たかが鉄の武器。されど鉄の武器。『VR鍛冶屋「バーチャルスミス」』で鍛冶体験してきた!【VRChatワールド紹介】

鉄の武器。色々なゲームで登場するポピュラーな武器だ。

RPG等のゲームでは鉄の剣などが序盤に登場し、少ししたら次のより高性能な武器へと交換してしまう、いわゆる「序盤の繋ぎの武器」という印象が強い。大概は次の街で売り払ってしまい、その存在は忘れ去られ、それ以上鉄の武器に想いを馳せることはない。だいたいそんな感じの武器だ。

だが待って欲しい。そんな鉄の武器にも、それを作って生計を立てている「鍛冶屋の親父」という生産者が存在するのだ。筋肉モリモリの親父が、高温の炉の前で汗を流しながらハンマーを振るっている。鋭い目つきをした親父が、根気よく砥石で刃を研ぎながら、職人の技で刃こぼれをチェックしている。我々がかつて売り払ってしまった鉄の武器も、きっとそうして鍛冶屋の親父によって作られたものなのだ。

今回紹介するワールド『VR鍛冶屋「バーチャルスミス」』では、なんと鍛冶体験をしながら実際に「鉄の武器」を製作することができる。今度は我々が鍛冶屋の親父になるのだ。無意識のうちにぞんざいな扱いをしてしまっている「鉄の武器」、鍛冶屋の親父がこれを作るのに如何に大変な想いをしているか、どれだけ魂を込めて制作しているか。それを体験していこう。

鉄は熱いうちに打て!

ワールド外観。鉄置き場と鍛冶場しかないシンプルなワールドだ。鍛冶屋の親父の作る鉄の武器と同じ、余計なものは不要という質実剛健さを感じさせる。

自分の想像力と創造力を総動員して武器を打つのだ。

素材となる鉄置き場。加工する鉄の形状は球と四角と円柱の3種類がある。それぞれ加工時にクセがあるので、いろいろ試して自分が加工しやすい形を選ぼう。

そして鉄は金色・銀色・銅色の3種類の色がある。鉄なのに金?と思うバチャマガ読者諸君もいるかもしれないが、あるインターネット界隈では「黄金の鉄の塊」という言葉がある。つまりこれは鉄なのだ。好みで選んでよい。

持ち手部分は木製の長短2種類と、ナイフなどに使えそうなフィンガーチャンネルのついた金属製のグリップがある。剣やナイフなどの片手武器だけではなく、木製の長い持ち手を使えば槍などの長柄武器(ポールウェポン)も作ることができる。

そして加工ツール一覧。左からハンマー・膨張器・やすり・砥石だ。実際の鍛治作業には膨張器というツールは存在しないはずだが、「叩いたり引っ張ったりして素材を伸ばす」作業をやりやすくするためにこのツールがあると思われる。

ちなみにこれらツールは素材の鉄とは違い、物理演算が働いているので手を離したら落ちる。特に膨張器は適当にほっぽり出すと転がっていって行方不明になりやすいので注意!

鉄の武器の作り方は詳しく看板に書いているのでそう迷うことはないだろう。軽く説明するならば、

  • ハンマーで叩いて大まかな形を整える
  • 膨張器を押し当てて伸ばしたい部分を伸ばす
  • やすりで凸凹を削る
  • 砥石で刃を鋭くする

これを自分が納得できる形状になるまで繰り返す。

ここで注意する必要があるのが、上2つの工程を行うには「鉄が加熱状態」下2つの工程を行うには「鉄が冷却状態」でなくてはダメだという点だ。それぞれの工程を行いたいなら、必要に応じて鉄を火床に放り込んで熱したり、冷却水につけて冷ましたりしなければならない。

何度も温めたり冷ましたりしながら少しづつ加工していく、実際の鍛造作業のような工程が踏めてとても面白い。

ここからは実際に作業工程を写真に載せていこう。

まずは加工したい鉄を火床に突っ込み加熱する。本来なら「ヤットコ」と呼ばれるハサミのようなものを使って素材を掴むはずだが、VRChatterは強靭なので素手でOKだ。

調べてみたら鉄の鍛造には1000℃~1200℃の温度が必要だそうな。ちょっと熱いどころではない気がするが、平気だ。

素材の鉄が赤熱化したら加工を開始する。まずはハンマーだ。鉄を程よい形になるまで叩く。この後の工程でもどんどん形が変わるので、フィーリングで良い。

次は伸ばしたいところに膨張器を押し当て伸ばす。自分のイメージに合うサイズになるまで素材を伸ばそう。

ここで一旦削り作業を行うために、鉄を水槽の冷却水につけて冷やす。うまく冷やせたなら、鉄が元の色に戻っているはずだ。

冷やされた鉄にやすりをあて、デコボコして気に入らない部分を削ろう。

最後に刃にしたい部分に砥石を当て、鋭い形状に削り込んでいく。

ここまで一連の流れを書いたが、これを一周しただけで自分の思うような形になることはほとんどない。この一連の流れを好きな順で、自分の納得のいく形状になるまで繰り返していくのだ。きっと鍛冶屋の親父は妥協はしていない。我々も妥協せず形状出しをしていこう。

納得のいく形に仕上がったら、最後は好きな持ち手と合体させて、オリジナル武器の完成だ!
こちらは自分で初めて作った作品「鉄の短剣」。それっぽい形にはなったが取り付けで気が緩んでしまい、曲がってしまった。あまりにも下手すぎる。

ちょっと変わった方法として、1つの持ち手に2つまで鉄をつけることができるので、柄頭と柄尻に刃をつけることで双刃剣のようなものも作れる。あるいは未加工の鉄でも取り付けられるから、球状の鉄をそのまま長柄につければ立派な鈍器の完成だ。

加工した鉄の取り付け位置も自由自在なので、既存の武器の形に囚われない、自分だけの最強武器を作ることができる。看板に書かれているように頭の中に眠るインスピレーションを開花させて自由に制作しよう。

武器が完成したら、ここで試し切りをしてみよう。

武器にある程度の鋭さがあり、居合玉に向かって素早く切り込めば「キーン」という小気味よい音とともに居合玉が消滅する。鈍器ではいくら叩いてみてもダメだったので、武器の仕上がりの目安になるだろう。

モノづくりに近道はないのだ

VRの良いところの一つは、「実際にそこに行かなくても何かを体験できる」ことだ。疑似的にとは言え鍛冶を体験し、武器を作ることなんてなかなかできる経験ではない。良い時代になったものだ。

そしてこのワールドに来てもらい武器を打ってもらえば、鉄の武器を作っている鍛冶屋の親父が如何にすごかったのかすぐにわかるだろう。鍛治は奥が深く、またかなりの重労働なのだ。思った通りの形を出すにも苦労し、何度も同じ工程を繰り返す根気のいる作業だ。鍛冶屋の親父には感謝の念を送っておこう。

鍛治の体験をしつつオリジナル武器が作れるユニークな体験ができるワールド。加工のツール類は4セットあるので、フレンドと一緒に訪れて作った武器を見せあおう。是非遊びに行ってみて欲しい。

※2023/9/18 23:30追記

なんとワールド作者様自らVR鍛冶の講習会を開催しているとのこと!

この追記の時点で第一回の開催がちょうど終わってしまっていたので、ワールド作者様のX(Twitter)をフォローして次の講習会に是非参加してみよう!