VRChatは、距離が遠くても心の距離が近い人と出会えて、次に進める空間。「若者ケアラー集会」参加レポート

2024年7月13日、VRChatにて「若者ケアラー集会」と題した交流会が開催されました。主催はVRChatユーザーの、のあさんと、メタバースキャリアコンサルタントをしている癒色えもさんです。

そこは課題を抱える「若者ケアラー」やそれを経験した人たち、そしてそこに寄り添ったり各種サポート機関の存在を伝えたりつなげたりする立場の方が同席する場でした。

「若者ケアラー」について

この集会のテーマである「若者ケアラー」と、それに関連する「ヤングケアラー」について少し紹介します。

ヤングケアラー

「ヤングケアラー」とはこども家庭庁が定義した言葉で、「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども」を指します。

引用:こども家庭庁 https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/

若者ケアラー

「若者ケアラー」とは2010年に創設された「日本ケアラー連盟」による定義で、18歳~おおむね30歳代までのケアラーのことを指します。

こちらも、こころやからだに不調のある人の「介護」「看病」「療育」「世話」「気づかい」など、ケアの必要な家族や近親者、友人、知人などを無償でケアする人であるケアラーに含まれますが、若い世代には、進学や就職、キャリア形成、仕事と介護の両立、人生設計など、若い世代固有の課題があります。

ケアの内容はヤングケアラーと同様ですが、ケア責任がより重くなることもあります。ヤングケアラーからケアを継続している場合と、18歳を越えてからケアがはじまる場合とがあります。

引用:日本ケアラー連盟 https://carersjapan.com/

焚火の明かりが静かに照らす、奥底の痛みの開示と寄り添いの空間

実はぼく自身も実はヤングケアラーだった人間で、今回ここに足を運んだのです。

暴力を受けていたのは幼少期わずかな期間で済んでいたのですが、過保護かつ過干渉、意思を考慮していない指示・命令の嵐が吹き荒れる日々でした。これに反抗しようにも親が精神疾患の療養中につき「ストレスをかけさせないのが家族側で出来る治療法である」といった環境だったため、子どもの頃はこれを「従順でいること」と解釈していたぼくは、何もできませんでした。

昨今、誰しもどこかで見かけた事があるような「弱者性を盾に横暴をする、そしてそれに屈する」構図。ぼくは十数年前からこの渦中におり、そこから逃れるために就職を機に飛び出して一人暮らしを始めて今に至ります。

「俺にとって戦争は続いたままなんだ」

ヤングケアラーにとって、仕事や職場から帰ったあとの家の方が外よりも張り詰める空間となっていることもある。少なくともぼく自身はそうでした。

当時を生き抜くために身に着ける必要があった思考や行動が、いざその環境を乗り越えた先に迎えた「一般」の社会においては「ズレた」ものとなってしまい、コミュニケーションエラーなどの不整合を起こすこともあります。

当時は当時で毎日が戦場のような気分だったし、そこを切り抜けた今も社会との不適合が起きている部分をどうにかする必要があり、常に緊張が付きまとう。その心境と言えば、映画『ランボー』(First blood) のラストシーンの言葉を借りて言うと「俺にとって戦争は続いたままなんだ」といったところでしょうか。

こういった話を、「キロバイトのうみ」の焚火に照らされながら参加者同士でしていきました。状況は良くなっていても当時の気持ちは心の奥底に残っていて、親しい友人でもなかなか話せなかったりします。「重い話」に該当するでしょうし。

「この人ならわかってくれるだろう」というのがあらかじめ分かってる人同士だからこそ、話せて、晴らせるのだと思います。

仄暗い中に灯ったわずかな明かりに照らされたワールドも相まって、参加者の心に寄り添うような空間となってくれるのです。

自分を一括りにする「名前」は「レッテル」にもなるが「キーワード」にもできる

2023年に「ヤングケアラー」がこども家庭庁によって定義づけられた時、ぼくは「ようやっと『これ』に名前が付いた」と感じました。

「こういう性質がある」「こういう過去がある」といった個々のケースをひとくくりにするタグのような「名前」は、確かに当事者外から貼りつけられる「レッテル」となってしまう側面があることは否めませんが、似たような境遇を経てきた先達が試行錯誤して得てきた知見を探し当てるための「キーワード」として当事者が使うことも出来ると思うのです。

遠い距離を超え、心が近い「戦友」に出会えた感覚

自分の境遇に「名前」が付き、それを「キーワード」として使えるようになった今、この集会で話が出来てとてもよかったです。

相手からの開示もあり自己開示もできたその体験は、前述したように「俺にとって戦争は続いたままなんだ」という感情を抱えていたぼくにとって「似たような戦場を生き抜いてきた仲間がいたんだ」という感覚を抱かせてくれるものでした。

「つらいのはあなただけじゃない」と人から言われると癪に障るかもしれませんが、似たような辛さを抱えた人達との交流によって、自らがそう思えたのならそれは心の支えにもなるのかもしれません。戦場のような環境で孤独な戦いを続けていると「自分がこの世で一番不幸だ」という気持ちが続きます。

でも、過去乗り越えてきた人と出会えれば「こんな環境を経ても人生なんとかやってけるんだ」と思ったり、今自分と似たような苦しみを持っている人と出会えれば、隣で一緒に戦っているような感覚になれたりするのかもしれません。

自分と心の距離が近い人と、遠い距離を超えて出会うことができる。

VRChatなどのメタバース空間は趣味・経済活動だけでなく、こういった体験・機会を拡げる可能性をも秘めているのだと思います。

かつてのぼくがほしかった空間が、ここにはありました。今後は定期開催も予定されているとのことです。必要を感じている方に届いてほしいですね。

第2回「若者ケアラー集会」開催&定期化予定

そんな「若者ケアラー集会」ですが、第2回が9月16日(月)の22:00~23:00に開催されます!

イベントのタイムテーブルや専用ワールドも用意されました!

ちょっとだけ会場の様子をご紹介します。

会場は穏やかな海に面した別荘のような広めの家を模しています。

取り扱う話題が話題だけに、会話が混線したり意図しない人に聞かれたりしないよう、各部屋で離れて話すことができます。

ワールド中央には焚火もあります。この焚火もまた、来場された方々の交流を静かに暖かに照らしてくれるでしょう。

今回からイベントが安全かつ様々なスタンスの方にとって回るよう、ルールやタイムテーブルが設定されるようです。

詳細や2回目以降の開催情報は主催であるのあさん、または癒色えもさんのXをご確認ください!

のあさんX:https://x.com/noah_adad
癒色えもさんX:https://x.com/ishiki_emo

投稿者プロフィール

ゆーてる
ゆーてるバーチャルライフマガジン二代目編集長
楽しいこと、誰かが頑張ってる姿を見ることが大好きなVRライターです!
ぼく自身もVRChat上でいろんな活動してます!

バーチャルの楽しいことをたくさん知ってもらえるようがんばります!