はじめまして。この度縁あってバーチャルライフマガジンに寄稿させて頂くこととなった常盤いるむと申します。VRChatでは普段ワールド巡りをメイン活動にしている者です。Twitterでの #VRChat_world紹介 タグへの投稿の他、最近はワールド巡りのツアーも開催しております。
積もり積もって巡ってきたワールドの数もだいぶ多くなりました。今回はそんな中でも印象に残っているユニークな体験のできるワールドをいくつか紹介してみたいと思います。
目次
John Hunt Treasure Hunt Tour (by EGOGUU_)
VRならではな体験の一つの形がクイズやパズルを解き、探索して進んでいくタイプのワールドです。VRChatにはそうしたワールドは数多くありますが、クイズ的な謎解きに特化してワールドの演出はシンプルなものか、もしくは演出は凝っているがホラーゲームタイプのもので人を選ぶものも多い傾向があります。
その点ここは某探検家映画のような遺跡探検と宝探しを題材にとり、ワールドとしての風景の良さと間口の広さを両立している点がまず特筆すべきでしょう。
内容の方もエジプトの意匠をふんだんに使った豪華で凝った内装に加え、映画的な場面転換やピンチの演出がドキドキハラハラなわかりやすい冒険を表現しています。
一方で心臓と羽根の天秤や絵文字を使った謎解きといった古代エジプトに造詣のある人がニヤリとするマニアックな演出も共存しているのも注目したいところですね。
いったんお宝を取ったのちに案の定何かが起こるという迫力のクライマックスも完成度が高く、そう長い時間ではないシナリオながら満足度が非常に高いです。
言いようによっては『いかにも』過ぎてベタなところもあるのですが、あえてそうした共通認識を刺激されるからこそ「まさに映画の中に入って、その主人公として探検している没入感」があるんだなとは思います。
現在は中南米を舞台とした続編「John Hunt Treasure Hunt Tour2」も出来ていますので、そちらも合わせておすすめです。
Museum-Of-Vrpainting (by tanabe)
美術に関する近年の新しい流れとして、様々な技法で作成した立体CGアートをディスプレイの中のみでなく、VR空間で体感するというものがあります。
VRChat内にいくつかあるそれを展示しているワールドの一つがここ。アーティストせきぐちあいみさん(公式HP)の個展形式をとっているワールドであり、美術館形式で複数の作品を観覧することができます。
ディスプレイのフレームの中にあるだけでは立体でも平面に見えるだけですが、ここでは絵の中にある動物やもののそばに寄り添い、絵でできた部屋に入って周りを見回し、と美麗な作品世界の一部になったようなリッチでおしゃれな気分になれるのが醍醐味です。
ワールドとしての展示方式や作品内容もここはこだわっており、掛け軸を拡大して中に入れるもの、通路そのものが作品で場面が次々と切り替わるもの、と順路を進んでいくのも楽しいことがまたいいですね。トリを飾る巨大作品も大迫力です。
SECTOR45 (by RAMRAMPA)
VRChatのワールドはすべてが作者により作成されたモデルではなく、一定の規約上でゲームなどに使用可能な既存のアセットモデルと呼ばれるものを組み合わせたワールドもかなりの割合を占めています。
とはいっても同じモデルだからと同じワールドというわけでもなく、部分のみ使ったり追加要素を加えたりと作者ごとの味付けでバリエーションは無限大。
ここ「SECTOR45」もそんなとあるサイバーパンク系のアセット「Dark City2 – Cyberpunk Pack」を使用したワールドです。
ここでのこの作者さんなりのユニークなアレンジは「街にNPCを加える」こと。
それもVRChatの日本コミュニティ内で使われるアバターモデルを用いており、そこにVRChat内での知り合いのような親しみやすさを見ることができ、この未来の街を何だか身近なものとして感じさせてくれるのがよいですね。
街の各所に居て様々な行動やしぐさを取っている彼らを見て回る探検的な面白さ、場面から何をして何が起きたのかなどを想像する楽しみもあります。
と、このワールドにはさらなる追加要素があります。それは彼らNPCが同作者さんの他のワールドにも再登場すること。
この街の各所にはそれら別のワールドへのポータルが配置されており、彼らNPCが家で暮らしていたり、酒場で働いていたりといった生活感や関係性を感じる要素を読み取ることができます。
複数のワールドで共通した世界観を共有することで個々のワールドの魅力、そして存在感が増していくという素晴らしいアイデアですね。
MIRЯIM ( by IgbarVonSquid)
『VRChatで最も人気のコンテンツは鏡である』、そうしたジョークがあります。
とはいえ馬鹿にしたものではなく、実際にワールドで集まる場所の定番で文化の一つであると言えるでしょう。鏡の中のアバターを客観視しながら交流に興じる時間は良いものです。
さてこのワールドも開始するとちょっと未来風もごく普通の部屋に「鏡」が一つ。
ただそれだけの部屋にも見えますが部屋にある仕掛けを解くと鏡の向こうにさかさまの別世界が現れ冒険が始まる、そういう流れの探索型ワールドです。
行く先には幾度となく「鏡」が現れ、仕掛けを解くとその先にまた逆さの世界が現れ、と不思議な探索は進んでいきます。
比較的序盤でここは宇宙ステーションであり、そうした環境ではさかさまや対称形の部屋にはある程度理屈はつくようになっています。鏡だってSFな未来技術のアイテムと考えれば……。
でも、果たして本当にそれだけでしょうか?
全体的にぼんやりした視界、時折響く不気味なうめき声、今まで通ってきた道がいつの間にか鏡になる、などなど不可解な現象にも次々と襲われます。
一見科学的なSFに見えるこの世界は果たして現実なのか、それとも夢幻の世界なのか。そして自分が今いるのは鏡の外なのか中なのか。
そして、ゴールに達した後も果たしてそこは現実なのでしょうか?
VRの中にある現実と非現実、そうしたものの存在も感じてしまう不思議な体感と読後感のあるワールドです。
Miyakonojo Civic Center – VRAA02 (by 龍 lilea)
現実の建物を特殊な技術で立体写真として写し取ったモデルを使った、フォトグラメトリというジャンルのワールドがあります。
それらは大抵実物大で表現され、そこに居なくてもリアルにそこへ旅行しに行ったかのような体験ができるのが売りです。
さてこのワールドもそうしたフォトグラメトリワールドの一つで、大型の市民会館「都城市民会館」を丸ごとフォトグラメトリにした巨大作品となっています。
非常に大きいワールド容量ながら、建物の個性的なデザインもあいまってリアルで見どころも多い優れたワールドです。
また、このワールドのモチーフである市民会館は既に使われておらず廃墟となった状態で作られており、その後取り壊されており現存しません。
その状態を写し取ってVR世界に残したという歴史・資料的意義も大きいです。
しかしこのワールドの魅力はそれだけではありません。
私が注目したのはワールドの各場所にあるオブジェでアクセスできる「市民の思い出」の投稿です。(「都城カタツムリくんと一緒!都城市民会館1000の記憶プロジェクト」)
ここで遊んだ思い出、昔撮った写真、ホールでの発表会の思い出、などなど。
もちろん私たちの大部分は実際にこの建物を見たわけでも、そこに思い出があるわけでもないですが、これらの一般の市民だからこその親しみのある思い出はこの建物をずっと身近なものに感じさせてくれます。
ただ建物が置いてあるだけでは無機質にも感じてしまう所ですが、これらが加わることで外見のみでなく現地や当時の人々の「思い出」を追体験できるという点が素晴らしいですね。
おわりに
普通に綺麗な景色のワールドを紹介しようと思いましたがそちらの方向では素晴らしい景色が多くて選び難く、『VRならではの体験とは何だろう?』という方向から選んでみたのがこれらのワールドでした。
目に見える綺麗な景色のみでなく、そこに世界があり、その空気を感じて私たちがその一部になって楽しむことが出来る。そうした体験が出来ることが良いVRコンテンツの条件の一つであると個人的に考えてます。
「Miyakonojo Civic Center – VRAA02」の掲示物より一つ。
こうしたVRのワールドの数々も、方向性は違えど”建築”の一つの進化系なのかもしれません。
物理的制約のないこの世界で今後とも進化、発展していくコンテンツとしてまだ見ぬ世界に私は期待し、また訪ねてみたいと思っています。
まだまだ紹介しきれていないワールドもありますが今回はここまで。少々理屈っぽい文章で恐縮でしたが最後までお読みいただきありがとうございました。またの機会ありましたらよろしくお願いします。
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