【週刊VRChat】外出いらず、旅費0円で聖地巡礼! 「ごちうさ」聖地・コルマールがVRの世界に登場【インタビュー付き】

VRデバイスの低価格化に加え、社会情勢による巣ごもり需要の拡大などにより、盛り上がりを見せているソーシャルVR/メタバース。「VRChat」は、複数存在するソーシャルVRサービスの中でも特にユーザー人口が多い、代表的な存在です。本連載では、VRChatの最新トレンドを、日々10時間以上同サービスに浸かっており、NPO法人公認VR文化アンバサダーとしても活動しているアシュトンが伝えていきます。

フランスにある「木組みの街」コルマール

フランス北東部に位置する、おとぎ話に出てきそうなほど美しい街・コルマール。「木組みの街」といったら伝わる読者も多いだろうか。そう、ここは漫画「ご注文はうさぎですか?」(以下、ごちうさ)のロケ地、いわゆる「聖地」と呼ばれる場所だ。

この聖地・コルマールが、先日ノーベルチョコ氏によって、フォトグラメトリーワールドとしてVRChat上に公開された。フォトグラメトリーワールドとは、被写体をさまざまなアングルから撮影し、そのデジタル画像を解析、統合して立体的な3DCGモデルを作成するフォトグラメトリーの技法を用いて制作したワールドのこと。ノーベルチョコ氏はこれまでも、漫画・アニメ作品「ARIA」の聖地としておなじみのイタリア・ヴェネチアや、18世紀の姿をそのまま残すスイスの秘境として知られるソーリオ村など海外を中心としたフォトグラメトリーワールドを公開し、度々話題を呼んでいた。

今回はノーベルチョコ氏の新作「Colmar Town」に行ってきたのでその様子をレポートしていきたい。後半には、ノーベルチョコ氏へのインタビューも敢行した。ノーベルチョコ氏はヨーロッパ在住とのことで、7時間時差があったものの、VRChat上であれば国境を超えたコミュニケーションも自由だ。ぜひ、読者のみなさんも「ごちうさ」の聖地巡礼気分を味わいながら実際に訪れてみてほしい。

ここもここも!VRでも聖地巡礼が楽しめる!

聖地巡礼の楽しみと言ったら何だろうか。人それぞれだろうが、筆者はやはり原作やアニメと同じ構図で写真を撮るのが一番の楽しみだ。ごちうさは、コルマール以外にも複数の都市をモデルにしていると言われているが、その中でもいくつか「ここだ!」という場所を見つけたため、写真とともに紹介していきたい。

まず、入ってすぐのスポーン地点となっている橋。ここは、アニメ第2期「ご注文はうさぎですか??」のED「ときめきポポロン♪」で使われた通称「チマメ橋」にそっくり!実際の映像と比較すると分かるが、後ろの建物までバッチリ合致しているため、ここで間違いないだろう。

また同じく「ときめきポポロン♪」映像のラスト、チマメ隊3人が夕陽に向かって歩いていくカット。これは、先ほどのチマメ橋からスポーンした方向を基準に右側、この銅像がある方向に進み、モンターニュヴェルト通りを道なりに、アンシエンヌデュアンヌ広場の方へ出ると見つけることができる。

作中では夕陽が描かれているカット
チマメ橋から右手に進むとこの銅像が見える
アンシエンヌデュアンヌ広場。ここまでくれば先ほどの場所が見つかるだろう

VRChatの中にいながら、オーバーレイでブラウザーを空中に出し、参考資料やGoogleマップを頼りに聖地を探す。VRでも想像以上に聖地巡礼を楽しめた。知らない街を迷いながら、見慣れたアングルを探す、聖地巡礼の醍醐味を自宅から体験できてしまう。すごい時代になったものだ。

地図を片手に街をさまようと、そこには色とりどりの木組みの建物がずらりと並ぶ。細い路地も行ける場所が多く、ついつい迷ってしまう。「きれい~かわいい街」「ここなら楽しく暮らせそう!」「ここがこうで、あっちがそっちで・・・うーん、まあいっか」そんな風にセリフを思い返しながら街を歩けば、アニメ第1期1羽のココアちゃんになった気分にもなれる!

写真だけ見るとリアルかVRか一目ではわからないほどだ

ノーベルチョコ氏に聞く VR聖地巡シリーズ制作秘話

ここからは、本ワールドの制作者であるノーベルチョコ氏にワールド制作の裏話や、おすすめポイントなどをインタビューしたため、そちらを紹介したい。

──フォトグラメトリーワールドはいつごろから制作されているんでしょうか?

ノーベルチョコ VRChatで制作する以前にも、フォトグラメトリ―を利用して「カスタムメイド3D2」などゲームのModを作ったりするようなことは2016年、5年前くらいからやっていました。2018年くらいにはフォトグラメトリ―をベースにした街歩き系の同人VRゲームを制作して配布したりと、趣味でこれまでやってきてます。

──趣味でこの規模の街をいくつもVR空間に持ってきているというのはすごいです。

ノーベルチョコ ありがとうございます。そうですね、ヨーロッパのいい感じの街を歩くのが好きで、この「街を歩く感覚」を何度も味わいたいというモチベーションです。街歩きの感覚を記録して、再体験できるようにしたい。VRChatならそれをみんなに共有できるのがいいですね。

──これまでもさまざまな反響がありましたよね

ノーベルチョコ そうですね。作ったワールドをみなさんがスクショ撮ってTwitterとかに上げてくれているのもうれしいですし。去年末に公開したソーリオ村は特に、ツイートも1.9万RTくらいいって、メディアにも取り上げられました。数ヵ月前に作ったアルバラシンのワールドは、現地スペインのメディアからコンタクトがあったりして。個人で街を丸ごとVRに持ってくるという活動はまだユニークな活動なのかなと思ってます。楽しくやっているだけですが。

──制作はどのようなフローで行っているんでしょうか?

ノーベルチョコ 「Colmar Town」に関しては、一眼レフで8500枚ほど写真を撮って、360度カメラも同時に使ってそこから1万枚ほどを抜き出して、計1万8500枚ほどの写真から全体を制作しました。「ラ プチ ヴェニス」と呼ばれるエリアなんですが、この全体をカバーして、奥の教会なども回って丸ごと作った感じです。

川の周辺だけでなく、入り組んだ路地エリアも再現されている。

──デジタル一眼でさまざまな角度から写真を撮っていく感じでしょうか?

ノーベルチョコ フォトグラメトリ―は本来は色々な角度から丁寧に撮影しなければ綺麗にできないのですが、最近はもっとテキトーに正面だけ撮っていって、撮影の苦労は最小化しつつ広い範囲をカバーできる制作方法を模索しています。今回も撮影時間だけだと2時間半ほどで。その分粗いところはあるのですが。

──なるほど。ちなみに、全体を通してアップロードするまでの制作期間はどの程度かかりましたか?

ノーベルチョコ 写真を撮ってから公開まででひと月くらいですね。もちろん、ずっと作業してるわけではないですが。「Reality Capture」というフォトグラメトリ―ソフトを利用して、フォトグラメトリ―を制作するのに2週間ほど。VRChatに持っていくために、軽量化などの最適化を「blender」で行うのに2週間ほどです。例えば、手持ちで地上から建物を撮影してモデルを制作すると、ゴミやノイズが屋根とかについちゃうんですが、手動で取るのは大変なので、これを自動化するツールなども作りながら制作しました。

──ありがとうございます。ちなみに、これまでもヴェネチアであったり、今回のコルマールなど制作ワールドに「アニメの聖地」が多い印象ですが、ワールド制作する街はどうやって選んでいるんでしょうか?

ノーベルチョコ いい質問ですね。アニメの聖地が多いのは、自分がオタクだからとしか言いようがないんですけど(笑)

基本的にはヨーロッパの旧市街地的な。ヴェネチアもユニークな街で「ARIA」の聖地ですし、コルマールもとても好きで何回も足を運んでいます。歩いて楽しい、見て楽しい街というのが選ぶ基準ですね。ちなみに、このコルマールの隣町にはエギスハイムという、こちらも「ごちうさ」の聖地になったような街があるんですが、そこもすごく良い街なので近いうちに作りたいなと思ってます。

──お話を聞くと旅行もとても好きなんだなと思います。聖地巡礼はこれまでもいろいろ行ってきたんですか?

ノーベルチョコ そうですね。日本国内もちょくちょく。ヨーロッパだと、「ARIA」のヴェネチア、「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」のクエンカ、あとイギリスで「きんいろモザイク」のバイブリー、コッツウォルズですね。実はバイブリーもワールドを作っていて、こちらはVRChatではなく「STYLY」というプラットフォームに投稿しています(ページリンク)。

VR聖地巡礼シリーズを通して、実際の聖地巡礼の感覚みたいなものを1%、10%でもシェアできているなら嬉しいです。「ごちうさ」は、コルマールをほぼまんま描いているので、「ごちうさ」ファンなら歩いていて楽しい街です。

──まさに木組みの街ですからね。木組みの家と石畳の街。テンション上がります。VRで聖地巡礼ができちゃうというのは魅力的ですよね。特にヨーロッパとなると日本在住のアニメファンは中々足を運べないですし。

ノーベルチョコ そこが今回のメインコンテンツの一つです。VR聖地巡礼。今回も「ごちうさ」の聖地巡礼ポイントをいくつか散りばめてます。ラビットハウスのモデルとなった建物が含まれてないのが致命的なところですが(笑)。こちらも近いうちに追加で撮影します。

──私もGoogle Mapを出しながら聖地を探したりしてました(笑)

ノーベルチョコ まさかの現実のマップを見ながらゲームの世界を歩く(笑)。楽しいですよね。

ここなんかも、「ごちうさ」1期の第1羽でココアが街をさまよってたシーンに使われた場所です。印象深かったので入れたいなと思っていました。ほかにも、ココアが最初街を歩いていたシーンはいくつかありますね。

街の中を案内され、聖地巡礼スポットへ。作中、ここをココアが歩いていた

──ここのワールドを歩きながらアニメを見たりするのも楽しそうですね

ノーベルチョコ まさにVR聖地巡礼感があっていいですね。素晴らしい。

──最後に、読者に向けてコメントなどあればよろしくお願いいたします。

ノーベルチョコ こういう「現実のあの場所にVRで行けますよ、しかも自分で動けますよ」というのはユニークな特徴なのかなと思います。VR未経験でVRChatを知らない人にも訴求できるコンテンツです。探索した人に発見がある規模でワールドを作っているので、ぜひ「街歩き」を追体験しに来てみてください!

左:ノーベルチョコ氏 右:筆者

VR×聖地巡礼。感染症拡大などの影響でなかなか外に遊びに行けない状況が続いているが、VR旅行なら無料で海外にだって行けてしまう。特に「Colmar Town」は、ごちうさが好きな人には一度訪れてみてほしい。こちらのリンクからワールドの詳細を確認できる。ワールドの検索方法など基本操作は、下記入門編の記事を参考にしてほしい。

●【入門編】VRChatのはじめ方はこちら!
絶対楽しい「VRChat」の始め方 インストール方法やお勧めワールドまでをご紹介!
絶対楽しい「VRChat」の始め方(2) 初心者にお勧めのユーザーイベント5選

●これまでの週刊VRChat
【週刊VRChat】VR展示即売会を次のステップへ 「パラレルマーケット」主催あおみ氏に聞く新たな挑戦【新連載】

(TEXT by アシュトン