VR対談:「癒し」で繋がる神話体系~授乳カフェ店長に聞いたキタリナの有り方~

前回の記事から1年ほど間が空きました!(時間がたつのは早い!)
VRChat上で授乳カフェを経営するホシライムさん
毎週日曜日に開催する当イベント、1年半継続している人気イベントです。
そんな授乳カフェを運営するホシライムさんにお話しを伺いました。
ホシライムさんTwitter
オーエンTwitter

オーエン

1年半ってすごく長い・・・そんなにないですよねそこまで継続してイベントを開催してるコミュニティって。

やぎこ

イベントの名前だけ聞くと突飛で驚いてしまいますが(笑)
VRユーザーから愛され続けているからこそこれだけ長くイベントが継続しているのかなと感じます。ホシライムさんとしては1年半イベントを続けていた中で、イベントを始めた当初と今とで何か見える景色がかわったなどありますか?

ホシライム

違いは結構ありますね。当初は1人で始めていましたが今は沢山のスタッフも居ますし支店もあるので責任も重くなったなというのは感じます。現在は毎週大体100人くらいの方が参加していますね。

オーエン

100人のお客様もてなせるのは素直にうらやましい・・・

オーエン

少し気になるのですが、毎週100人ものお客様に求められてるって事は、それだけ毎回満足してもらえているということじゃないですか、「授乳」っていうパワーワードばかりに目が行きがちですが、そんな物珍しさや個人の嗜好ではそんな多くの人を満足させれると僕はあんまり思えないんです。

ホシライムさん的にはどういう所を重視して接客をするよう方針を立ててるんですか?

やぎこ

つまるところ、刺激的な言葉を使った一発ネタではないという事ですよね。長く愛され続けるポイントを教えていただければ!

ホシライム

始めた当初からこのイベントは好き嫌いが大きく分かれるイベントになるのではないかと考えていました。
なので来たことの無い人に悪く言われることがあったとしても勇気を出して来てくれた方をいかに満足させられるかというのを大切にしています。
その意味では初見の方に満足して帰ってもらえることを重要視しています。一回行って面白くなかったイベントは次また行こうとは思わないですからね。

オーエン

ホントそうですよね、やっぱり初回で満足するって大事・・・でも満足と一口に言っても「スリルがあって満足」とか「笑えた!満足!」「おいしかった!!」とか色々あるじゃないですか、キタリナはどのような満足を目指してるんですか?

ホシライム

私として軸に考えているのは癒しなので「癒された、落ち着いた」という満足を目指しています。ただスタッフの数だけ考え方も違うのでそれに負荷して笑いや賑やかさもあるとは思います。

オーエン

確かにスタッフの数だけ答えがあるのも魅力ですよね・・・
僕もこの前初めてキタリナにお邪魔して見学させて頂いたのですが、キタリナにある「癒し」ってなんというか、マッサージで癒されるとか、かわいい動物を見て癒されるとかそう言った意味の「癒し」とは少し違うように感じたんですよね。

やぎこ

確かに、『授乳カフェ』っていうとイメクラ的な要素のあるイベントなのかなって思ってしまいますが(笑)
イベントに参加している人たちがそういう風なテンションでおちゃらけて遊んでいるかと言うとそうではなく、むしろ落ち着いた雰囲気すらある。

オーエン

それ、正直高級ラウンジの雰囲気ある・・・リアルで行ったことないけどw

やぎこ

そうそう!そういう雰囲気ありますよね。勿論イベントなのでワイワイはしてますが、すごく特別感があるという訳でもなく、静かに時が流れていく感じ。

オーエン

そう・・・「アダルト」じゃなくて「大人」な空間なんですよ。

オーエン

その源はホシライムさんの言う「癒された、落ち着いた、という満足」だと思うんですけど・・・ホシライムさんにとっての「癒された、落ち着いた」ってなんなんですか?

ホシライム

昼に公園でぼーっとスマホを見ていた時にバーチャル授乳Cafeのアイデアが浮かんで何気なくTwitterで呟いたらフレンドから反応があって、そのフレンドをビックリさせるために授乳Cafeワールドを作り始めたんですよね。

でも、バーチャルで位救われなくてどうするという気持ちはキタリナを開く前からあって、現実が辛いときにバーチャルで何か救いのようなものを得て、また頑張れるような状態になることが癒された、落ち着いた状態だと思います。

オーエン

救いですか・・・これって「逃避」とか「避難」とかそういうニュアンスを含んでるってわけじゃないですよね。

見学させていただいたとき教えてもらったのですが、キタリナには周りには聞かせられないお話しをする用の「個室」があるんですよね、この個室って「見せられない事をする」ための個室じゃなくて「お客さんの現実のお話をする」為の場所だと聞いていて・・・そう言う場所があるのが「逃避」とか「避難」とかとは違うなと思って・・・

ホシライム

個室は恥ずかしがり屋の方用に作っていたのと負荷を少しでも軽減するためのものではありましたがそういう使い方をする方も居ますね。「逃避」や「避難」というより中々現実では頑張っても褒めてもらえないことって多いと思うんですよね。そういった方が報われるようにするという意味合いの方が合っていますね。例えるならば応援団やチアリーダーみたいなことをしているのかもしれませんね。

やぎこ

そうなのですね、しかしお話しを聞いていると、元々は仕事のお昼休み中に浮かんできたワンアイデアからイベントが始まったり、個室に関しても元々はワールドの負荷軽減のためだったり、そこにすごく深い意味があった訳じゃないのですね。

でも、今では色々なスタッフの方や遊びに来られるユーザーの方がホシライムさんの作った“場”を独自に解釈して、授乳カフェを自分にフィットした空間に作り上げている…

なんか後付けで色々な解釈や価値観が生まれていく“聖書”みたいなコンテンツになってるんだなって思いました(笑)

オーエン

たぶん今やぎこさん言った「“聖書”みたいなコンテンツ」というのが結構重要なキーワードなんじゃないかという気がします。」

誤解を恐れずに言うならば・・・キタリナにある個室ってキリスト教の教会における「懺悔室」と似ているなと思って・・・
懺悔室って「父なる神」、つまり現在生きている我々人間より上位な存在に心の重荷を告白し、赦しを得る場じゃないですか。
キタリナもママというスタッフに辛いことや誉めてほしかったこと、つまり心の重荷を告白し「偉いね」と赦しをもらう場なんじゃないかなって・・・

オーエン

つまり、赤ちゃん役のお客様は、「ママ」という上位な存在が与えられることにより、心の重荷を下ろせる、「癒される」場がキタリナなのかなって・・・

ホシライム

私よりももう深く考えてますね(笑)あまり深く考えすぎるとイベントに対する思いが強くなりすぎて続けられないと思っているので今まで意図してあまりそういった部分については考えないようにしていたんですよね。人の数だけ解釈があっていいと思っています。

オーエン

懐が深い・・・でもなんか振られた気分ですw

やぎこ

いい意味でホシライムさんが授乳カフェに対する解釈を決めてないからこそ、これだけ色々な人が楽しんでいる場になっているのかなと思います。

ホシライム

もしかしたら私の知らないうちに色々な解釈や授乳の流派があるのかもしれませんね。

オーエン

新約授乳と旧約授乳もあるかもしれないのか・・・

オーエン

なんか今まで僕の「キタリナ解釈」を話してしまった感じになってますが、キタリナのスタッフ・・・ママさんの中には他にどんな参加の仕方や解釈をしてらっしゃる方が居るんです?

ホシライム

一緒に楽しもうという気持ちで参加されているスタッフもいれば、自分の持っている技術を活かしたいという目的を持った方、お話をすることを重点的にしている方などが居ますね。

ホシライム

癒しという大まかなテーマは決めているのですが、そこから先の解釈については長く参加されているスタッフは1人1人できっと持っていると思います。

やぎこ

そう聞くと『授乳カフェ』って言うのはすごく今風なコンテンツだなと感じます。
今のエンターテイメントって“1つのコンテンツに対してみんなが派生的に解釈し、創造していく”って言うのがスタンダードなのかなと思って。

例えば『初音ミク』なんかは1つの音声ソフトでしかないですが、それを使って曲を作る人がいて、歌ってみた動画を出す人がいて、さらにそこにダンスを交えて映像作品作る人がいて、歌が題材で小説になったりもして…って、派生的にコンテンツや概念が生まれているじゃないですか。

初音ミクに限らず、東方プロジェクトなんかはその典型例ですし。
イベントに関しても、同じように、ホシライムさんが作り出した『授乳カフェ』っていう空間に色々な想いや解釈を乗せる人が出てきているんじゃないかなと思います。

オーエン

ある種の神話体系だ。

ホシライム

見てるだけみたいな受動的なイベントではなくて来たお客さんもイベント参加者として積極的に関わってもらうことを重要視しています。

なのでキタリナに来たお客さんのママがスタッフのママよりも人気になっても全然良いと思っていて、キタリナという場で自分の居場所を得たり今まで光の当たらなかった人が人気になったり隠れていた才能が開花したりすれば良いなと思ってイベントをしています。

オーエン

いろんな解釈やお客さんの活躍等を許容する寛容さ、その機会を与える場がキタリナなんですかね?

ホシライム

そうですね。スタッフやお客さんが様々な形で活躍出来る場になればいいなと思います。

やぎこ

VRにおいて個性的なコミュニティを作り上げている『授乳カフェ』
人々の癒しの空間として、今後も長く愛されるイベントとなりそうですね!