バーチャルからリアルへ。VRCワールドに展示してある詩が現実で詩集となって発売。『雨音は乾いた猫の匂いがする』

皆さん、最近、言葉を読んでいますか?自分の思いを言葉で表現することは?その言葉について、よく考えを巡らせたりしていますか?

ワールド「詩箱・脊椎と雨音」

VRChatの片隅にあるワールド「詩箱・脊椎と雨音」 、そこには雨椎零という詩人が書いた詩が展示してあります。そしてこのたび、雨椎零が詩集を発売することになりました。

詩人・雨椎零とは?

雨椎零(あまついれい)
降谷椎が詩を書くときの別名義。
昨年の10月からTwitterとブログにて詩の活動を開始。詩誌『ココア共和国』12月号・1月号に投稿した詩が掲載。今年6月15日にはしろねこ社よりはじめての詩集を発売予定。
朗読企画『雨椎零の朗読会』は降谷椎としてVRCのフレンドたちに呼びかけ詩を朗読してもらい、TwitterとInstagramにて更新。またそれをまとめたラジオ『降谷椎の雨音朗読会』も配信中。
作風として、共感を覚える日常の何気ないことを表した詩やほの暗い雰囲気の詩が多い。


Twitter:https://twitter.com/amatsui_rei
Instagram:https://www.instagram.com/amatsui_rei/
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雨椎零の詩とは?

雨椎零の詩が展示してあるワールド「詩箱・脊椎と雨音」 には全部で21篇の詩が展示してあります。ここにあるうちの約半分がこのたび発売される詩集『雨音は乾いた猫の匂いがする』に収録される予定です。

静寂を塗り潰す雨音は乾いた猫の匂いがする。家の中でひとり聞くにはちょうどいい雑音だ。そしてふと気づいたときには消え失せている。飼い慣らすことのできない夕暮れの街角。私はカーテンも開けずじっとしている。窓越しの気配は生ぬるい温度を持っていて、私の時を蝕んでゆく。
猫の気配が去って犬の遠吠えが聞こえる頃。空の半分は塗り潰されて炭酸を溢したような星が見える。それは私の想像で、子供の頃の記憶の再現に過ぎない。脳裏に浮かぶ情景ははじけて消えて病んでゆく。チリチリと震える指先はガラス窓の代わりにスマホをなぞり、下らない言葉を紡いでいる。

『雨音は乾いた猫の匂いがする』「夜更け」より

ゴーグルを被った先の視界にあるもの。それは私たちの過去であり、未来であり、今であり、夢であり、空想であり、仮初であり、嘘であり、虚構であるもの。ヘッドマウントディスプレイの重さなど気にならなくなるくらいに夢中になれば、それは現実の一部となる。
そこに匂いはなく、味もなく、感触もなく、風もなく、自然もなく、自由はない。限られた世界の中でしか動けない窮屈さ。だけれどそこにどうしようもない無限と自由を感じる。在ると思えば其処には在るのだ。現実にないけどゴーグルの中にあるものを捉えられるようになれば五感が芽生えアップデートが完了する。冷たいアスファルト、ごつごつした木々、あたたかい猫や犬、眩しい太陽、寂しい満月。それらが感じられるようになった私は、ひとつ人類から遠ざかったかもしれない。
けれど多分近未来にはきっと皆、首にケーブルを刺されて機械に繋がれるんだ。だから私はひとつ先を行ってしまっただけだね。私みたいに先走ってしまった人は何人もいるよ。だから怖くない。

『雨音は乾いた猫の匂いがする』「Extended Reality」より

もっと詩を読んでみたい、という方はTwitterでハッシュタグ「#雨椎零の朗読会」で検索していただくか、YoutubeチャンネルFM言ノ葉で配信している「降谷椎の雨音朗読会」を見てみてください。多彩な詩がいろいろな方々の声で朗読されていて、とても聞きごたえがありますよ。

バーチャルの舞台からリアルの世界へ

此度、このワールドに展示してある詩、そして朗読されている詩の中の一部を収録した詩集『雨音は乾いた猫の匂いがする』が発売されることになりました。5月29日から予約が開始し、6月15日に発売予定です。

表紙

これまで書いた詩と新規に書き下ろした詩を合わせて50篇収録しています。興味があった方もこれまで触れてこなかった方も、よければこの機会に触れてみませんか?
予約ページ:https://shironekosha.thebase.in/items/75072842