失敗こそ歴史に学べ!『VRC歴史集会』のイベントに参加してみた!

学校や会社で、またはニュースで、「いったいどうしてこうなった…」と叫びたくなるような組織の失敗をみたことはありませんか?実は、長い歴史の中では似たような失敗が多く見られるものです。
『VRC歴史集会』では、歴史の失敗を学ぶことで新たなる「知」を創り上げる活動をしています。9月までの毎月第2・第4水曜日の22時から、輪講形式(毎回担当を決めて、講義形式で内容を発表する形式)で読書会を行っています。

対象本は『失敗の本質』。日本的な組織の象徴として日本軍を扱い、どういうことが起こっていたのかを研究した本です。
筆者がお招きいただいた回は「ガダルカナル島の戦い」の分析をした章について議論していました。

現代でも「あるある……」となる失敗の数々

「ガダルカナル島の戦い」ではどういう事が起こっていたのか、簡単にみていきましょう。今回はさくらまゆさんが講義を担当していました。

何故ガダルカナル島へ進軍したのか?

当時、日本軍では陸軍と海軍の最終目標が乖離していました。陸軍は東アジアを制圧したのち守りを固める、海軍は米軍との最終決戦に向けて要所要所で戦い、戦力を削るという真逆の方針をとっていたのです。
しかし、当時の海軍は強く、戦闘を恐れた米軍が自陣に引きこもってしまう状況となりました。そこで海軍は、米軍と戦うためにガダルカナル島に目をつけたのです。ガダルカナル島は米国へとつながる島であり、海軍の目標を達成するための橋頭保となる場所です。

海軍の要請に押され、陸軍は予定になかったガダルカナル島での飛行場建設を開始。それを察知した米軍との戦闘となりました。
また、この島では初めて、日米間で陸軍における本格的な戦闘が行われた場所でもありました。

続く大敗北

最初の戦闘で日本軍は、米軍に対して敗北をしています。しかし、その戦闘で得た情報は次回以降の戦闘でも活かされることはありませんでした。
一部の将校は戦力差や地形の特殊性に気づき、別案や撤退を進言しています。しかしそういった意見は黙殺され、日本軍は総攻撃を強行。二度目の戦いではより大きな敗北をしてしまいます。そこで上層部にも撤退のムードがただよいましたが、陸軍・海軍ともにプライドがあるためはっきりと言い出せず、最終的に天皇へ進言するという形で撤退を取り付けます。

そのころには取り返しのつかない損害が出てしまっているのでした。

失敗の分析

『失敗の本質』では、この戦いを4つの観点から分析しています。

戦略的グランド・デザイン(最終目標)の欠如

陸軍、海軍ともに最初に設定していた最終目標を変更しての進軍となりました。
さらに言うと、最初に掲げていた「米軍との最終決戦に向けて要所要所で戦い、戦力を削る」という方針も、米軍の出方次第では全く達成できないものとなるため、あまり上手な設定ではありませんでした。

攻勢終末点の逸脱

「どこまで進軍するべきか?」というポイントを深く考えずに進軍してしまったということです。ガダルカナル島は日本から遠すぎて補給や維持が難しい反面、米国にとってはオーストラリアなどの国からは近く、補給が楽というメリットがあります。また陸地も複雑で、扱いにくい土地でもありました。

統合作戦の欠如

米軍では陸海空軍が連携して戦闘が出来ていたのに対し、日本の陸軍・海軍は各々の目標を優先するあまり連携が全く取れておらず、有利に事を運べませんでした。

第一舞台の自立性抑圧と情報フィードバックの欠如

最初の戦闘で得た情報(米軍はどういう組織なのか?どういう地形なのか?)を組織で吸収できず、敗北を繰り返すという結果になりました。

さくらまゆさんの分析

ここからさらに一歩踏み込んで、さくらまゆさんは自信の考察を展開していきます。

陸軍と海軍の最終目標を比較した場合、海軍は「敵も自分と同じ土俵に乗ってくる」という思い込みのもとに作られており、失敗しやすいものとなっていたと言えます。一方で陸軍の目標は自身で完結する分良いものでしたが、守るためには様々な点で海軍の協力が必須だったことから、詰めが甘いものだったと言えます。

また、日本軍は米軍に比べて防御や諜報が弱いという問題を抱えていました。問題はその部分ではなく、それを認識せず提言を抑圧してしまう「空気」を作ってしまった所にあると考察しています。そのために、最初の戦いで得た情報をうまく取り込めず敗北を繰り返す結果となりました。

このような失敗を繰り返さないためには「(可能であれば最終目標を具現化する形で)戦略を持って戦い、経験学習を通じて戦略を書き換える」のが大事、という結論となりました。

その後の質疑応答でも様々な議論が交わされ、盛り上がった会となりました。

現代にも生かせる失敗の教訓

皆さんもこういった失敗を一度は目の当たりにした事があるのではないでしょうか。
会社に置き換えると、コストとリターンが釣り合わない無茶な事業を展開してしまったり、部署間で協力が出来ずに受注を逃したり、場当たり的に動いて上手く仕事がまわらなかったり……

こういった場面に遭遇した際には『失敗の本質』を思い出したら適切な対応が出来るかも。
例えば何か新商品を販売する場合には、下記のように考えられます。
商品はどういうコンセプト(=最終目標)で作られているのか?独りよがりなものになっていないか?
商品を売るために、他部署と連携する必要はないか?適切な手法(=作戦)を取れているか?うまくいかない場合はどうすればよいか?(=情報フィードバック)
…などなど。あてはめて考えてみると、道が開けるかもしれませんね。

最後に、主催のるいざ・しゃーろっとさんにも一言コメントをいただきました!

るいざ・しゃーろっとさん

日本の組織は過去の失敗を繰り返しているのが多いなぁと思うところがあり、その失敗のノウハウを分析して共有しようというのが『VRC歴史集会』の試みです。
他にも歴史の知識を共有することで、共通の文脈の中で効率よくメッセージを伝えたりすることもできます。歴史は良い先生になってくれるという事を、集会を通じて伝えていきたいですね。

今回はお招きいただきありがとうございました!
気になった方はぜひ集会の方にも参加してみてはいかがでしょうか?

イベント情報

開催日時:9月までの毎月第2・第4水曜日の22時
開催形態:『失敗の本質』を章ごとに読んでいく輪講形式
参加方法:るいざ・しゃーろっとにフレンド申請の上join