メタシアター演劇祭レポート2日目!演劇祭なのにふたつのアイドル活動で大きな振れ幅を感じた話

リアルイベントも2日目!

前回に引き続き、メタシアター演劇祭2日目のレポートをお届けします!

新宿NEUUでのリアルイベントは2日間を予定しており、この日は「VRパフォーマンス鑑賞」を来訪されたお客様に体験していただく、という内容でした。演目はカソウ舞踏団さんによる演舞パフォーマンスと、白紙座さんによるインプロ(即興劇)です。

個別のお客様への説明を細かく回す…… という初日の内容に対して、2日目はお客様をある程度同じタイミングに集め、合わせてスタートする必要がありました。観劇という性格上、始まってしまえばリカバリーも難しいことから、お客様への事前説明も更に気をつけるべきだろうと考えて行動にあたりました。

それぞれVR機器を使用しているのでVRChat内のアテンダーや
演者・役者たちと実際にコミュニケーションを取っている

様々なご協力をいただき、この日は最大で5台のVRChatアカウントを備えていましたが、何の因果か結果として丁度5名のお客様が来てくださることとなり、2日目も最大の稼働を実現できました。

お客様の中には遠方からの旅行中で「何か面白いイベントはないか」と探したところ偶然見つけたものだったという方がいました。当然VRは初体験なので、説明は慎重に、体調不良時への備えなどをお伝えした上での開催でした。

カソウ舞踏団による演目をNEUU会場の壁面へ投影したもの
まったくのVR未経験者が鑑賞できる状況を実現できた

残念ながら、初日同様に準備に時間がかかることとなり、この点ではご迷惑をおかけすることとなってしまいました。しかしながらご参加いただいたお客様は2時間近い長丁場の体験でありながら、かなり楽しまれているように見え、VRパフォーマンスへの手応えを感じられたイベントとなったのではないかと思います。

白紙座のインプロ(即興劇)ではNEUU来場者を交えてのアドリブ劇を実施

初日に引き続きVRアテンドの皆様に加え、カソウ舞踏団と白紙座の皆様は非常に細かくお客様への心遣いを注いでいただき、頭があがりません。現実側からVR側への接続に手間取ってしまったことは私自身の反省として、次回があるならばもっと想定や設計を詰めていけるようにしたいと感じた次第です。

原稿と観劇とリアルイベントの活動を重ねたことで体力的に限界を迎えていたのもあり、帰宅してから睡眠を取って2日目の「本番」へ臨むことにしました。

桜兎フルガの安心感あふれるライブを見よ!

目が覚めてタイムスケジュールを見るとそこにあるのはアイドルライブでした。

トラスク

アイドルライブかぁ……

これまであまりアイドルに興味を示さなかった私は少し悩みましたが、せっかくだからと軽い気持ちでインスタンスへ入りました。先に結論を言いますと、この時に入ることを決めた自分を褒めたいです。メタシアター演劇祭で一番推しかもしれん。後で配信アーカイブリンクを載せますので、ぜひ見てください。

席につくと桜兎フルガさんが幕の前に現れ、前説をはじめます。

桜兎フルガ

……なんだろう? 脱力系の中にあるこの安定感は一体……?

説明開始10秒で伝わってくる「場馴れ感」が私の警戒心を一気に溶かしていきます。いや…… でもなんだか脱力系だし…… 私この感じ知ってる…… どこだったかな……? アレは確か……

観客の誰かが「温泉か…?」って声に出してたよ

昔の社員旅行であったわこの感じ!!!

1曲目から『マツケンサンバ』そのまま流れちゃってるよ!! 笑っちゃうだろこんなの!! アイドルライブ?? 大丈夫か!? 一体何が起こっているんだ……

マイク入れ忘れて「あっ!」と言いながら一瞬曲を中断してもお構いなしに続行し、そのまま客席へ突入。最後まで一曲通して歌い切ってしまう勢いに唖然としながら、なのに全然危うさがない。安心感が段違いすぎる。経験値が…… 経験値が高い……ッ!!

鋼の胆力 + アツい経験値 = 安心感

ユルい感じで見逃しそうになるが、トラッキングやアバター設計
しっかり詰め込まれた振り付けや表情選びには手抜かりがない

全部で4曲を歌い切り、その間も絶妙(で脱力する)トークを途切れさせない「実力」に、30分が一瞬で通り過ぎてしまいました。もう絶対に見て欲しい。最終的にきちんとアイドルしてくれます。

『サンバ』の後のアイドルソング3曲は注意深く見ていると、かなり準備に力が入れられているのが分かります。メタシアター演劇祭の個人的ダークホースです。完全に油断してました。現地で観られてよかった。

以下配信アーカイブの舞台本編は4分15秒ごろから!

どうやら普段はClusterで活躍されているそうです。最後のオリジナルソングの歌詞で「芸人じゃないもん アイドルだもん」って言っていたので、そういう感じなんだと思います。最高です。30分楽しかったです。

怒涛のオリ曲40分!在りたい自分を追求する蘭茶みすみん

クリプトアイドルメタバース 蘭茶みすみん(中央)

実は同じ日にもうひとつアイドルライブがありました。桜兎フルガさんと入れ違いのようなタイムスケジュールで、向かってみると既に蘭茶みすみんさんのライブが始まっていました。

360度全面タイプの劇場で観客も舞台に降り立ち、かなり近い距離感で次々と楽曲が奏でられていきます。40分の中でなんとオリジナル10曲分ぶっ通し、しかも全部ひとりで進行するという力強さ。

楽曲はテクノっぽい音色でポップな曲調が中心でしたが、その中でも異色なのは『メタバース音頭』です。盆踊りのあの動きをみんなでやりつつ「メッタメッタ、メッタメッタ、メッタバーァスー……」と歌う。

敢えて言えば、ライブとしての洗練さよりも不器用な粗さを残したまま突っ走る、イメージよりもメッセージ、削る暇があれば全部出す、そんな多数派ではない舞台だったかもしれません。正直なところ、入場して少しの間は困惑してしまっていたのですが、舞台の方針がわかってくると、むしろその差し迫ったかのような全力さに励まされる気持ちが湧いてきました。

演目が終わりに近づくにつれ、なぜこうしたライブをやろうと思ったのだろう? という疑問が湧いてきました。最後の曲が終わり退場の時「普通の女の子に戻る」とセリフを挟んでいたことが印象に残り、調べてみることにしました。

蘭茶みすみんさんは「クリプトアイドルメタバース」というグループのリーダーを務めています。自身が抱える肉体的・精神的な課題に対し、なりたい自分の姿をメタバースで表現する、という活動を続けているそうです。

体当たりのような勢いを感じたのは、まさに文字通り体を張った活動を積み上げていたからなのかもしれません。

新たなパフォーマンスへ飛び込む喜びを

メタシアター演劇祭の夜に行われたふたつのアイドルライブが、これほど対極的で、想像を超えてくるものだったとは、誰が予想できるでしょうか? もちろん演劇祭なので演劇を観に行こうとするのは自然なことです。

「VRパフォーマンスに関わる全ての人のための舞台」であるメタシアター演劇祭だからこそ、普段の自分では立ち入らない世界に触れられたのだ、と思わずにはいられません。