2024年4月10日、株式会社アダストリアはファッション特化型メタバースプラットフォーム『StyMore(スタイモアー)』の新サービス発表会を行いました。同サービスは本日10時から既にサービスを開始しています。
リアルとバーチャルの両軸でファッションアイテムを展開するECサイト『.st(ドットエスティ)』の運営も行うアダストリア。バーチャル特化のECサイト『StyMore』はオープン型の販売プラットフォームとして展開。アバター用の服や装飾を購入できるだけではなく、クリエイターにとっても参入しやすい環境を整え、新たな市場の拡大を狙います。
目次
“顧客接点”を拡大し続けた『.st』の成長
発表会はまず、アダストリア執行役員・マーケティング本部長・ドットエスティ事業本部長の田中氏が登壇。アダストリアの概要に触れ、『.st』によるデジタル戦略の拡大を振り返り、新たな領域への挑戦として『StyMore』開設に至る経緯が語られました。
アダストリアは服飾を扱う企業として70年以上もの歴史を誇ります。服飾のみに限らない30以上のブランドを擁する老舗としての存在感を持つ企業です。
大きな事業目標として掲げられた“デジタル戦略”は、『.st』を中心に拡大を継続。2014年の開設から打ち出されてきた、スタッフのインフルエンサー化、OMO戦略としての実店舗展開、オープン・メディア化を狙うBtoB展開、CtoC展開を支えるフリマサイト運営といった成長は、“顧客接点”の拡大によりもたらされたものでした。
さらなる拡大を視野に入れた時、VRSNSでのファッション需要が“新たな顧客接点”となりうる可能性を秘めていると分析し、『StyMore』開設へと至ります。
『StyMore』がVRファッションのハードルを下げていく
市場予測と購買統計からメタバースファッションの需要を指摘
『StyMore』へ話題が及び、アダストリアのメタバースプロジェクト責任者・ドットエスティメディア部長の島田氏の登壇となりました。
まずメタバース全体の市場予測から、2025年~2028年で3倍以上の拡大が見込まれる点に注目。更に、アバター関連商品の年間消費額や、アバター向け洋服の購入頻度といった統計情報、そしてアバターとファッションのアイテム購入比といった実績から「メタバースの世界にはファッションの需要がある」との結論に至ります。
Gugenkaと提携した“技術”で参入障壁の打破を狙う
メタバースファッションへの将来性を展望した時に、大きな課題として横たわるのが服を着せるための技術的なハードルの高さにありました。『VRChat』を具体的な例にすれば、UnityやBlenderの操作方法、様々なデータの取り扱い方、権利関係の把握など、ひとつファッションに挑もうとするだけでも必要な知識が多岐に渡るという問題があり、長らくVRSNS利用者の共通認識となっていました。
そこで、『StyMore』では株式会社Gugenkaと提携し、『Make Avatar』を導入することでこれらの問題の解決を狙います。『Make Avatar』はスマホ画面上のみでアバターへファッションアイテムを適用できるアプリケーションです。直近ではサンリオ主催の『SANRIO VIRTUAL FESTIVAL』に参加するための『モチポリ』を、ユーザーが準備するための事前ツールとしても活用されました。
これにより、 『VRChat』では実質的に必須となっていたUnityなどのツールを介することなく、気軽にファッションを楽しめるようになります。
さらに、『Make Avatar』は『Virtual Cast』『VRoid Hub』『DOOR』といったさまざまなプラットフォームに対応。つまり、『StyMore』でアイテムを購入し、カスタマイズしたアバターは、異なるメタバースの行き来を可能にします。プラットフォームごとに仕様を調整するのは非常に手間のかかる作業であったため、そういったストレスから解放される革命的です。
このことは、アバターファッションのクリエイターにとって制作に必要な考慮や負担が軽減されるだけでなく、ライトにVRファッションを楽しみたい顧客層という市場を狙える魅力にもつながることとなる訳です。
第一弾参入企業はサンリオ! 個人クリエイターやコミュニティにも注力
『StyMore』への最初の出店となる企業は株式会社サンリオ。既に『.st』とのコラボレーションにより、リアル+バーチャルの両軸でファッション販売の実績があります。
立ち上げの調査の段階から、VRSNS文化の中におけるコミュニケーションの重要性に気づくこととなったとする島田氏。「売上だけではない、お客様とのつながりがメタバースの可能性だと感じている」とし、イベント等を通してクリエイターやコミュニティへのアプローチを進めていく展望を示しました。
ユーザー目線でリアルとバーチャルをつなぐ、アバンサダーの紹介
更に、『.st』でメタバースでのファション展開の際に進められている“アンバサダー”の紹介が行われました。壇上では『Meta Quest 3』を操作し、実際にアバターファッションが並べられたワールドを移動しつつ、同じデザインのリアルファッションを着用したアンバサダーが登壇。
登壇したアンバサダーのはいえろさん、ミキさん、いゆいさんは普段から『VRChat』に参加されているユーザー。企業の橋渡しとして“顧客接点”の象徴的な例と言えます。こうした戦略からも、企業内完結ではなく、開かれたプラットフォームとしてユーザー目線での体験を重視していることが伺えます。
“寄り添い型”の文化に強い共感を示すサンリオの想い
続いて、株式会社サンリオ事業戦略本部デジタル事業開発部の町田氏が登壇しました。
町田氏は2008年にサンリオへ入社。既に3回の実績となった『SANRIO VIRTUAL FESTIVAL』の開催を通して、VRSNSコミュニティにおけるクリエイターが「寄り添い型の取り組みを前提にしている」という実感を吐露。
フェス期間中の町田氏の体験談として、来場者の会話の中で「リアルでの服も買いたい」といった声が実際にその場で聞こえてきたことを紹介しつつ、リアルとバーチャルのつながりを再確認するに至ったことを語りました。
更に、『StyMore』がクリエイターの活躍の場へ目を向けている点に言及。強い共感と期待を込めたエールを送り、挨拶を締めくくりました。
日常の服を着る感覚でバーチャルファッションを楽しめる時代が来た!
これまでも、アバターを使うまでのハードルを軽減していく工夫が様々な形で模索されてきました。それでも長らく越えられなかった技術的な問題は、『StyMore』の広がりによって大きく解消される可能性を秘めています。
小型化やパススルー技術で一般認知を高めた『Meta Quest 3』といったハードウェアの進歩や、VRChatのスマホ対応というマス向けの整備が進んでいくことで、メタバースへの手軽さが更に加速していくことは間違いありません。ファッションへの気軽さが確保されていくことで、VR空間やアバターへ愛着を持つ人達もどんどん増えていくことでしょう。
※記事内の画像・資料は アダストリア ファッション特化型メタバースプラットフォーム発表会 よりご提供いただいたものを使用しています。
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