2022年5月26日(木)、株式会社雪雲(ユキグモ)が、新たなメタバース空間『The Connected World™』構想に関する記者発表会を開催しました。
株式会社雪雲は、“VR酔い”を軽減できるVR技術『VRun System™』の開発・研究を進める長野県のVR企業。
そんな同社CEOの伊藤克氏からご招待をいただき、『VRun System™』と、その技術をコアにして設計される『The Connected World™』を実際に体験させていただくことができました!
VR酔いを克服! 『VRun System™』とは?
日ごろからVRに慣れ親しんでいる我々にとって、“VR酔い”は非常に悩ましい問題です。
VRを初体験した人はもちろんのこと、どれだけVRに慣れても、酔う人は酔ってしまいますよね。
……かく言う筆者も、左右の視力差がある影響からか、比較的VR酔いをしやすい体質だったり。
今回記者発表会を開催した雪雲では、そんな“VR酔い”こそが、VR業界の発展を著しく阻害する要因のひとつであると注目。
2019年に会社を設立し、2021年には『VRun System™』を発表。
そして、今回の記者会見で、多くのメディアに向けての説明と、実演&体験をする場を設けるに至りました。
ちなみに、『VRun System™』は特許申請中であり、詳細な仕組みは企業秘密。
そのため、今回の記者発表会ではどういった技術で実現しているのか深い部分までは言及されませんでしたが、特別に仕様の一部が公開されました。
そもそも。VR酔いの原因とは、「現実の体が止まっているのに、視覚情報によって移動しているように感じる現象=ベクション」によって、三半規管との認識に齟齬が発生することで引き起こされるそう。
そんなベクションに対して、現在普及している多くのVRコンテンツでは、高フレームレート(90FPS以上)・低遅延・加速度なしにすることで急激に視界変化させ、脳を臨戦態勢の状態に変えることでベクションを一時的に感じ難くさせているとのこと。
……なるほど! わからん!
VR酔いの辛さを知っているからこそ、説明を聞くだけでは「本当に?」と半信半疑だった筆者。
ほかの取材陣も同様の様子で、記者からシステムに関してや検証方法についてなども質問が投げかけられましたが、まだ詳しいことは言えない技術であることもあり、その核心には迫れません。
一方、そんな疑問に対して、「実際にやってみればわかります!」と自信満々に、ヘッドセットの装着を促したのは伊藤氏。
えぇー。そんなまっさかー。
僕、わりと簡単に酔いますよ?
記事にしちゃいますよ?
いいですか? いいんですね? 知りませんよ? 被りますよ~!
(5分後)
筆者「伊藤さん! すごいです! 酔わないです、これ!」
伊藤「でしょー!? すごいでしょー!?」
そこには、ドヤ顔で自分たちが開発した技術を自慢する伊藤氏がいました。
これは凄い。本当に酔わない!
試しにVR酔いしやすい動きである人間の限界を超えた速さでぶっ飛んでみたり、頭をブンブンと振って無理やり視界をシェイクしたりしても、酔う気配をまったく感じません。
高速移動やステップ移動、ロックオン移動をしても安心快適。
筆者はこれまで『ソード・オブ・ガルガンチュア』や『Zenith: The Last City』といったVRゲームのプレイ経験がありますが、ステップ移動を駆使した戦いをすると5分くらいで「ばたんきゅ~」と頭痛を我慢しながらプレイしていました。
それが、『VRun System™』なら!
どれだけやっても酔わない!疲れない!
超快適かつ、没入感がすごい!
敵と戦うのがめちゃくちゃ楽しいし、駆け引きが熱い!
もちろん、体験会では筆者が何時間もテストプレイできるわけではないので、その効果がどれほど続くのかは未知数です。
しかし、開発環境では50人以上が参加したテストで長時間プレイさせても全員が「酔わない」と解答したほか、協力する大手企業による検証でも「酔わない」という結果が出たそう。
直接、伊藤氏にも探りを入れてみたところ、現時点で3時間以上の連続プレイまでは確認ができているとのこと。
VRに日ごろから入り浸っている人がこの時間を長いととるか、短いととるかは個人差がありそうではるものの、実際に体験した筆者としては十分に効果が期待できる結果に思えました。
VR酔いのない新メタバース空間はより生活に密接した場所になる
そんな『VRun System™』を活用し、株式会社雪雲が開発を進めるのが、今回の記者会見で新発表となったメタバース空間『The Connected World™』。
CTOをオンラインゲーム『イルーナ戦記』のプロジェクトリーダーも務めた丸山謙一郎氏が務め、“メタバースプラットフォームのスタンダード”を目指す一大プロジェクトです。
『The Connected World™』は、主催者が決めたレギュレーションとルールで展開できる“World”と呼ばれる大枠の空間がいくつも存在し、その中の1つに参加するユーザーが建物を建てたり冒険をできる“Land”が内包され形成されていく。例えるなら、VRChatにおけるワールドとインスタンスの概念に近く、それより規模が大きいものであると考えるとわかりやすいですね。
2022年12月からフェーズ1、2023年1月よりフェーズ2と段階を別けてサービスは開始予定。
フェーズ1では、αテスト兼モデルケースとして、雪雲が自社開発するMMORPGがリリースされるそうです。
なお、グラフィックといった表現は最新ゲーム機レべルを想定し、同時接続人数は数千人規模でも耐えられるよう設計を進め、『VRun System™』によりVR酔いもしないとか。
それに続き、企業・団体との連携により様々なWorldとLandの開発・構築が進めていくのがフェーズ2。この段階に移ると、コミュニケーションスペース、テーマパーク、コンサート会場、行政活動などなど、ありとあらゆる利用方法が想定されており、まさしくVR空間にもうひとつの世界を形成していくような段階です。
Worldの利用者は、そのWorldで決められたルールにしたがってプレイし、アイテムの制作や売買、構造物制作、ゲームの制作、スペースやイベントの運営などで空間を作ることで、『The Connected World™』を楽しめるそうです。
『The Connected World™』では、クリエイションエディターとして、これまた自社開発の『Metaverse Engine™』を用意。こちらは、『VRun System™』をコア技術としてUnityを利用して、クリエイターがより利用しやすく、直感的に使用できるツールを目指していると伊藤氏。
Landの地形やオブジェクトの制作や編集はもちろん、アバター作成やカスタマイズ、フィールドギミックやNPCのAI、イベント作成といったスクリプトも『Metaverse Engine™』で作成・編集ができるとのこと。用意されたアセットを組み合わせて作ったり、より優れた技術者であれば自由に開発もでき、利用者のレベルにあった使い方ができるのがポイントです。
つまり、「Unityを覚えなくても気軽に物が作れるぞ!」ということなので、開発者ではない人にとっては利用のしやすいツールになりそう。逆に、現在の開発者にとっては新たなツールを覚えなければならない煩わしさもセットでついてきそうですが、そこは続報を待ちましょう。
現在のVRSNSを利用する人や、VTuberにとって気になるのはアバターに関して。
今回体験したデモでは、なかなか、こう、“現実味のある感じ”なアバターだったので、こういったモデルでしか遊べないとなると悲しい感じがします。
すると「現時点で使用されているアバターの形式や、FBXなどをインポートできる仕組みを検討しています」という解答をいただきました。そうでなくては!
まとめ
以上が今回の記者会見をお聞きして、体験してきた内容です。
実体験した結論を言いますと、『VRun System™』は本当に酔いませんし、『The Connected World™』の構想が実現すればVRにおける体験はひとつ未来に前進するかもしれない。
そう思わせるくらいの衝撃がありました。
とにかく、VR酔いをしないというのは本当に快適です。
これがスタンダードになったら本当に嬉しいなぁ……!
なお、本稿ではVR専門メディアらしく「普段からVRに浸っているユーザーから見るとこんな感じ」という観点でまとめさせていただきました。
より技術的な部分や、商業的な内容は省いているので、ご興味がある方は株式会社雪雲の公式よりチェックしていただければ幸いです。
投稿者プロフィール
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ライター業を営む鳥類魔術師Vtuber&バーチャルフォトグラファー。『ファミ通』他、多数の企業媒体で執筆中。大好きを発信し続けております。アニメ、ゲーム、ダイビングのことならお任せください。詳細はXへ!
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■株式会社 雪雲
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