「DJ界隈に良く遊びに行くなら、このイベントに行ってレポート記事書いてくれませんか?」
先日、バチャマガ編集部からそのような依頼が筆者のところにありました。
「確かに時々VRChatのクラブイベントに行った話をツイッターで書いているけど、そんなマメに行ってるわけではないんだよな……」
そう思いつつ添付されたイベント告知ツイートを見ると、こんなことが書いてありました。
「覆面(VR)DJイベント」に「虚無のブース」。この二つの言葉だけでこのクラブイベントがかなり特異な性質であることが伝わります。
リアルやVRにおけるクラブ(DJ)イベントにあまり馴染みのない人向けにもう少しかみ砕いた説明をすると、
- 「当日になるまで誰がDJプレイをするかわからない」(リアルのものを含め、出演者が事前に告知されないクラブイベントを筆者は見たことがありません。あっても稀でしょう)
- 「DJブース(ステージ)上にDJが居ない」(リアルのクラブではありえない事ですが、VR世界においてDJは「リアル世界でDJプレイを行い、その音声をイベント会場に配信する」形式を取っているためこのような事が可能です)
という特色をこのVRクラブイベントは持っている、いう話になります。
「『ブースにDJが立たないから、当日になってもDJプレイ終了時まで誰がDJをやっているか分からない。客はフロア(会場)内に居る誰がDJしてるかを予想しながら音楽を楽しむことになる』ってことか……?なにそれ面白そう」
そう感じた筆者は依頼を引き受け、当日イベント会場に向かうことにしました。
目次
イベント開催ワールド
会場は「Diamond」というVRC SoundClub「Square」(管理人:餅屋さん)が運営しているクラブワールドでした。

DJ一人目(21:30~22:00)
イベント開始時刻の21:30時点での参加者は主催者の「tomo3ちゃん」さんを含め8名ほど。少々寂しい感じでのイベントスタートとなりました。
DJプレイはアコースティックサウンドから始まりポップスを経てロックミュージックに発展していく、かなりジャンルレスな構成。
もっとも、筆者は選曲や構成からDJを推測できるほどDJ界隈に詳しい人間ではありません。そこで「ワールド内の動きで推理できるかもしれない」と思いワールド内に居る人を観察してみることにしました。




……うん、無理だったわこれ。
考えてみれば、DJはフルトラッキングで立ったり座ったりした状態のままでプレイすることも可能ですし、観客側もほとんど動かない(デスクトップモードの)状態で音楽を楽しむことが可能です。ワールド内の姿勢を少し見ただけではその人がDJか観客か判別するのは不可能です。
そうこうしているうちにDJプレイが終了し、主催者による答え合わせ(誰がDJをしていたかの正解発表)の時間。
「一人目のDJは……Tokageさんでした!」

本イベントにおいて、DJはプレイが終了して初めてブースに現れる事になります。
Tokageさんのコメントによれば、「選曲などで自分(Tokage)と匂わせるようにしてた」という事で、DJの推理をしやすい構成だったようです。
……確かに、この後に続いたDJ達と比較するとその通りだったかも。
DJ二人目(22:05~22:35)
二人目のDJはサブカルチャー色の強いクラブミュージックやインターネットミュージックによる選曲構成。
筆者はTokageさんとはまた違ったジャンルの音楽を楽しみながら、写真を撮ったり参加者の輪の中に入って会話を楽しんだりしてました。
覆面DJの重圧から解放されたTokageさんが伸び伸びと振舞い始めた事も影響してか、最初大人しめだった会場の雰囲気も少しずつ温まってきた感じに。
そして答え合わせの時間。
「二人目のDJは……vj_novuさんでした!」

「え、この人さっきの話の輪の中に居たような……というか『VJ』って……」
(VJ:クラブイベントなどで流れる映像を演出する役職。DJとは明確に区別される)
なんでも、普段はVJとしての活動が多いが(リアル含め)DJとしての活動もやっている方とのこと。完全に騙されました……。
DJ三人目(22:40~23:10)
三人目のDJは「王道」と言って良いぐらいのハウスミュージック主体の選曲構成。
この時参加者の数は20人ぐらいにまで増えており、会場のあちこちで「誰がDJをやってるのか」を推理する内容の会話が飛び交うざわざわした雰囲気になっていました。
実は本イベントの告知ツイートに明記されておらず、この記事内でも紹介していなかった(DJ推理のために重要な)ルールが一つあります。それは、
「DJは自分のプレイ時間の半分以上は会場に居ないといけない」
VRでのDJプレイの性質上「イベント会場のワールドに居ない状態でDJプレイを行う」事も実は可能です。ですが、それでは観客が「誰がDJをやっているか」をいよいよ推理できなくなるため、主催者が事前にそのような取り決めを行っていたそうです。
会場の観客にもそういうルールがあることの説明があったのですが、そこから
「じゃあ『DJプレイの途中に会場に現れた人こそが怪しい』ってことにならない?」
という推理が生まれ。結果としてイベント会場に人が入ってくるたびに入口に飛んで行って
「ねえねえ、いまハウス(ミュージック)やってる?」
と聞く人が出てくるという、なかなか混沌とした事態がこの時発生していました。
そしてプレイ終了と答え合わせ。
「えー……今回は皆さん本当に騙されたと思います。三人目はDJ masaco.さんでした!」

「いやいやいやいや……あなた、会場に入ってきた人に『ハウスやってる?』って聞いて回ってた張本人じゃないですか!」
しかも本人曰くハウスミュージックをプレイするのはこの日が初めてだったそうで……
「普段やっているものとは全く違うジャンルでDJをしながら、会場の誰よりも盛んにDJ探しをして騒ぐ」という高度な嘘を目の当たりにして、筆者は「もうなにもわからん……」と軽く絶望していました。
DJ四人目(23:15~23:45)
このあたりになると混沌は極致に達し、「人型以外のアバターが大量に発生してワールドを飛び交う」という、もはや推理どころではない雰囲気になってました。「あなたDJやってないよね?」みたいな会話をしてる人たちも居ましたが。

「音は流れてるのにブースには誰も居ない」というのは本当に不思議な感じでした
そんな中、前の三人のDJに比べてテンポの速いハードな内容ながら時折kawaii系のサウンドも混じった選曲構成でプレイをやり抜いたのは……DJ Sunkoさんでした。

答え合わせ時に(本当に)初めて嘘をついた人のようなコメントを残していたのが印象的でした。
ちなみにイベント後の本人のツイッター投稿によると、Sunkoさんもこの日は普段やったことのないジャンルでのDJプレイを行っていたとのこと。
「Blind Test」は今回初めて開催されたイベントなのに、皆さんやってる事が高度すぎる……
集合写真(23:50)
各DJによるイベント宣伝の時間の後に参加者全員で集合写真を撮り、閉会となりました。

「プレイ終了まで会場に居る誰がDJをやっているか分からない、覆面DJイベント」
という前代未聞のスタイルで行われたクラブイベントではありましたが、主催者さんや出演DJさん達がいろんな形で観客を盛り上げ、騙してくれたお陰でとても盛り上がったイベントになってたと思います。イベント後半の混沌とした展開は主催者さんにとって予想外だったかもですが……
現在VRクラブイベントは開催数も増えて盛り上がっていますが、こういう「VRだからこその実験的な要素のあるクラブイベント」がもっとあるとイベント通いがさらに楽しくなりそうだ、と「Blind Test」を振り返って感じています。
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