建物の老朽化により、2021年6月末に惜しくも閉業が発表された東京・北千住にある銭湯『大黒湯』
『歴史あるこの銭湯を遺したい』という思いにより、これまで数々のフォトグラメトリVRワールドを制作してきた龍 lilea(@lileaLab)氏による大黒湯のVRアーカイブワールドが公開されました。
思い出がそのままに残された大黒湯VR
昭和20年から創業して以来、人々の生活を支えてきた銭湯『大黒湯』
いまでこそ自宅にお風呂があるのは当たり前ですが、戦前の時代は自宅に設備の整った風呂を用意することが難しく、人々は地域の銭湯に足を運んでいました。
現代でも銭湯マニアの間で『キングオブ銭湯』と呼ばれるほど愛されていた『大黒湯』ですが、長年運営による設備の老朽化、そして番台さんの年齢的な問題から、このまま運営を続けることが難しいと判断し、2021年6月末に閉業を決めたのだそうです。
VRの大黒湯は館内の建物を3650枚の写真から生成し、フォトグラメトリで再現しています。
現在はVRChat・clusterのメタバース空間での公開、そしてスマートフォンからARで館内の様子を鑑賞することが出来ます。
脱衣所には104枚の日本画がズラリ
大黒湯が『キングオブ銭湯』と呼ばれていた由縁は建物の造形美にあります。
脱衣所の天井には104枚もの日本画が描かれており、まるで美術館のよう。
このような天井の造りは『折り上げ格天井(ごうてんじょう)』と呼ぶそうです。
当時の銭湯、特に東京近辺での銭湯は神社仏閣と同じ造りで建設され、大黒湯も例に習ってそのような建築をされていたようです。
銭湯内には大きな富士山のペンキ絵が塗られています。
こちらも東京発祥の銭湯文化。
東京のとある銭湯の主人が子どもたちに喜んでもらおうと思い、洋画家の川越広四郎(かわごえ・こうしろう)氏に絵を描いてもらうよう依頼。
すると彼の故郷である静岡の富士山の絵が描かれ、それが好評でそれ以降東京周辺の銭湯に富士山の絵が広まったそうです。
ボイラー室・番台など普段見ることのできない場所もVRで歩き回れる
VRでは普段見ることのできない番台やボイラー室の中も歩き回って鑑賞するが出来ます。
昭和から平成、令和まで、世代を超えて愛されてきた大黒湯は、もう現実では足を運ぶことが出来なくなってしまいましたが、場所を変え、これからもバーチャル空間で人々の記憶に残されていくことでしょう。
『大黒湯』AR版の起動について https://lilea.net/lab/daikokuyu/