目次
シーズンファイナル『GRAND SLAM』
『VRCボクシング』は2023年12月10日に、シーズンファイナルとなる『Vket2023-GRAND SLAM』を開催しました。同大会は株式会社HIKKY主催による『バーチャルマーケット 2023 Winter』のコラボイベントでもあります。
VRCボクシングは同名(『VRC BOXING GYM JP/EN/KR』)のワールドが公開されており、誰でも自由に利用可能なものとなっていますが、定期練習会や大会開催といった活動が公式運営によって続けられています。
公式運営によるスケジュールでは年に4回の大型大会の開催を主軸としており、GRAND SLAMはそのシーズンの最終段階にあたります。大型大会には「新人杯」なども存在し、それぞれレギュレーションが異なりますが、シーズンファイナルとは言えGRAND SLAMでは原則として誰でもエントリー可能です。
その分、多くの強豪選手が参加することとなり予選通過は厳しい道のりとなります。そんな中、今大会ではVRCボクシングをはじめて1ヶ月程度の新人選手が本戦へ進出するなど、大きな盛り上がりを見せた大会となりました。
実はバーチャルライフマガジン記者として、何度か取材を続けていた筆者もこの大会へ挑んでみました。予選開始まで短い期間ではありましたが、気がつけば同じ時期にはじめた選手と一緒になって全力で練習に取り組めたことで、とてもアツい時期を過ごせたと思います。
そこで本稿では新人選手へフォーカスした座談会として大会期間を振り返ることにしました。どうして全力で練習へ打ち込めるようになったのか? 大会を通して得られた体験などを語っていただきました。VRCボクシングの魅力を測るひとつの指標としてお読みいただければ幸いです。
本文で記載されている個人名(VRChat名)は、過去大会出場選手とVRCボクシング運営メンバーに限定しています。
座談会メンバー紹介
【だぴ茶選手】
VRCボクシング経験2週間の短期間ながらGRAND SLAMへ挑戦。
予選敗退となるも、あきんぼ選手との熱い試合展開を繰り広げた。
【零落クリエ氏】
VRCボクシング運営メンバー。大会では予選でレフェリーを務めた。
【トラスク】
本稿の記者 兼 出場選手。実質のVRCボクシング経験は1週間。
VRCボクシングとの出会い
はじめるきっかけはフレンドだった
──この度は大会お疲れ様でした。また、同期のような存在としてたくさん練習に付き合っていただいて、本当にありがとうございました。まず、おふたりがどのようにVRCボクシングをはじめることとなったのかお聞かせください。
VRCボクシングに触れたのは11月のはじめ頃でした。
元々は色んなゲームワールドを遊ぶグループにいて、そこに神咲アユムさんがいたというのがきっかけです。時々VRCボクシングへ遊びに行っているのは知っていたのですが、実は運動がかなり苦手だったこともあり「また今度行きますね!」なんて言って後回しにしてました……!
そうしたことが続いて「今度って言っちゃったしなあ……」と悩みつつ、付いていくことにしたんですよね。
僕は毎日遊ぶような仲のフレンドから会話の中でVRCボクシングの話を聞いていた程度でした。そのフレンドがフィットネス的な意味でVRCボクシングの練習会へ行っていたんです。
はじめはそれほど興味があった訳でもなく、フレンドが参加している日は一緒に遊べなくなるしな……
と思って付いていくといったノリでした。
遊び始めたのはGRAND SLAMの2週間ほど前だったかと思います。
はじめは大会へ出ようと考えていた訳ではなかった
──おふたりともきっかけはフレンドつながりだったってことですね。私が参加した頃にはかなり練習へ集中している印象だったのですが、すぐにハマったんでしょうか?
はじめの日は1試合するだけでほとんど身体が動かなくなっちゃいました。
2~3試合してその日は終わったんですけど、運動に取り組むというよりもダイエット目的としてなら楽しくやれそう!って感じで、また来てみようとは思ったんです。
──その時点では今回のGRAND SLAMは知らなかったんですよね?
まったく知りませんでした。
VRCボクシングのインスタンスが立ってるのを見つけて参加しているうちに、ベテラン選手の人達の動きを見て「カッコいい!!」と思うようになっていったんです。
こんな試合がやれるのか! VRCで!? という衝撃でした。そうしたことが続いて少しずつ興味が引かれてハマっていったように思います。
──少しVRCボクシングを遊んでみると「凄さ」がわかってきますよね。
僕は参加してみたら、とりさん[※VRCボクシング主催者]がどんどん褒めてくれて気持ちよくなっちゃって(笑
そうやってヨイショしてもらってるうちに楽しくなって、そこから連日通うようになっていきました。
大会へ向けた熱量
真剣さへ応えるために
──GRAND SLAMへ参加を決意したきっかけや、練習への熱量が上がっていったエピソードなどを教えてください。
大会への参加は「記念」でいいかなと最初は思ってたんですけど、GRAND SLAMの3週間ほど前に開かれたミニトーナメントへ参加して考えが変わりました。
このトーナメントではargentさんと戦ってすぐに負けちゃったものの「あ~楽しかった」と気楽な感じだったんです。
でも、トーナメントの続きを観戦してみると誰もが真剣に取り組んでいて、その姿がとてもカッコいい!! と思うと同時に、軽く遊んでるような自分が「クソカッコ悪い!」と思えてきて、そこから火が付きました。
──「試合に負けて悔しかった」とはまた違ったきっかけだったんですね。
「はじめてちょっとしか経ってないし」っていう言い訳が自分の中にあって、自分がカッコ悪いと感じました。このトーナメントをきっかけとして、そこから平日は5時間、休日は10時間くらい練習に打ち込んでいたと思います。
VRCボクシングへやってきてから、GRAND SLAMの締め切りまで数日しか無かったんですけど、ある時FIRE__EAGLEさん[※今大会優勝選手]とRufasさんに肩を組まれて「GRAND SLAMってのがあるからお前書けよ」とか言われて(笑
大会参加のきっかけといえばそんな感じでした。
僕は元々ラグビーをやっていたのもあるのかもしれませんが、練習を頑張っている人達を見ているうちに「こんなに真剣な人達を前にテキトーなことはできない」と思うようになって……
あとは、大会へ申し込んだ時にFIREさんやRufasさんが「本当に出場してくれるとは思わなかったから嬉しかった」とか「僕たちも精一杯練習のサポートをするよ」といった熱い言葉をいただいたんです。
あきんぼさんのようにパチッとスイッチが入る形ではなかったんですけど、日を追うごとに徐々に自分も頑張りたいっていう気持ちが強くなっていきました。
同期選手が互いに熱を与えあった
僕もはじめは、とりあえず「記念受験」でいいかなという気持ちが強かったんですが……
練習に行ってみたら色んな人が「あきんぼってヤツがヤベーぞ」って言ってたんですよね。
(笑
言ってましたね(笑
取材の関係でVRCボクシングに来てから数ヶ月は経っていますが、実際にリングに上がったのはとりさんやFIREさんがお試しで対応して頂いた2回くらいで、その後はひとり用の練習ギミックだけを触って誰とも話さず帰るみたいなことを繰り返していました。
大会まで5日間しかないというタイミングでとりさんにお誘いいただいたんですが、僕の視点ではあきんぼさんもだぴ茶さんも既にやり込んでるベテランだと思い込んでいたんです。
なので、実質的にほぼ同じ時期にはじめた人だと知って「こんなにアツい奴らがいるんだ」と思いましたし、練習期間が少ししか無いなんていう言い訳をしている自分を恥じて、どうせやるなら全力だ!! と気持ちを切り替えられました。
これは本当におふたりのおかげだと思っています。
トラスクさんは僕からだと「どんどんリングに上がってるめちゃくちゃ気合の入ってる人がいるな」と見えていたんですけどね(笑
相手がいなくてもリングに上がって、対戦相手が来るまでひたすらシャドーボクシングしてたじゃないですか。
それは…… 実を言うと知り合いがいなくて……
もうリングに上がっちゃうしかない!! と勢いだけだったんです。
ボーっと突っ立ってるのもなんだかいたたまれなくて、最初の日なんかはそれをごまかすためにやってるフリをしてただけなんですよ……
でも、だぴ茶さんやRA_NI_さんは連続で何度も「また次もいいですか!」と相手していただきましたし、どんどん飛び込んで良いんだなと思えるようになりました。
つまりお互いに熱いヤツがいると思い込んで勝手に影響されてたってことですね(笑
でもわかるなぁ~……
リングに上がるのってけっこう勇気いりますよね。今でこそ練習会に来ている人達といろいろ話せるようになったので、そんなこともなくなってきたんですけど。
私はアユムさんがフレンドだったこともあって、かなり気にかけていただいたのでリングに上がることへの抵抗は少なく済みました。
何より、練習を続けていると選手の方々がめちゃくちゃいい人すぎて!!
迷っているとすぐに色んなアドバイスをしてくれたり、話題を振ってくれたりして馴染みやすかったんだと思います。ほんと感謝してます!!
人の要素は大きいですよね。
だぴ茶さんやトラスクさんが参加された頃は、もう身体も限界を感じるほど疲弊しちゃってました。
でも、おふたりのような同時期にはじめた人達がどんどん練習へ真剣になっていく姿を見て「疲れたとか言ってらんねーわ!」ってなったんですよ。
とにかくずっと楽しかったです。練習期間も含めて、いまここで思い出すと泣きそうになるくらい、とてもいい思い出がたくさんできました。
師弟関係に見る求道心の違い
「師匠」と呼ぶに至る流れは自分で踏み出した
──ここまでは皆さん同じような感覚で盛り上がっていったことが確認できたような気がします。ですが、本戦まで出場を果たしたあきんぼさんは、より一歩大きな結果を残されました。
もちろん練習時間の差はあれど、結果の違いは精神面にもあったのではないかと感じています。
そこであきんぼさんに伺いたいのですが、何名かの選手を師匠と呼んでいますよね。
ミニトーナメントで自分のカッコ悪さを強く感じて、きちんとイチから教わろう! って思ったんです。
VRCボクシングのワールドにこれまでのチャンピオン写真が飾ってありますよね? そこに丁度のぞむんさんとLupさんがいたので声をかけました。
「GRAND SLAMを本気で目指して練習していきたいので教えてくれませんか」と直接頼み込んだら、快く受け入れて頂いて……
でも、私としてはその1日だけで終わりにしたくなかったので、練習の後にDiscordのメッセージで御礼とともに継続的な練習のお願いを送信しました。
そのようにして、毎日教えていただける流れができていきました。
素晴らしいお話ですね! 聞きながら「自分に真似できるだろうか?」と考えていました。
正直に言えば、僕はプライドが邪魔していたように思います。自分でコミュ下手だからだなんて言ってますが、これは言い訳ですよね。自分から教えを請う場面は振り返れば少なかったです。
あきんぼさんからメッセージを送られた側に立って想像してみると、かなり嬉しい出来事だろうと思います。そう考えてみればそう思うのに、いざ自分がお願いしようと考えると迷惑かもしれないという感情が先にきてしまう……
いまだにリングへ上がる時に誰かを誘うのは抵抗ありますし、こうした所で結果に差が出たのかな、なんて思ったりします。
「師弟関係」のお話を伺えて、結果につながる精神性が見えたような気がしました。
僕も自分から教えを請うという点では弱かったですね……!
言われてみれば、はじめは誰にも話しかけず、フレンドとしか試合をしてませんでした。
そうしているうちにRufasさんから話しかけていただいて、大会の申し込みをきっかけに師弟関係のような土台を整えてもらえました。技術的に一枚大きく進歩できたというタイミングを問われればここからだったと思います。
僕のパターンでは受け身ではあったんですけど、そうした関係性は大事ですよね。FIREさんとRufasさんから大会に誘われた時は僕にとって大型トラック2台が突っ込んできたみたいな事件だったんですけど、それでもおふたりが一緒に頑張ろうと手を差し伸べてくれて、頑張っていけたなと思います。
大舞台を振り返ろう
同期同士の組み合わせに涙あり
──それでは大会の試合を振り返りたいと思います。
予選の第一試合目はアユムさんでした。
まさにVRCボクシングへのきっかけをくれた方ですし、はじめての公式的な場でかなり緊張して身体が固くなっちゃってました。
ベテランで強豪選手ですし、第一試合目は負けてLowerブロックに行き「本当に次負けたら終わっちゃう!」と心にずっしり来たんですよ。
──予選はダブルエリミネーション形式(※)でしたので、まずLower(いわゆるルーザーズ)ブロックへ配属となり、まだまだチャンスは残されていましたね。
【ダブルエリミネーション形式】
対戦カードを組まれた選手で試合を行い、その結果に応じて勝者グループと敗者グループへ分類を行う。それぞれのグループで更に試合を行い、2度勝利した選手が本戦へ勝ち上がり、2度敗北した選手が大会から脱落するという方式。
ここで、1勝1敗の選手を集めて更にトーナメントやダブルエリミネーション形式を行って絞り込む場合もある。今回のGRAND SLAMにおいては、追加のダブルエリミネーションが行われ、更にその中で1勝1敗だった選手による追加のトーナメントも行わることとなった。
これにより、最大で6試合にも及ぶ予選となった選手も存在する。
Lowerで戦ったのがだぴ茶さんだったんですよ……!!
同期的な存在として本気で練習してるのを見てますし、自分も負けたくないし、だぴ茶さんにも結果をだして欲しくて!!
それでもだぴ茶さんは「お互い後悔が残らないように全力でやろう!」と言ってくれました。
もう試合の後は感情が爆発して泣いちゃってました。
丁度その試合のレフェリーをやってたんですけど、本当にマジで負けたくないんだな……
と、ふたりの「本気だ!」って闘志が見えてくるようでしたね。
予選は2連続負けで終わっちゃいましたけど、本当に悔しくて……
むしろ泣きたいのはこっちですし(笑
もう絶対次はぶっ飛ばしてやる!! みたいな、試合をやりきったとかそういうことよりも、とてつもなく悔しいという感情がデカすぎて、次の瞬間にはもう練習に取り組みたい、早く次の試合をして勝ちたい、みたいな感じになってましたね。
──あきんぼさんと戦った時のだぴ茶さんの集中力は凄いなと感じていました。
冷静な話をすれば、日々の練習会の時点で互いの勝率というのは見えてしまっていたりするものです。私の視点ですが、お二人の試合の特に最初のラウンドでは、だぴ茶さんは最高のパフォーマンスを出していたように思います。
初戦のCapaさんはもちろん強い方ですが、そこは言い訳にしたくなくて……
「オレも1週間勝つつもりで挑んできたんだぞ」という気持ちでした。負けた時は、どうして自分は負けたんだろう?という方が強かったです。
もちろん相手の方が歴も技術も凄い、というのは頭ではわかってますが、1週間乗せた思いはオレも変わんないだろ!!と思っていたので、やっぱり悔しかったです。
──だぴ茶さんとの試合を制して、予選は追加のダブルエリミネーションへと進むことになりました。
そこで戦ったのがトラスクさんでしたね!
ヘビパン(※)をしっかり当ててきて「強くなってる!!」と焦ってしまったんですよね。いつもの練習と比べると、かなり攻撃を外してました。
【ヘビパン】
今回のeSportsルールでは、トリガーを押し込むことでタメ攻撃を行う「ヘビーパンチ」という機能が使用可能。ゲーム内のパンチの威力はフォームやスピードによって増減するが、このヘビーパンチを利用することで一定の威力を保証できる。
ただし、ヘビーパンチはスタミナを消耗するデメリットがあり、消耗が大きい状態でダウンしてしまうとそのまま10カウントで試合に敗北してしまうというリスクを抱えることになる。
今大会に限らず、ベテラン選手であってもこうした「スタミナ敗北」を起こす場合があり、心理的駆け引きを呼ぶ面白さに結びついている。
結果は僕の負けでしたのでもちろん悔しさはかなりあったんですが、すみません!! あの試合はかなり楽しくやってました。
たしか、1ラウンド目はダブルノックアウトでしたよね。あの瞬間、心の底から面白いと言ったらいいのか……
「オイオイ! こんなアツい展開あるかよ!」みたいな、僕の中では最高潮って感じでした。
はじめた時期は私の方が早いというのもあってアツい! と思うと同時に、このままでは本当に負ける!! っていう焦りの気持ちが大きかったです。
練習だと、あきんぼさんとは数回「3ラウンドダブルノックアウト(完全引き分け)」っていう結果を連続していて、僕の中ではもっと練習を詰めれば勝ち越せるかも!? なんて思ってたんですが……
大会直前の最後のスパーリングで、何かを掴んだあきんぼさんにボコボコにされたんですよ。実はその時「このままではマジで勝てない」っていう精神になって、けっこう心が折れてしまったんです。
なので、予選であきんぼさんと試合する直前まで、その弱気さを持ち直せてませんでした。結構ムリして奮い立たせてたりします。
トラスクさんとの試合では、ちょっとでもミスすれば負けてしまう!! と思っていて、ずっと体力的にギリギリでしたし、最後の方はほとんど神頼みパンチ状態でした(笑
もう頼むから当たってくれ~~!! みたいな……
そうだったんだ……
ギリギリの試合だと、本戦に出るようなベテラン選手でも神頼みっぽいのあるあるなんだよね(笑
それでも勝つべくして勝ったんだと思いますよ。強かったです。
互いの敬意に成り立つVRCボクシング
予選の最後の試合で戦ったるあぼんさんも、試合の後は何度もお声がけいただいてます。配信に遊びに来てください! といったことだったり。
負けても勝ってもお互い笑い合って楽しめるというのは、VRCボクシングのとても良いところだなと感じてます。
──VRCボクシングの練習会でお会いする皆さんはお互いにとても敬意がありますよね。
本戦の試合はどうでしたか?
本戦はargentさんとの試合でした。ミニトーナメントで「本気になったきっかけ」の相手でしたので、想いが強くなっていました。かなり肩に力が入ってしまって、ものすごく緊張しちゃって……
それまでの動きが全然できていませんでした。
それでも試合が終わった後は……
感謝の気持ちが強かったというか、リングの上で肩を組んでしまうくらい、良い試合・良い思い出がたくさんできました。
──予選と本戦の試合そのものは同じワールドを使用していましたが、本戦はかなり緊張されていましたよね。同じ環境とは言え、大きな舞台へ挑む難しさを実感します。
Lup師匠の定番としている「アルコール!」の掛け声を本戦で使わせてもらえることになりました。
予選の始まる前から「本戦へ進めたら使っていいよ」と言ってもらえていたので、本当にここまで来れたんだ!! と気持ちも最高潮でしたね。それでも本戦はガチガチでした。
掛け声ひとつとっても、長い間をかけて作ってきた文化のようなものだと思うので、とても貴重なものをいただいたと思います。
──本戦出場はかなり凄いことだと思いますが、それでも壁は厚かったですね。ただ、あきんぼさんはかなり注目された選手だと思います。実況者の方々も注目選手として挙げてましたね。
名前を挙げていただいたのは努力が報われたように思えて嬉しかったです。
実況者さんといえば、猿頭トリートメントさんの一言が忘れられません。
予選で試合を終えて待機場所へ戻った時に号泣してしまっていて、そこで猿頭さんが「その涙は頑張った証やな」と呟いたんですよね……
メッチャカッコよくないですか!?
へぇ~~ あの猿頭さんがねぇ~~(笑
更に苛烈だった本戦の衝撃
大会を通じて強くなっていく選手
──本戦で印象に残った試合は?
まず「のぞむんさん VS 3BONさん」の試合です。のぞむんさんはVRCボクシングも長く、リアルでのボクシングジムに通われてもいるので、経験の差は大きかったと思います。
その上で3BONさんは、予選で最も長く多い試合をしていましたし、本戦で格上の選手に対しても食らいつき、これまで練習の時に見ていた力を大きく超えて発揮されていたので、とてもカッコいいなと感じました。
3BONさんと言えば僕は予選で2度戦った相手です。
再戦というカードは大会全体を通してここだけだったかと思うのですが、僕にとってはリベンジマッチでチャンスでした。
ですが、初戦と比べると圧倒的に2戦目の3BONさんが強く……
「この人相手ではそりゃ勝てない!」と思い知らされましたね。
実は普段の練習の中で、3BONさんに勝てるかどうか!? くらいまで迫れたことがあり──もしかしたら初心者ということで調整して頂いてたのかもしれませんが── 予選で勝ちを狙えるかも! なんて思っていました。ですがそれは甘い考えでした。
僕の後の予選最終戦でも3BONさんは更に機敏な動きを発揮して、本当に予選の中でどんどん強くなっていったように感じます。
練習では横の動きが素早い印象だったと思うんですけど、大会が近づくにつれて縦の踏み込みを見せはじめてハッとしましたね。
予選の勝ち上がり方はとてもアツかったです。
様々な特徴ある選手が登場する懐の広さ
──他にはいかがですか?
「Capaさん VS chrome_monoさん」の試合は印象深いですね!
僕もその試合を推します!!
ふたりのスピードが異次元で、ボクシングというよりドラゴンボールでも見てんのかみたいな気分でした(笑
男心をくすぐるというのか、そうした立ち回りと打ち合いで、大会を通してベストバウトだと思います。
chromeさんは大会で設定した二つ名にもあったように、スピードを重視したスタイルでしたけど、Capaさんも大会の1週間ほど前から左右の動きが素早くなっていった印象でした!
互いに素早く動くからこそクリーンヒットがなかなか出なくて、もしかしたら大会の中で一番長い試合だったんじゃないかと思います。最後までどちらが勝つか全然分からない、スピードVSスピードの緊張感ある試合として印象に残りました。
──はじめのうち、特にeSportsモードは言ってしまえばターン制で、毎回のダメージディールをどうするか、という程度の浅い理解でした。ですが、大会を通してこれほど個性のある選手が出てくるとは、すごいゲームを作ったなと感じます。それもVRChatの上で、ですからね。
色んな特化型の選手がいるのは面白いですよね。そうした試合は見ごたえがあるなと思います。
例えば今回優勝されたFIREさんは、戦い方としてはゲーム的な分類をしてしまうと「万能型」ですよね。特化の人が、ある点で万能型のそれを超えてくるっていうのは見ていて面白いなって思います。
でも……
FIREさんなら「やろうと思えば特化の人の動き」ができちゃいそうな気がしますよね。
色んな人のスタイルを見ていると、頭を揺らしたり、凄い体勢でパンチを繰り出したりしてますよね。
でも、FIREさんって何故かそんなに頭が動いてるようにも見えないし、ずっと普通のスタイルで動いてるというか……
常にフォームがめちゃくちゃきれいで、それでいて相手のパンチは絶妙に当たらない距離感というか、なのに反撃はきっちり入れていくし。
特徴的な動きは「必要な時にだけやる」っていう印象があります。
練習を鼓舞するコミュニティのかたち
実力者の存在が「練習の希望」になる
実は色々なことができるけど、メインの武器はスタンダートな戦い方であるという感じがして、僕はそんなところでFIREさんめちゃくちゃカッコいいなと思ってます。
希望になりますよね。
トリッキーな動きをする人だけを見ていると「自分もこれができないといけないのかな」とちょっと挫折しかけると言うか……
でも、スタンダードなフォームでビシバシ相手をシバいてる人をみると、やっぱそこか!! ……と。
しっかりやれば上手くなるし、勝てるんだ!! って思えてきて、練度を高めていけばちゃんと変われるんだってことが伝わってきます。
表示ラグとか小手先の技とか、もちろん大事ですし無視しててもいけないと思うんですが、練習への取り組みに悩んだり、強くなれない時にいくらでも自分への言い訳は出てきてしまうんですよね。
でも、FIREさんだけではなく、長く続けている強い人達を見ていると「まっすぐ素直に取り組んでいこう」っていう原点に戻ってこれるように感じています。
実は予選中にスパーリングしていただいてて、最後の練習ではFIREさんに勝たせてもらったんです。これは僕の勝手な想像ですが、きっと少しでも成功体験を付けさせようとしてくれたんだと思っています。
普段の練習でも、ギリギリ自分の一歩上のような、課題を見いだせるようなレベルに合わせてくれるという印象が一番強い方ですね。
チームを作って下剋上!
初心者でも練習すれば勝てる! ということを証明したくて『チーム下剋上』というのを作りました。私自身も目標として大会入賞を掲げています。
チームを作っていいよという公式運営のアナウンスが出たと思った直後に、あきんぼさんから即チーム招待のメッセージが飛んできましたからね……
すごい行動力だなと思ってます。
私自身はVRCボクシングを長く続けていきたいという気持ちが強くなっていたので「これを利用しない手はない!」と直感的に思ったんです。
一緒に頑張れる仲間がいるほど、ずっとアツく成長してやっていけるな……
と、自分のモチベーション維持の目的もありました。
自分だけだと、頑張りたくてもどうしたらいいか分からないこともありますよね。チーム用のDiscordを作ったりして、トレーニングに有効な情報が整理されたり、先輩に質問しやすくなったり、とても良いと思います。
積極的な分析と指摘をしあう文化
その意味だと、普段の練習でも色んな人が意見を伝えてくれるのはありがたいですね。
はじめのうち、僕はかなり身体を動かして回避行動を取り入れていて、素早くて凄いね!! なんて言ってもらってるうちに「それが自分の強みなんだ」と思い込むようになっちゃったんですよ。
わかる気がします。僕も「前後の距離感を取るのがうまい」と評価していただいたんですが、いつのまにか唯一の武器のようにしていました。でも、実際は武器ではなく癖に過ぎなかったんです。
ベテラン選手の数名がわざわざ「トラスクを分析させろ!」と言ってくださったりしたんですが、すぐに戦い方を見抜かれてボコボコにされました。つまり、僕の癖がたまたま刺さってただけなんですね。でも、その場で何が強くて何が問題かを事細かく解説していただいたんです。
僕の場合はargentさんやslimeさんだったのですが、このおかげで変な思い込みの癖になる前に自分を軌道修正できたと感じています。
大会で戦うことになるはずの相手を全力で強くしてやろう! っていう感じがして、これってめちゃめちゃ凄いことですよね!
試合中でも気になったことはどんどん指摘して貰えたりするので、色々考え込む前に練習会へ行こう!! っていう気持ちになります。
大会で勝てなかったCapaさんとあきんぼさんはぜったいボコボコにしてやる!! ていう目標で熱意が溢れてます(笑
ただ、腰を痛めたり、その後インフルエンザに罹っちゃったりして、せっかく燃え上がってるやる気をどうしてやろうかと悩ましいですね。
僕もヒザを痛めてしまったのでとても反省しています。練習できなくて落ち込んでいたのですが、RufasさんやLupさんがかなり励ましてくださいました。
足を使わず座って遊べる方法を教えてくれたり、遠慮なく一緒にやろう!! と声をかけて貰えて、弱気さを破っていただきました。
大会に挑んだ新人選手の皆さん、どこかしら身体を痛めちゃいましたもんね……
きちんとした知識を取り入れるという意味でも、チームを活かして、ただガムシャラに練習するだけではない、質の高い努力をしていきたいなと思います。
──おふたりとも、熱いお話をありがとうございました!! またこれからもよろしくお願いします!!
VRCボクシングの新たな盛り上がり
ワールド20万Visit達成へ更に加速!?
──ここからは運営の方にお話を伺いたく思います。実際のところ、新たなプレイヤーは増加傾向にあるのでしょうか?
ご質問の意図としては「大会に選手として参加するまでのプレイヤー」ということかと思いますが、その意味では期間や波がある、といったところです。
はじめてVRCボクシングを触ってから1ヶ月くらいかけて「大会を目指してみよう」と考える人が出てくる、という感じでしょうか。種を植えて、水をあげて、段々育ってきて、収穫するといいますか(笑
大会などに関わらず、VRCボクシング全体ということならば、けっこう新規プレイヤーは増えていると思いますよ。
とにかく言えることとしては、単純な比較はできませんけど、はじめて1ヶ月でGRAND SLAM本戦に出ちゃうような人は普通いないよなってことくらいですかね(笑 ※あきんぼ選手を見つつ
──少し前にワールド10万Visitキャンペーンを実施したばかりですが、もう12月に入った頃には20万Visitを達成していましたよね。
10万~20万が本当に早くて……
何か企画しようかなんて言ってたんですが、あっという間でした。
実は、先程の「大会などに関わらないプレイヤー」と言ったように、日本だけでも見えてこないコミュニティがたくさんあるんですよ。身内の10人くらいでDiscord立てていて自分たちだけで遊んでいるとか、大会配信をみているだけの人達とか……
また、VRChatはアメリカのゲームですから、実はアメリカの選手層はかなり厚いですよ。
──先日練習会へ遊びに来ていたアメリカの方々から色々教わる機会がありました。とても洗練された技術を持っていて、みなさん非常に礼儀正しく、言葉は通じずとも優しく基本を教えてくださいました。
一応私達は公式運営ということでやってますけど、コミュニティとしてはここだけではありません。アメリカだけを見ても複数の団体があって、それぞれ大会だとかを運営しているようですし。
VRCボクシング公式から「大会運営のサポート」を得られる!?
『オレの考えた最強の大会』だって開けちゃうぜ!!
大会運営ということであれば、これから私達も「大会を実施したい人達をサポートする体制」を整えていこうと考えているんです。
それって、僕でもお願いすれば「きちんとした大会」を開けるってことですか?
そうです!
「友達同士で最強を決めよう!」といった小規模なものから……
「ボクシングでどっちが正義か分からせてやる!」みたいな企画っぽいことも可能ですよ。
どんなサポートを受けられる?
大会といっても、ただ人を集めてトーナメントするだけだと自分たちでやるのと変わらないですよね。
例えば今回の「GRAND SLAM本選会場」を借りるとかってことはできるんでしょうか?
できます
「大会進行を考えたり・試合を進めてくれる人」を手配してくれたら助かるんですが……
できます
試合中に「レフェリー」がいてくれたらそれっぽいですよね?
できます
「実況や解説ができる人」を紹介してくれたり……!?
できます
ま、マジですか~~!!?
それってほとんどGRAND SLAMと変わらないレベルまでサポートを受けられるってことですよね。
私を含めたVRCボクシング運営メンバーは全員ボランティアで活動していますので、もちろん限界はあります。
また、そもそも大会を開きたい人達のコンセプトが定まっていなければ私達もサポートしようがないので……
コンセプトや規模感に合わせて、サポートできる内容の範囲は調整していくことになると思います。
あくまでも主催者を立てて私達としっかり打ち合わせながら準備を進めていただく必要はありますね。
やりたいことが明確であれば、私達が大会をトータルでディレクションするかたちでお手伝いできます。
どうやってサポートをお願いすればいいのでしょうか?
私「零落クリエ」までご連絡ください。
これまで開催したユーザー大会だと……
・関西部 杯
・「某氏 VS 某氏」の お塩杯
・VRC外支部 ポタージュ初心者杯
といったものがありましたね。
公式大会ワールドを借りるだけでも、かなり盛り上がれると思います。
まずは「こんな大会を開いてみたい!」と相談するのがよさそうですね。
本日はありがとうございました!!
「大会開催サポート」詳細内容
【サポート環境・条件】
- 基本的に無償で対応
- 大会主催者に明確な方針や熱意があること
- VRCボクシング公式運営との打ち合わせをしっかりと行えること
- サポート問い合わせ先:VRChat「零落クリエ」まで
案内資料は鋭意制作中!!
【具体的なサポート内容】 ※2023年12月31日現在
- 大会当日の進行
- 可能な限りのスタッフ手配 (実況やレフェリー等)
- 遊び方のレクチャー
- 大会ワールド貸し出し (通常は非公開)
- 配信の補助
- スケジューリング
- 選手募集 ……などなど
【イベント建付けの一例】(参考)
- イベント名:XXXアバター使い最強決定戦(仮)
- 開催日:20xx年xx月xx日
- スタッフ集合:21時30分
零落クリエまでリクインないしはJOINください - 当日練習:~21時50分
- 客入れ:21時50分~
- 開幕:22時
- 終了時間:未定 24時を想定
- 参加選手:13名 トーナメント形式 シード1名
- 参加スタッフ: 各1名
司会
実況
レフェリー
観客誘導 - 商品:主催者から500円程度のBooth商品プレゼント
- 観客の形態:インプラ事前予約 15名程度
- 試合ルール:リアルモード(スタンダードモード)にて開催
- 配信:無し
投稿者プロフィール
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【あきんぼ選手】
新人選手でありながら、僅か1ヶ月の練習期間で本戦出場を果たす。
ベテラン選手が驚くほどの練習量を積み重ねた。