演劇の舞台で3on3勝負!? 少人数・短時間のオリジナル劇を競う『劇王』がVR開催!本気で劇を作り込む挑戦者達の稽古は佳境に──練習の場へお邪魔しました!

バスケの3on3のような手軽さで演劇を楽しめる機会が、VRChatにやってくるぞ!!

2025年5月2日~3日、『一般社団法人メタシアター』がVRChatで演劇イベント『劇王Virtual2025』を開催します。全15チームが自分たちのオリジナル劇をイチから作り上げ、VRChatの舞台で競い合う短期決戦のイベントです。

5月2日の予選大会に向けて稽古は佳境を迎えています。舞台に上がれる俳優はそれぞれ3名までという特徴的なルールを持つ『劇王』に挑みゆく、いくつかのチームの練習風景にお邪魔してきました。

3名、20分、オリジナル脚本──実は濃密!

『劇王』の主要なルール

1. 俳優は3名まで
2. 上演時間は20分以内
3. オリジナル脚本であること

演劇に慣れていない人からすれば、舞台を楽しんでみようと考えるだけでも、なかなかハードルの高いことではないでしょうか。筆者も実は普段、それほど演劇に縁はありません。

これに限らず、例えば歌舞伎や映画。もっと言えば野球やサッカーの観戦なんかも、楽しもうと思うとけっこう気合のいることだったりしますよね。

でも、サッカーはちょっと厳しいけどフットサルならやれそうかも?とか、本気のバスケはしんどいけど、3on3なら軽くやってみようか、とか。そんな風に考えることはあるかもしれません。

役者として挑む方も、観客として赴く方も、『劇王』はそのルールから手軽に楽しめる良さがあります。役者は3人だけ、オリジナル脚本だから事前の準備はいらない、そして20分で終わるので、まさにフットサルや3on3のような気軽さがあります。

ですが…… 『劇王』は勝敗を競う大会でもあります。

挑戦者達は、脚本家や演出家、そして演者を募ってチームを作り、来る本番に向けて本格的な稽古を重ねてその日を目指しています。大きな舞台に参加することに比べれば、もちろん挑みやすい形式であることは間違いありません。ですが、舞台を作り上げていくその過程は本気そのもの。

気軽さ手軽さはあれど、濃密な舞台を楽しめるはず!!

この度、3チームの皆様にご協力をいただき、その練習風景を見学してきました。演劇初心者である筆者の視点から、どのように本番へ向けた取り組みをしているのかを紹介します。

初心者から経験者まで、中にはこの為にVRをはじめた人も。

『Bar[終末]』 (Dブロック出場)

演出の指導の元、発声練習から稽古がはじまる 舞台の大道具も自分たちで作り上げていく

はじめにお邪魔したのは『Bar[終末]』さん。

今年の2月にチームを組んだばかりという『Bar[終末]』の皆さんは、役者3名、脚本や演出などの裏方として3名、合計6名のチームでした。お互いに初対面というところからスタートしたとのことで、しかも役者の2名はリアルでの演劇経験も無かったそうです。

和やかな雰囲気で取材にお答え頂き、そのままの流れで発声練習、稽古へと移っていきました。

まず、役が始まった瞬間の“切り替え”に驚かされました。演劇の経験がない筆者の視点ではありますが、先程までとは別人のように、そして淀みなく無理のない演技がはじまったことで「誰が初心者の人だと言っていたっけ?」と悩んでしまったのが正直な感想です。

たった2ヶ月でここまでできるものなのでしょうか。3名の演じるキャラクターにそれぞれの個性がうまく合致しているような印象を受けました。実際のところ、脚本とチームの相性が良い状態で走り出せたという実感を持って稽古を重ねられているようです。

既に使用する大道具も配置が済んでおり、舞台上の取り組みにまで進行しています。裏方のメンバーが役者経験を持つという構成で、その挑戦がどうなるのか今から楽しみです。

『VRのエンクラ』 (Aブロック出場)

『VRのエンクラ』さんは少数構成 一番右は筆者です

次に拝見したのは『VRのエンクラ』さん。

ぜひVRの視点で、できれば最前線で見て欲しい!」とアツい想いを語っていただきました。舞台に上がるのは2名、そして脚本が1名という少人数編成です。しかも、脚本の方はこの『劇王』へ参加するためにVRをはじめたというのだから驚きです。

そして役者のおふたりは経験者ということもあり、筆者はその稽古の姿にすぐ圧倒されてしまいました。しかしながら取材の中で驚いたのは、演技の仕方を突き詰めていくそのプロセスにあったのです。

誤解を恐れずに言えば、素人である筆者が驚く「演技の質」が出せるのは当然とも言えます。今回の取材で筆者の心に残ったのは、セリフや演技を“通す時間”よりも、おふたりの間で“詰めていく時間”の方が長かったことにありました。

セリフを確認しながら“セリフに書かれていないこと”を突き詰めている

セリフの間や裏に存在するであろう“行間”はどんなものであるのか。二人で意見を出し合い、人間としての感情を“理論化していく”ようなプロセスがそこにはありました。かといって、見えてきた理論に対し、方程式の答えのような一辺倒の演技を固めてしまうという訳ではないのです。

役者が発する演技のセリフによって、また別の役者の内面を動かす。そうした舞台上のリアルタイムな流れも重視した稽古の形でした。指定されたセリフを、指定された演出として“正確に行えるようになるか”が練習・稽古なのだと思い込んでいた筆者は、このプロセスを目の当たりにしたことで、ここに表現者の幅や余地が生まれるのだと学べたように思います。

『コネクトクルー』 (Aブロック出場)

照明やモデルサイズをみんなでチェックしている場面

最後に取材したのは『コネクトクルー』さん。

『劇王Virtual2025』が用意したチーム編成のためのマッチングイベントからスタートしたとされる『コネクトクルー』の皆様は、役者2名、裏方2名という構成です。こちらは脚本家がはじめての演劇、はじめての脚本に着手されたとのことでした。

VRChat上でTRPG等を実現・サポートするギミックである『CatsUdon』を活用した場面転換を盛り込み、既に舞台上で通し稽古を行える状態まで実現していました。このシステムは、落ちている小瓶やイスといった小物から大道具まで、実際にVR空間内でひとつひとつ配置可能となっています。

稽古を通しながら、アバターのサイズに対する違和感を解消していったり、ちょっとした物品の配置を調整したりと、舞台環境も勝負どころのひとつだということがわかります。

『メタシアター』が制作しているVR劇場『Dramapia』には、本物の舞台さながらの照明設備が実装されており、この日の稽古では変遷する照明効果も合わせて行われていました。多くのチームが2月頃からスタートしていることになりますが、僅かな期間でここまで作り上げていくのは並大抵のことではないと感じます。

役者のおふたりはVR演劇の経験者であり、セリフの間も絶妙だと感じました。特にVRChatでは音声遅延の個人差が大きく、より難しい環境にあるはずです。少人数だからこそ、そのあたりまで含めた互いのクセを掴んでいけるのかもしれません。

熱意あふれる作り込みの20分間を、観に行こう!

『劇王Virtual2025』は、20分という“長すぎず・短すぎない”絶妙な演劇を楽しめるイベントです。手軽だけど本格的、気軽だけど熱量あふれる演劇に挑む全15チームは、どんな舞台を魅せてくれるのでしょうか。

2025年5月2日の予選はA~Eブロック、5つの時間帯で開催されます。また、翌5月3日は決勝戦が予定されています。

参加方法および配信は公式サイトをチェック! また、5/3の決勝戦はVRC放送局で特番として放送されることが決定しています。

『劇王Virtual2025』概要

開催日 :
 5月2日(予選)19時
 5月3日(決勝)21時~
参加方法:
 グループへ参加し
 当日グループインスタンスへ入る
サイト :https://sites.google.com/view/gk-ovr25/top

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