
普段、我々日本人は日常的に食事の前後に「いただきます」「ごちそうさまでした」と言います。
意味としては「料理を作ってくれた人への感謝」と「命に感謝する」こと。
――我々の生きる源、食材となってくれている「命への感謝」。
今までどう繋がってきたのか、これからどう繋がっていくのか……
目次
超時空シアター「499秒 わたしの合体」

今回紹介する大阪・関西万博のパビリオンは、大屋根リング内 シグネチャーゾーンに位置する「いのちめぐる冒険」。
「いのちは合体・変形だ!」
――というコンセプトで作られた、このパビリオンでは、“超時空シアター「499秒 わたしの合体」”・“ANIMA!”・“宇宙の窓”・“無限メタモルフォーゼ”などコンセプトに関連した展示の数々を体験することが出来ます。

パビリオン南側にある球体のモニュメントは、あらゆるいのちに上も下もない生物多様性を「合体・変形」させた象徴であるシンボル「いのち球」。
パビリオンの看板として、来場者たちをお出迎え。後述する「バーチャル万博」の会場にも登場します。
さて、この『いのちめぐる冒険』は、『マクロス』シリーズや『アクエリオン』シリーズで知られる、アニメーション監督/メカニックデザイナー河森正治氏がプロデューサーを務めており、菅野よう子氏がメインコンテンツの音楽を担当。コンテンツには、XR技術や立体音響などの最新技術を活用しています。
中でも今回は“超時空シアター「499秒 わたしの合体」”を体験させていただくことになりました。
どこかで聞き覚えのあるようなSF感を感じさせる語感がするのは気のせい……?
「499秒 わたしの合体」を体験
超時空シアター「499秒 わたしの合体」は、パビリオンのコンセプトである「いのちは合体・変形だ!」を「Meta Quest 3(以下、HMD)」のMRとVRの両方を活用したXR技術で複数の人が同時に体験が可能。
立体音響の技術も利用されており、世界観の音楽も合わさることで深く非日常を感じることが出来ます。

……技術的なことは、このあたりにして。
超時空シアターと名付けられた円柱形の空間で体験することになるのですが、そこに入っただけであるにも関わらず、ポコポコとしたどこか気持ちの良い音が響いていて、まるで深海の中にでも来たかのような感覚に。
すでに生活の中では普段体験し得ない、不思議な臨場感が始まっているように感じました。
今回の冒険をアテンドしてくれる「クルー」と呼ばれる制服姿のスタッフ方の指示に従い、参加者は順番に座っていきます。
その後、背後に置かれているHMDの被り方などを説明され、いよいよ体験の始まりです。

HMDを被ると、「MR空間に浮かぶ水の球を大きくする」という指示がされます。
手を合わせて、ゆっくりと手を放すとぽわわ〜んと手と手の間に水の球が生まれ、それをゆっくりと正面へと押し出すことで、中央にある水の球を成長させていきます。参加者全員の動きが同期しているので、一体感をものすごく感じます。

中央に浮かぶ成長しきった水の球に飛び込むことで冒険がスタートします。
始めは「食物連鎖」がテーマということで、連鎖の下の方に位置するミジンコが登場。
「ミジンコの視点」となり、海の中を漂っていると、魚の群れが……ふとした瞬間にはもう既に魚のカラダの中に。

そうすると次は「魚の視点」へ。
仲間の魚たちが渦を巻いて泳いでいるところに、鳥が水中に現れ、魚たちを食べていきます。
そうしてまた鳥のカラダの中に。そうして今度は「鳥の視点」に……と思いきや、別の鳥に襲われ墜落し死んでしまいました。
ここで終わりかと思いきや、それもまた微生物などの別の生命へと繋がっていく……。

生き物が生き物を食べ、排出。それをまた微生物や植物が栄養する。
人間の呼吸に必要な酸素、不必要な二酸化炭素。逆に植物は二酸化炭素を欲し、酸素を吐き出す。
そんな原子の小さな世界から宇宙の壮大な世界まで、食物連鎖はどこかでつながっている……?

そうしてあっという間に499秒に及ぶ、壮大な冒険が幕を閉じました。
499秒、およそ8分……様々なつながりを見て、まるで地球の歴史を辿ったような体験となりました。
終了後、参加された方たちが退出されいなくなり、後に残されたのは、大昔を生きた先人たちが洞窟に刻んだ壁画のような絵や動物たちの足跡の数々。
現代に生きる私たちまで繋げてくれたのかな……?とも思いながら超時空シアターを後にしました。
体験後のお話
体験後、パビリオン担当の博覧会協会にいくつかのご質問にお答えいただきました!(後日メールでやり取りした内容も含みます)
――超時空シアターをVR技術を使った体験としたのはなぜでしょうか?また、VRだけでなくARも取り入れた理由をお伺いしたいです。
VRは没入感のある映像体験で、生態系に没入する感覚を短時間でリアルに味わっていただくためで、ARは一人での体験ではなく万博でしか味わえない一体感を創造したくて採用しました。
――「超時空シアター」の命名の由来をお伺いしたいです。
観客が時間・場所の制限を超え、未来や過去、地球のさまざまな世界を旅できる劇場というイメージです。

――隣にあるもう一つのコンテンツ「ANIMA!」は直感で分かりやすかったですが、こちらの「499秒 わたしの合体」は大人向けな感じでしたよね。
「ANIMA!」は、また違った角度や体験になっているのですが「いのちめぐる冒険」というテーマは一緒なんですよね。こちらに関しては年齢制限は設けておりません。
「499秒 わたしの合体」では、「いのちは合体・変形だ!」を文字通り体験するにはどうすればいいんだと考えた結果、こちらではVRゴーグルを使う観点から「13歳以上」と制限をかけさせていただいてます。

――これがあと1か月半で終わっちゃうのはすごくもったいないですよね。期間が終わっちゃったら完全に終わりという感じなんですか?
基本的にそうですね。パビリオンは移設などで使えるものはリユースしていくのですが、ここでの「体験」は今だけですね。
プロデューサーの河森正治さんがパビリオンのコンセプトなどについて語る動画もあるので、ぜひご覧ください!
筆者の感想

正確に意図を汲み取れたかの自信はないですが、体験後私は「自分は、人間という食物連鎖の上位にいるものの、人生を全うするまでに何ができるのか……?」と食物連鎖の中に位置する一員として、生き方について思案する機会ともなりました。
普段見ている景色、食べている食べ物。何気なくしている行動がすべて繋がっているんだなと再認識もさせられました。
そして、冒頭にも出した「命への感謝」。
あまりにも私たちにとっては「いただきます」と言うのが日常すぎていて、逆に気にしていなかったんだなと。
食べて食べられ、命がつながっていく。人間だからこそ「リスペクト」の気持ちをもって感謝もできそうな気もします。
体験したXR技術については、普段遊ぶことにしか使っていない私たちにとっては身近な存在であるHMDですが、参加した全員の「水の球」を作り出している姿が正面・左右を見ても連動していて、目の前の視界も気が付いたらARからVRの世界へと体験に没頭する中で、これほどシームレスに現実と仮想が移り変わることが出来るのだと感銘を受けました。
多分、一般の方たちからすればHMDを使うこと自体稀であり、私が感じたこととはまた違った感想を持っているのでしょうか……?

万博に行けない!予約とれなかった!そんな人のために……?

大阪・関西万博のバーチャル会場『バーチャル万博~空飛ぶ夢洲~』でも『いのちめぐる冒険』の世界観を体験することが出来ます……!!



バーチャル会場では、「バーチャルセル」「いのち球」「無限共鳴」の3つのエリアで構成されており、現実のパビリオンとはまた違ったカタチで「いのちめぐる冒険」の世界を体験出来ます!
バーチャル万博は、スマートフォン・PC・Meta Questで体験可能!
アプリのダウンロードはこちらから!
関連リンク
いのちめぐる冒険 – 「LIVE EARTH JOURNEY」Official Website
【河森正治テーマ事業プロデューサー】シグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」超時空シアター「499秒 わたしの合体」主題歌・菅野よう子氏とのコラボを発表 – 万博ニュース
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この度バーチャルライフマガジンでは、2025年日本国際博覧会協会(以下、博覧会協会)や各パビリオンのご厚意で、XRやメタバースに関連するパビリオンを複数取材させていただきました。 当記事で使用している写真は、博覧会協会のご担当者様に許可をいただいたうえで撮影・掲載しています。