【クリエイターインタビュー】制作チームに聞く『エク』制作秘話。色とりどりのクリエイターが織りなす、ねこっ娘魔法使いのこだわりと魅力【PR】

BOOTHショップ『sep-neko-ya』から、2025年10月10日(月)に発売されるオリジナル3Dモデル『エク』。ゲームワールド「RESONARK 4」とは異なる世界からやってきた、魔法が使えるねこ系メインヒロインの魅力は、先日レビュー記事にてお伝えしました。

本記事では、『エク』制作チームより、septem47さん、有坂みとさん、ちょこ庵さんをお招きしたインタビューをお届け。ディレクター/エンジニア、3Dモデラー、イラストレーターと、三者三様なクリエイターがどのように『エク』を作り上げていったのか、どのようにチームが生まれたのか、ロングインタビューでお伝えします。

インタビュー参加者

septem47(@septem47
サークル「sep-neko-ya」主催。
『エク』制作ではディレクション担当。一部のグラフィックデザインや、表情制作・ポーズ制作・技術周り・デバッグなどの作業も行った。

有坂みと(@Mito_Arisaka
3Dモデラー/デザイナー。BOOTHショップ「ぷらすわん」オーナー。
『エク』制作ではエク(私服)のデザインとモデリング担当。

ちょこ庵(@Chocoan09
イラストレーター。
『エク』制作ではエク(私服・制服)のデザイン、一部テクスチャ、グラフィックデザイン担当。

「現代の魔法学校」の生徒として、エクは生まれた

まずは『エク』の誕生経緯についてお伺いします。音楽ゲームワールド「RESONARK 4 ELVES」から生まれた『ホノカ』や『シアン』とは、制作に至る経緯が少し異なるとお聞きしたのですが、どのような経緯で制作が始まったのでしょうか?

septem47

「RESONARK 4 ELVES Part.2」のシナリオが完結した時点で、次にサークルとして何をしようかと考えた時に、やはりアバターを制作したいなと思ったのが発端です。

『ホノカ』や『シアン』は「RESONARK 4 ELVES」のワールドを出発点とし、その世界観に基づいて作られたアバターでした。そこで今度は「ワールドに依存しないアバター」を作ったほうが、より多くの方に気軽に使ってもらえるのではないかと考えました。

とはいえ、もともとsep-neko-yaにあるゲーム開発やワールド制作のノウハウを活かし、「アバターを中心に据えたワールドや世界観」を一緒に構築したいと思ったのも事実です。そこで思いついたのが「架空の学校」を舞台に、その中の生徒としてアバターを作るというアイデアです。

学校のワールドを作り、そこに『エク』を位置づければ、アバターが主役となる世界観が成立し、ユーザーさんの交流のハブにもなれると考えました。こうした経緯で、『エク』というアバターを中心とした新プロジェクトがスタートしました。

「どんな学校で、そこに通う生徒はどんな存在か」とイメージを膨らませた結果、「現代の魔法学校」というテーマが出てきました。VR空間で表現したらワクワクできる題材だと思ったんですよね。そして、その学校に通う生徒の代表として『エク』を制作することにしました。

インタビューに応じるseptem47さん。アバターは『エク』アナザーカラー。

これまでのゲームがメインだった制作と異なり、アバターと衣装がメインで、その土台としてワールドがあるのですね。そこからさらにコンテンツを拡張する構想については、どこまで考えられているのでしょうか。

septem47

実は、『エク』の企画時にはリリースと同時にゲームをリリースすることも検討していました。ただ、いざ作り始めると理想がどんどん膨らんでしまって……。「RESONARK 4 ELVES」は「Part.1」に1年、さらに「Part.2」に1年と、合計2年以上かけたプロジェクトでしたが、それに匹敵するゲームを出そうとしていたことに気づきました。

そうなると、どうしても大規模かつ長期の制作になってしまいます。アバターは半年から1年スパンのプロジェクトである一方、ワールドは2年かかってしまうというのは足並みが揃わず難しいと判断しました。

時間を掛ければ形にできるかもしれませんでしたが、今回はゲーム企画は一旦棚上げし、『エク』のリリースを先行しました。代わりに今年行った「RESONARK 4 ELVES」のアップデートなどに、その企画内容を活かしています。

将来的にゲーム企画を復活させる可能性はありますが、現時点では「やるかもしれないし、やらないかもしれない」くらいの温度感です。今後挑戦したいことの一つとして、選択肢に入れております。

モチーフはエクレアと長毛種の猫 カジュアルで、“余白”を持たせたデザイン

『エク』のキャラクターコンセプト、アバターとしてのコンセプトなどを教えてください。名前の由来やプロフィール設定もぜひ。

septem47

『エク』のデザインのコンセプトは「現代の魔法使い」です。現代らしいスタイリッシュさを持たせつつ、少し神秘的な要素も入れたいと考えました。また、VRChatではケモ耳を持つアバターが多いので、魔法学校の世界観を端的に伝える意味でもケモ耳を取り入れることにしました。

有坂みと

魔法使いには文脈的に「ファンタジー要素」が含まれると思いますが、現在のVRChatではファンタジー路線ってそこまでメジャーではなく、どちらかと言えばカジュアルな普段着路線が受け入れやすいです。

そこで、現実の延長線上にあるようなデザインを検討しました。初期はかなりファンタジー寄りのデザインになってしまったのですが、試行錯誤の末に現在の形に落ち着きました。

『エク』初期デザイン案


有坂みと

とはいえ、現実のファッションをそのまま持ち込むだけでは、バーチャルならではの面白みがないので、溶けたチョコレートを模したヘアバンドなど、ちょっと変わったパーツを取り入れています。名前の由来にもなっている、エクレアのモチーフも取り入れています。

それに加えて、VRChatの改変文化を踏まえ、いい意味で付け加えたくなる余白を残すことも意識し、詰め込みすぎないデザインにしています。

エクレアが色合いやデザインの核にあるのですね。エクレアが名前の由来になったのはどんないきさつがあったのですか?

septem47

当初は、ファンタジーらしいかっこよさを意識して「Eclipse(エクリプス)」などの単語を由来にしようかと思ったのですが、固い印象になってしまうため、別路線で行こうと判断しました。

そして名前やモチーフだけでもやわらかい、ポップなものにできないかなと思い、『エク』の二文字だけ拝借して、エクレアモチーフを逆算しました。そこからは、キャラクターデザインを試行錯誤する上でも「頭をエクレアに見立てる」といった軸をブレずに進められたので良かったです。

ちなみに、猫がモチーフに選ばれたのはなぜでしょうか?

septem47

明るくふんわりしたキャラクター像が、日なたでゴロゴロしている猫の姿が重なったのが大きいからです。特に「長毛種の猫」はやわらかくモフモフした雰囲気を持っていて、モチーフとしてぴったりでした。

『エク』レビュー記事で使う写真撮影時に、耳や尻尾の動きも非常に作り込まれているなと感心したのですが、これは強いこだわりだったのでしょうか?

septem47

前作の『シアン』から「耳と尻尾はこだわろう」と有坂さんとは話していました。私自身VRChatでフレンドのケモ耳や尻尾をもふもふして精神的に癒されています。そのため、よく作り込まれたケモ耳やしっぽはユーザーさんにとっての大きな癒しになり得ると思い、こだわりたいと思っています。

今回の『エク』の制作時には、有坂さんが自分の好みを見事に先回りして実装してくれて、初期段階で完成度の高い動きを見せていただきました。実際にVRChatで30分くらいもふもふしてみて、「これでいきましょう!」となったくらいには。

有坂みと

実際、ケモ耳と尻尾の表現は、自分の中でも知見が蓄積されていた部分でしたね。

アニメ的表情への挑戦 顔にこめたこだわり

そのほか、デザインや内部構造など、『エク』で特にこだわった点や、ユーザーに注目してもらいたいポイントはありますか。

septem47

今回は新しい表現に挑戦したいと思い、顔の表情にアニメ的な表現を取り入れました。具体的には、単色で塗りつぶした目などです。こうした表情を実装すると、UVが複雑になると有坂さんに懸念を伝えられましたが、「面白いからやるべき」と、思い切って取り入れるようにお願いしました。

ふくれっつらな『エク』。単色塗りつぶしの瞳が特徴。
有坂みと

こうした表現は、これまで自分ではあまり挑戦しなかったですね。確かにテクスチャ制作の負担は増えますが、実際に作ってみると、表現の幅を広げられることもあり、結果的に「ありだな」と思える仕上がりになりました。

造形面で力を入れた部分はありますか?

有坂みと

一番時間をかけたのは、やはりですね。どのアバターでもそうですが、キャラクター性を反映させる上で、顔はとても重要です。

今回の制作でも、septem47さんから性格や背景イメージをたくさんいただき、それを踏まえて試作を繰り返しながら、「こういう顔が良い」という落としどころを探っていきました。その結果、キャラクター性をしっかり反映できたと思います。

また、表情シェイプキーも約600個ほど実装しています。最近のアバターは表情の多彩さが重視される傾向があるので、時間の許す限り調整し、できるだけ豊かな表情を作れるように仕上げました。顔のシェイプキー数はインフレの傾向が見られるので、そろそろ落ち着いてほしいなとは思いつつ……(笑)。

実際、すごく表情豊かで、そこから明るさや元気さ、ちょっとやんちゃな一面もあると感じました。ゲームなどであれば、メインヒロインになれるような存在感があるなと。

複数のデザイナーがブラッシュアップした私服と制服

次は衣装について。『エク』は私服と制服が2つ同梱されているめずらしいアバターですが、それぞれのデザインに込めた工夫やこだわりについて教えてください。

septem47

制作の流れとしては試行錯誤が多かったですね。最初は、有坂さんに出してもらったデザインをチーム内で共有し、他のデザイナーさんにも意見をもらう形で進めました。

そして、今回デザイナーとして参加していただいたちょこ庵さんには、本来は制服のデザインだけをお願いしていたのですが、アートの知見がとても豊富な方なので、私服の方にもぜひ意見をいただきたいと考えました。その結果、色使いやアクセサリーの整理など、ブラッシュアップを加えていただいたんです。

ちょこ庵

最初は自分のポリシーとして、人のデザインを添削するような行為は恐れ多くてかなり緊張しました。でも修正を重ねるうちに「これはやった方がいい」と思える部分が出てきて、後半は遠慮せず調整できるようになりましたね。

具体的にはどのような調整をされたのでしょうか?

デザイン画変遷。一番左の有坂みとさん初期案をベースに、ちょこ庵さんが右3つの案を制作したとのこと。
ちょこ庵

最初の案も個性的で可愛かったのですが、目指す方向性に対して全体的に色数が多めな印象がありました。

そこでニットや靴等の濃色をチョコレートカラーに統一するなどして色数を整理して、よりまとまりのある配色にしました。加えて、シンプルな中に少しだけ凝った装飾があるとすごく華やかに見えるので、ジャケットの袖口に柄やリボンを追加しています。

制服はどのようにデザインを進めていったのでしょうか?

ちょこ庵

まずseptemさんにいただいた指定が「歴史のある魔法学校の制服」で、落ち着いたロングスカートのデザインである必要がありました。それを念頭に最初のラフを制作しましたが、素体となる『ミルフィ』の体型にあわせてみたとき腰回りのボリュームとの相性がやや悪く、一旦要素をばらして再構成しています。

コルセットの丈や位置など、できる限り着ぶくれせずすっきり着られるように調整して今の形に落ち着きました。お二方にも3Dの知見からアドバイスをいただいています。

『エク』制服ラフ案。
『エク』制服デザイン画。

よくあるVRChatの制服衣装と比べるとスカート丈はやや長めなこともあり、落ち着いていながら華やかなデザインだとたしかに感じました。一方、ややゴツめのブーツや、胸元にジッパーのようなパーツは、どんな発想から生まれたデザインなのでしょうか?

ちょこ庵

その部分は自分なりに「テック感」のようなものを加えたいと思って取り入れました。せっかくなら、ありきたりなデザインにはしたくなかったので、普通の制服ならリボンやネクタイが付く位置をファスナーとタグに置き換えて、さりげなく主張させています。

構造的にも現実にあり得る形ですし、魔法学校のクラシックさに現代的な要素を融合できると考えました。

ユーザーのコミュニケーションを呼ぶ仕掛け 指揮棒ギミック実装の舞台裏

『エク』の大きな特徴として、魔法が使える指揮棒ギミックが挙げられます。見た目の華やかさだけでなく、スポットライトなど実用的な機能も備わっていますが、このギミックの設計ポイントなどを教えてください。

septem47

実は最初、ギミックは何も用意していなかったんです。ただ、先行テスターさんにモデルを渡したときに「ミルフィはスマホがあって遊べるけど、エクには何もないの?」というご意見をいただきまして。それで「魔法使いのキャラクターなのだから、何か魔法的な要素を入れよう」と考え始めました。以前検討していたゲーム企画の中で指揮棒を使うアイデアがあり、そのために準備していたアセットを活用することにしました。

当初は「販売アバターにデフォルトでLightやパーティクルを仕込むのはどうなんだろう」とためらいもありましたが、『ミルフィ』のスマホギミックにLightが含まれるのを見て導入を決意しました。エフェクト関係はVery Poor判定にならないラインであれば入れてもいいかなと割り切っています。

また、エクのキャラクター性を考えると、炎や光の魔法が得意そうだと思ったので、視覚的に華やかなギミックや、暗いワールドを探索する際に便利なライトを実装しています。

それと、自撮り機能もありますよね。

septem47

自分の姿を確認できるのは遊びの一つになると思ったので、取り入れています。単なるエフェクトではなく、ユーザー同士のコミュニケーションが広がる仕掛けとして実装しました。

素体になった『ミルフィ』ってどんなアバターだと思う?

前回の『シアン』のインタビューでは、「その時々で有坂さんが良いと思う素体を選ぶのが一番だ」という話がありました。今回、『エク』は有坂みとさんの最新作『ミルフィ』の身体が共通素体として採用されていますが、septem47さんから見て『ミルフィ』の素体にはどんな魅力を感じますか?

septem47

脚の厚みやバストサイズなど、各種のサイズ調整のしやすさが良いと感じています。衣装の着せ替えがしやすいですし、ユーザーさんの好みも反映しやすいですよね。

実は制作の時系列は、『ミルフィ』原画、『エク』原画、『ミルフィ』モデリング、『エク』モデリングの順で進んでいて、『ミルフィ』は制作段階で素体を見せてもらっていました。そのときから素体『エク』を見据えた素体調整の相談に乗っていただいたこともあって非常に助かりました。

ちょこ庵さんはVRChatを始めたてだと伺いましたが、『ミルフィ』を見たときの印象はどのようなものでしたか?

ちょこ庵

まず、顔が可愛すぎるなと……! 当時VRChatのアバターはあまり詳しくなかったんですが、Xなどで流れてくるお写真を見ても、とにかく顔の可愛さが際立っていました。

一方、体型は華奢というより女性らしい厚みのあるプロポーションで、骨盤も大きめなので、似合う服はやや選ぶ印象がありました。ミニ丈のスカートやショートパンツなどは無条件で似合いやすいですが、落ち感のある長めのスカートやワンピースは3Dの特性も相まってデザインを工夫しないと着ぶくれしてしまう可能性があります。そうした点を意識して制服デザインに反映しました。

ただ、上半身の肋骨部分がかなり小さめであることが全体で見たときのかわいらしい印象を作っていて、3Dモデルの自由度を強く感じましたし、自分の制作にも参考になる部分が多かったですね。

有坂さんご自身は、『ミルフィ』をどのようなコンセプトで設計されたのでしょうか。

有坂みと

僕はオーバーサイズの服から細い手足が見えるようなシルエットが好みで、スレンダーな体型を目指してきました。なので、今までは中性的で、男性も女性も使えるようなアバターを作っていて、体型も比較的丸みを帯びていました。

一方の『ミルフィ』は、ちゃんと「女の子」を作ろうと思って制作したので、細身ながらも女性らしさを感じられるよう調整しています。水着などを着せたときにもガーリーな印象になるよう意識しました。

それから、爪にもこだわりました。改変でネイルを作ってくれるユーザーをよく見かけていたので、自分の過去のモデルに対し、爪のディテールは反省点として残っていました。『ミルフィ』では爪の造形やテクスチャを丁寧に仕上げ、アップで見ても映えるようにしています。

確かに女性ユーザーからは「アバターで一番見るのは手だから、ネイルは必ず改変する」という声をよく聞きます。そういった声が大きく反映されているのですね。

有坂みと

アバターはユーザーありきなので。本当にありがたいことに、これまでも自分が制作したアバターはたくさんの方に使っていただいているので、みなさんにいい体験をしていただくためにも、細かいところもがんばって制作しました。

実際、『ミルフィ』のユーザーは、これまでの有坂みとさんのアバターとはまた異なる、新たなユーザー層ができている印象はあります。体感ですが、女性層が多いイメージです。

septem47

わかります。『ミルフィ』ユーザーさんって、改変も服だけでなく、目のテクスチャや髪なども全部こだわっている人が多い印象です。改めて有坂さんのお話しを聞いていて、改変も見据えた設計にされているのは感銘を受けました。

有坂みと

「女の子」を作ろうという意図がうまくヒットして、いつも違う方にも使っていただいているのはすごく良かったなと思いますね。

そうなると、『エク』もその流れを引き継いで、新しいユーザー層に届きそうですね。

septem47

そうなるといいですね。これまでの『ホノカ』『シアン』はスタイリッシュなSF寄りのコンセプトでしたが、エクは明るく元気でふんわりしたキャラクターです。これまでと違う方向性だからこそ、どんな方に受け入れていただけるのか楽しみです。

きっかけはコミティアと試着会 新メンバー加入の経緯

制作チームについて伺います。今回の『エク』制作には、septem47さんと有坂みとさんに加え、新たにちょこ庵さん、熾桜さんが参加しました。新メンバーはどのような経緯で参画されたのでしょうか?

septem47

ちょうど『エク』の企画を考えていた頃、「コミティア」という創作ジャンルの同人イベントに一般参加しました。そこでは自作イラストをまとめた本を頒布している方が多く、ちょこ庵さんも『Yibit』という本を出されていました。とてもスタイリッシュで可愛いキャラクターデザインと世界観が印象的でした。

当時はエクの私服を有坂さんに依頼していたものの、制服は誰にお願いするか決まっていませんでした。『Yibit』を読んだ時、「これはぜひご依頼したい」と強く感じ、思い切って声をかけてみたんです。最初は成功率1割くらいの気持ちで(笑)。

でも、自己紹介の際にちょこ庵さんから「シアンを知っている」と言われて、「そもそもVRChatを知ってたの!?」と驚きましたね。そこから快く引き受けてもらえました。

ちょこ庵さんは当時、そのご依頼を受けた時にどう思われましたか?

ちょこ庵

ちょうどその頃は、友人がVRChatを始めて独自の文化を教えてくれたことなどもあり、アバター制作に興味を持ち始めていたタイミングでした。もともと3Dモデルを作ってみたい気持ちがありましたし、人が創ったものを見るのが好きなので、BOOTHで公開されているモデルを眺めたりもしていました。

『シアン』もそのときに目にして「かわいいデザインだな~」と。だから今回、声をかけてもらえたのは本当にうれしかったですね。

ものすごい偶然ですね!そしてちょこ庵さんがご存知になった経緯から、VRChatの広がりをとても感じますね。

septem47

「知ってますよ!お砂糖とか、お塩とかあるんですよね」って言われてひっくり返りましたね(笑)。

有坂みと

そこか~って(笑)。

ちょこ庵

実際、現実世界とはちょっと違う特殊な文化が根付いているんだなと思っていて。前々から足を踏み入れてみたいとは思っていたのですが、導入にあたっての知識や技術が足りなくて、触れていなかったんですよね。なので、こうした機会で自分も飛び込むことができたのは嬉しいなと、今でも思っています。

もう一人、新たに参画された熾桜さんは、3Dモデル『フレア』の制作など、この一年でよくお名前を見かける実力者だと思います。こちらはどのような経緯があったのでしょうか?

septem47

熾桜さんとは、『シアン』の先行衣装対応がきっかけで知り合いました。その後、試着会場にも遊びに来てくださり、その後もよくお話しするようになったんです。衣装作りがとても上手な方だったので、今回の『エク』制作では制服モデリングとしてお声がけさせていただきました。

『シアン』の試着会は個人的にも印象に残っています。対応衣装を紹介するパネルギミックは非常に凝っていましたよね。

septem47

あんな感じの試着会ギミックは今回も計画しています。ちなみに、『エク』は別途制服が付属するアバターなので、それをわかりやすくプッシュするために、ちょこ庵さんから「着せ替えゲームの衣装カード」のようなデザインをサムネイルに取り入れるのはどうかとご提案いただきました。

『エク』紹介画像案。右上に「衣装カード」が!
septem47

このカードのようなデザインをテンプレートとして配布し、先行対応いただける衣装のクリエイターさんにはめ込んで入稿いただくことで、試着会で一括表示できるギミックができないかなと考えているところです。

『エク』試着ワールドにて。黒板で対応衣装を閲覧できます。
『エク』試着ワールドにて。対応衣装が描かれたカードがズラリと並んでいます!

こだわりと判断力――septem47と有坂みとが互いに向けるリスペクト

septem47さんと有坂みとさんのタッグで作ったアバターは、今回で3体目です。比較的長い付き合いかと思いますが、制作を通してクリエイターとしてどのような印象を持ったか、また印象の変化があったか、教えてください。

septem47

自分はディレクターとして、「これを入れられますか」「こういうのはどうでしょう」といった要望を伝えることが多いです。それに対して有坂さんは、3Dモデラーの観点から真摯に答えてくれるんですよね。「この案はできるけどデメリットもある」「このままでは無理だけど代替手段ならある」と、専門的に返していただけるのが本当にありがたいです。

そして、以前は「一旦検討してみます」と前向きに受け止めてくれる印象が強かったのですが、最近は「譲れないこだわり」を伝えられることも増えてきました。たとえば、『エク』にスマホギミックを入れられないかと聞いたときに、「スマホはミルフィのアイデンティティだから、やめて別のアプローチにした方がいい」と言ってもらったんですよね。

その結果、指揮棒ギミックを深掘りして、『エク』ならではの個性を出せたと思います。そういう譲れないこだわりを、こちらのためにもしっかり伝えてくれるのがとても助かっています。

有坂みと

その件について補足すると、『ミルフィ』は「スマホとSNSで病んでいる」という設定を抱えた“スマホありき”のキャラクターだったのが大きな理由です。

スマホというパーツは『ミルフィ』を説明する上で欠かせない要素です。「これがないとキャラの説明ができない」くらいの要素が別のキャラクターに移植されると、要素が薄まってしまい、移植する側もされる側も、お互いに個性が薄くなっちゃうんですよね。

だからこそ、今回は「絶対に別の方法で」と強めにお願いしました。普段は「とりあえずやってみます」というスタンスなんですけど、そこはわがままを通させてもらいました。

septem47

似た話だと、『シアン』制作時には、髪のリムライトを「赤にしたい」という提案もありましたっけ。さすがに奇抜じゃない?と伝えたんですが、「いや、絶対に赤です」と。結果的には間違いない配色でしたね。以前からそうした提案は要所でいただいている印象です。

有坂みと

そんな話もありましたっけ(笑)。とはいえ、制作を進める上では、自分なりにメリット・デメリットを提示するようにはしていますが、septem47さんはそこに対して「このメリットは大きいから進めよう」「このデメリットは無視できないからやめよう」とはっきり判断してくれるんですよね。

「とりあえずわからないけど進めよう」だと、結局没になる可能性もあり、モヤモヤしたまま作業することになるので、精神的にちょっとしんどいんですよね。だからこそ、そうした判断力にはとても助かっています。

違うカラーだからこそ、うまく噛み合っているんですね。

有坂みと

あとは、僕の作業がいろいろあって、プロジェクト内の小さな締切に間に合わなそうな時には、septem47さんとちょこ庵さんにかなり手伝ってもらったこともありましたね。その時はマジで助かりました……!

septem47

3人とも「エクはこうあってほしい」というクオリティラインがあって、そこに向けてこだわりを出し合えたと思います。

ちょこ庵さんが髪のテクスチャを見て「ここ加筆しますよ」と言って、対応してくださったりとか。私も、エンジニアとして技術で解決できるところを巻き取ったりして、チームメンバーそれぞれの特技を活かせるように、タスクは流動的に再分配しつつ進めていました。

みんなの「こうしたい」が重なった結果、余裕を持って組んでいたはずのスケジュールが、ギリギリになってしまう場面も多かったですけどね。

それでも結果的に、うまく連携して制作を進められたところが多かったのを見ると、チーム制作の強さをあらためて感じますね。

「一旦、勉強期間へ」――有坂みとの今後について

先日、有坂さんは「先日発表されたエクさんのモデリング担当を最後に、しばらく案件などは完全に受付停止とさせていただきます」と発表されていました。「ツールの勉強とか自分のショップブランドのアバターのアプデとかに専念します」とのことでしたが、そう判断した経緯についてお聞きしてもいいですか?

有坂みと

これまでは、案件の合間にアバター制作を行っていて、かなりタイトに詰め込んで取り組んできました。もちろん、案件の中でも得られる学びはたくさんありますし、今回の『エク』制作でも、ちょこ庵さんのブラッシュアップや、septem47さんの監修・アドバイスは、すごく勉強になりました。

一方で、自分で勉強する期間も必要かなと思いました。ツールの使い方にしても、人から教わるだけじゃなく、自分で本や動画を見ながら学ばないと、一生身につかないと思うので。前々から腰を据えた勉強期間がほしいと思っていたので、今回を一区切りとして、案件は一旦止めて勉強期間に入ることにしました。

その上で余裕ができたら、また依頼を受け始めるかもしれません。でもまずは、全体的にアバターのクオリティを底上げしていきたいですね。

仕事ばかりしていると、インプットの時間がなくなって技術や知識が伸び悩んでしまうことがありますよね。私自身もそう感じることがあって、お話を聞いて「わかる!」と強く共感しました。

有坂みと

クリエイターあるあるなのかもしれないですね。

ちょこ庵

耳の痛い話です……

とはいえ、次回作に向けて力を蓄えているということで、有坂さんの今後にも期待です。

いろんな彩りのエク、待ってます

最後に、『エク』をこれから触れる人たちに向けて、「どんなふうに使われてほしいか」「こんなエクを見てみたい」といったコメントを、ぜひ一言ずついただけますか。

有坂みと

改変しやすいように作ったつもりなので、まずはいろんな改変を見てみたいですね。今回はファンタジー要素が強いので、世界観にシナジーがあるファンタジーな改変をぜひ見てみたいです。

ちょうど、発売は10月なので、ハロウィンシーズンが近いですよね。ハロウィン系改変もマッチしそうです。

septem47

実は、10月を発売時期に定めたのは、そこも狙いです。お菓子モチーフも取り入れているので、ぜひチャレンジしてほしいですね。

ちょこ庵

私は、『エク』のモチーフがエクレアということで、ホワイトチョコやフランボワーズなど多様でカラフルなエクレアのように、色とりどりの個性的なエクちゃんが見られるのを楽しみにしています。

septem47

『エク』には白めのアナザーカラーが用意されています。このカラー、実はちょこ庵さんの提案で生まれたものなんです。そのまま使うのはもちろん、黒い衣装を合わせた時にものすごく似合うと思います。

なので、アナザーカラーを活かした改変をたくさん見たいです。

三者三様の想いとこだわりから生まれた『エク』。無改変でも魅力的ですが、いい意味で与えられた余白をどう彩るかを考えるのも、きっと楽しいはずです。あなた好みのデコレーションを添えた『エク』を、ぜひVRChatへ連れ出してあげてください!

投稿者プロフィール

浅田カズラ
浅田カズラ
フリーライター・編集者/xR、VTuber、ソーシャルVR/最近Apple Vision Proをお迎えしました。