家にいたまま海外旅行!?VRChatで「海外」と「旅」をより身近にしていく取り組み「VRC世界旅行」

VRChat内で展開されている、本格旅行ツアーイベント「VRC世界旅行」をご存じですか?

VRChatで広く行われている「ワールド巡り」の中でも、実在する観光地の再現ワールドを巡っていくイベントです。

「VRC世界旅行」ってどんなイベント?

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ゆーてる

「VRC世界旅行」っていったいどんなイベントなんですか?

NEKO旅さん

1回2時間半かけて、VRChatワールドの観光ツアーを行う「ワールド巡り」のイベントです。

特徴は実在する観光地などの日本国外の地域が再現されたワールドが主なツアー箇所となっているところですね。

ゆーてる

世界一周を達成したとのことですが、どのような旅程だったのでしょうか?

NEKO旅さん

2022年の4月9日から始めて、30か国/62都市を巡りました。
総移動距離は85400kmにもなります。

各旅程はこんな感じでしたね。

VRC世界旅行 世界一周目の旅程
  1. 日本 ⇒ イタリア
  2. フランス
  3. スペイン ⇒ イギリス ⇒ ドイツ
  4. スウェーデン ⇒ クロアチア ⇒ ギリシャ
  5. アフリカ大陸 ※運河閉鎖
  6. 南アメリカ大陸 ※沈没、ジャングル遭難
  7. 北アメリカ大陸
  8. 北アメリカ大陸
  9. オセアニア
  10. 東南アジア
  11. 中国
  12. 韓国 ※沈没、漂流 ⇒ 南極 ⇒ 日本
ゆーてる

VRChatは日本人も多くいるアメリカのプラットフォームなので、アジアや欧米諸国に偏るのは仕方ないとは思いますが、アフリカ、南アメリカまでカバーされているのがすごいですね。

リアルでこれをやるならピースボート船旅とかそれくらいしか機会がないのでは…?

NEKO旅さん

それが無料で、しかもガイド付きで行われています。

ワールド情報の収集について

ゆーてる

世界一周を果たしたとなると使用されたワールドの数も相当なものだと思いますが、どうやって集めているんですか?

NEKO旅さん

実はワールド候補のストックはかなり前から蓄積されていて、今回の世界一周を果たしたルートでも半分しか消化されてないんですよ。

ほぼ最初の段階から世界旅行に使うワールドはほとんど決まっていました。
だいたいこんな感じで探してますね。

「VRC世界旅行」流ワールドの見つけ方
  • ワールド名を載せたツイートにたまに書かれている元ネタの地名を参照
  • ワールド名やDescription欄に元ネタの土地が載っていることがある
  • ワールドに直接行った後に自分のもつ海外知識と照らし合わせて判別する
    ⇒「これ観光地っぽいな?」と勘づくためには前提となる知識が必要

旅程組みの段取り・スタッフ個人の準備について

ゆーてる

ワールドを集めた後、ガイド付きのツアーを実施するには旅程のプランニングも必須だと思うんですが、どのような段取りでツアープランを組んでますか?

NEKO旅さん

各回の準備はだいたい本番から逆算して3週間くらい前から始めてますね。
最初は台本作りから始め、後半の1週間くらいからスタッフ同士でのリハーサルを行っています。

旅行好きなメンバーであっても全員が観光業を本職としている訳ではなく情報収集がネットベースのため精査が必要なのと、その情報を参加者が退屈しないような台本に起こすための変換作業が発生します。

ゆーてる

かなり丁寧に台本を作られてますね…!リハーサルはどのように行っていますか?

NEKO旅さん

「この場所で集合写真を撮ると映える」など動線設計の知見や台本の内容もスタッフ毎に異なるので、ほかの人の内容を共有しつつ、お互いをブラッシュアップしていく感じで進めています。

ツアーが成立する上で必要な情報の共有はそこでだいたいカバーされますし、私としてはスタッフには各々の個性を出してほしいので、何か指示を出すというよりはスタッフ間でやり取りした際の気づきに委ねていることが多いですね。

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NEKO旅さん

私一人で現場が回っているわけではなく、イベント開始後からは2時間半の間、スタッフみんなが別々に行動しますから。

リハーサルを重ねていくことでお互いの信頼関係を築いていったり、開始前に円陣を組んだりすることで、チームとしてみんなでイベントを作っていくぞって気持ちを合わせています。

「VRC世界旅行」のこだわり

ゆーてる

何度か参加して感じたのですが、観光地「以外」のルートも通ってますよね。沈没したりとか。そこはどういった意図があるんですか?

NEKO旅さん

VRChatワールドのポータルを活用すると国から国、観光地から観光地への移動がすぐできてしまうんですが、そこにあえて直接現地に飛ばず途中の公共交通機関を過程に挟むルートを時折入れて旅程を構成するんです。

そうすることで「旅行の雰囲気」がより感じられると思うんですよね。

沈没とかのアクシデントはVRならではできるネタ要素ですね。
でもこれらも想定内でしっかり旅程に組み込んでいるんですよ。

こだわり①(チケットと「旅の復習」)

NEKO旅さん

「旅行の雰囲気」のためにしている工夫が他にもいくつかあって。

その一つとしてイベント開催前に参加者に向けて配っているチケットがありますね。

NEKO旅さん

また、イベント終了後に「旅の復習」としてツアー内容を思い出せるような投稿をいくつか行ってたり、集合写真を載せたチケットを「返却」としてお渡ししてたりします。

ゆーてる

「あの時あっち行ったな~」って思い返して楽しい気分になるのも旅行の醍醐味ですもんね~。

こだわり②(「楽しそう」と目を引くポスター)

ゆーてる

「VRC世界旅行」のポスターも結構こだわりを感じます。
まるで観光ガイドブックの表紙みたい。あとわちゃわちゃしててカワイイ。

NEKO旅さん

「みんながイベントをどうやって知るか」について考えた時に、スクロールしてる中でも目を引くポスターにするのが大事というところに行き着きまして、結構ここは意識してます。
回を追うごとにデザイン力とか上がってたらうれしいな~なんて(笑)

あと、最初は一人のポスターだったんですが、スタッフが参加してくれた後からは「必ずスタッフを写真の中に入れる」ことを心がけています。

初回
一周目第11回
NEKO旅さん

参加者の方もスタッフがどういう人かを前もって知っておくと安心につながるでしょうし、「イベントが盛り上がってるぞ!楽しいぞ~!」というところがより伝わると思うんですよね。

ゆーてる

おそらく狙い通りだと思います。
ぼくもポスターでこのイベントのことを知りましたし。

「VRC世界旅行」とスタッフ

ゆーてる

「VRC世界旅行」の現場に立ったスタッフに何か変化などはありましたか?

NEKO旅さん

よく聞くのが「大学のプレゼンなど、人前で話すのが得意になった」というお話ですね。

ツアーガイドという役割上喋る機会は多いですし、参加者を置いていかないような進行にするため、常に自分と相手の情報差を意識していることが作用しているのかもしれません。

ゆーてる

あと、中には実際にリアル世界旅行まで行なった事例もいくつかお聞きしてます。

NEKO旅さん

そうですね。初回からスタッフとして参加してくれているMIRAI@さんがフランスを含んだヨーロッパ旅行に行ってきてて、その体験談を #とびだせ海外集会でお話してましたね。

ゆーてる

めっっっっちゃいい話ですね、それ!!エモい!

NEKO旅さん

せっかく自分の主催しているイベントに関わってくれたのだから、スタッフにはそうしてよかったと思ってもらいたいので、この件は私もすごく嬉しかったです。

「VRC世界旅行」立上げのきっかけ

ゆーてる

これだけの大規模なイベントですし、何か立上げの際にきっかけがあったりしたんですか?

NEKO旅さん

「自分の頭の中に思い浮かんじゃったから」ですかね…?

VRChatを最初Meta Quest2単体で始めたのですが、※PCVRデビュー後、他の方も同じだと思いますが一気に色んなワールドに触れれるようになりまして。
「これを自分の中に閉じるのはもったいない。紹介しながらみんなで周ったりすると楽しいんじゃないか?」って思ったんです。

当時はまだVRChat始めたててでフレンドもあんまりいなくて、イベントきっかけで増やせそうかなっていうのも実はあったりします(笑)

初回やってみて思ったより反響が出たので本格的に動こうと思うようになりました。

「PCVRデビュー」について
Meta Quest2単体版のVRChatは容量・使えるテクスチャ等の制限があり、専用の対応がされているワールドしか行けない状況のため、ゲーミングPC購入後、PCVRでVRChatをプレイするようになることを「デビュー」と称するケースがあります。

ゆーてる

2022年4月時点ですから、ちょっともう記憶がおぼろげですがコロナ禍でのロックダウンだったり諸々の渡航規制が終わるか終わらないかの時期だったような。

最初の反響はそこに刺さったこともあったかも…?

NEKO旅さん

ほとんど衝動で動き始めたので当時は考えてなかったんですが、もしかするとそうかもしれませんね。

NEKO旅さんがVRChatに来た流れと、そこから来る想い

ゆーてる

NEKO旅さんがVRChat自体を始めたのはどういったきっかけがあったんですか?

NEKO旅さん

VRChatに入ってみよう、と私に思わせてくれた2本の動画があります。

友達と一緒に旅行 VRog ( Vlog + VR) 【 VRchat 】

NEKO旅さん

韓国のVTuber、Ma-Wang(まーわん)の作ったこの動画が最初のきっかけですね。

「こんなかわいい子たちが旅行を楽しむ世界があるんだ!」と感動したんですよ。
ちなみに私のメインアバターが沙猫ちゃんなのはこの動画でのMa-Wangが沙猫ちゃんの髪と帽子を付けていたことが理由ですね(笑)

NEKO旅さん

この動画の電車内で二人がおしゃべりしている描写とか、待ち合わせのシーンの雰囲気がすごくよくって。

「VRC世界旅行」での旅程に交通機関や観光地を差し込んでるのはここにかなり影響を受けてるところがあります。

Project VisitoR – 「VisitoR」 (VRChat Music Video)

NEKO旅さん

VRChatで活動する映像制作グループ、VisitoR(ビジター)が制作したこのMV「VisitoR」の雰囲気がすごくよかったのと、曲の歌詞にも「書いておこう作家名は俺たち」「誰もが知らない世界で繋がっていく」とあるんですが、それらが込めた「誰もが知らない世界で誰もが主人公」といったメッセージに感化されて。

「この世界ではすごい何者かになろうとしなくていい。自分がやりたいことをやるだけでいいんだな。」って思えたんです。

ゆーてる

それぞれの界隈で、それぞれの暮らしがありますからね。
活動するのも、ゆったり過ごすのも目的が異なるので本来は比較しようのないものだと思いますし。

NEKO旅さん

あとはこの動画ですごくVisitoRに憧れてて、「遊覧空間」のMV制作をきっかけに私もVisitoRに参加することになりました。

「VisitoR」の映像を見るとわかると思うのですが、VisitoRにはMa-Wangも関わっています。
憧れた団体で自分の最初の憧れに会えた、今この環境がすごく幸せだなって感じてます。

ゆーてる

VRChatに何を期待して入ってきたかは人それぞれですし、それによって入った後の在り方も変わると思うのです。

先ほどイベントの「自分の頭の中に思い浮かんじゃったから」が「VRC世界旅行」の立ち上げた理由と言ってましたが、それはこれらの動画に受けた感動が原体験としてあり、そこからNEKO旅さんがVRChatに見出した「自由な旅行」が根底に強く残っていたからこそ立ち上げたんじゃないかなって。

NEKO旅さん

自分が思い描いていた景色に辿り着き、憧れの人たちと同じところにいられる自分は幸せ者だなって思います。

だからこそこの体験をより多くの人に届けたいなって勝手な使命感のようなものを抱いてるんです。

ゆーてる

身勝手な使命感でもいいと思います。

誰かが好きで勝手に生み出した面白いことが別の誰かを楽しませたり、あと一歩で死ぬ寸前の誰かが思い留まるかもしれませんし。

NEKO旅さん

誰かの人生を変えることもありますからね。実際私がそうなってますから。

イベントの感想でも「このイベントをきっかけにVRChatで遊ぶようになりました」「このイベントのために月一回ログインしてます」といったお声をいただいています。

「VRC世界旅行」の在りたい形はこういうところだと思いますし、何より私が届けたいと思っていたものがちゃんと届いているのが嬉しいです。

自分の原体験を人に伝えられた、という実感があるからこそここまでこのイベントを続けられているし、続けたいと思えるんでしょうね。

これから「VRC世界旅行」が目指す先

ゆーてる

これからの「VRC世界旅行」はどういったところを目指していきますか?

NEKO旅さん

まずは、参加した人が「VRって楽しい」と思ってもらえるようなもので在り続けたいというのと。

今も現地民のフレンドがいるツアーの回はなるべくそのフレンドに来てもらって交流する機会を作ってはいますが、
もっと海外のリアル側とのつながりを持たせたいです。

MIRAI@さんが一つの事例ですが、「VRC世界旅行」をきっかけに海外に興味を持ってほしく、このイベントはリアルと繋がってこそより大きく効果のあるものだと思っています。

ゆーてる

「今時の若者は海外に対する意欲が弱まっている」という言説もありますし
※参考:株式会社SHIBUYA109エンタテイメントプレスリリース

もしかすると今、海外旅行って多くの若者には「自分にとってのリアル(≒自分の手が届くと認識している範囲)」だと思われていないのかもしれません。

治安や未体験への不安を打破するにはモチベーションが必要で、そしてそのモチベーションって例えば「その国にいる友だち」など現地由来の事前情報が必要なんじゃないかなと思うんです。

だからこそこの「VRC世界旅行」はぼくが個人的にVRの最大のメリットだと思う「自分にとって身近に思わなかった概念を疑似体験によって身近に寄せることができる」側面を存分に活用しているすごい活動だなって感じています。

NEKO旅さん

世界一周を何度もやっていくと世界を囲う線がどんどん増えていくことで知見が高まって楽しいと思いますし、「VRChatのいつもの遊び方の一つ」として気軽に海外旅行体験をやってみる流れが出来てほしいですね。

ゆーてる

この度はインタビューへお応えいただきありがとうございました。

「VRC世界旅行」が一人でも多くの方が海外へ踏み出す背中を押していく未来を願っております。

NEKO旅さんよりお知らせ!

皆がいつでも「世界旅行」できるポータルワールド「VR_TRAVEL」

NEKO旅さん

世界一周を記念して、「VR_TRAVEL」というワールドを作成しました。

このワールドでは、これまでの「VRC世界旅行」で巡ったワールドのポータルを「イベントで使用した順番通り」に配置しています。

このワールドを活用すれば参加者の追体験にもなりますし、いつでも好きな時に世界旅行ができますよ!

ポータル数、なんと100以上!!!

ワールドはこちらから!

12/3(日)、Vket2023 Winterとコラボイベントを開催します!

開催が来週に迫る『Vket2023 Winter』の企業出展会場に「パラリアルロンドン」があることから、この度コラボすることになりました!
グループインスタンスで会場を開いた開催となります!

「パラリアルロンドン&The Beatles聖地巡礼の旅」

ワールドクリエイター・リアル海外経験者の力をお借りしたいです!

NEKO旅さん

「VRC世界旅行」では実在する海外地域の再現をしたワールドを作成いただける方を募集中です!

世界一周を果たす過程で、ないけど行きたいワールドは自分たちで作っていくことで世界を広めていきたいのもありますし、今後は「VRC世界旅行」発の海外ワールドもいくつか出していきたいとも考えております!

NEKO旅さん

また、現地の情報収集のためリアル海外旅行経験者の知見を求めております!
コチラに関しては、「旅HUB」というDiscordサーバーにて日々交流しておりますので、そちらにご参加いただけると助かります!

「旅HUB」サーバーURL:https://discord.gg/eE5XNpzVG7

投稿者プロフィール

ゆーてる
ゆーてるバーチャルライフマガジン二代目編集長
楽しいこと、誰かが頑張ってる姿を見ることが大好きなVRライターです!
ぼく自身もVRChat上でいろんな活動してます!

バーチャルの楽しいことをたくさん知ってもらえるようがんばります!