VRChatワールドの「終わり」はいつ訪れるのか。タイマーが0になると消えてしまう『This world will be deleted in 24 Hours』

どうもみなさん。ゆーてるです。

VRChatにはユーザーが創作したワールドが数多く存在しますよね。
しかしユーザーによる創作活動が活発で次々と新しいワールドが生まれているからこそ、使われなくなってくるワールドも出てきてしまい、流行り廃りが起こるのは必然なのです。

みなさんも一つくらいは「昔行ってたけど最近は行ってないなぁ」というワールドが思い浮かぶはず。

ふと、ワールドが一体いつから使われなくなっていくのか、ちょっと気になりませんか?

VRChatユーザーのCraziumさんが2月5日に一つ、実験的なワールドを公開しました。

もうすぐ消えるワールドを必死に繋ぎ止めるリセットボタン

ワールドに入るやいなや視界に飛び込むのは巨大な電子タイマー。
目の前の赤いボタンもあってか、まるで時限爆弾のようにも見えます。
ワールドのタイトル通り、この24時間を測るタイマーが「0」になったとき消えてしまうようです。

ワールドに入った直後はいったん画面が暗転し、再度明転したときに
「このタイマーはワールドの終わりに向かって時を刻んでいます」と案内があり、

タイマーについての案内が消えた後に、ワールドの終わりを唯一止める手段が目の前のリセットボタンにあることが提示されます。
このボタンの動作範囲はグローバル、つまりはボタンを押したインスタンスが一箇所でもあれば、全インスタンス共通でワールドタイマーがリセットされるようです。

「このワールドが生き残れた日数」と書かれた石版には英語圏で使用される「正の字」方式でワールドが維持された日数がカウントされていきます。

ワールド全体の雰囲気としては薄暗い霧に包まれて暗く、どこか見捨てられたような、廃れたような物悲しさに満ちています。

このワールドに残された「生活」の跡

このワールドはワールドの「終わり」に向かっていく巨大なタイマーとそれを食い止めるボタンがメインコンテンツなのですが、
ちょっと辺りを探索するとこのワールドでユーザーが生活していたかのような痕跡が次々と見えてきます。

「メールボックス」と刻まれた看板の先には

文字通りメールボックスが。
USEすると中の手紙を出そうとするのですが、果たして今後このボックスに手紙が届くことはあるのでしょうか?

「永遠の花園」と刻まれた看板の先には

ワールドのライティングのせいで暗い色に感じますが、お花畑のような空間が。
揺れ動く花の一つ一つが「まだここは生きているぞ」と訴えかけているようです。

「かつてここで生活していた」という雰囲気をより一層高めたのが、使われなくなった井戸や

キャンプファイアーの痕跡でした。

このワールド建築中の光景でしょうか?
製作者やそのフレンドたちとの交流の様子を伝える写真が思い出のボードかのように掲示されていました。

何らかの事情で途絶えた「未来」

「希望を抱く者の橋」と刻まれた看板の先に向かうと

霧の向こう側を目指すかのような橋がかけられていました・・・・が

橋は向こう岸まで続くことなく途絶えていました。

このワールドを広げていくのに飽きてしまったのでしょうか?
それともリアルでなんらかの事情があって断念せざるを得なかったのでしょうか?
真相は闇の中、いや霧の中に包まれています。

「子ども時代」はいつまで続くんだろうね?

このワールドが見つめる「終わり」はワールドそのものに留まらない。
そう思わせるような空間がありました。

「遊び場」と刻まれた看板の奥には

遊び場を守っているかのように置かれたぬいぐるみたち。

ぬいぐるみが並べられた岩があり、その向こうには公園にあるような遊具が数点設置されていました。
ここはかつて公園だったのかもしれません。
今も形は公園ですが、廃れて人が来なくなった公園は果たして公園足り得るのでしょうか……。

そんな「公園だった場所」の遊具はまだ遊ぶ機能を有しています。
こうして誰かが遊んであげたとき、この場所は一瞬だけ「公園」に戻っていくような気がします。

ブランコに揺られたり、

トランポリンで跳ねてみたり。

ふとすべり台の方に目をやるとなにやら子どもの落書きのようなメモが置いてありました。
ちょっとゆーてるのガバガバ英語力で意訳してみます。

遊び場のルールだ!!!
~この遊び場の王者 ブライス様より~

ルール1:あのドームの上に登ったやつが王者だ!

ルール2:鬼ごっこはやらないぞ!あんなの面白くない!

ルール3:毎週水曜日はドロケーの日!(だから絶対来いよな!)

ルール4:遊んでるとき、そとのぬいぐるみは勝手に動かすなよ!

ルール5:学校なんて行くんじゃねーぞ!

ルール6:「よい子」なんてなるんじゃねーぞ!

意訳ではありますが、文面から悪ガキ丸出しの感じがしてかわいらしいですね。

このメモ書きにはまだ大人を、社会を知らない子どもが色んなものに反抗し、自分たちの目指す生き方を無謀に宣言しているような、純粋な子ども心が描かれていました。

とりあえず王者になってみた。

このドームで登って王者になったり、ドロケーで遊んでいた子どもたちの無邪気で楽しかった日々がそこにはあったのでしょう。
それがいつしか彼らも大人になり、めっきり遊ばなくなってこの公園は廃れてしまったのかもしれません。

しかし彼らは自分の子ども時代を、その象徴たるこの公園だけは絶やすまいと、このワールドに他にない時限爆弾のような物珍しいギミックで人目を引きつつ、それを食い止めるボタンを設置したのでしょうか。
そう思わせるようなオブジェクトやギミックの配置になっています。

2023年11月11日追記ーー
この公園だけは絶やすまい、としているとお話ししましたが、だからこそ
ここまで手を尽くしてなお誰も来なくなれば、いよいよもってそれで終わりということになります。

「思い出にはどうしても残ってほしい」そう執着する心と、「でもいつかは変わっていかないといけないんだ」と前を向いて進みたい心と。
二律背反するこの両者に対して見出した折衷案が、もしかするとこのワールドなのかもしれません。
ーーーーー

VRChatは「大人が子ども時代を取り戻すような場としての機能を有している」と感じてるユーザーもいます。
しかしそうであったとして、それがいつまで続くのか。さすがに永遠、というわけではないのかもしれません。

物事には「終わり」というものがどうしてもあるのです。
ワールドも。ブームも。自分の子ども時代も。

しかし何かの「終わり」を経た後は何かの「始まり」がきっとあります。
そうした一区切りの側面から、「終わり」というものはどこか美しさも有していると思うのです。

このワールドの悲しくも美しい「終わり」を見届けるか、一つの青春の情景を長らく残していく一助となるのか。
その選択肢はこのワールドを訪れたユーザーのみなさんに委ねられています。

願わくば、「終わり」の瞬間までこのワールドが忘れられていないといいですね。

ワールドに遊びに行くのはここから!

後日談:「レインダンス映画祭」の「イマーシブ部門」に選出されました!

イギリスの首都であり、最大の都市ロンドンで開催される国際映画祭「レインダンス映画祭」のVR・AR・MR作品を対象とした「イマーシブ部門」に『This world will be deleted in 24 Hours』がノミネートされました!

世界中から観光客が訪れるほど関心を寄せる「レインダンス映画祭」。
その舞台に上がったことで、あの「かつて公園だった場所」はもうしばらくの間、ブライス少年たちの思い出を留め置いてくれるでしょう。

後日談2:「レインダンス映画祭」期間限定!リセットボタンが機能しない特別ワールドが公開!11月12日午前9時まで

「レインダンス映画祭」のVR・AR・MR作品を対象とした「イマーシブ部門」へのノミネートを記念して、「リセットボタンが機能しない」期間限定ワールドが日本時間の2023年11月11日から公開されています!

「終わり」まで残り17時間を切ったところから、霧が深まり、雨足も強くなっていっています。

ワールドは暗く、キノコがあちこちに生い茂り非常に視認性が悪くなっており
見た目は完全に別物のワールドとなってしまっております。

「放置されている」もののメタファーとしてのキノコは数々の表現でも目の当たりにしますし、
いよいよもって「終わり」に近づいているんだなと感じます。

このキノコすらもいつまで残っているかわかりません。期間中、刻一刻とこのワールドは変貌を遂げていきます。

ワールドの公開が終了する12日の午前8時からは「何か」が起こるようです。

ワールドに遊びに行くのはここから!

皆に祝福されたこのワールドが美しい「終わり」を迎えられますように。

投稿者プロフィール

ゆーてる
ゆーてるバーチャルライフマガジン二代目編集長
楽しいこと、誰かが頑張ってる姿を見ることが大好きなVRライターです!
ぼく自身もVRChat上でいろんな活動してます!

バーチャルの楽しいことをたくさん知ってもらえるようがんばります!