VR演劇『マクベス』の裏側を今こそ振り返る!ぬこぽつ×ゆーてるによる大ボリューム対談!

2022年11月25,26日に本公演を終えたVR演劇『マクベス』。大いに話題になった本作ですが、Boothで配布されているパンフレットの特典版購入者限定で、オーディオコメンタリーが公開されました。
本記事では、脚色/演出担当のぬこぽつさん、そしてマルカム役で出演しバーチャルライフマガジン編集長代理も務めるゆーてるさんによる対談の様子をお届けします!
他では中々聞けないお話が飛び出すかも?赤裸々に話すお二人の様子を是非ご覧下さい!

マクベスについて気になる方はこちらも併せてご覧ください!

来場者数は?

ゆーてる:まずは公演お疲れさまでした。マクベスって最終的に何名来たんだっけ?Youtubeの鑑賞会とかを別インスタンスでやってる層はつかめないのはわかるんだけど、把握できてる範囲では……?

ぬこぽつ:えっと、定員40名を3回開催なので、インスタスに入れたのが120人。配信の同時視聴者は、たしか初日が110人ぐらいで、千秋楽が70ぐらい。約300人以上が観たっていうところなのかな?

ゆーてる:300名かぁ、いやー自分たちのことだけどめちゃめちゃすごいねそれ。

ぬこぽつ:みんなの力でね本当にやりましたね。

題材に『マクベス』を選んだわけ

ゆーてる:今回VR演劇の題材として『マクベス』をやろうとなったのだけど、どういう経緯で選んだの?

ぬこぽつ:ぶっちゃけ言うとみんなそんなに古典に触れてないよね。
ちゃんと内容知っているシェイクスピアの戯曲だと、『マクベス』とか『真夏の夜の夢』とかしかないと思う。『真夏の夜の夢』ってこう踊るというかワーっと動くから、ちょっとわかりづらい。

ゆーてる:玄人向けの作品なのね。

ぬこぽつ:わかりやすさでいうと、まあ勧善懲悪だしマクベスがいいかなみたいな。

ゆーてる:パンフレット見る限りだとそれ以上にマクベスという作品に対しては、思いがあるように見えたけど……

ぬこぽつ:自分が長い間関わってた劇団を知るきっかけになったのが、マクベスを下北沢で100人でやるっていう舞台で。それを見たのがきっかけで、演劇の世界に入ったので、すごく印象に残ってる作品ではある。

オーディション

ゆーてる:マクベスをテーマに選んで、オーディションがさ、これ未だにずっと不思議に思ってるんだけど、婦人みたいな性別固定っぽい役割以外は、みんなマクベスだったじゃん。

あれが本当に不思議で、最初にマクベス役でオーディション受けて、それ以外でまた別の役のオーディションが続くのかなと思ったら、マクベス役として受けたらマルカムになったっていう状況だったんで。

ぬこぽつ:あの時見たかったのは、この状況のマクベスを、あなただったらどうやりますか?っていうところだったので、オーディションの参加者は、みんなマクベス役で受けてもらってる。

役の希望があるのはわかってたけど、それとは別の面で、表現としてどういうことやるのかな?っていうのであれを見ていたので。僕からすると総合的な常識問題みたいな感じで台詞読みしてもらったって感じですね。

ゆーてる:ほあー、じゃあもう結構オーディションの段階からもう構想が練られてて、割とシビアなオーディションだったんだねあれって。

ぬこぽつ:本番がはじまると舞台上で起きる事に関して裏方は何も手が出せないから、あなただったらどういう風にやるの?っていうところを見たくてああいう感じにしたって感じですかね。

ゆーてる:なるほどな、サプライズというかトラブルが起きた状況そのもののインプロをたしかにオーディションではやってたよね。なんか想定外のことが起こったときにどう対処するかっていう。

ぬこぽつ:あと、観てる人は、この人だったらこの役をどう演じるのかを見たいはずで、こういうふうにしてくださいではなくて、◯◯さんならこうするという部分を出せるようした意図はあるんですよね。

ゆーてる:なるほどなあ、オーディションの段階でそんな考えられてたんだなあ、改めてすごいなあ。

ぬこぽつ:リアルで関わってきた演劇のオーディションも同じことやってたんです。
専門家がやってるってことはそのやり方が最適解だから、まんま同じのを出した方が早いし、意図のわかんないまんまお互いやりあうよりも全然いいなと思って。

リアル演劇とVR演劇の違い

ゆーてる:マクベスはVRならではというよりは、VRという空間で実演する劇ではあるけど、劇の要素そのものは限りなくリアルのそれに近かったよね。
だからオーディションも結構リアルのものに寄った内容になったのかなっていう。リアルのノウハウをそのまま持ってこれたというか。

ぬこぽつ:最初からパーティクルとかライブ的なことをやろうっていうのはあんまり頭にはなかったかな。ワールドをどうしようかとという時に、お客さんの居る位置をパーティクルライブのゼロ地点にして、お客さんに透明アバターになってもらって360度劇みたいなのを考えてた。例えばマクベスがダンカンを手にかける時に他の部屋の様子を後ろで再現するみたいな演出プランはあったけど。それだと単純に役者が休む時間がない。なので、リアルの演劇のストレートなやり方を選んだんです。

当初想定されていた360度の舞台

早い段階で、VRならではの演出はナシって判断はしたってところはあるかもしれないですね。

ゆーてる:結構思い切ったよなっていう、まずVRをやる上でVRらしさをどうするかってところは、皆VRでパフォーマンスする人には結構考える所だと思うので。

ぬこぽつ:カソウ舞踏団さんは、VRならではのことやっているけど、特殊能力なワケじゃないですか。あんな綺麗な動きとかできるの。

ゆーてる:そうだね。うん、無限歩行だったりパーティクルを操作しながら、ドローンカメラで自分を撮るなんてそんな脳が4個ありそうだよねもう。

ぬこぽつ:今回のマクベスって、誰かがTwitterで「みんな本当、リアルでやってる演劇経験者みたいだ」って書いてたけど、スタート時点で、一部のメンバーを除いて演劇の「え」の字も知らなかった。
経験を繰り返せば特別になれる。天才じゃない人が努力を重ねる、量を重ねることで、素晴らしいものができるっていうことを証明したかったって気持ちもあったりして。だからやっぱりリアルの演劇みたいに週何回みっちり稽古をやるってのはもうブレずにやりたいな思ってましたね。

ゆーてる:そうだよね、やっぱなにかしらVRの活動では、結構掛け持ちの人が多いのでそことの兼ね合いがありつつ、でもリアルの演劇はもっとそういう風にみっちりやってるんだよってところで結構詰めた感じでやってたもんね。

ぬこぽつ:そうなんですよ。

ゆーてる:結構大きいなと思ってて、結構掛け持ちを前提として、半端って言い方はよくないんだけどそういう感じになってる活動っていくつかあるもんね。

ぬこぽつ:それは色々チャンスがあるから往々にしてしょうがないことかなと思うんだけど、これで確定のスケジュールですよってしちゃう身動き取れなくなるかなと思って、スケジュールを細かく細かく更新したってのはそういう意図もあったりとかはする。

ゆーてる:正直、他にいろいろやってる身としてはこまめなスケジュール更新は超ありがたかった、本当。

ぬこぽつ:ああ、ほんとに?そうなんだやっぱり。

配役について

ゆーてる:あとは配役も気になる。最終的に配役を分けた由来って自分のものしかわかってないんだよね。

ぬこぽつ:オーディション申し込みフォームにTwitterのフォロワー数を書くところがあったけど、あれもリアルの演劇であるもの。「フォロワー=告知できる人数」だから、「フォロワー数にチケット代をのせればこの役者はこのくらい稼げるから、拡散力のある人を主役にしよう」ってやり方があるんですよ。商業演劇になればなるほどね。

ゆーてる:そうだったんだ!へー。

ぬこぽつ:で、アバターの見た目と声の印象がこの世界だと勝つから、声で選んでいった。それと、役の第一希望で埋めていって。エージェントSATANさんは第一希望に3人の魔女が書いてあったからじゃあ決定。

ゆーてる:ドはまりだったよね、アレ本当……

ぬこぽつ:ドはまりだった、評判いいよね。紫色の鼻の高い魔女が好きですってめっちゃ書かれてた。

ゆーてる:みんな、クセ強いとかキモいとか本当にSATANさんが狙ってた通りのリアクションをもらえてたんだよね。

ぬこぽつ:演劇未経験のゆーてるさんがマルカムをやって、その相棒のマクダフにはVRChatで撮影とかの活動をしているはむちーずさんを組ませた。イメージ的には、経験者と未経験を組み合わせたような画にはしたんですよ。

他には、mikenekoちゃんは役がコロコロ変わったじゃないですか。あれ裏で演劇やってるからこそ「mikenekoちゃんしかお願いできないからちょっと色々動いてくれない?」って交渉を裏でして、でmikenekoちゃんは「わかったわかった、経験あるからそういうの全然やるよ」って言ってくれて。

最初マクダフの妻はシナリオにいなかったんだけど、役者一人一人に見せ場を設けないとやっぱりみんなテンション上がんないから、マクダフの妻をお願いした。経験値で相関図を作って、この人とこの人の一緒にいるシチュが多いから、これなら場が持つなみたいな、そういうこと考えながら配役した感じかな。

ゆーてる:そうだったんだ。確かにmikenekoちゃんはめちゃめちゃ役が多かったなってのは思った。
最終的に打算的に組んだ割にはハマり役になってて、進めていくうちにハマっていったのか、元々の性質だったのかちょっとわからないんだけどみんないい感じだったよね。最終的に。

演劇とアバター

ゆーてる:気になったんだけどさ、VRで演劇やるじゃん?アバターじゃん?そこはどう作用したの?

ぬこぽつ:それは声のトーンだったり…VRC学園あたりの団体運営やってる経験から、ゆーてるさんもそう感じていると思うんだけどさ、喋り方とか内容でその人の思想って見えないですか?こういう感覚を活かす工夫にアバターを活用した感じ、かな。

ゆーてる:キャラはなんとなーく見えるっちゃ見えるかな?

ぬこぽつ:あとは、話してて「この人素ではこうだけど、こういうことをさせたら面白いかも?」みたいなの。例えば、マクベス夫人役のtakamiさんは特にあの優しい感じだから、この人がめちゃめちゃキツくなったらすごく面白いだろうなって思ってた。

ゆーてるさんとかは、いろんな企画とか見てるから責任感強い人なんだろうな、みたいなこと思ったりして。マルカムの「仇を討ちに来たぞ」ってシーンキマってた。あの気迫は遊び人みたいな人には出てこない言葉の質感。ともよろうさんも声だけでバシッと決まっちゃったよね。

ゆーてる:そうね。

ぬこぽつ:マクベス役のともよろうさんは、丁寧な人だけど、Discordで喋ってるとチャランポランな瞬間が見えたり、そういうの合ってたのかなとか。

マクダフのはむちーずさんとかも真面目だし、いろいろと苦労人な気がするんだよね。だけどそれを周りに見せないみたいなところがあって。そういうところはマクダフ重なるのかなとかね。

ゆーてる:なるほどなー。よく見てんな本当。それが上手くぬこぽつさんのその特性というか、そのムーブが上手い具合にぬこぽつさんの持ってる役割にカチッとハマったというか、多分監督だったり脚本家やるんだったら必要だよねおそらく、人を見る力っていうのは。

ぬこぽつ:そうだね。

演出家や監督等、演劇に関わる事を目指す人へのアドバイス

ゆーてる:今回、バチャマガとして注目しようと思ってたのは、これはおそらく新しい文化の始まりなんだって感じだからなんだよね。今まで一部の人がやったり観たりしてきた演劇が、今回のマクベスでBOOTHで公開したパンフにあるノウハウと合わせて、界隈の内外に広く拡散したって考えると、「古典演劇やりたいな」って思う人が今後結構増えてくると思うんだよね。その中には演出家や監督を目指す人だったり、ちょっとVRChatでやったことないけど挑戦してみたいなって思う人いると思うんだ。そういう人に向けてアドバイスあったりします?

ぬこぽつ:とにかく声出したり手挙げたら出来ちゃうよっていうのはあるんで、とにかく口に出すってことじゃないんですかね。

ゆーてる:説得力が違うな―。やったもんなぁ300人集まるやつ。

ぬこぽつ:でもこれはちょっとね、300人集めたぞって言いたいわって思ってるよ。広める方法を知らないだけで、多分世間的に面白いって思うことは、実は僕ら毎日やってるんだなと思うので。
とにかくなんか名乗ったもん勝ちだと思うので「VRアクターやってます!ドーン」みたいなのをいっぱいやるといいのかなって思うよね。

ゆーてる:「演出家やってます、今この作品やってます」っていう広報か。そもそもみんな面白いことはやってて、あとどうやって知ってもらいたい人に知ってもらうかっていう手段のノウハウの問題であると。

ぬこぽつ:中田らりるれろさんの『NINE』とかも、Yahoo!ニュースに載ったりとかするんで、僕たちが思ってるよりも現実のメディアとかはそこまで変に思ってない。「面白いじゃん。それ載っけよう。」ってなってくれるとは思うので、「あっ、このひとたちはVRで活動する人なんだね」という環境を作っちゃうと、多分やりやすくなると思うしそれに続く人もいるから、みんながみんな第一人者になったら面白いのかなって思う。

ゆーてる:なるほどなー。メディアからどう見られてるかというよりは、僕らがメディアへどう見せていくかを意識すれば、意外と僕らがやってるコンテンツそのものは変に思ってる人はいないんじゃないかなって思うから、もっと発信していこうよって感じかな。

ぬこぽつ:例えばマクベスのポスターが全部美少女でおっぱいボロンボロンのアバターで「これがスタンダードなんですよね」みたいに出したら多分「なにこれ?」ってなったと思うんですけど、この硬派っぽい感じで打ち出したから、一般層が興味もってくれたのかなとか。リアルの演劇界隈の人がこれ観るためにVRChatのアカウントを作ったり、配信を見てくれたりということもあった。多分VRChatへ持つイメージと違ったように見えたってのもあるんじゃないんですかね。

ゆーてる:なるほどね。いい感じに話がまとまったところで、インタビューは以上になります!ありがとうございました!

次回作は?

ぬこぽつさんの次回作として、「東海道中膝栗毛」が実施されるとのこと。悲劇だったマクベスとは打って変わって、喜劇になるのでしょうか。どのような演劇となるのか注目です!

※記事内の舞台画像は下記より引用しました。

BOOTHにてVR演劇「マクベス」パンフレット販売中!

VR演劇「マクベス」公式パンフレットがBOOTHにて配布中!
通常版と、特典版の2種類をご用意しております。

特典版には役者の想い、作品の背景やそれに付随したちょっとした豆知識、更にはどうやってあの演出が出来たのかワールドのノウハウなど作品の鑑賞を更に充実させるコンテンツをたくさん詰め込みまれています!

さらに先日、公演当時の舞台裏エピソードを観劇しながら役者が話すオーディオコメンタリーも収録されているので、迫真の舞台の裏で起こっていたおもしろドタバタエピソードも楽しめますよ!

VR演劇「マクベス」公式パンフレットは通常版が無料で、特典版が500円でのご提供!
ぜひお手に取ってみて、公演アーカイブをご覧ください!