボケの範囲が分かるようになったので、アバターと背景の切れ目でボケ始めないように調節しています。

あ、これは言いたいんですが、デフォルトカメラが一番ワールドをそのまま映してくれるんです。光の表現とかは特に。他のカメラアセットだと、映らない光とかあるんで。

オ:あ〜確かにそうですね。ライブとかだと結構ある。

B:特にほわっとした光の表現が全然映らないこともあります。もちろん映るワールドもたくさんあるんですけど。アセットを使って映りが悪いなぁと思った時はデフォルトカメラで撮ることもあります。展示で出したものも、アセット使って「なんか違うなぁ」って言ってデフォルトカメラで撮ったものもあります。

右上の作品がデフォルトカメラで撮影したもの。

オ:試行錯誤の末にデフォルトカメラに戻ってくるっていうのもアツいですね。

B:デフォルトカメラを使えた時って嬉しくて、VRChatってボケに頼っちゃうところがあるので、背景もボカさずに活かして撮ることができると嬉しくなります。

構図は包丁。構図ありきの撮影は面白くない?

B:みんな写真撮る時に、構図から勉強しようとか言いがちじゃないですか。三分割構図(※)が~とか。でもそれを覚えちゃうと、それだけでしか撮れなくなっちゃうんで。

もちろん結果的にそうなることはあると思うんですけど、最初から三分割構図で撮ろうと思うと、創作の面白さが半減してしまう気がするので、あまり言いたくないんです。

実際私も構図から入りまして、三分割構図でばっかり撮ってた時があるんですよね。でもそうすると、それでしか撮れなくなって……日の丸構図(※)に惹かれなくなっちゃったとかあるんですよね。後で見返したときに似たようなものばかりになってしまったという経験があるので、あまり良くなかったなと。

もちろん手段として、「こういう風に見せたいから三分割にするんだ」という思いが明確にあればいいんですけど、構図ありきでやってしまうのは勿体無いと思いますね。

ト:構図はあくまで一つの道具だよと。料理するときに包丁使うのが目的じゃないってことですよね。

B:そういうことです。最終的にお料理作りたいんでしょって。被写体と背景の撮り方のバランスを練習するために三分割で撮ってみるとかはいいんですけどね。グリッド出してみて、三分割のここに出すと確かに綺麗だよね、っていうのがわかると自分の感覚が養えるので。

BISさんにとっての写真とは

B:フォトグラファーさんによってはテーマを決めている方もいるんですが、私はそれができなくてですね……私の場合は言葉にならない“感情”で撮ってる気がしていて。喋りがあまり得意じゃなくて、自分の感情の言語化みたいなのが難しいというか、言葉が上手く見つからないんですよ。

私の写真活動って感情の発散の部分が大きいんですよ。

オ:「このワールド綺麗でした!」の複雑なバージョンみたいな……

B:そうそう。言葉だと「綺麗!」しか言えないんだけど、私がワールドで感じたのはそんな物じゃなくて、でも上手く言えないから写真を見て下さい!!!みたいな。

ト:綺麗だな、いいな、って思って写真撮ることって皆あると思うんですけど、BISさんの作品は一般に比べて強いインパクトがあると思うのですが、何か強調するような撮り方だったりするんでしょうか。

B:私も最初は綺麗だな、から始まって……「めっちゃきれい!」って写真撮ってあとで見返したら「あれ、そんな綺麗じゃなくない?」てなった経験ありませんか?

ト:めっちゃある!「あの時見た物はこんなに小さくないんだよなぁ!」みたいな

B:私もそれはすごい経験していて……上手い見せ方というか、これを人に伝えるにはどうしたらいいかみたいな撮り方というのはやっぱりあって。そこに関しては知識や工夫を入れた部分があります。例えば、夕焼けをとっても、リアルのカメラだとあまり赤く映してくれなかったりとか、実際に受けた印象ほど、景色の色味が鮮やかじゃなかったりすることもあります。そこで自分の見た色や印象に写真を近づけていくのに編集をしたりとかします。

ト:編集って実際の景色に近づけるみたいなイメージだったけど、そんなアプローチもあるんですね。

B:もちろん人それぞれでスタイルや思想があると思うし、やりすぎると皆に受け入れられないとかもあるんですけど、「私はこう感じました」っていう編集もありだと思います。

“写真を見る”のも学び。写真のどこを見てるの?

オ:写真を見る側になった時に、どういうところを見ていますか?ギャラリーや写真展とかに行っても自分は「よく分からないなぁ」で終わるものが、フォトグラファーさんが見ると「すごいね」ってなる写真って結構あると思っていて、視点が違うのかなと。

B:私の場合は、ちゃんと主題に目が行くかとか……上手い人の写真って、本当にちゃんと主題に目が行って、適切な大きさで撮られてたりとかするんですよね。どれくらい被写体や背景を画面に入れるかとかで与える印象も変わってくるので。画面の構成もバランスがいいよねとか。VRChatの場合だとポージングとかシェーダ―とかの技術的なところもみて、工夫してるなとか思う事もあります。

オ:技術や画面構成でこの発想はなかったなとか、凄い綺麗に画面が出来てると「すごいね」ってなる写真ってことなんですかね。

B:そうかも。写真を一杯見てると違いが分かってきますよね。私も最初は何がいい写真か分からなくて……でも色々なものを見るに尽きるのかなって思います。

写真だけ見てればいいってわけじゃなくて、イラストや映画、ポスターやデザインとかからでもいいんですけど、質の良いもの。色んなものからインプットをして、自分でもやってみる。

そうすると、難しいシーンがどういう物かが分かってくると思うんですよ。写真を見てると、「ここからこう撮ったんだよね」ってのが想像できるようになるので、わざわざその場所に行ったんだなとか、タイミング合わせたんだなとかが分かってくるんですよ。そうすると、写真から得られるものが増える。

オ:なるほど!自分の経験が増えることによって、写真一枚から得られる情報がガッて増えるんですね。

B:そうそう。例えばカレンダーの風景写真とか「あ、綺麗だなー」って思うじゃないですか。でもあれ実際に撮ろうと思うとめちゃくちゃ難しくて。この季節のこの時間帯に、この方向から撮りたいけど晴れてないと行けない!とか。そう行った背景とかを考えるとすごいなって思います。

Unsplashより引用

あと、撮り手によって、被写体との距離って全然違うんですよ。この人は被写体に対してすごく近くから撮るなとか、傍観者の立ち位置から撮ってるなとか。その距離感ってなかなかマネできなくて。そういうの見てると楽しいです。

ト:そこも個性が出るんだ……

B:構図はマネできるんですけど、距離感って中々マネできないんですよ。人も物も風景も全て。その人の世界の見方みたいなのが感じられるので……

「写真が上手くなりたい!」からスタートしていこう!

オ:最後に、「写真が上手くなりたい!」と思っている読者に向けたメッセージをお願いします!

B:まず、上手くなりたいと思うのがすごいじゃないですか。自分の写真を見て「もっと上手くなりたい」と思うこと自体が素晴らしいことだと思ってて。そう思えたら、自分で試行錯誤しだすと思うんですよね。好きな写真の真似をしてみたりとか。本当に丸パクリして見るのも良いと思います。これ自分のですってやらない限りは。そうすると発見があったりするし。

VRChatってアバターもワールドも全部が綺麗なので、好きなものがいっぱい転がってると思うんですよ。それをいっぱい見つけて、いっぱい写真を撮って欲しいです!あんまりアドバイスにならないかもですけど……

ト:でも結局はそういうことなんだよってことなんですよね。

B:それで、自分の写真を見て「もっと上手くなりたい」って思う時にはもう目が肥えてるんだから。見る力も育てていかないと、写真って上手くなりようがないから。技術を覚えても良し悪しの判断がつかないと意味がないので。自分の写真に不満点が出てきたってことは、もう階段を登り始めているんですよね。なので苦しみながら突き進んでいただければいいと思います。だけど写真は嫌いにならないでね(笑)

オ:本日はありがとうございました!

写真撮影の基本から始まり、予想外の方向に広がった写真談義となりました。本企画は数回にわたってお届けする予定です!次回もお楽しみに!

撮影ワールド:Carnelian Town – Autumn Day

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寝る間をオシム
寝る間をオシム
ひよっこ投稿者です!