世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」。メタバース上にある会場で、アバターなどの3Dデータ商品やリアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売り買いでき、世界中から100万人以上が来場しギネス世界記録™も取得しています。
出展者がブースを配置するコンセプトワールドは100ワールドを超え、Vket開催毎に新しいコンセプトが発表されています。
『Vketさんぽ』は、過去に開催されたコンセプトワールドにもう一度目を向け、ワールド製作者やワールドコンセプトデザイン担当者と一緒にワールドを散策し、コンセプトワールドの新しい顔を見つける企画となっています。
他のVketさんぽはこちら。
さんぽするワールドは?
今回さんぽするワールドは、2019年9月21日~25日に開催されたバーチャルマーケット3に登場した九龍帝国城下町の参番街と欠番街です。
バーチャルマーケット3の全コンセプトワールド紹介ムービーはこちらから。
記事に出てくる人の紹介
伊達焼き屋
Vketさんぽ執筆ライター。ポケモンカードのデッキを10個持ってるが対戦相手がいない。
参番街からVketさんぽスタート!
――本日はVketさんぽよろしくお願いします。はじめに九龍帝国とはどういう世界なのか教えてください。
絶対的かつ強大な“意思”を持つ中央政府をグルっと囲うように街が配置されている支配社会という世界です。
九龍帝国は中華風+和風+アングラというコンセプト。
Vket3から九龍帝国シリーズが始まり、当時から今も大人気なコンセプトでユーザー層との相性も良いと感じています。
ファイナルファンタジー7にミッドガルという街が出てくるんですが、そこがすごく好きでかなりインスピレーションを受けてます。
同時に和風や中華風も好きなので組み合わせられないかな〜と思いデザインしました。
ここ大好き!
こういう「中華アングラ通り」的なデザインよく見るでしょ。
――かなり大好物です。
奥に見える城塞が九龍帝国の中央部で、あの中に王権や中央政府があります。
ぼくらが今いる参番街は下流層の人が住むスラムチックな住宅街で、監視ドローンが常に見張っているバリバリの監視社会かつ階層社会です。
全体像としては壱番~玖番がピザのように円形に並んでいて、一部が海に面している。そこで貿易もやっているという設定です。
Vket2022 Summerで公開された壱番街はカジノや劇場がある観光客や国賓を招く華やかな街。弐番街は壱番街で働く中~上流層が住む街。
Vket2024 Summerで公開される捌番街は工場地帯と、完全に区分けされてます。
こんな風に街ごとにそれぞれ特色や役割があるので、機会があれば九龍帝国シリーズはまだまだ展開されていくと思いますよ。
――九龍帝国にはどういった人たちが住んでいるんでしょうか。
九龍帝国には多種多様の人種や種族が暮らしていて『獣人族のみで構成されたマフィア』のような独自の組織を形成してることもあります。
ちなみに、Vket6の『九蛇之市』にその組織の名前がちょこっと登場してたり、Vket2023 Winterの『ホテル牙城園』は壱番街の中にあったりと実は世界観を共有してるんです。
――他ワールドにも九龍帝国が登場していたんですね!
長く使われてるコンセプトな分、設定も増えていきました。
自我が強く出すぎちゃうのであまり大々的には公開しませんが、ワールド制作の解像度を上げるためにも世界観を練ってます。
ここの風景は現実世界の九龍城の写真を見て「これ作りたいなー」と思ってデザインしました。建て増しのビルがザ・九龍城って感じでとても気に入っています。
欠番街へ向かいます
――ここから欠番街に入りますが、欠番街はどういった場所なんでしょうか?
欠番街は“存在しない街”。中央政府から見捨てられた場所です。
参番街よりさらに下に欠番街が広がってて、欠番街でグチャグチャに積み重なった建物群の突出したビルが参番街と欠番街を繋ぐ出入口になってる。
ビルなんだけど玄関が上にあるっていう不思議な仕組み。
――上に出入口があるってまるでアリの巣みたいですね。
まさにアリの巣だね!
「アングラな世界でさらに上から押し込められたアングラofアングラなヤバイ場所」が作りたかったんですよ。
当時のぼくのメンタルも多少反映されてるかな。
Vket3開催時は「現実なんてクソだ」「俺たちはバーチャルでしか生きられないんだ」みたいな鬱屈した感情や風潮ってぼく含めて強かったと思うんだよね。
そういうのもあって欠番街は好き。
――エレベーターや階段でどんどん下に移動すると、改めてビルの屋上から入ったんだと実感します。
面白い表現だけど流石に動線がヤバイな(笑)
ユーザーのVR練度が高いことが前提のワールドになってて粗削りな感じがとっても懐かしい。
Vket3は企業ブースと出展ブースが混在してる唯一のVketです。
色んな意見をいただいて「企業と一般は分けたほうがいいよね」「ブースを一発で全部回れるようにしないとね」って積み重ねが今のVketに繋がってます。
コンセプトワールドの功罪
ブースが手動配置だった時代ならではの展示。
コンセプトワールドって功罪があって、昔は「コンセプトワールドの我が強すぎる」「もっとシンプルかつフラットな会場でやるべき」ってかなり言われてました。
でも、コンセプトや世界観がユーザーさんを引き付けたり、クリエイターさんの創作のキッカケやモチベーションになると思ってたので頑なにコンセプトワールド路線で進んでました。
――曲げずに拘っていたんですね。
色々言われたとしてもやめない意志って大事だと思う。
コンセプトワールドが無い世界線のVketもあったかもしれない。
でもそうしたらぼくと伊達焼き屋さんはこうして話してないし、ユーザーさん発信のワールドを活用したイベントは生まれなかっただろうし、今でもワールドを愛して語ってくれる人もいなかったんじゃないかな。
どっちが正解かは分からないけどね。
――九龍帝国シリーズをはじめ「モクリ」「ムーイ」「Vketちゃん」などユーザー人気の高いVket関連のIPは多いです。コンセプトワールドを題材にしたボードゲームやアンソロジーコミック、小説といった横展開もやってほしいなと個人的に思ってます。
半年に1回ペースでVketをやってる現状、そこまで手が回るかな・・・(笑)
でもワールドやキャラクターを愛してくれるユーザーさんが多いのはとてもありがたいし、すごく面白そうだからやってみたいね。
Vketを開催する毎にぼくやコンセプトメーカーさん達が協力して10個ほど案を出してますが、毎回「なんとか絞りだした・・・」「もうこれ以上良いコンセプト出ない・・・」ってなってます。でも不思議と半年後には新しいコンセプトが浮かんでるんだよなぁ。
だから「いつか枯渇するんじゃないか」って恐怖もあります。常にインプットしないとアウトプットは出ないし、自分が感動しないと誰かを動かすアイディアは出ない。
逆にこの恐怖を抱えられている限り、ユーザーさんの心が惹かれてクリエイターさんの創作のキッカケになるようなワールドを作り続けられると思ってます。
――本日はVketさんぽにお付き合いいただきありがとうございました!
動く城のフィオさん(@phio_alchemist)
VR法人HIKKY CVO。Vketを始めた人。ワールドコンセプトメーカー。ポケモンスリープとPokemonGOを嗜んでいる。