VRCアイドルの変遷(2020年~2022年) アバターコミュニティから多種多様なアイドル像へ【寄稿】

VRCアイドルの歴史はもう4年ほどにまでなり、今では規模も拡大し、アイドルをやってる人が珍しくない時代になりましたが、元々は本当に、小規模なものだったことを皆さんはご存じでしょうか?
今回は2022年までの歴史を、VRCアイドル研究部というの情報サーバーと、実際にアイドルグループ運営を行う私の視点から纏めてみました。

2024年6月現在、活動形態により詳細をオミットした場合、「VRCイベント団体」文脈、「地下アイドル」文脈の2つに大きく分けられます。
VRCでの他のイベント団体はその前から多数存在しており、イベントVRCで単発のイベントや「VRC以外」を拠点にして活動する人がアイドルを名乗ることはありましたが、VRC内で誕生し、活動拠点もまたVRCである「VRCアイドルグループ」という概念が生まれたのは、「ロポリこん」ちゃんのアバターで活動するLPK48さんが始まりだと私は認識しています。

「VRCイベント団体」文脈は、2020年に生まれたLPK48さんを筆頭に、パンジャニ∞、姉妹アバターの姉妹グループ、茄子坂46(現:ティグリスタ)が生まれ、マオにんぐ娘(現:マオにんぐ)、3代目 K Soul Sisters、SEISO NO OWARI、SummerSweet!と続いていきました。

最初の生まれたアイドルグループ、LPK48さんは、アイドルを作ろうとして生まれた訳ではなく、当時専用衣装の少ない時代にテクスチャ改変で、初代リーダーのつきのじょうさんが作った制服風のデザインが斬新で、みんなで着て集まってみたところ、アイドルのようだということで「LPK48」という名前が付けられたそうです。そこからメンバーも増え、交流会やチェキ会、ラジオや動画など、幅広い活動を目にしたことがあるかもしれません。

X:https://x.com/LPK48_VRChat

また、同年4月1日。エイプリルフールの嘘として生まれ、メンバーも増えて本当にアイドルグループになったパンジャニ∞。本来であれば、嘘として終わる予定だったものの、午前中に発表しなかったために本当にやることになりました。パンジャンドラムをアバターにセットし、ビームが打てることを条件にメンバーを集め、自由気ままに、不定期にライブやイベント企画、動画撮影などの活動を展開していたが、2023年4月1日、引退を発表。エイプリルフールに始まりエイプリルフールに終わる、嘘のような本当のグループでしたね。

9月に生まれた茄子坂46(現:ティグリスタ)さんは、前述のロポリこんちゃんと同じ作者様のアバターであるティグリなすのアバターアイドルグループで、アバターが好きなことを条件に、アバターの可愛さを伝えるのをモットーに活動するグループ。アイドルグループを作る流れが可視化され、自分らのアバターコミュニティもアイドルグループを作ろうという風潮にが出来上がり、続くグループたちのきっかけを作ってくれたグループです。

X:https://x.com/Tigresta_vr

3代目 K Soul SistersさんはBOOTHで販売されているアバターの「こうめ」ちゃんの統一アイドルグループです。
初めてのYoutube主体のアイドルグループで、VRCでの交流会等のイベントも行いながら、グループのYoutubeアカウントで投稿された動画は、ゆうに100を超えております。

X:https://x.com/3Ksoul

ここまで、アバターを統一し、アバターを広めるコミュニティとしての役割が強かったのですが、「SEISO NO OWARI」さんの「白色であれば好きなアバターで好きな活動をしよう」という活動理念により、自分の好きなアバターでアイドルができることで、「アイドル」として間口が更に広がりました。誰でもアイドルがしていい。なりたい自分のまま、アイドルとしての活動をしていい。そういう風潮が生まれました。

X:https://x.com/NoSeiso

そして「SummerSweet!」さんの登場で、活動の動きはさらに加速します。
デビューと同時にオリジナル衣装、そして「ぽっぴっぽー」の作曲者であるボカロP「ラマーズP」によるオリジナル曲の発表など、アマチュアベースで「作れるものを作る・やれる範囲のことをやる」が主流だった流れが崩れました。最初から大きな投資を行い、本格的なアイドルとしての活動を行うモデルケースを作り出したのです。

X:https://x.com/manatsu_SS

また、「アイドル」という言葉で「地下アイドル」をイメージする人もいらっしゃると思います。「目の前で歌って・踊るライブ」ということに重きを置き、オリジナルソングやオリジナルの振り付けを武器にファンと一緒にライブを作り上げる。そんなアイドル像を最初に体現したのが「Suc×Suquel。(しゅくしゅくえぃる)」さん。
影響を受けて生まれたVRCアイドルユニットも多くいるでしょう。
こうして地下アイドル文脈のアイドルも年々数を増やし、大きなイベントも行われてとても盛り上がる界隈になりました。

X:https://x.com/Suc_Suquel

さてさて、最初のアイドルグループが生まれて早4年。沢山のアイドルが生まれました。
そのたびに、新しい概念、活動方針、色んな人のやる気に満ち溢れた作品やイベントが生まれました。
演劇を行う団体、お店の活動を行う団体、撮影を主体とする団体、TikTokやショート動画を中心にする団体、活動は本当に様々です。
もしかしたら、明日は更なるグループが生まれているかもしれません。
沢山の人が、沢山の夢を、やりたいことをもってVRCという世界で楽しんでいます。
そんな輝かしい人たちの軌跡を、少しでも舗装出来ていれば幸いです。
これからもそれぞれの場所で、それぞれに輝く、アイドル達から目が離せませんね。

寄稿者紹介

風花藍流(かざばなあいる)

VRCアイドル兼プロデューサー。

シャオマオというアバターのアイドルグループ「マオにんぐ」のプロデューサー担当や、VRCアイドルの情報を纏めたディスコードサーバー「VRCアイドル研究部パブリックサーバー」を運営。また、他にもシャオマオ喫茶の猫茶屋のスタッフや、UTAUでの同人創作漫画などを行っている。

X:https://x.com/kazabanaAIL

VRCアイドルの情報を集め、纏めるディスコードサーバー 「VRCアイドル研究部パブリック」 https://discord.gg/hYdmgHBrk9