【コラム】ひまり旅館で初心者のための部屋を立ててみた【寄稿】

皆さまはじめまして、あかみやと申します。

この度、御縁がありましてバーチャルライフマガジン様から記事を投稿する機会をいただきました。どうぞよろしくお願いします。

早速わたしの記事を皆さまにお届けしたいところですが、まず始めに自己紹介をさせてください。

わたしは2024年10月にVRChatを始めました。
VRChatを何で知ったかといいますと、とある書店でバーチャル美少女ねむさん著作の『メタバース進化論』を見つけたことでした。

メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界amzn.asia

本書にはメタバースの概説や使用機器、VRChat住民への大規模アンケート、メタバース特有の文化事情などが盛り込まれており、そこに興味を抱いたのでした。

Quest3を購入してからアカウントを作成するという準備万端ぶりを発揮し、意気揚々とVRChatの世界に飛び込んだことは今でも鮮明に思い出せます。

初めて間もない頃は雑談ができるイベントをひたすらはしごし、様々な人たちと交流をするように動いていきました。
やがて初心者案内に興味を持ち、週一ペースで初心者を案内する日々を過ごしていきました。その過程で、次第に初心者に伝えたいことが増えていき、口頭ですべてを教えることは不可能になってきたことを悟ります。

そこでnoteというブログサイトの存在を知ることになります。
noteには数多くのVRChatに関係する記事がアップロードされ続けています。
それに気づいたわたしは、「そうか、noteに自分が考えていることを全部アウトプットしておいて、詳しいことはここから確認してねと伝えれば済む話じゃないか!」と天啓を得、勢いそのままに4万字オーバーの記事を書き上げました。

https://note.com/alive_canna3443/n/n5d281ed9154a

予想以上の反響を得て、「noteに記事を書くとみんなが読んでくれる!」という期待感を存分に抱いたわたしは、今でもnoteでの投稿を続けています。

わたしからnoteを取り去ってしまえば、この記事を読んでいる皆さまとさしたる差異のない一般プレイヤーでしかありません。
フレプラに行くことを中心に、気が向いたらパブリックとイベントに繰り出すという遊び方しかしていませんから。

もしわたしの詳細なVRChatでの軌跡を知りたいというかたは、こちら2つの記事をぜひ読んでみてください。

https://note.com/alive_canna3443/n/n51bbaf037db0

https://note.com/alive_canna3443/n/n051e255a6b4d

長い前置きはここでおしまい。

それでは、本編をお楽しみください。

そもそもの動機

11月29日の夜、ひまり旅館にて初心者の悩みや疑問をとりあえず聞きますという部屋を立ててみた。

「解決します」という言葉を使わず、「とりあえず聞く」という表現を起用したのには理由がある。
ひとつは、初心者側に「自分の悩みは取るに足らないものかもしれないから、他人の貴重な時間を割いてもらってまで解決方法を考えてもらうのはしのびない」などと思わせたくなかった。
気を遣うのは相談される側だけでいい。訪れる側にはなんの気兼ねも与えたくなかった。
もうひとつは、悩みを解決してハイおしまいさようなら、という流れを生むための要素になることを避けたかった。
直截に言えば、悩みの解決だけでなく初心者との雑談による交流も図りたかったのだ。初心者と「やりとり」がしたかった。
かといって部屋名を「初心者の方、喋りませんか?」などとすると下心がいささか露出しすぎている。
だから悩みを聞いたうえで、あとはなし崩し的に雑談ができればいいという目算を立てた。

前菜は甘い葛藤

最初に入室してきたのは、予想に反してTrustedの女性ユーザーだった。
おそらく様子見で来ただけだろうというあたりはつけながらも、「もしかして、なにか相談したいことがありますか?」と聞いてみた。
「いや、そういうわけじゃなかったんですけど……」と反応に困ったようなリアクションが返ってくる。
やっぱりなと内心で納得しかけたところだったが、事態はまだ回転を止めなかった。

「実は今、お砂糖になりたいと思っている相手がいるんですけど──」

彼女がとつとつと語り始めた。お砂糖の相談ともなれば、気を遣ってとっさにひねり出した質問ではないことは明白だ。
わたしはお砂糖に懐疑的な考えを持っている。ただし人のお砂糖相談話を一蹴するほど尖りきってはいない。
ひとりの人のメタバース人生のターニングポイントをつくるかもしれないという予感を抱き、現実の背筋も自然と伸びて前のめりの姿勢を取った。
つとめて彼女の話に耳を傾けるよう心がけた。

自称お砂糖懐疑論者の名に恥じず、わたしはお砂糖をつくった経験がない。
過去にお砂糖になってくれと猛烈なアプローチを受けたことはあるが、今となっては凪のように変化がなく、もう終わったものだと思っている。幕は降りたのだろうか。

さて、経験則による納得感ある解釈が披露できない以上、傾聴の姿勢でもって相手がどういう状況に置かれているのか、何に困っているのかを掴まなければいけない。そのうえで解釈を述べていくのだ。
彼女の話した内容を思い出してみよう。
意中の相手と関係は結びたいが、今も仲良くはやっており、振り回されているような感覚を抱いている。でもこの関係も心地よく思っているから、告白しなくてもいいかもしれないと考えている──そういった内容だった。

現状維持か未知へ踏み込むか、二者択一の問いだ。
わたしからこうせよと発破をかけるようなものではないと思った。
だから「あなたが今後その人とどういう関係でありたいかを、よく考えるべきだと思います」とだけ答えるに留めた。
人の恋路によかれと舗装した道を伸ばしてやることは、わたしにはできない。
道程にかけた時間と苦労というものは、当人が手探りで切り開いていく過程を経て、あとから振り返ることができるようになることではじめて、美しく結晶化されるものだから。

わたしの回答を聞いたあとの彼女の相づちからは、少なくとも落胆や失望の色が含まれているようには見えなかった。
わたしは安心してしまったのか、恋愛の駆け引きと無縁な生を送ってきたことを白状した。今では余計な告白だったような気がしている。

「いえ、聞いてくれただけでありがたかったです。誰かに話せて少し楽になりました」

感謝の言葉と重なるように、次の訪問者がやってきた。
記念すべき最初のNewUserであった。

集い、賑わう

それからは、この部屋を立てた意図通りの展開が繰り広げられていくことになる。

最初のNewUserからは、パブリックで人に話しかけることができないという相談を受けた。
パブリックで話しかけることができないのは誰しもそうであることを語り、具体的なアドバイス──NAGiSAやひまり旅館を駆使すること、交流系のイベントやフレプラを活用すること──をしている最中に、今度はUserとKnownUserが入室。

お砂糖相談をしてきた彼女はいつの間にか退出していた。
「どうもありがとうございました」という言葉とユーザーネームが書き置きされていた。

Userの人は、最近ランクが上がってしまったせいで、大してVRChatに慣れていないのに初心者としてみなされなくなっているように感じて困っていると吐露した。わかるわかるよとわたしとKnownの人が首肯し、NewUserの人は「えっ、そんなことになっちゃうんですか」と驚きの声をもらした。
ユーザーランクが早く上がりすぎてしまうことへの不満や対策の話でひとしきり盛り上がった後に、Knownの人からの相談を受けた。
曰く、Quest3を最近買ったが、付属品のベルトのせいか顔に負荷がかかりっぱなしになって長時間プレイできないという。
これまたよくある悩みだ。拡張バッテリー付きのストラップを使用することにより、頭の前と後ろの荷重のバランスを取ることで改善するとアドバイスした。Knownの人は「そういうアプローチが……!」と得心しきりだった。

まだ他にも相談事を持ち寄ってきた初心者は何人かいたが、大まかな様相としてはこんなところだった。
振り返ると、ひとりにアドバイスしている途中に後ろで待機する人が現れることがあったりして忙しないこともあったが、とても充実感にあふれた体験ができたなと思っている。

目的を外れたやり取りを求めて

経験者が初心者を教えようと前のめりになる時、初心者からの質問→それに対する回答→それを受けて初心者からの追加の質問……というような、一問一答式の一方通行なやりとりが発生しやすい。
初心者の疑問に答えていることから目的は達せられてはいる。
だが互いに人である以上、こういったやり取りで終止してしまえばどこか渇きをおぼえてしまうものだと思っている。
もっと自然な流れで悩みをひも解いてあげたい。
初心者が疑問を口にし、それに対して回答し、プラスアルファの説明──ここを起点として、雑談のフェースへと移行していく。
相手の声が弾んでくれば、こちらもつられて声のトーンが上がる。
互いがほぐれていく、この人にならなんでも話せそうだと思ってもらえる……理想としてはこのような過程に至ればいいと描いている。

最短ルートによる目的の達成のみを見据え、それ以外の要素を切り詰めたトラブルシューティング的なやり取り自体を否定するつもりはない。
ただ、わたしが究めたい道ではない。わたしが望むのは、曲折に彩られた、あてのない散策的な会話だから。
ただし散策の要素ばかりを求めてしまえば、それこそ初心者の悩みを聞くという趣旨からは外れてしまう。だから問題が解決した後に、ゆるりとした雑談という散策へと誘うようにする。

模範解答のない問い

JPTutorialWorldに行けば初心者がいるという言説は、都市伝説化してきているような感覚がある。
いや実際は、足を運べばインスタンス内にひとりかふたりはNewUser以下のユーザーがいることが多い。
だが、数人程度の初心者が点在しているという光景はそうそうお目にかかれなくなった。ジェイプラもそうなのだろうか。
初心者はどこへと散らばっていったのだろうと考えていた。
初心者たちはどのようにして、どの場所で、自分たちの疑問や不安を解消していってるのだろうと。

今回のひまり旅館での部屋立てで、それに対する部分的な解答を垣間見た気がした。
おそらく多くの初心者たちは、疑問や不安を共有できる人・場を見いだせていない。

VRChatにおいては、困ったことやわからないことは自分で動いて解決せよという自助努力の精神が色濃く伝播されているとわたしは捉えている。
Unityでの困りごとが最たる例だろう。加えて、教える側が初心者によくする鉄板の質問に、「VRChatでなにをしていきたい?」がある。
まるで自分の意志でジャングルに踏み込んだのだから、地図やコンパス(=目的)をあらかじめ持参していて、行きたいところ(=やりたいこと)の目星はつけているのだろうと決めてかかっているかのような質問だ。
まったくそんなことはない。わたし自身も同じような質問をしたことがあるが、返ってくる答えはいつも決まっている。
「いや、まだ何ができるかもわからないので……」

そう、大抵の初心者は迷い人なのである。
子羊のようにあたりをしきりに見回し、周囲の状況を確認しようとすることで精一杯。
立派な目的意識を最初から備えていることなど、本当に稀なことだ。
なので、初心者たちが最初に求めるのは「安心感」を得られる場所である。

安心感というのは、

①ここなら無知な自分のままでいても必要以上に恥を感じないということ
②無知ゆえの失態を犯しても、問題とせずに受け止めてくれること
③どんな些細な悩みごとでも真摯に応答してくれること
④初心者ということ、始めた時期が大きく乖離していることを特段意識させず、対等感のある関係性でもって接してくれること

この4つの確信が当人のなかで得られることで醸成されるのだと考えている。

すでにそういった場所を見いだせた人であれば、わざわざパブリックに行ってまで人に相談事を持ちかけるようなことはしない。
するにしても、界隈外の人からの意見を聞きたいという、比較的切迫感のない動機が原点にあるはずだ。
そういった人であれば、質問に対する回答が聞けたらすぐに立ち去るか、質問はもののついでで本筋は交流にあったというパターンがほとんどだろう。

VRChatをはじめて間もない頃というのは、安心感が得られる場を見繕えていることは基本的にないため、消去法としてパブリックで知らない人から教授を受けるしかなくなる。
しかしここで最大の壁が立ちふさがる。
自分から人に話しかけられないという苦悩である。

すでに話が盛り上がっている人たちに、ことわりを入れて割って入ってもいいのか?
ひとりであっても微動だにしない人は話しかけてもいいのか?
壁の前に佇んでいる人は?

人を見つけるたびに逡巡が伴う、負荷の高い放浪だと言えるだろう。

仮に会話が始まったとしても、別種の苦労が待ち構えていることがある。

どんな質問であれ、わたしたちはまず自身の成功体験を基にした答えを言うものだ。自分が成功したのだから、他の人でもうまくいくはずなのだと反射的に論理を飛躍させる。
トラブルシューティング系の問いであれば大きく的を外すことはない。

しかし、初心者当人が抱えている問題が明確な答えが存在しない類のものであると、納得に至らないことがある。
最たる例に、「フレンドはどうやって作っていくのがいいのか」という問いがある。

この場合、質問者に合った方法を探っていかなければならない。
10分話せたら「フレンド申請いいですか」と食い気味につくっていけと激励するか、1時間程度じっくり話して次も会いたいと思える人にだけアプローチせよと言うか。
場所の話だと、NAGiSAなのかFUJIYAMAなのか、はたまたイベントなのかフレプラなのか……これといった正解がないからこそ、当人の適性を話していく過程で見極めていくことが必要になってくる。
相談者には多方面の引き出しが求められる。自分の経験談だけでは相談者の腑に落ちないことがままあるからだ。

ひまり旅館という光明

わたしはVRChatにおけるコミュニケーション文化の特異性や、現実世界とは異なる関係性の持続、コミュニテイの生成・安定・変化・消滅といった事象を考えることが好きだ。
そのため、他の人よりは幾分か多角的なアプローチを提案できるつもりでいる。
普通の人ならひとつしか意見が出せないようなときに、ふたつみっつとひねり出してみせることができる。
VRChatにおけるコミュニケーションとコミュニティへのアプローチ方法の考察はすでにnote上で済ませた。
しかしこの記事は、note界隈では注目されただろうが、VRChatの初心者情報群のなかでは無名に近い立ち位置にしかない。届けたい人のもとに届きづらいものとなってしまっている。
編み出したノウハウを、生の声でもってひとりでも多くの初心者に伝えることが課題だった。

そこに現れたのがひまり旅館だった。

「ちょっと困ってることがあるんですけど……」とパブリックで言い出せない初心者と、困っている初心者はどこにいったのかがわかっていないわたし──双方のニーズを接続させるワールドであった。

ひまり旅館は目的指向性を強く感じるワールドである。
出迎える側は部屋の名前を自分で決めることができ、訪れる側は自分の意にそぐう部屋を見繕う。
初心者目線ではありがたいことだろう。この部屋に入ればこういう話がされているのだろうなという予測が立てやすいからだ。経験者ですらそうなのだから。
初心者の悩みを聞きますという部屋名をみとめれば、困っている人からすれば広大な砂漠でようやくオアシスを見つけたという心境になってもおかしくはない。

ひまり旅館に限らないが、パブリックで初心者への相談役を買って出た瞬間、相談者が上位に、初心者は下位に定められる。
そのため努めはするものの、どうしても対等感を生み出すことができないことがよくある。
道行くみすぼらしい出で立ちの人に対して、辻で説法を解く僧侶にでもなった気分になる。はたから見れば気どっているように映るのかもしれない。

それでもいいと思いたい。
現実では聖人のような振るまいができるほど徳高くあれていないのだから、メタバース空間でくらいは慈悲の心を発現するように心がけなければ、精神の均衡がカタガタになってしまう。私利によって他利がもたらされれば善は為される。

おわりに──門戸は開かれている

もしもこの記事を読んでいるあなたが、VRChatの世界に溶け込めていなかったり、相談したくてもできない環境におかれて困っているのだとしたら、ダメ元でひまり旅館のインスタンスをざっとあらためてみるといいかもしれない。
ご縁があれば、酔狂なお節介焼きがこのような部屋を立てているのを発見できるだろう。

「VRChat初心者の悩みをとりあえず聞く部屋」

VisitorからTrustedまで、門戸は開かれている。
フレンドのつくり方からお砂糖にしたい相手への接近方法まで、わたしが共に考える相棒となります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

もしわたしの書きぶりを気に入ってくださったのであれば、わたしのnoteの記事のほうもチェックしていただけるとたいへん嬉しく思います。

https://note.com/alive_canna3443

それではみなさま、よきVRChatライフをお過ごしくださいませ。

寄稿者紹介

あかみや

読書とおしゃべりをこよなく愛する一般人。
noteでVRChatに関する記事を書いていますので、読んでいただけるとうれしいです!

投稿者プロフィール

バーチャルライフマガジン編集部
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