あなたが初めてVRChatを始めた時、見知らぬ誰かから『初心者さんですか?』『案内しましょうか?』と声を掛けられたことがあるかもしれません。
かくいう筆者も初めてVRChatの世界に足を踏み込んだ時、その場にいた親切な日本人プレイヤーに『新人さんだね!よかったら案内してあげるよ!』と声を掛けられたものです。
こうしたやり取りは“初心者案内”と呼ばれ、特に日本人プレイヤーの間では盛んにこのようなやり取りが行われています。
彼ら、彼女らはなぜ初心者案内を行うのでしょうか。
初心者案内を行っているVRChatプレイヤーにその理由を尋ねてみました。
目次
そもそも初心者案内ってなに?
“初心者案内”とは、VRChatを始めたばかりのユーザーに、操作方法や基本的な楽しみ方を教える行為の事を言います。
この“初心者案内”はVRChatの運営スタッフが行っている訳ではありません。
また、初心者案内をすることで特にVRChat公式から報酬が出たり、ゲームが有利になるようなアイテムが与えられる事もありません。ですが現在のVRChatコミュニティーの間では盛んに“初心者案内”が行われています。
こうした行為の多くは『集会所』や『チュートリアルワールド』と呼ばれる場所で行われることが多いです。これらのワールドもVRChatオフィシャルで用意されているものではなく、有志のユーザーが独自で制作したものです。
新たな仲間と一緒に過ごしたいという思い
そもそもVRChatでの初心者案内の文化はいつから起こり始めた事なのでしょうか。
現在ではSNSやメディアでメタバース文化が盛んに取り沙汰されていますが、VRChatが誕生した当時は同じ言語を話す人と出会うのにも一苦労の状態でした。
特に日本語話者のユーザーと出会う事は難しく、日本人ユーザーと出会うまでに1ヵ月もの時間がかかったというユーザーも珍しくありませんでした。
こうした共有の言語を持つ人と出会う事の難しさゆえに、プレイを諦めてしまう人も多く、『なんとかこの世界に来た人と一緒に楽しんでいきたい』という気持ちから、VRChatを始めたばかりのユーザーに案内をし始めたというのが初心者案内の原点のようです。
自分の好きなものを分かち合いたいという気持ち
自分の楽しんでいるものを他の人にもシェアしたい、理解してほしいというのは普遍的に抱く感情です。
特にニッチな分野だと、その魅力を相手にも分かってほしいという気持ちが大きくなるもの。
メタバースの世界もまだまだ発展途上の文化ですから『この体験を相手にも理解してほしい』という気持ちを抱いている人は多いようです。
こうした気持ちから、新しくこの世界にやって来た人に対し『こんな楽しみ方があるよ』『こういう事をしている人がいるよ』と案内を行う動きが自主的に行われているのです。
『せっかくやってきてくれたユーザーに悲しい思いをしてほしくない』という気持ちも初心者案内を行う動機になっているようです。
初心者さん案内クラブを行っているカンヅキ・ナギさん(@Kanzuki_Nagi)は、『Twitterなどでも「VRChatはじめたけど何にも分からない」や「怖い、面白くない」など、はじめた段階でいい人に出会えずに挫折してしまう方をよく目にします。そんな方に少しでもVRChatの楽しさを安心して感じてもらいたいと思って初心者案内を始めました。』と語ってくれました。
VRChat初心者さん案内クラブ https://twitter.com/VRChat_shoshin
【VRchat】初心者さん案内クラブを作る話 https://note.com/kanzuki_nagi/n/ndc29d2b08c68
初心者案内自体がコミュニケーションに
また、初心者案内自体がある種の対人コミュニケーションのスタイルとなっている事もあるようです。
操作に慣れてきたユーザーが新規にやって来たユーザーに遊び方を尋ねられる例は多いようで、新規ユーザーにプレイ方法を教えていくうちに“案内人”になる例も。
VRChatプレイヤーのRichukoさん(@richukovrc)、レンちゃんさん(@renntyannVRC)もそうしたプレイヤーの1人。
『最初はVRCを始めたばかりの新規ユーザーに、マイクの設定のしかたが分からないんだけど、とか、カメラを撮りたい時はどうしたらいいの?と質問されることが多くて。そうしたやり取りを繰り返していく中で“初心者案内”という活動がある事を知ったんです。じゃあ私たちもやってみようかなって。』
現在Richukoさん、レンちゃんさんは自分たちで初心者が集まる集会場ワールド『JPイロドリノ庭』を作り、ワールドにやって来た初心者を案内する活動をしているそうです。
こうした理由に加え、“教える”という行為自体がある種のロールプレイ的な役割を担っており、初対面の人同士の常套コミュニケーションとして成り立っているケースもあるのだとか。
“教える”“学ぶ”の役割が明確であると、初対面同士でもコミュニケーションが取りやすいのだそうです。
VRChat初心者案内で受け継がれる親切のバトン
上記に上げた理由以外にも人それぞれ初心者案内をする理由はありますが、一番多く聞かれたのは『私も初心者の時に親切にしてもらったから』という理由でした。
人から人へやさしさが伝染していく、こうして親切の輪が広がって行われているのがVRChat初心者案内文化の骨幹となっているようです。
インターネットの発展により、人と人とのコミュニケーションツールは絶えず変化し続けています。ですが、たとえそれがメタバースの電子空間になろうとも、人の持つやさしさや思いやりの心は変わらないようですね。