今年2024年で太平洋戦争の終結から79年、中日新聞社は8月7日に「戦争遺跡」をフォトグラメトリで保存したものをVRChatのワールドとして公開したことをアナウンスしました。
今回は、戦争の傷跡を3Dフォトグラメトリとして展示している「語り続ける 戦争遺跡」の一部をご紹介します。
ワールドへ
ワールドは、全体的にモノクロで静かな雰囲気。入り口を進み階段を上ると開けたエントランスロビーに出ます。
エントランスロビーには、愛知・岐阜・三重の東海3県にフォーカスを当てた日本地図が設置されており、ワールドに展示されている戦争遺跡の場所を示しています。
「軍事・防衛関係」「戦闘地・戦場関係」「石碑」の3つのカテゴリに分かれており、ロビーからそれぞれの展示場所へ行くことができます。
軍事・防衛関係
愛知・豊橋公園
豊橋市の中心部に市役所にほど近い豊橋公園(吉田城址)にあるのは、日清戦争~太平洋戦争までの間、日本陸軍の歩兵第18連隊が置かれていたことから残っている戦争遺跡です。
ワールドでは、「正門」と「哨舎(しょうしゃ)」が再現されています。
各展示には、説明文と動画プレーヤーが設置されており、展示物について知ることができます。
歩哨舎が残う豊橋公園(中日新聞)
郷土の戦争遺跡・資料(豊橋市美術博物館)
愛知・笠寺高射砲陣地跡
こちらは名古屋市南区笠寺にある、空襲に備えるために設置された高射砲の跡地です。
ワールドでは、VRならではの展示として半透明の高射砲が設置されており、当時どのように置かれていたかを伺い知ることができます。
笠寺高射砲陣地跡(中日新聞)
笠寺高射砲陣地と見晴台遺跡(栗東歴史民俗博物館)
愛知・伊良湖射場の気象塔・福江観測所跡
愛知・渥美半島の先端にある伊良湖周辺にも戦争遺跡は存在。
畑の真ん中にそびえる無機質なコンクリートの塔は、砲弾などの威力を調べる際に必要だった気象条件などを観測するために使われたそう。
説明が書かれたパネルの隣には、エントランスへのワープゾーンとトンネルが。
トンネルに入ると体が小さくなり、フォトグラメトリで再現された原寸大な世界を体験ができます。
伊良湖射場の気象塔と福江観測所跡(中日新聞)
[活写]平和を望む(動画あり)(日本農業新聞)
戦闘地・戦場関係
岐阜・戦災樹木のイチョウ
岐阜城を構える金華山の麓、岐阜市役所の隣の公園には、空襲に遭うも今もなお成長を続けるイチョウがあり、こちらは幹部分がフォトグラメトリとして展示されています。
岐阜市役所(2021年に現在の場所に移転)の東にある美江寺(みえじ)公園は、都市部にありがちな噴水を備えた一般的な公園ですが、普通の木々に隠れて「戦災樹木のイチョウ」が佇んでいます。
よく見れば特徴的で不思議な木なのですが、街中に溶け込んでおり「戦争の爪痕である」と言われないと案外わからないものです…。
戦災樹木のイチョウ(中日新聞)
愛知・千種公園の爆撃痕塀
名古屋市千種区にある千種公園は、戦前「名古屋陸軍造兵廠 千種製造所」として航空機の機関銃などを製造。そのため、軍需工場などを狙った空襲の被害に遭いました。
工場の外塀がフォトグラメトリで展示がされています。
千種公園の爆撃痕塀(中日新聞)
戦前の工場の街から住宅・文教エリアへ(三井住友トラスト不動産)
石碑
熱田空襲跡の碑
名古屋市熱田区にあるのは、熱田空襲の際に爆弾により受けた傷跡が数多くある堤防の護岸です。
現在は新たな堤防が治水の役割を果たしていますが、空襲の被害にあった旧堤防は移設され碑として残っています。
さいごに
学生の頃は、地域に起きた戦争での被害などを学ぶ機会がありましたが、学びの機会から離れてしまうと、博物館や現地に足を運ばないと中々こういった展示や背景を知ることが出来ませんでした。
そういった点で、遠方ではあるが街に残る傷跡を知られるのは良い機会と思いました。
今も近所に静かに残っている「戦争遺跡」について調べて・学んでみてはどうでしょう。
関連サイト
語り続ける戦争遺跡 – 中日新聞Web
中日新聞社、VRChatに戦争遺跡の3Dモデルを展示するバーチャル空間を公開 – PR Times
1942年に創刊の国内最大の地方紙「中日新聞」などを東海地方を中心に発行。名古屋市に本社を置く。