『技術で音楽をハックする』をテーマに未来の音楽を切り開くべく活動するアーティスト『memex』
高い歌唱力を持つボーカルのアラン氏と、楽曲制作だけでなく技術開発も手掛けるぴぼ氏の注目ユニットの素性をインタビューさせてもらいました。
ーー今日はよろしくお願いします!さっそくですけれど、memexさんの自己紹介をお願いします
ぴぼː VRをめっちゃ活用するアーティストですかね…(笑)
ーーわかりやすい説明!
ちなみにVR自体はいつごろから始められたんですか?
アランː 2018年6月くらいにぴぼさんが1人でVRChatをやり始めて、私が初めてVRChatに触れたのが8月かな。
ぴぼː 元々お互い知り合いで。それぞれ別々に音楽活動をしていたのですが、僕がVRChatでの音楽活動に触れたことをきっかけにユニットをやりましょう!という話が一気に盛り上がって。
2019年の1月1日にmemexとしてのオリジナル曲を出して正式に活動開始しました。
ーー1月1日から活動開始というのはめでたいですね!
アランː めでたい!
ぴぼː ははは、なんでだっけ?
アランː 夏場くらいからユニットやりましょうよって話してて、最初は10月くらいには動き出したいですねって話してたんですけど。
MVの撮影を他の方に協力してもらえることになって、たくさんのアイデアを受けて、たくさん打ち合わせを重ねて、気付いたら年末になってました。
もう年末だね、大晦日に出す?年明けに出す?って話して、年明けにやろうと……!
ぴぼː 当時Mikipom@cakemas0227さんっていう方が即興でパーティクル演出ができるワールドを作っていて。『ここでMVを撮らせてもらえませんか?』って相談をしたら、MVのために1から演出を作ってくれることになって。
それからsabakichi@knshtykさんという方も撮影するためのシステムを作ってくれて…。
そんな風に話がどんどん大きくなって、すごい素敵なMVでデビューすることが出来ました。
ーーデビューからインパクトが強いですね!
ぴぼː 『VRChat一発撮りMV!』ということで当時結構注目して見てもらえたっていうのはありますね。
その後MVと撮影したワールドを含めた作品、「memex「Cloud Identifier」Music Video + Virtual Creation Studio」はVRクリエイティブアワード2019にてデジタルハリウッド賞を受賞しました。
ーーちなみに今いるこちらのワールドは…?
ぴぼːここは『studio memex』という名前のワールドで、動画を撮るときに使っています。
今いる場所はアルバムをリリースした際に行った即売会イベント「#めめ3」仕様のものですが、長机が無いバージョンの部屋はPublicワールドとして公開しています。
ーー部屋の左の方はスタジオになっているんですね!
ぴぼ はい、中に入ると再生ボタンがあるんですが、押すとmemexの楽曲が流れます。
ベースやギター、ドラムの音などがオブジェクトに割り振られていて、ベースの音はベースから、ギターの音はギターから聞こえるようになっています。
多方面に活動を広げる『memex』
ーー直近では10月30日に新曲も出されて…。『欺いたままで』はこれまでの3DMVと一風変わって手書きアニメーションのMVでかっこいいですね。
ぴぼː これまでの楽曲はアバターを活用したMVになっていますが、今回はmemexの活動をもっとたくさんの人に知ってもらうための入口として“VRの人”という文脈を入れないMVにしてみようという意図がありました。
MVはイラスト・アニメーションを制作されている文さん@bunbun_1216に制作して頂きました。
2年近く活動してみて、最近は自分から外に向かって広げていかないといけないと感じることが多くて、バーチャルな世界以外のところへもアプローチするというのを試している所です。
アランː そのほかにカバー動画もアバターを使っていないもので上げてみたり、いろいろと試していますね。
ぴぼː そこからVR空間でのライブなどに興味を持ってもらって、この世界が盛り上がっていったら嬉しいなと思っています。
ーーmemexさんといえば音楽もクオリティ高いですけど、VR技術もすごいですよね。
5月の同時ワンマンライブ『解釈不一致』も見させていただきました!
あの技術もぴぼさんが全部システムを手掛けたのですか?
ぴぼː 多くの先駆者の方々のライブラリやツールを沢山利用させて頂いていますが、ライブの根幹となるシステムは僕が作っていて、それを最大限活かす演出と演出のためのシェーダーなどは、Mikipomさんにワールドごと作って頂きました。
ーー会場内にTwitterハッシュダグのリアルタイムコメントが流れたり、1人で見てる人もいれば友達とみてる人もいたり、publicで見てる人もいて、インスタンスがみんなバラバラなのに全部一体になっている感じが新体験というか…!すごいライブ感があって楽しかったです。
ぴぼː ありがとうございます。ステージとの関わり方をお客さんに委ねたのは『ライブって何だろう』っていうのを問いたかったところもあって。
お客さんが同じ空間で他のお客さんの熱を感じられればライブなのか、それとも歌が生であればライブなのか、とか。
人によっていろんな自分にとっての「ライブらしさ」っていうのがあると思うんですけど、普段のライブの概念から離れた時に、受け取った人はどこに寄せようとするかなと…ちょっと変わったライブになっていたかと思います。
ーー現実のライブともちょっと違う感じでしたね。生演奏なのでライブといえばライブなんですけど、観客はそれぞれ別の空間にいて、でも単なる映像配信ではなく、目の前に立体的にぴぼさんやアランさんが動いて歌っていて…。
今までの概念では説明できないライブですよね。
ぴぼː そうですね。アルバムの曲を収録順に演奏したのですが、アルバムの構想を考えていた時期は『Vtuberの命は誰のものなのか?』というような議論があった時期で、アルバム自体がそのテーマを9曲かけて描いたものなんですね。
あのライブの時って僕たちの姿がギザギザの状態になって出てきたと思うんですけど、そういう見た目はmemexそのものではないが、僕たちがmemexとして積み重ねてきた音楽や演奏、身振りといった部分的なmemexらしさだけは伝わるという状況で、それがお客さんにとってmemexの2人だと感じられるかどうか?というのが最大のテーマになっていました。アルバムを通して表現したかったものとリンクしていて。
ーーほかにもたくさんライブをやられているかと思いますが、今までやってきた中で印象に残っているライブは何ですか?
アランː う~ん、なにがいいかな。
ぴぼː 大仏の前でライブして、現実世界でお客さんに正座で聞いてもらうライブとか……。
あれは凄く面白かったね。
ーーえっ!?どういうことですか…!
アランː めっちゃ説明が難しいやつじゃん!それ(笑)
ぴぼː メディアアーティストの坪倉さん@kohack_vが企画してくれたライブだったんですけど、すごいでかい、目からレーザーが出る大仏の前でライブして、その様子を撮影したものをリアルの世界の畳の座敷にスクリーンで流して、お客さんはそれをヘッドホン付けながら正座で聞いてもらうという。物凄くコンセプチュアルなライブでした。
ーーなかなか前衛的なことをしますね…!
ぴぼː 他のVRプラットフォームだとclusterもそうだし、あとは自分たちで作っているUnity製アプリケーションでライブしたりとか。
なので1つのプラットフォームに限らず活動しています。
ーー今後の活動について、どんなことをやってみたいとかありますか?
アランː え~、どうだろう?…ダンス?
ーーダンス!?アランさんが踊るんですか!?
アランː ふふふ、ずっと言ってるけどやってない(笑)
ぴぼː アランさん、もともとダンスもしてた人なんですよ!
でも機材的にトラッキングの問題とか、いろいろ試してはまだ難しいなぁ~なんて様子を伺っているところではありますね。
アランː そうですね。でも活動始めた当初は私、まだデスクトップモードで手足を動かすこともできなかったんですけど、そこから見るとだいぶ進化しました!
3点トラッキングで動けるようになって、5点トラッキングで動けるようになって、10点トラッキングで動けるようになって…アップデートはしてるんですけどね。
ぴぼː あとはやっぱりVR空間でしかできない表現をやっていきたいな~というのはあります。
そのためにも、ライブを見てくれる人を増やしたいですね。
アランː ライブ、たくさんやりたい!
ぴぼː ライブをたくさんやるための仕組みを整えていきたいというのは強く思っています。
memexのスタジオや5月に行った『解釈不一致』のライブのアーカイブワールドはVRChatで一般公開されているので、興味があったら是非遊びに来てください!
memexオフィシャルサイト http://meme-x.jp/
Twitter https://twitter.com/memex_am
YouTube https://www.youtube.com/c/memex_am
『memex』
VR技術を駆使し活動する2人組アーティスト。
2019年1月1日から活動開始し、クリエイティブユニットarsと共同制作した 一発撮り・無編集のミュージックビデオ「Cloud Identifier: 集合知に偏在する残滓による自意識の再構成」が反響を呼び、活動開始から1週間で視聴動画が2万再生されるほどの話題となる。
2020年5月、独自開発した数百万人が同時視聴可能な VRライブシステム「Omnipresence Live」を発表。同システムを用いたワンマンライブ「#解釈不一致」を成功させ、イベントのハッシュタグ「#解釈不一致」はTwitterでトレンド入り、MoguLiveが行った「最も印象に残ったバーチャルライブ」がテーマのアンケートで5位になるなど、大きな反響を呼んだ。