
VR演劇団体「バーチャル演劇研究会」の第一回本公演となる『マリオネット法廷』のゲネプロ(演出なども本番と同様に行うリハーサル)が5月16日に行われました。
(※ゲネプロを観たフリーライター浅田カズラさんの投稿。ベネツィア国際映画祭のXR部門にもノミネートされた2022年の「Typeman」と並ぶVR演劇として心に刻まれた、と称賛しています)
VRで活動する幅広い分野の方々を招待して行われたこのゲネプロの開催直後からX(Twitter)にゲネプロの内容を絶賛する投稿が多く投稿され(浅田カズラさんの投稿はその一例)、その影響で5月21日~6月5日まで計6回の予定で行われる本公演のチケットが有料にも関わらず完売したという異例の高評価を得ている本作。
そこまでの「絶賛」を得るに至った理由は何か。実際にゲネプロを観た筆者が感じた「絶賛を呼んだ3つの要素」について本記事では紹介していこうと思います。
チケットは完売していますが、記事の最後では追加席販売の可能性や動画配信の予定について紹介していますので、興味を持たれた方はそちらも是非どうぞ。
目次
「バーチャル演劇研究会」とは?
『マリオネット法廷』の話をする前に、まずは今回の公演を行う「バーチャル演劇研究会」についての説明から。
「バーチャル演劇研究会」、正式名称「ましろ小劇場 バーチャル演劇研究会」は(『マリオネット法廷』の会場でもある)バーチャル劇場「ましろ小劇場」で活動するVR演劇団体として2024年10月に設立されました。


「バーチャル演劇研究会」は「バーチャルをリアルと並ぶ演劇の選択肢とする」という理念を掲げて活動しており、今回の『マリオネット法廷』は過去二回のオムニバス公演を経た初めての本公演であり、VRChatのクリエイターエコノミー制度を利用した初めての有料公演となります。
詳しい活動内容について紹介いただいた寄稿記事がバチャマガに掲載されていますので、詳しくはそちらをどうぞ(上の写真も同寄稿記事から転載させていただきました)
『マリオネット法廷』が絶賛された要素とは?
ここからは、本題である「筆者が感じた、『マリオネット法廷』が絶賛された3つの要素」について紹介していこうと思います。
1.ファンタジー世界に没入させてくれる演出・造形



「おもちゃ達による裁判」が進行していく本作。それに合わせて会場の舞台は子ども部屋を連想させる可愛らしいインテリアで構成されています(会場の「ましろ小劇場」はリアル世界の小劇場に近いシンプルな内装の建物なのですが、この作品に合わせて改装を行ったとのこと)。
登場するおもちゃ達や観劇用のアバターの造形も良い意味で『VRChat』でよく見かけるものとは違う姿をしており、物語の世界観構築のために演出・造形をこだわり抜いたことが伝わるようでした。
2.ただのファンタジーではない?!脚本の凄さ
あらすじ
ジルベルト・パーカーは気がつくと法廷に被告人として立っていた。
弁護人も証人も裁判官もすべてがおもちゃで、ジル自身も人形になってしまっている。違和感満載の裁判は進み、自由な証人尋問が続く。
果たしてジルの罪状とは何なのか?ジルに下された判決とは……?

あらすじにある通り、この裁判には数多くの『違和感』が存在します。
「俺は人間だぞ!」と怒って悪態をついて回るジルの身体にだけある無数の糸、弁護人と裁判官は居るが検察役が居ない法廷、ジルがどんな罪に問われているのか明かされないまま「彼は『完璧な人形』だから罪を犯すわけがない」という証言のみで進められる証人尋問……
これら全てが「人間世界とは異なるおもちゃの世界の出来事だから」ではなく、人間世界に生きる我々が共感できてしまう、ある「シリアスな理由」によって構成されていたことが明らかになる中盤以降の展開は、筆者の予想が何度も覆されるような意外性に富んだ内容になっていました。
詳しい内容はネタバレに該当するためここでは述べられませんが、ゲネプロを観た後に「これはリアル世界ではなくVR内で演じられる必然性を持った脚本だ」と感じた事だけは述べておこうと思います(本公演は「バーチャル演劇研究会」内のコンペで選ばれた黒井有利さん書下ろしの脚本とのこと)

3.演劇に没頭させる『リアリティ』
『マリオネット法廷』は一時間ほどの長さの会話劇ですが、筆者は時間の長さを感じることなく舞台に没頭する事が出来ました。それは舞台造形や脚本によるものだけではなく、観ていて違和感を感じさせないリアリティのある演劇を追求した様々な努力や工夫があっての事と考えます。

まずは演技面について。ジル役のちくわこさん、『弁護人』役のU-kkiさんを筆頭にした総勢6名の役者さんによる演技は実に自然かつ感情が伝わる内容で、「リアル世界の演劇もこんな感じなのだろうなあ」と思ってしまったほどのクオリティでした。(聞く所によると、本公演に向けて約半年もの間稽古を重ねてきたそうです)


もう一つは演出・技術面について。VR演劇では「舞台美術や他の演者に直接触れることが出来ない」「(全身トラッキングとスティック移動を組み合わせるため)長距離の歩行モーションが不自然になりがち」「通信による会話のラグ(遅延)が発生する」といったリアル世界の演劇には存在しない数々の障壁が存在しており、没入感の阻害要因になってしまいます。
「バーチャル演劇研究会」と、研究会の主宰であり本公演の演出を担当しているめどうさんは以前よりこの問題に取り組んでおり、めどうさんが演出を行った2024年の『明後日は終末』の舞台の紹介記事においても「リアル歩行にこだわった演技」「(ハンドジャスチャーではなく)外部操作による演者の表情表現」「(演技をかぶせ気味に行うなど)調整を事前に行う事でラグが限りなくゼロに見えるようにする」といったリアル世界の演劇に近づけるためのさまざまな工夫が紹介されています。
『マリオネット法廷』のゲネプロ後にめどうさんやスタッフ・演者の皆さんにお話を伺ったところ、先に挙げた「リアル世界の演劇に近づけるためのさまざまな工夫」が今回も使われているだけでなく、更なる進化も施されているらしいです(例えば本公演では段差を登るシーンがあるのですが、アバター内の歩行モーションと全身トラッキングによる歩行を適宜切り替える事で自然な上り下りの演技を実現したとのこと)
まとめ~VRとリアル舞台の良い部分が融合した、至高のVRコンテンツ

ここまで「『マリオネット法廷』が絶賛された理由と感じた3つの要素」について話してきましたが、まとめると「VRならではの演出や造形に対するこだわりと物理世界の小劇場舞台に近づくための技術面の工夫と演者の皆さんの高い演技力、巧みな脚本が組み合わさって物凄く優れたVRコンテンツになっていた」と言えるように感じました。
「VRとリアルの良い所取り」というと簡単ですが、そこに至るまでの演者やスタッフの皆さんの努力を思うと頭が下がる思いです。

記事冒頭で述べた通り、『マリオネット法廷』の本公演は5月21日~6月5日まで計6回行われる予定です。ゲネプロを観た人間の一人として「バーチャルをリアルと並ぶ演劇の選択肢とする」べく行われる本VR演劇公演の成功をお祈りしたいです。
公演・配信情報

※記事執筆時点(5/19)では全公演満席となっていますが、これを受けて関係者席の開放が予定されています!以下に示す時間に予約サイト内の座席上限数が若干数緩和される予定です。
【5/21・22・29公演分】 5/20(水)20:00~
【5/30・31・6/5公演分】 5/25(月)20:00~
本公演終了後、オンライン観劇サービス『観劇三昧』さんでの動画配信が予定されています。
・観劇三昧「ましろ小劇場」劇団ページ URL: https://kan-geki.com/theatre/site/5mok3j449ljrp9el
『マリオネット法廷』の配信は有料で行う予定ですが、具体的な配信方法については記事執筆時点では未定となっています。配信開始時の案内をご確認ください。
パンフレットも販売予定!
キャスト・スタッフのコメント、主演・演出陣・舞台美術班などの対談、製作過程などを収録したパンフレットがBOOTH内にて販売予定です!
・価格 1000円
・ページ数 20P前後の予定
・発売時期 5/21以降
・販売場所 『ましろ小劇場』BOOTHショップ内 URL: https://mashirotheater.booth.pm/
参考記事
※『バーチャル演劇研究会』より頂いた寄稿記事
※『バーチャル演劇研究会』主宰のめどうさん率いるVRインプロ(即興演劇)集団『白紙座』とVRTRPGサークル『CatsUdon(カツドン)工房』のコラボイベントを紹介した寄稿記事
※めどうさん演出による舞台公演の取材記事
投稿者プロフィール

最新の投稿
VRChat2026年5月20日口コミでチケットが完売に!?VR演劇『マリオネット法廷』のゲネプロで感じた「絶賛された3つの要素」とは
VRChat2026年5月12日『VRC-JP 初心者プラザ』訪問数100万人突破!アンケートから見えた「ジェイプラの3つの価値」とは?【プレスリリース】
VRChatイベント2026年4月28日その場で曲を聞きながらリアルタイムで『耳コピ』!?チルな雰囲気の中で凄いピアノ演奏をし続ける『しゃくら』さんのパフォーマンスを見に行ってきました
VRChatイベント2026年4月18日バーチャル空間に新しい和装文化の風を。株式会社V、3D和装ブランドKimonowaの新作『MyHakama 2026』を制作!「きものdeお花見会」の制作進行も【プレスリリース】


































・5/21(木) 22:00開場 22:30開演
・5/22(金) 22:00開場 22:30開演
・5/29(金) 22:00開場 22:30開演
・5/30(土) 21:00開場 21:30開演
・5/31(日) 21:00開場 21:30開演
・6/ 5(金) 22:00開場 22:30開演
・料金
1,200 VRCクレジット($9.99) Webサイトでの予約完了後、送信されたメール内記載の『チケット購入用ワールド』にてチケット購入