1998年の発売より20年以上愛され続けている2D対戦格闘ゲーム『ギルティギア』シリーズ。
現在VRChatを始めとしたメタバース空間で開催されているバーチャルマーケット2021では『パラリアル秋葉原』にてVRChat想定の3D衣装を販売しています。
ギルティギアシリーズを手掛けるアークシステムワークスは、前回開催の『バーチャルマーケット6』でも同シリーズの企業出展をしていましたが、今回の出展ではVRカルチャーの改変・着せ替え文化に着目。3Dキャラクターそのものの配布ではなく、衣装の配布を行い多くのユーザーから好評を博しています。
その成功の秘訣にはユーザークリエイトの文化を尊重したモデル作りを行っていることが挙げられます。当記事ではキャラクターの衣装制作を行ったクリエイター3人をピックアップし、メタバースコンテンツにおける3Dモデル販売の成功の秘訣を探っていきます。
目次
身近なクリエイターが作るからこその安心感 メイ衣装制作-ワタリノさん
今回のギルティギアの出展が大きな話題を呼んだ理由、その1つにはメタバース空間で遊ぶ3Dモデラー・クリエイターを積極的に起用した事が挙げられます。
3Dモデル販売はもともとVRユーザー間で行われている同人文化が発端となっています。
人気のクリエイターには既に熱狂的なファンが付いており、『~~さんの発売したアバターなら信頼できる』『~~さんのアバターは改変がしやすいから安心して購入できるよね』といった、ある種のブランド化が進んでいます。
今回ギルティギアシリーズのキャラクター、メイの衣装を製作したワタリノ(@watarino_OeO)さんも、VRユーザーの中で人気の高いクリエイターの1人です。
趣味で3Dモデリングをされているという事ですが、ワタリノさん自身もVRを楽しむユーザーの1人。
VRChat内でイベントに遊びに行ったり、VR空間内でのフレンドと一緒に飲み会をしたりと、他のユーザーと変わりなく遊んでいるそうです。
【星ワタリノ空】BOOTH販売ページ https://watarino.booth.pm/
アバターの導入や着せ替えについては現在動画や情報誌など様々な媒体でHow Toが出されています。ですがアバター改変はまだまだ敷居が高いもので、細かな調整や着用感などは口コミで情報を得るしかありません。そういった中、VRを普段から日常的に遊び、ユーザーの心を分かっている、信頼できる身近なクリエイターが衣装制作を担当したことが今回の衣装販売の売り上げ向上に繋がったと考えられます。
今回のメイの衣装はワタリノさん独自のVRユーザーに寄り添った調整がされています。
今までのアークシステムワークスのモデルはゲーム原作の特徴を生かしたセルルック調(俗に言うアニメ塗りのようなもの) でした。
しかしながらワタリノさん曰く、VRユーザーがアバターとして使用する販売モデルの多くは手書きイラスト風やリアル調のテクスチャを使用していることが多いのだそうです。
その為今回の衣装制作ではなるべく多くの3Dモデルに馴染むように、手書きで制作を行ったと語っています。
また、ユーザーが使用するアバターは形が様々なので、胸の大きさなどをシェイプキーで調整できるようにしてあります。
ボーン(骨組み)や物理演算も極力シンプルに仕上げ、まだアバターの着せ替えに挑戦したことの無い人でも簡単に楽しめるような工夫がされています。
こうした細かな気配りにより、汎用性の高い衣装として多くのユーザーの購入に繋がりました。
アバター改変のしやすさに着手 Ekuri流改変サポートサービス-えくりさん
バーチャルマーケット2021ではメイの衣装販売の他、同シリーズより「エルフェルト」「ディズィー」「梅喧」「蔵土縁紗夢」のVRChatアバター用衣装セットの販売が行われています。
この4人の衣装についてもVRカルチャーを熟知するクリエイターが改修を手掛けています。
改修を行ったのはVRユーザーのアバター改変を手助けを行っている えくり(@EkuriVr)さん。
えくりさんは『Ekuri流改変サポートサービス』という、VRユーザー向けのアバター改変サポートを行うアバター改変のプロフェッショナルです。
アバター改変は先ほども述べたようにBlenderやUnityといった専門ソフトを使う為、導入のハードルを高く感じる方が多く存在します。
こうした中、えくりさんの改変サポートサービスが登場してからは、これまで改変に手が伸びなかったユーザーもアバターの着せ替えや改変を楽しめるようになりました。
ユーザー間では『こういうサービスを待っていた!』という声が次々に上がり、サービス開始から現在まで述べ200件以上のアバター改変依頼が舞い込んでいます。
Ekuri流改変サポートサービス https://www.ekurikaihensup.com/
今回のギルティギアのキャラクター衣装改修は、えくりさんのアバター改変知識がふんだんに詰め込まれています。衣装は最近のVRChatユーザーの傾向も鑑みて、なるべくUnity上だけで着せ替えが完結するよう配慮がされています。
且つ様々な体系に着せ替え出来るような汎用性の高さも兼ね備えられています。
VRファッション文化のトレンドをキャッチする ラムレザル帽子制作-enuさん
アンケート回答者全員にプレゼントされる、ギルティギアのキャラクター「ラムレザル」の帽子モデル配布キャンペーン。
こちらの帽子の制作を担当したのはenu(@enu_001)さんです。
主にVRChat向けの3Dアイテムを制作し、アバターに合わせた小物のワンオフのモデルの制作なども手掛けています。
■nullの足音 https://nul10.booth.pm/
enuさんはVRアバター文化初期からVRファッションに着目し、アバターをおしゃれに着飾るアクセサリーや洋服の制作を得意としています。
バーチャルながらも現実みのある着用感のあるアイテムは、女性的なファッションセンスを好むユーザーに人気が高く、自身もファッションに関する感度が非常に高い、研究熱心なクリエイターです。
今回のラムレザルの帽子を制作する際もギルティギアファンの期待を裏切らないようにと、ギルティギア公式サイトにある漫画を読み込んだり、動画を観たりしながらラムレザルについて勉強されたそうです。
enuさんの洞察力の高さはラムレザルの帽子にも反映されています。
帽子のエンブレムの細かな部分まで実際のキャラクターと変わりなく再現されています。
また、VRChatで利用するのであれば少しでも負荷が無いようにとクオリティを維持しつつポリゴン数を抑え、マテリアルを1つにして軽量化を意識して制作されています。
VRユーザーはアイテムの色を変えて自身の個性を出す人も多いため、色改変がしやすいようにテクスチャもパーツごとに細かくレイヤー分ける配慮もされています。
ユーザーコミュニティに寄り添い、信頼を築いていくことが重要
VRカルチャーのトレンドは非常に移り変わりが激しいため、こうした細かなニーズへの要望はユーザーコミュニティ所属のクリエイターだからこそ実現出来た事と言えます。
自社開発ではなく、あえてVRユーザーのクリエイターを起用した事で、結果的に多くのユーザーに好評される3Dアイテムの販売となりました。
また、ユーザーを巻き込む施策はクリエイトだけでなく、衣装を購入し実際に着用しているユーザーに対しても行われています。現在アークシステムワークスオフィシャルサイトでは、衣装を着用したユーザーのSNS投稿を積極的に掲載する施策を行っています。
【12/11更新】バーチャルマーケット2021 イベントレポート実施中 https://www.arcsystemworks.jp/portal/post-21794/
【12/16更新】バーチャルマーケット2021 イベントレポート Part2
https://www.arcsystemworks.jp/portal/post-21997/
アークシステムワークス広報担当の三木氏は『VRユーザーにコンテンツを知ってもらうには、対面から一方的に主張するのではなく、ユーザーと同じ方向を向いて寄り添うことが大切だと考えてます。弊社でも日頃よりユーザー主体のイベントサポートを積極的に行うなど、ユーザーベースのファンコミュニティを大切にしています。』と語っています。
アークシステムワークスでは今後VR上でのイベントにも何らかの形で関わりたいと考えており、ユーザー主体のイベント等の支援を行っていきたいと述べています。
■アークシステムワークス株式会社オフィシャルサイト https://www.arcsystemworks.jp/
・『ギルティギア』 Vket公式ストア(衣装販売) https://www.store.vket.com/sp/shop/arcsystemworks
・ギルティギア イベントサポートページ https://www.guiltygear.com/ggst/jp/eventsupport/
■バーチャルマーケット2021『GUILTY GEAR -STRIVE-』ブース
キャラクター衣装制作クリエイター
・ワタリノ https://twitter.com/watarino_OeO
・えくり https://twitter.com/EkuriVr
・enu https://twitter.com/enu_001
(敬称略)