『XENOGRAPH』それは群れずとも繋がる一つの「意思」。 バーチャル・リアルで展開するアパレルブランドの魅力に迫る!

皆さんはVRChat上で過ごしている中で、とあるスタイルの改変をしたアバターを見かけたことはありませんでしょうか?


何やら謎の文字をコンセプトとしていそうな、サイバーパンク調の改変。
他の衣装の表面に展開されていることもあり、定まった形がないように見えます。
『XENOGRAPH(ゼノグラフ)』と呼ばれているこの改変の正体は一体何なのか。

今回はそんなミステリアスな魅力を持った『XENOGRAPH』についてデザイン製作者のrejoysさん、VRChatでの普及に努めている葉巻の彼さんにインタビューしてみました!

そもそも『XENOGRAPH』とは?

ゆーてる

というところでまず、そもそも『XENOGRAPH』って何ですか?
色んなところで改変されている方をお見かけはするのですが・・・・。

rejoysさん

『XENOGRAPH』はリアルとバーチャルで相互展開するxRコンセプトブランドです。

元々は私はイラストレーターなのでイラストを描いてイラストのキャラクターをモデルに見立てて、洋服をデザインして、展開するっていうコンセプトからスタートしました。

世界観設定の時間軸が複数あって、現代、シンギュラリティ後の世界、サイバーパンク期の世界、ポストアポカリプスな世界等を内包しています。

~『XENOGRAPH』の世界観~

  • サイバーパンク期からポストアポカリプス期にかけてAIの審判による「ヒトを合法的に粛清する判断」によってヒトをゾンビ化させるウィルスがばら撒かれる。
  • パンデミックによって人々がゾンビ化していき、AIとそれを信奉する人々と抵抗する人々の争い等の中で世界が荒廃。
  • ゾンビの突然変異体として歳を取らない少年少女が生まれる。
  • その少年少女達はゾンビとAIが残した兵器に抵抗しながら生活している。

rejoysさん

XENOGRAPH / ゼノグラフの元々の語源はxenograft【異種移植あるいは異種移植用細胞片を用いた生物実験】という意味で、初期のイラスト連作はそこからインスピレーションを受けて「欠けて腐って侵されたなにかに、異質な価値観と世界、強さを移植して昇華してゆく」といったダークな作風で展開していました。

ゆーてる

VRChatにユーザーが求めるものの一つと近しい要素を感じますね。
ぼくたちの中にも「欠け」を感じてこの世界を訪れ、その先で見つけたもので自分の日々を、存在を埋め合わせていく。きっとそういった方もいらっしゃると思うのです。
そう考えると、『XENOGRAPH』、元々のコンセプトから親和性があったのか。

rejoysさん

その連作シリーズのイラストをtwitter展開してた時に葉巻の彼さん(以下、略称:葉巻さん)と知り合いました。

元々私の描いたイラストとか好きで販売してる洋服とかよく着てくれていて、VRCを始めた後で「改変に『XENOGRAPH』のロゴを使ってもいいですか?」という問い合わせが来まして。それに対して「いいですよ、どんどん使ってくださいよ」ってOKを出したことで「『XENOGRAPH』改変」が誕生したんですよ。

ちょうど独特な世界観やコンセプトを持ったブランドのロゴ等を「移植する」=「改変する」といったことと「不老の少年少女」=「VRアバター」といったものと繋がったのもあると思いますね。

ゆーてる

ちゃんと確認取ってるの、えらすぎる・・・!

rejoysさん

実は私もVRChatの存在自体は知ってて、VR自体も初期のOculusとかVIVEが出た時から触ってたんですけど、VRChatが流行る前に別の仕事が忙しくて離れちゃいまして。
葉巻さんがVRChatを始めてしばらくしてから「VRoid Studio」が出たので、自分のデザインした服を再現して着せてみたんです。

その時から「これは面白いぞ」と思って私も色々やるようになったっていう感じですね。

ゆーてる

「忙しいから触らない」から「忙しくても楽しいので触る」に変わったのは葉巻さんのおかげだったんですね!

葉巻の彼さんと『XENOGRAPH』との出会い

ゆーてる

葉巻さんサイドの『XENOGRAPH』との出会いってどういった感じでしたか?

葉巻の彼さん

『XENOGRAPH』と出会ってからはもう5年になりますね。

思い返すと最初はTwitterでrejoysさんを見かけて、『XENOGRAPH』のデザインに一目惚れしちゃいまして、リアルファッションとして楽しんでいる内にアイディンティティの一つになりましたね。

ゆーてる

リアルの方からが先だったんですね・・・!
昨今、バーチャルの衣装がリアル進出というケースや、バーチャルとリアル同時展開というケースが散見される中、リアルの方が先というのは中々珍しいように思えます。

VRChatにおける『XENOGRAPH』普及の歴史

葉巻の彼さん

自分が2019年の初めにVRChatに触れ、アバター改変を同年の4月に手を出したんですが。

「どうせならリアルで愛用しているアパレルブランドのデザインで改変してみたいな」と考え、現実でできない事をVRChatでやってみよう、自分好みのかわいい子が『XENOGRAPH』のデザインを使って改変しているのを見てみたいと思い始めたのが始まりでしたね。

葉巻の彼さん

当時、rejoysさんが別件の案件でVR展開に本格的に動けない中、
自分がずっと愛用している姿を見てた人が2人、3人とデザインに惹かれて
自分のアバターの服や体などに使われる方が多くなり、

葉巻の彼さん

気が付いたら一つの大きなコミニティレベルの人数になって来て、多種多様な人たちが多いので毎回見るとこっちが驚くことが多いですね。

ボーダレスであり、ジェンダーレスなアパレルとしての『XENOGRAPH』

rejoysさん

『XENOGRAPH』は、ジェンダーレスボーダーレス思想を元にしていて、ボーダーレスの意味合いの中にリアルとバーチャルといった線引きをせず、バーチャル、あるいはリアルで自分のアイデンティティのエッセンスとして活用できることをコンセプトとしています。

rejoysさん

私はメンズ服もレディース服も着るので、洋服もベーシックなTシャツやユニセックスに着れるワンピースやレギンスも出してますし、男性でも女性でも着れる服を出してます。

バーチャルやリアルで構築したファッションアイデンティティエッセンスみたいなものがもう一方のリアルの世界やヴァーチャルの世界で取り入れて使えないのはちょっともったいないなと思ってまして。

rejoysさん

普段VRで男性で女性型アバターを使用している人がそのまま現実でレディースのファッションをするのは難易度が高いんじゃないかなと感じていて。

そこで『XENOGRAPH』のデザインを通してVRChat上での改変をリアルのファッションに取り入れて、相互互換性あるファッションアイデンティティの一部として利用して頂けたらなと思います。

実はコミュニティじゃない、『XENOGRAPH』

葉巻の彼さん

先程、「気が付いたら一つの大きなコミニティレベルの人数になって来て」と言っておりましたが、実は『XENOGRAPH』はコミュニティやグループでは無いんですよ。

ゆーてる

コミュニティじゃないんだ!?

葉巻の彼さん

それこそ、この記事を見ている人の中にはTwitterのヘッダーとかアイコンとかVRCのワールドでポスターを見た事あるけど「あれは一体・・・?」って思ってた方とかいるでしょうからこの機会にお話をさせて頂きますね。

画像
葉巻の彼さんのTwitterヘッダー
葉巻の彼さん

『XENOGRAPH』改変者の方のポスターはあれども、『XENOGRAPH』のデザインに惹かれて愛用や改変して来た人達だからそれをわざわざコミュニティやグループで固めてしまうのは、もし自分が勝手に固められる立場だったら嫌だなと感じてコミュニティの様にはしてないですね。 あくまで愛用者が多いって事ですね。

葉巻の彼さん

それに、コミュニティやグループじゃないからこそ。知らない人から見たら得体が知れない人達に見えるし、『XENOGRAPH』を愛用している人も各々のVRCの生活の中に『XENOGRAPH』を着ている人を見かけたらびっくりするし、話しかけたくなるじゃないですか(笑) 

そういう自然と出会う方向性が一番面白いだろうなと感じたのでこのスタンスになっておりますね。

VRChat内での活動展開

葉巻の彼さん

rejoysさんがデザフェスやリアルのイベントなどで日頃VRCに中々行けない状況なので、変わりに自分が動いている時にVRC内で何か面白い話があればrejoysさんにお話をさせて頂いておりますね。

ゆーてる

なんかマネージャーっぽくなってる・・・!!

葉巻の彼さん

rejoysさんには「VRの事は俺やこっち側の人たちに任せてください」と大層な事を言わせていただいておりますし。

他のユーザーさんにも色々と面白い事が起きて、『XENOGRAPH』という一つの文化が出来ているんだってお話をさせて頂いておりますね。

葉巻の彼さん

その動きにより、過去には様々なラジオ等にも出演させてもらったり
合法チート研究会さんから発売されました
「チセ – chise -」 【VRChat想定オリジナル3Dモデル】
とのコラボが実現が叶うなど、色んなところで面白い事が起きています。

バーチャルの世界は、サイバーパンク好きにとってのユートピアかもしれない

rejoysさん

CYBERXPUNKER(サイバーパンカー)っていう本をディレクションして出版しているBADASS▽DELTAさんという方がいて、私もvol.1でVRの文化を紹介する特集にてリアルとヴァーチャルのファッションの枠で取り上げて頂いたんです。

rejoysさん

「今、サイバーパンクをコンセプトにした内容が必要だったらもうVRは絶対外せないでしょう」とこちらから積極的にアピールして載せてもらったんですよ。

「VRにガチのサイバーパンクな現場があるぞ」っていうのをちゃんと紙面で取り上げてもらわないと勿体ないぞ~って思いまして。

ゆーてる

確かに、サイバーパンクの世界観が確立している空間もありますし、それが映画にもなって界隈内外に認められ始めていますもんね!

rejoysさん

私は外に対してVRの文化を紹介するには前座みたいなもので、かつちょっと異端な感じだから、第2部出すときはもう外から見てガチのやばい原住民を絶対連れてきてくださいよって言って、バーチャル美少女ねむさんにお声かけしてもらったりとかしまして。

VRはもうサイバーパンクに留まらず、時代の答え合わせの最中なんですよね、サイバーパンクやサイエンスフィクションの創作実際の今の現実のリアルとの。
それが最先端で起こってる現場がやっぱりVRChatだと思います。

バーチャルとリアルから見るファッションの今後の予想

rejoysさん

ファッション的に見てもVRChatの中って最先端のファッション空間なんですよねやっぱり。何でも可能になってるっていう。

rejoysさん

例えばサイバーパンクファッションみたいなものが、例えば現実でコスプレとしてしか認識されないとしても、VRの中だと普段着として成立する。
だからこそ、その「VRの方の文脈を抑えつつ並行展開する」っていうのがすごく大事なことなんじゃないのかなって私は思いますね。

いずれやっぱり、バーチャルの服とかをベースにして現実に持ってくっていう動きもこれからどんどん出てくると思いますし、あるいはARとか使ってCGで作られたバーチャルウェアっていうのがファッションカテゴリの一つになる流れも来るんじゃないのかなっていうふうに私は考えてます。

rejoysさん

『XENOGRAPH』でもインスタグラムのARフィルターを使って、フィジカルなブレスレットにエフェクトをつけたりとか、フェイスギア等を作って色々実験していますね。フェイスギアなんかはVR版と3Dプリンタで出力したフィジカルな現物とあとAR版の3つを展開してます。

AR上に投影してあるフェイスギアの素材はこちら。
https://www.instagram.com/ar/558234432734499/

『XENOGRAPH』の今後の動きについて

rejoysさん

2023年の7月29日にはリアルVket秋葉原でパラリアルクリエイターとして出展してリアルの洋服やアクセサリーを販売します。

rejoysさん

あと、大型の3Dプリンタを導入したのでリアルとバーチャルで同じデザインのスニーカーやメカヘッド等も展開したいですし、フィギュア用のカスタマイズパーツや服なども開発しています。

『XENOGRAPH』という文化をユーザーが創り上げていった経緯、その文化でリアルとバーチャルがクロスしていく様子などなど、『XENOGRAPH』の魅力をたくさん知るいい機会となりました!

2つの世界に共通したアイデンティティとなり得る『XENOGRAPH』の今後の展開が楽しみです!

rejoysさん、葉巻の彼さん。
本日はありがとうございました!