VTuberの”サークル活動”に関する論文が英ケンブリッジ大学学術誌に掲載! スイスの人類学者ミラがバーチャル美少女ねむ「メタバースデイ」に見た自己形成【寄稿】

イギリス・ケンブリッジ大学が刊行する学術誌『Asia Pacific Journal』に2025年4月29日、スイスの人類学者ミラ(リュドミラ・ブレディキナ)による論文『VTuberサークルの緊張と対立:”メタバースデイ”プロジェクトと自己形成』が掲載された。本論文は、VTuberバーチャル美少女ねむが2022年に実施した「メタバースで生きていく」をテーマにした音楽プロジェクト「メタバースデイ」を中心に、VTuberやそのファン達が仮想世界と現実世界で繰り広げた“サークル活動”の実態を社会学的に考察したものだ。参加者へのインタビューと資料の分析を通じて、二つの現実の緊張関係、集団への感情の連鎖、表現の自由、そして自己形成のダイナミクスがどのように交錯するかが描かれている。日本発のバーチャル文化が国際的な学術分野で注目され始めていることの証左と言えるだろう。

ミラ『VTuberサークルの緊張と対立:”メタバースデイ”プロジェクトと自己形成』

リュドミラ・ブレディキナ『VTuberサークルの緊張と対立:”メタバースデイ”プロジェクトと自己形成』(出典:Asia Pacific Journal, Cambridge University Press)

概要(ねむによる日本語訳)

バーチャルYouTuber、通称VTuberとは、2次元(2D)または3次元(3D)のコンピューター生成キャラクターを用いて、オンライン上で娯楽コンテンツを制作・配信するエンターテイナーである。本稿では、「メタバースデイ」と呼ばれるグループプロジェクトを取り上げる。このプロジェクトでは、VTuberたちとそのファンが協力し、歌詞の作詞、音楽の作曲、ステージ衣装のデザイン、そしてミュージックビデオの撮影を行った。グループの参加者への半構造化インタビューと、彼らが公開したテキスト資料の精読を通じて、本稿はVTuberたちが仮想空間と現実空間の両方を活用し、相互利益、インスピレーション、そして満足感を生み出している様子を、これらの空間が持つ日常的な現実との緊張関係の中で考察する。

論文情報

・論文名:VTuberサークルの緊張と対立:”メタバースデイ”プロジェクトと自己形成(Tensions and Contestations in VTuber Circles: The “MetaBirthday” Project and/as Self-formation)
・著者:リュドミラ・ブレディキナ(Liudmila Bredikhina)
・掲載誌:Asia-Pacific Journal
・出版:ケンブリッジ大学出版(Cambridge University Press)
・公開日:2025年4月29日

本論文はケンブリッジ大学出版公式ウェブサイトにて無償で公開されている。

※出典(ケンブリッジ大学出版):Tensions and Contestations in VTuber Circles: The “MetaBirthday” Project and/as Self-formation
https://www.cambridge.org/core/journals/asia-pacific-journal/article/tensions-and-contestations-in-vtuber-circles-the-metabirthday-project-andas-selfformation/04DCAD58982E305DE914ECA1832A9AA0

「メタバースデイ」プロジェクト(バーチャル美少女ねむ、2022)

「メタバース原住民」の存在と「人類の新たな進化」の可能性を音楽の力で物理現実世界に伝えるため、”メタバースで生きていく”をテーマに展開された音楽プロジェクト。

VTuberバーチャル美少女ねむの個人プロジェクトとして始まり、多数のメンバーの協力を経たサークル活動を経て、最終的には秋葉原の巨大ビジョンでの上映や、複数の企業を巻き込んだリアル店舗コラボなどにまで発展した。ミラはメンバーへのインタビューを通して、個人の創造力を加速するVTuberによるサークル活動が自己表現の緊張と対立を開放し、仮想空間・現実空間と共鳴したことによる成果ではないかと考察している。

「メタバースデイ」MV本編

「メタバースデイ」メイキング映像

秋葉原巨大ビジョンでの放映

「メタバースデイ」歌ってみたコンテスト&総選挙

音楽ライブ「メタバースデイ・パーティ」

プロの振付でVRで踊ろう「メタバースデイ」

路上ライブ「メタバースデイ・リターンズ」

※参考:バーチャル美少女ねむによる「メタバースデイ」プロジェクト デブリーフィング(最終結果報告) https://note.com/nemchan_nel/n/n829a5733d8b6

研究ユニット「Nem x Mila」

リュドミラ・ブレディキナとバーチャル美少女ねむがVTuberやメタバースが人類に与える影響を調査するために結成した研究ユニット。2023年には国際連合の国際会議「IGF京都2023」でも登壇発表を行った。

●リュドミラ・ブレディキナ(通称:ミラ)
スイスの博士課程在籍の学生。2022年に「バ美肉」「VTuber」に関する修士論文でジュネーブ大学のジェンダー分野の学術賞「プリ・ジャンル」(ジェンダー賞)を受賞。 2024年にはNHK「最深日本研究」で密着ドキュメンタリーが放送。
・X: https://x.com/BredikhinaL
・学術ポータル https://malta.academia.edu/LiudmilaBredikhina
※参考:「バ美肉」に関する論文、学術賞を受賞 ジュネーブ大のジェンダー分野で
https://kai-you.net/article/83747
※参考:NHK『最深日本研究』スイスの”バ美肉”研究者ミラ氏を密着。外国人博士から見た“バ美肉”と“カワイイ”の可能性
https://www.famitsu.com/news/202404/15339284.html

●バーチャル美少女ねむ
日本のVTuber/作家で、メタバース文化エバンジェリスト。HTC公式VIVEアンバサダー。2022年に解説書『メタバース進化論(技術評論社)』を出版。「ITエンジニア本大賞2023」ビジネス書部門で大賞を受賞。
・X: https://twitter.com/nemchan_nel
・researchmap: https://researchmap.jp/nemchan_nel
※参考:VTuberバーチャル美少女ねむの書籍が「ITエンジニア本大賞2023」を受賞
https://forest.watch.impress.co.jp/docs/bookwatch/news/1478552.html

寄稿者紹介

バーチャル美少女ねむ

VTuber / 作家。「メタバースで生きていく」をテーマに人類の進化を促すべく活動中!
Twitter : https://x.com/nemchan_nel
Note : https://note.com/nemchan_nel

投稿者プロフィール

バーチャルライフマガジン編集部
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