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2024年2月にResoniteで開催された『Metaverse Maker Competition 2024』(以下MMC)は、1ヶ月間という限られた期間でResonite内の制作を競う大会です。MMCは2020年からNeosVRで開催されていましたが、2024年度はResoniteにその舞台を移しました。
MMCはアメリカの慈善非営利団体であるCreator Jamによって運営されています。クリエイターが自由に集い技術などを交流する会を毎週開催することを基本としており、MMCはその集大成にあたるイベントです。
海外でのイベントではありますが、主に日本人によって構成されるチームも多く参加しています。MMC2024では複数の部門で日本人チームが入賞を果たしました。
Art部門 最優秀賞 制作チーム『Neo Extreme』インタビュー
Art部門の最優秀賞に輝いたのは『Neo Extreme』チームの皆さん。実は、バーチャルライフマガジンで以前インタビューを行った、QvPenによる空間絵画を得意とするGunberryさんが所属するチームでもあります。
最優秀賞となった作品『百鬼夜行 -化猫譚- Tales of a Mystic Cat』は、現在でもResonite内で鑑賞可能です。作品は入口のスタートボタンを押すと、猫が乗り込んだ牛車に連れられて自動的に進む形式となっています。(※記事末尾にResonite内でのアクセス方法のガイドを付記しています。)
しかしながら、自由度の高いResoniteとはいえ作品の裏側を窺い知ることはなかなかできません。たった1ヶ月という期間で、世界を相手に勝ち抜いた作品はどのように制作されたのか……直接インタビューしてきました!
まずは『百鬼夜行』の物語を追いかけよう!
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『百鬼夜行 -化猫譚- Tales of a Mystic Cat』のワールドに入ると、机の上で寝ている猫のいる部屋に降り立ちます。設置されているSTARTボタンで開始。すると、夕暮れの明かりが妖しさに包まれ暗く落ち、不思議な牛車が現れて猫とともに闇夜へと出発します。
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作品は最後まで自動で進みますが、今回は解説のために止めながら進んでいきましょう。
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この世からあの世へと進み入る、彼岸花と川渡り
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まずは彼岸花の場面ですね。
ここにある花はパッと見ると同じものをコピーしているように見えるかもしれませんが、何種類かの花を用意していて、それぞれイチから作っているんですよ。
もちろんResonite内で手書きで作ったお花です!
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牛車もResonite内でBOXを組み合わせたりして、チームメンバーのTorazoさんに制作していただきました。
派手に動くテクスチャは、Torazoさん自身の絵画作品をAIで映像化・編集して作成したものを持ち込み、いわゆる車輪部分の雲はResoniteBrushを使って直接ドローイングしたものです。
牛車を引いている鳥のような妖怪はTorazoさんの絵画作品をそのまま使用して、最後に私が動きをつけたものとなります。
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途中で横切る大きな鳥などは、牛車の進むタイミングに合わせた演出として制御しています。
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僕は技術的なことが何もわからないので……
描いたものを渡して、ちょっとしたらもう動いてるんですよ。凄いですよね!
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実はそんなに複雑なことはしていないんですよ。
むしろ、ひとつひとつの作品……つまりパーツにあたるものをResonite内という“現地”で直接作って渡してもらえるので、とても直感的に配置できるんです。
それにこの方法なら、他の皆さんのご意見もその場でいただけて、表現したいイメージのやりとりがとても早くなります。
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インタビューをしながらその場で設定していく姿は「これぞインタラクティブ」と言わざるを得なかった
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彼岸花の奥には“川”を渡る橋があります。
私が橋の設計をしていたのですが、当初はアーチ状の橋を想定して仮置きしていたんです。見栄えとしては良かったのですが、全体を通して牛車が真っすぐ進んでいくのに対して、「アーチに沿った表現をするのが大変だ」ということになりました。
1ヶ月という限られた制作期間だったこともあり、こちらは分かりやすい妥協点と言えるかもしれません。
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橋に到達すると登場する、空中を泳ぐ魚たちもとても印象的ですが、透明の板ポリゴンにテクスチャとして張ったものが左右に動かされているだけで、とても簡単に設定できるんですよ。
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空中を泳ぐ魚が“非現実”を表現していて、“現実”の彼岸花と対比しているかのようだ
徐々に迫力を増す常世の『百鬼夜行』
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橋を渡ったら場面が変わって妖怪の世界です。
まずは竹林なんですが、小さな妖怪が隠れているっていう表現になっています。ここにある竹やススキもいくつかのパターンを用意して、イチから描いたものです。
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ここに登場する黒い影のような妖怪たちは、実はGunberryさんの作品ではなかったりします。
K.ᴗ.(Ambientflow)さんという方がメンバーとして参加していて、影の妖怪たちはこの方に描いていただきました。
──K.ᴗ.(Ambientflow)さんと言えば、音楽で活動されている方ですよね? バーチャルライフマガジンでも以前、『メタシアター演劇祭』の路上ライブに出場されていたのを取材しました。私が偶然その場を通ってそのまま記事とさせていただいたのを覚えています。
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お名前だけを聞けば音楽・音響の担当だと思いますよね。
本当に多才な方で、今回はこちらの影絵専門として参加していただいています。『百鬼夜行』の最後に配置しているクレジットでも“Shadow Images”という担当名で入っていただいています。
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ただの影に肝を冷やしただけだとタカをくくっていると、段々と“向こう”に連れて行かれてしまうぞ
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竹林を抜けると、もう完全に妖怪の世界です。
ドクロ達が彷徨うところで、自然物はありません。
そこかしこにあるヒトダマは奥へ行くにつれて増えていきます。現世にもあると仮定して、実は序盤から配置されてます。
ドクロ達が居るのは賽の河原で、逃れられない霊が滞在することを表すためにヒトダマも多くなっています。ひとつの地獄観を演出したつもりです。
当初は明るい色から紫へと罪深さが濃くなっていく演出を狙っていたのですが、制作期間やワールドの軽量化の問題で色替えは流れてしまいました。
最後にあるお堂まで到達すればヒトダマは一気になくなります。あの世を抜けて晴れるというわけです。
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歩を進めるとドクロ達の立体的な構造がはっきりと見えてくる
VRだからこそ味わえる視点の妙味だ
がしゃどくろへ挑む“化け猫”のちからを見よ
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奥には巨大なドクロ……がしゃどくろがいます。
一体は通り過ぎるんですが、更に巨大ながしゃどくろが道を塞いでいるという流れです。
──めちゃくちゃデカいですよね。立体的でもあるので、くぐる前からかなり迫力があります。どのように描くのでしょうか?
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基本的にはこのサイズそのままで描きます。
描いてから拡大縮小という感じではないですね。ただ、描く時に自分自身を大きくしたり……といったことで調整することはありますよ。
──VRChatでも同じインスタンスにいると、いつのまにか大きな作品が出来上がっていて驚かされたことが何度もあります。Resoniteでもそのスタイルだったんですね。
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この後に、妖怪たちの百鬼夜行の大ボスであるがしゃどくろが登場します。化け猫がどくろの心臓を奪うことで、がしゃどくろが崩れ落ちるという場面です。
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もちろん「この部分が分かれて崩れるんだ」と想定した上で描いたものではあるんですけど、tomo9さんに渡してみて「こんな凄い迫力で崩れるんだ!」って、かなり驚きましたね。
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Gunberryさんが最後のがしゃどくろを短時間に一発で持ってきたのも、かなり驚きましたよ。
どうやろうかなコレ……って(笑
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いやぁ……筆が乗っちゃって(笑
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崩れるだけではなく、頭や腕などもこの時点から大きく動く
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──つまり、Gunberryさんはあくまでモデルを描き、がしゃどくろの大きな動きや崩れ落ちる順番や音といった演出はtomo9さんが割り当てたということでしょうか?
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そうですね。
実際に動いてみるまで自分でもここまでとは想像できませんでした。
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やはりそれでも、実は複雑なことはしていません。
タイミングをとって、このくらいの時間が経過したから次はココが動いて、その時に指定した音を鳴らして……ということを繰り返しているだけだったりします。
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細かい配置や動きについては、こうして現場で見ながらみんなで色々と意見を出して調整していきました。VRChatでも近しいことはできますが、やはり開発者がUnityに戻って作業して……という“一枚”を挟むことになります。
繰り返しになりますが、この点は本当にResoniteの強いところです。
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がしゃどくろが崩れる場面の設計だが、これはこれでまた違った迫力がある
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複雑じゃない……のかなあ?これ(笑
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圧倒されるよね(笑
百鬼夜行を通り抜け、化け猫は家に帰る
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──最後の場面には、Gunberryさんによる大写しの作品が堂々と登場します。こちらの作品もResonite内で描いたものなのでしょうか?一見してVRChatで見かけるQvPenに近いタッチのように見えますね。
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はい、全て……というと厳密には違うのですが、Resonite内で描きました。
というのも、和紙のように見える台紙部分のテクスチャは、僕の家にあったそれっぽいモノを撮影した写真をそのまま持ってきたものなんです(笑
──このテクスチャ、リアルの写真だったんですね。
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ペンについては、linki9s7さんやN-JELLYさんなど、今日は来れなかった他のメンバーからも技術的な部分でかなり助けていただきました。
こんな感じのタッチで描きたい!!と言えばどんどんそれを出してもらえたので……
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Gunberryさんには細かい技術的なことよりも描いてもらうことが重要ですから!!
──そして牛車から降りた化け猫の足跡がひとつひとつ現れて、絵の中に入り、カラーが着いてエンディングとなります。とても幻想的で“読後感”の良い演出だと思いました。
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この足跡の演出は、もうすぐ締め切りっていう最後の最後で思いついちゃって……どうしてもやりたかったんで無理言って入れてもらいました!!tomo9さんすみません!!
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Resoniteの中で一緒に作っていく醍醐味ですよね。
この大きな絵はもちろんGunberryさんが配色も含めて描いたものですが、全体的な色味というものは現場で見てみないと「ちょっと違うな?」ってなってしまうことがあります。
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あとで紹介しますが、ひとつひとつのパーツはResonite内の別の作業用ワールドを立ててそこで作っていました。なので、この『百鬼夜行』のワールドに持ってきてみるまで分からない部分もあったんです。
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こうして現場で来場者のVR視点に立ったまま全員で試行錯誤できる
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マテリアルのカラーなどもResoniteの中で変更できますので、制作者全員が同じVRの視点で共有しながら意見を交わせます。
「もうちょっと明るく」なんていう意見も、目の前にあるUIを触るだけなので、ほとんど会話のように試せるんです。
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化け猫は元の姿で眠りに戻る──それは常世の夢か現し世か
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絵の左下にあるギャラリーへ行くボタンを押すと、化け猫が元の姿で眠る演出が入って、最初の部屋に戻ります。
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エンディングの部屋はメイキングやクレジットを置いてます。
棚には作品の中で登場した小物などを並べてあります。
この家の主にしてみれば、猫は変わらず机の上で寝たままのように見えていて、さて化け猫になったのかどうなのか……?
といったところでおしまいです。
Resoniteでの活躍は、TorazoさんとGunberryさんが、K.ᴗ.(Ambientflow)さんを通じて知り合ったきっかけからはじまったようです。お二人の合作である『登竜門/Dragon Gate』に登場する龍には心臓が配置されており、今回の百鬼夜行で登場するがしゃどくろの心臓といった共通点も見られます。
チームとしての制作手法に迫る
Resoniteだからこそ可能な“インベントリ”のやりとり
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『百鬼夜行』のワールド内で直接なにかを描くこともできるんですけど、動物の構造だとかをしっかり描こうと思えば、きちんと資料にあたる必要があります。
ですので、僕は“自分用の制作部屋”をワールドとして用意して、基本的にはそちらで作業を進めていました。
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Resoniteは作成したものをその場で“アイテム”のように管理できます。
それぞれのプレイヤーには“インベントリ”と呼ばれる枠が備わっていて、RPGのアイテムのように仕舞って所有できるんです。
インベントリにあるデータは、そのまま別のワールドへ直接持っていけるので、これを利用してGunberryさんには“アトリエ”で制作を進めてもらうという体制にしました。
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ちょっと散らかっちゃってますけど……
これでも制作中に比べればだいぶキレイになりました。
──制作に必要な資料もResoniteの中に持ち込んじゃうんですね。いや、中で直接描くのであればその方が自然ですが……「言われてみれば」という気分です。
必要なツールはその場で用意するチームの強み
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先ほども少しお話しましたが、ペンに限らず色々な便利ツールもどんどんチームの人たちが用意したり作ったりしてくれるんです。
ですので、可能ならResoniteの中にある方が何かと都合が良く、話が早いんですよね。
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奥ではオブジェクト化された翼をtomo9さんが抱えている
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このつばさを描いているペンは、ひとつのストロークごとにひとつの3Dオブジェクトとして生成してくれるようになっています。
ですので、ちょっと線の位置を直したいと思ったら、消して書き直しても良いんですけど、掴んで位置を変えるという手法も取れるんです。
ですが、僕はどうしてもストロークが早くなりがちで、別の3Dオブジェクトとして判定が挟まる前に次々と描いてしまい、いくつかのストロークがまとまった3Dオブジェクトとなってしまうことが頻発しました。
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さらっと言ってますけど、こんな一瞬で動物っぽいオブジェクトが目の前で生み出されるのびっくりしますよね(笑
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これを相談したところ、「ひとつの3Dオブジェクトとして認識を待つ時間を極限まで減らしたペン」として調整したものをすぐに用意して貰えまして……
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目的にあうツールがなければVR空間内で作ってしまえることもResoniteの醍醐味かと思います。
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この猫のモデル横にある白い球体は、複数のオブジェクトをひとつにまとめて扱いやすくしてくれるツールです。こちらもチームの人達に用意してもらいました。
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これはペンの色や質感を選べるパレットのようなツールです。Unityで言うマテリアルだと思うんですけど、凄すぎてワケわかんないっすよね。
それでも残る現実的な制作の形と、表現物の土台となるもの
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エンディングで登場する化け猫の影絵の部分です。
これは現実のマジックのようにして一本一本線を引いて塗りつぶして描いています。こだわりと言いますか……自分で気に入っている部分です。
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──ここにあるのはリアルでお持ちの資料ですか?今回の作品とは関連性が少ないようにも思えますが、VRChatのQvPenで描かれてきたものに近いラフスケッチもありますね。Gunberryさんが取り組む創作活動の土台のようなものなのでしょうか?
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そうです、僕のリアルの部屋にあるものを撮ってResoniteに持ち込みました。
この資料を集めていた頃は「人間とはなにか?人間の進化はどこへ向かうのか?」に強い興味を持っていました。
その解明をしようと考えた時、宇宙や人体の構造、脳の成長過程を逆算すれば見えてくるのではないかと思えたんです。
そのようにして様々な思想・宗教・哲学の資料を集めていると、どこか共通のものを指しているようにも見えてきました。
この問いは「自分とは何か」を探ることでもあります。人間にとっての「真の幸福とは何か」を問うことと本質的には同義かもしれません。QvPenで描いている『誰も知らない物語』というシリーズは、こうしたことをテーマにしています。
そんな体験を通して、自分の内側のイメージをそのまま描き出せるようになっていきました。
──内側のイメージをそのまま描き出す、というのは何か具体的な物体を思い浮かべるというのとは異なりそうですね。
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言葉にしてこれを伝えるのは難しいですが、あえてお伝えするとすれば、頭の中に浮かんだビジョンを描いていこう……と考えました。自分が死ぬまでにそのビジョンを表の世界へ出さないのは、人生の心残りになるだろうと思ったんです。
そうして描いたものを(当時の)Twitterに上げてみたら、とても良い反応を頂いて軌道に乗っていったという経緯があります。それを今も続けているということになりますね。
全体進行もVR内だからこそまとめられた
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MMCはResonite内での制作を競う大会ですので、原則としてはResonite内でのデータを扱うこととなっています。
ですが、その線引が曖昧にならざるを得ない部分も当然出てきます。写真から用意したテクスチャなどは一般的な手法ですし、あまり制限しすぎても制作が厳しくなってしまうだけだったりするからです。
そこでルールとして、外部から持ち込んだアセットであれば、そのクレジットを掲載することが定められています。そうした管理もチーム進行としては大事な要素だと思います。
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1ヶ月の制作期間は必ずしも順調ではありませんでした。
私自身の反省でもありますが、全体進行をこの文字情報だけ(上記写真左側)でまとめてしまっていたんです。
そこで、K.ᴗ.(Ambientflow)さんがペンを使って全体進行の空間イラスト(上記写真右側)を描いてくれました。これがひとつあるだけで、どこに何を作り、どれだけの力をかければ良いのかが明確になって、制作のスピードが上がったんです。本当に多才な方だなと思います。
これ自体をインベントリに保存できますので、困ったら取り出して見ればいいというわけです。
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昨年のMMC2023に比べて、作品の空間的にも、人数としても拡大しての挑戦となりました。制作期間が1ヶ月という点は変わりませんので、それぞれの能力がどれだけ素晴らしかったとしても、計画や進行を無視するわけにはいきません。
Resoniteという空間の中で直接やりとりし、直接制作できるという環境があったからこそ、チームの皆さんの能力が最大限発揮されたのだと思います。
MMC2024のArt部門を優勝した『Neo Extreme』のインタビューでした。
とことんVR空間内で完結させるという、NeosVRから続くResoniteの文化の強さを感じられるお話だったかと思います。主にVRChatプレイヤーの読者が多数を占めるであろうバーチャルライフマガジンのいちライターとしても、VR空間にこだわっていく“凄み”には大きな価値があると感じます。
MMCは(恐らく今後も)Resoniteでのイベントですが、VRChatでも活躍されている方々が多く参加されています。日本のクリエイティビティは世界に向けて大きな可能性を示していると感じた次第です。次回のMMCでも更に多くの日本人クリエイターが参加されることを楽しみにしたいと思います。
『百鬼夜行』をResoniteで楽しむためのガイド
※VRヘッドセットを使用してVRChatを遊べる環境にある方を想定しています
(Steam、SteamVR導入済みの環境:デスクトップでもプレイは可能です)
(1) SteamでResoniteをインストールする
(2) デスクトップ起動なら in screen mode
VRなら Steam VRモード
を選択
(3) 画面の指示に従い設定を終えたら表示されるメニュー画面から ログイン/登録
を押す
(4) ユーザー登録
を押してアカウント登録する
(5) 登録したアカウントでログインできたら、メニュー画面の ワールド
タブを押す
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/04/033_resonite.png)
(6) 画面上部の検索バーに「百鬼夜行」と入力し検索する
(7) 表示された『百鬼夜行』ワールドをクリックする
(8) セッションを開始する
をクリックしてしばらく待つ(Escでメニューは閉じて良い)
【ワールドデータ読込方式について】
VRChatと異なり、Resoniteはワールドの情報を読み込む前にJoin状態となります。
読み込めたデータから随時表示されるので、完全に読み込みが終わっていなくともワールド内を移動できます。
ただし、制作者の意図した表示にならない場合が多いので、読み込みが完全に終わるまでその場で待機する方が良いでしょう。
投稿者プロフィール
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Gunberryさん
VR Drawings, World assets, Producing を担当
ワールド内で直接作品を描くメインのデザイナー
tomo9さん
Animation, Sounds, Producing を担当
ワールド内で直接動きや演出を編集する
tanossyさん
2D images, World assets, Producing を担当
企画から全体のディレクションを担うリーダー的存在