突然ですが皆様は、『Windows 3D ピンボール Space Cadet』というゲームをご存知でしょうか?
昔存在していた3Dのピンボールゲームで、Windows95からWindowXPまでのWindowsPCにプリインストールされていました。
年代で考えると1995年~2000年代の半ばの間しか存在していなかったものなので、現在ではこのゲームの存在を知っている方はそう多くないかも知れません。
私はその時代をリアルタイムに青春時代として過ごしていた世代なので、暇なときに遊び倒していたことが思い出深いです。
懐かしのピンボールがVRで復活
今回レビューさせて頂くワールドは、その『3D Pinball – Space Cadet』をVRC上に再現したワールドとなります。
ワールドはとてもシンプル。
真っ黒な背景に、ピンボールとメニューがあるのみ。
右のメニューの『Start Game』を選択するとゲームが開始します。
コントローラーのジャンプボタンでボールを発射、左右のトリガーが左右のフリッパーに対応しています。
ちなみに、メニューの下にある『Mirror』や『Debug Mode』も押してみたのですが、少なくとも私が確認した限りでは特に何も起こりませんでした。
開発中のワールドらしいのでまだ機能が実装されていないのかもしれませんね。(2022/10/23当時)
ひたすら黙々と打っていく
とりあえず、ゲームを開始したのでボールを弾くことにします。
落ちてくるボールを、弾く。
弾かれたボールは何かに激突し、再び重力に従い落ちてくる。
それを再び弾き返す。
その繰り返し。
繰り返し。
繰り返し。
ワールドに聞こえるのはピンボールの稼働音のみ。
ピンボールを続ければ続けるほどに、精神が研ぎ澄まされていくような感覚を覚えます。
ボールの弾かれる音、薄暗い部屋、単調な作業、それらが混じり合って独特の酩酊状態を生み出します。
リラックスした状態でピンボールを打っていると、このピンボールをWindows95で実際に遊んでいた当時の記憶が蘇りはじめ、そしてそれを呼び水にするかのように、これまでの人生で経験した様々なことが頭の中に思い浮かびました。
物心付いた瞬間に親が運転する車の中で目を覚ましたこと、小学校の廊下を歩いていたこと、大切にしていた腕時計がいつの間にか無くなっていたこと、家族全員で一緒に映画を見に行ったこと、自転車で転んだこと、専門学校を卒業して社会人になったこと、初めてVRChatに触れた日のこと、初めてアバターを作ったこと、仲の良かった人と縁が切れてしまったこと、VRC学園の生徒として学んだこと、過去から現在に至るまでのたくさんの楽しかったことや悲しかったこと、その他些末などうでもいいこと。それらの思い出がふわふわと浮かんでは消えていくのです。
記憶というものは不思議ですね。既に過ぎ去った、今この瞬間には存在しないもののはずなのに、脳に焼き付いた電気信号がその当時の映像や音声を何度も再生してくれる。
そういう意味では思い出もVRの一種だと言えるのかも知れません。
脳が感じている電気信号が我々の認識する世界の本質であるならば、今、私がいる、『ピンボールしか存在しない世界』と言うのも確かに現実に存在しているのです。私の脳が『在る』と認識すれば、この奇妙な世界はそこに『在る』のです。
『3D Pinball – Space Cadet』という名前で開闢(かいびゃく)したこの世界では、宇宙がビックバンを起こした結果『ピンボール』と『あなた』だけが生まれました。
そう、この部屋はもはや宇宙そのものであり、そしてこの宇宙には『ピンボール』と『あなた』しか存在しないのです。
ピンボールを続けているうちにあなたという存在はどんどんこのワールドに溶け込み始め、やがてあなたは宇宙と一体化することでしょう。
このワールドの本質はピンボールを遊ぶという行為そのものにあるのではなく、この空間でピンボールを無心で打ち続けることで自分の心と静かに向き合う……そういうところにあるんじゃないかと私は思います。
なんだか観念的な話になってしまいましたが、再現度の高いピンボールが遊べる数少ないワールドでもあるので、ぜひ皆さんも行ってみてください。
個人的には睡眠ワールドとしてもちょうどいいんじゃないかと思っています。
おやすみなさい。
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浜名湖とは
静岡県西部に位置しており、南部は遠州灘に通じている。もとは砂州によって境される淡水湖が1498年の明応地震と高潮により、砂州が決壊し外海と通じ、汽水湖となった。汽水湖には海水と淡水の栄養素が集まるため、魚などの生物が非常に豊富で魚類401種、甲殻類59種、軟体動物84種と全国一の生物が生息しているとの調査報告がある。