初心者は、適度な距離感で背中を押してあげよう。開催5年目に突入した『VRChat初心者集会』の歴史と、初心者の特徴を聞いてみた【インタビュー】

※この記事は、創作でつながるクリエイターズマーケット『BOOTH』提供記事です。

誰もが、『VRChat』にやってきた直後は初心者です。そこからどう成長していくかは人それぞれですが、やはり初心者向けイベントに参加し、いろいろな知識を得て、フレンドを増やしていく方が多いのではないでしょうか。

『VRChat初心者集会』も、数ある初心者向けイベントのひとつ。毎月第3土曜日に開催され、初心者だけでなく“初心者と触れ合いたい人”も参加できるのが大きな特徴です。2020年からスタート後、いまなお多くの人でにぎわう人気イベントで、2024年2月~3月に開催された『SANRIO Virtual Festival 2024 in Sanrio Puroland』では、コミュニティコラボとして出張版イベントも開催されました。

そしてこの度、『VRChat初心者集会』と『BOOTH』のコラボが実現し、特別なコラボ回の開催が予定されています。今回は、コラボ回開催を記念し『VRChat初心者集会』にインタビューを実施。イベントの誕生時のエピソードから、個人開催イベントの運営のコツ、そして「初心者ってどんな人なの?」といった素朴な疑問まで、幅広くお話をうかがいました。

インタビュー参加者

ライル(@Wisternear
『VRChat初心者集会』主催。初心者向けイベント『VRC初心者の待合所』の主催も兼任。アバター『スノウエルフのお嬢様』に惹かれてVRChatの世界に来た。自撮りが趣味なため、様々な服の3DモデルをBOOTHでたくさん購入している。

anatawa12(@anatawa12@misskey.niri.la
『VRChat初心者集会』スタッフ。『VRChat初心者集会』が初めて参加したイベント。『AvatarOptimizer』、『ALCOM』などの開発を手掛けるエンジニアで、毎日何かしら開発してる。

まつ(@sun_matu
『VRChat初心者集会』スタッフ。バーイベント『Bar Lapis』も開催。ダンスや演劇など、いろいろ出来ることを模索中。

みかんるい(@luisan_vr
『VRChat初心者集会』スタッフ。技術的な情報共有や作業の補助など、当日のスタッフ以外のサポートも行っている。2021年の初心者時代に『VRChat初心者集会』のDiscordサーバーで謎解きイベントを企画し、現在まで続けている。

VRChatを始めて3ヶ月で開催!? ドタバタな『VRChat初心者集会』のはじまり

――『VRChat初心者集会』はいつごろ、どのような経緯で始動したのでしょうか?

ライル

2020年7月からスタートしました。開催のきっかけは『VRC初心者交流会』でした。私自身は2020年4月から『VRChat』を始めたのですが、このイベントでフレンドがたくさんできて、「ぜひ次も参加したい!」と思っていたんです。

ところが、このイベントの開催頻度は3ヶ月に1回くらいでした。そうなると、次回開催まで自分が行けそうなイベントは少ないと感じ、ならば「隙間産業的に初心者向けイベントをやろう!」と思い立って企画・開催したのがはじまりです。

――『VRChat』を始めて3ヶ月でイベント開催! 「ないものは自分で作ろう」とよく言われる『VRChat』で、見事に体現されましたね。

ライル

いま思えば、けっこう無謀だったなと思います(笑)。

――初開催時点で、ライルさん以外のスタッフはいらしたのですか?

ライル

ほとんどいませんでした。ワールドも自分ひとりで作り、告知もひとりで行っていましたね。「初回はそんなに来ないだろう」と高をくくっていたのですが、あっという間にフルインスタンスになってしまい、慌ててその場にいた友達にインスタンス管理をお願いし、自分は第2インスタンスを立てて対応していました。

――参加者はどのくらいいらっしゃったのでしょうか?

ライル

2インスタンス合わせて60人くらいだったと思います。その時点で「ひとりじゃ管理しきれないな」と悟り、仲の良かった友達に次回も手伝ってほしいとお願いしていました。

――そこからイベントが続いていく中で、どのように運営スタッフが増えていき、現在はどのくらいのスタッフが在籍されていますか?

ライル

最初は仲の良い友達を誘っていたのですが、なかなか時間が合わない人もいて、イベント参加者からお誘いする形でスタッフを増員していきました。あと、現在はやっていないのですが、“スタッフ体験”で一時的にスタッフをする人を募集し、感触がよかった方に正式にスタッフ参加を打診していましたね。

現在は、スタッフ名簿に記載があるのは15人くらいです。そのうち、私も含めて8人〜10人前後のスタッフが手伝ってくれています。

――“スタッフ体験”はおもしろいアイデアですね。どのような経緯で発案されたのですか?

ライル

初心者の方がいきなり様々なイベントに正式スタッフとして参入するのはハードルが高いかなと考え、“スタッフ体験”として軽いノリで参加できる機会を設けました。一度体験すれば、他のイベントでもスタッフをやってみようかと思う人も増えるでしょうし。うれしいことに、この経路で数名がスタッフとして参加してくれています。

スタッフ参加の動機は“恩返し”

――本日、インタビューに同席されているスタッフのみなさまは、どのような経緯でスタッフとして参加されましたか?

anatawa12

自分は『VRChat初心者集会』に参加後、2022年の6月に“スタッフ体験”を経てスタッフになりました。

まつ

自分も『VRChat初心者集会』の参加を経てからスタッフになりました。やはり自分にとって恩のあるイベントですし、今後参加する人にも、このイベントを通してポジティブな体験をしてほしいと思ったのが大きいですね。自由そうで、入りやすそうだなと思っていたのですが、団体所属は初めてのことだったので、最初はすごく緊張しました(笑)。

anatawa12

自分も相当緊張していた記憶がありますね。

みかんるい

自分もまつさんと同様で、2021年8月に『VRChat』を始めて、8月の『VRChat初心者集会』に参加したのがきっかけでした。当時は今よりも界隈が小さく、コミュニティがすでに成り立っていて、後から入りにくい印象がありました。なので、このイベントと出会えなければ『VRChat』を続けられなかったと思いますし、人とのつながりを与えてくれたきっかけの恩返しがしたいと思い、スタッフとして活動しようと思ったんです。

――みなさん、最初の巣立ちを支えてくれた場所に恩返しがしたい想いが強いのですね。キャスト系イベントのような、憧れなどがきっかけとなったスタッフ参加と少しカラーが違うことが興味深いです。

みかんるい

もっと言ってしまうと、初心者の人がとても好きなわけでもないですからね。

anatawa12

嫌いじゃないし、好きだけど、すごく好きではない。

まつ

それは確かに。僕らはきっかけを与えられれば、それでいいと思っています。

ライル

初心者同士がわちゃわちゃとしているのを見るのが好きだからスタッフをしている方は『VRChat初心者集会』のスタッフにはそこまで多くないですね。もちろん、そういう方がいることはいいんですけど、スタッフはある程度の距離を取れる人の方が向いているかなと思います。

たまに、「初心者案内が好きで、熱意があるのでスタッフをやりたい」って人は現れるんですけど、そういう方には通常の参加者としての参加をオススメしています。『VRChat初心者集会』は初心者以外の方も参加を歓迎していますし、全体を見なければいけないスタッフよりも、初心者の方との交流は楽しみやすいと思うので。

――通常参加するベテランユーザーの常連さんもいらっしゃるのでしょうか?

ライル

何人かすぐ思い浮かぶくらいにはいらっしゃいますね。イベント後に、アフターとしてワールド案内をされる方もいます。

長続きする運営のコツは、負担を少なくすること

『VRChat初心者集会』会場ワールド

――『VRChat初心者集会』は、毎回どのように開催されていますか?

ライル

毎月第3土曜日に開催しています。参加方法は一般的な『VRChat』イベントと同様に、主催者である私にフレンド申請を送ってもらい、開始時間に入場いただく形式です。

イベントそのものは、進行プログラムなどがあるわけではないです。基本的には“場の提供”がメインなので、初心者や既存ユーザーには自由に交流してもらいます。「開始から50分経過したところで集合写真」くらいが決まりきった流れです。いわゆる雑談系イベントと雰囲気は近いと思います。

――会場ワールド内には、話題作りにつながりそうなアイテムもいくつかありますよね。“話題サイコロ”とか。

話題サイコロ。サンリオVfesコラボでも使用された。
ライル

これらのアイテムも使用は強制していないです。基本的には、みなさんアイテムなどは使わずに雑談している印象です。

みかんるい

なかなか使ってくれないから、ライルさんが置き場を工夫したりしていますよね。とはいえ、初心者さんって話したい話題がいっぱいあることが多いですから、「アイテムなどを使わなくても大丈夫だろうな」と感じています。

ライル

ただ、アイテムを話題作りのために使ってくれる人も中にはいるし、なにか別のアイテムも置こうかなと考えてはいます(笑)。

――全体的にカジュアルなイベントですが、この方向性にしたのはなぜでしょうか?

ライル

開催当初から、会場インスタンスを複数に分けることが多かったのが要因です。ひとりでは全てのインスタンスを管理できないので、スタッフにインスタンス管理をお願いすることになるのですが、ここに「開始◯分でなにかする」といったプログラムを組むと、スタッフの負担が大きくなってしまうんですよ。それは極力なくしたいなと思っています。

みかんるい

『VRChat初心者集会』のスタッフって、本当にゆるいですよね。スタッフになる前はもっと堅苦しいイメージを持っていて、イベントの裏では筋書きがきちんと用意されているんだろうなと思ってたんです。でも実際には特にありませんでした。

anatawa12

それは私も思っていましたね。「マニュアルとか特にないんだ」って。

まつ

自分も「スタッフになるからにはマニュアルしっかり読み込もう!」と思ってたけど、そもそも存在しなかった(笑)。

ライル

なにか困ったことがあれば、裏でボイスチャットはつながっていますし、そこで連絡してもらえればその場で判断して指示は出せますからね。ゆるくスタッフ参加できるよう、負担を減らすことは大事にしています。

――“負担が少ない”点は、スタッフだけでなくイベント運営が長続きする秘訣かなと感じました。そのほかに、運営上気をつけていることはありますか?

ライル

基本的なことですけど、スタッフへの報連相は欠かさないようにしています。「この日はこうやる」「ここはこう変えた」といった連絡は、やはり事前にした方がベターですよね。複雑なものは文章で展開しますし、軽微なものであれば当日に口頭で伝えるようにしています。

あと、これは良いことなのかわからないんですが、最悪私だけでも、なんとかできるように、いろいろ整えています。

みかんるい

ライルさんから「スタッフは最低でもこれだけの人数は参加してほしい」とお願いもされていないので、たまたまスタッフが全員用事などがあると、スタッフが全員不在で、ライルさんだけがいる状況は起こり得ますよね。

ライル

今のところ、そういった状況は起きてないですけど、その場合は1インスタンスのみの開催も考慮するでしょうね。場合によっては、常連さんに手伝ってもらう選択肢もあると思います。

――主催者目線だとこのような意見ですが、スタッフのみなさんの目線から、『VRChat初心者集会』がうまく長続きしていると感じる要素は、なにか思いつきますか?

anatawa12

ゆるさ、負担の少なさももちろんですけど、“月1回”の開催スパンそのものもちょうどいいのかなと思います。たくさん開催されているわけでもないけど、スパンが長いわけでもない。スタッフをする上では、ある意味気楽だなと感じますね。

みかんるい

たしかに、うっかり忘れてしまうほどの間隔ではないですよね。

anatawa12

まぁ私は2回ほど忘れちゃったことあるんだけど(笑)。

ライル

大丈夫大丈夫! 全然問題ないから(笑)。

――うっかり忘れていても許される空気は、スタッフとしてはありがたいところですよね。“縛らないこと”の重要性と言いますか。

みかんるい

そこに、人を集めて維持できるコツがある気がしますよね。ライルさん自身も、自分の考えを押し付けず、ある程度自由にやらせてくれるタイプなので、幅広い人がいまもスタッフとして参加を続けているのかなと感じますね。

どんなときにやりがいを感じる?

――スタッフのみなさんは、どんなときに楽しさややりがいを感じますか?

anatawa12

自分のフレンドの数が比較的少なめだったころは、イベントでお会いした初心者さんとフレンドになったあと、イベント外で私がその人にJoinしに行き、そこでさらに新しくフレンドを増やしていました。“新しいつながり”を見つけるきっかけを得られたなと。

あと、このイベントで出会った初心者さんが長く『VRChat』を続けているのを見ると、嬉しくなりますね。長続きするかどうかは、「どこに行けるか」がかなり重要で、それは若干運が絡むし、『VRChat初心者集会』だけが決め手にはならない。けれども、どこかしら居場所を見つけて、長く続けている姿を見るのは、スタッフとしてやりがいを感じますね。

まつ

自分も、知り合った初心者さんが長く『VRChat』をやってくれたら嬉しいです。初心者さんが輪の中に入って盛り上がっている姿を遠くから眺めていると、「スタッフやってよかったなぁ」と。

みかんるい

私も同じですね。『VRChat初心者集会』に参加する人には、スタッフが何もしなくてもコミュニケーションを取って、フレンドを作る人もいるんですが、逆に会場のはしっこで動けなくなっている人もいます。そういう人に声をかけて、輪に入る背中を押してあげたあと、そこになじみ、会話を始め、周囲と仲良くなっていく姿を見ると、「力になれたな」とうれしく思いますね。

あと、たまにスタッフとして出会った初心者さんが、その後ほかの場所で自分に向かってJoinしてくれたときにも、やりがいを感じているかもしれません。

――やはり初心者の方の助けになるとうれしいですよね! そして初心者の方も、最初に支えてくれた方の顔は意外と長くおぼえているものですよね。

anatawa12

最初期の『VRChat』体験は記憶に残りやすいですよね。自分も『VRChat初心者集会』に参加した後のアフターで「Exhibition˸ The day before the Summer begins․」に連れていってもらったときとか、どんな展示があったかとかいまでもおぼえています。

みかんるい

そのとき、自分はたしかスタッフ側でanatawa12さんを案内していたと思うんですけど、そのときからプログラミングの話をされていたのでよくおぼえています。初対面のころから、現在の片鱗があった。

anatawa12

そんな話、ありましたね! たしか当時デスクトップでしたけど、おぼえているものだなぁ。そうした思い出とか、写真を見ても思い出しますものね。

「誰かと交流したい」人の背中を押してあげる

――ここから話題を変えて、“『VRChat』の初心者”について深堀りしていければと思います。まず、少し漠然とした質問になって恐縮なのですが、多くの初心者とお会いした経験のあるみなさまから見て、『VRChat』の初心者にはどんな方が多い印象ですか?

ライル

断言は難しいのですが、「いっしょに遊び、交流する人と出会いたい」と思っている人が多くいると思います。そのため「とにかくコミュニケーションは取りたい。でも、可能だったら向こうから話しかけてくれるとうれしい」と思っている人が多そうです。

『VRChat初心者集会』に来る初心者さんは特に、積極性があると思います。そもそも、イベントに参加する段階で、ある程度勇気を出して飛び込んできているはずなので、あと一歩を踏み出せればスムーズに周囲と会話ができる人が多いと感じますね。

――コミュニケーションの欲求も、基礎的な会話力もあるけど、この世界のつながりがないから、まずはつながりを欲していると。

ライル

パブリックで初対面の人といきなり話せる人もいますけど、「なんか輪に入りづらい」と感じる人もいるはずですよね。そんな人が、うちのイベントにきて、話し相手を求めるのかなと思います。

みかんるい

リアルの友達といっしょに来る人もたまにいますけど、基本的にはひとりでやってきて、新しい人脈を求めている印象です。

anatawa12

あるいは、ライルさんが主催している『VRC初心者の待合所』や、ほかの初心者向けイベントで出会った人たちが、新しくフレンドを作りに来ているケースもありますね。

――すると、スタッフのみなさんが背中を押すタイミングは、“会話の輪の中に入っていこうとしているとき”になるのでしょうか?

ライル

そうですね。ひとりぽつんと取り残されている人がいたら、少なくとも一回は声をかけて、「あそこで興味ありそうな話をしてるから、ちょっと混ざってみる?」と誘っていっしょに輪に混ざりに行ったり、所在なさげにウロウロしている人を見つけて輪に誘ってみたりしています。スタッフだけでなく、常連さんにも手慣れている方がいますね。

ただ、私は全体を巡回していて、細かいところまでは見えてないので、細かな対応については各スタッフのほうが詳しいかな?

みかんるい

基本的にはライルさんの通りですが、細かな対応は人によって違いますね。私の場合は、ひとつの輪にずっといるのではなく、いくつかの輪を渡り歩きます。その途中で、一人ぼっちの人がいたら輪に誘いますし、ある特定の話題を求めている人がいたら、その話題が出ていた輪へ連れて行っています。「アバターの情報がほしい」と話していたら、「さっきあそこでアバターの話をしていたよ」と、ご案内するような形です。

――少し気になったのですが、最初距離を置いていた人の背中を少し押すだけで、その人は最初の一歩を踏み出せるものなのでしょうか?

みかんるい

しっかりとコミュニケーションを始める方が多いですね!

ライル

最初のきっかけがつかめないだけで、それさえつかめれば、スムーズにコミュニケーション取れる人は、かなり多いと思いますね。

みかんるい

たまたま、目が届かなくてひとりのままにしてしまった人も、いざ連れてくるとしっかりと話し始めてくれますね。

――「この場だからこそ話し始めやすい」のかもしれませんが、意外ときっかけさえあれば、人間って初対面の人とも会話できるものですよね。

ライル

いちおう、話題に困ったらタグマーカーから興味関心を探ることもできますし、本当に困ったら話題サイコロもありますからね。

オーディオ設定、カメラ操作……初心者がよく困っていること

――初心者と触れ合う中で、よく見かける困っていることや誤解などはありますか?

ライル

オーディオ設定まわりで困っている人が多いですね。例えば、マイク設定。よく“ワールドに入る時の状態”が“デフォルトでオフ”になっている人は意外といて、ワールドに入った直後はミュートになってしまっているんですよね。

他にも、マイクの設定がうまくいってなくて、ミュート解除しても話し声が聞こえなかったりとか、特殊なケースですけど『VRChat』側のノイズ抑制が強く効きすぎて、話し始めや話し終わりの部分が途切れてしまい、うまく聞き取れない人もいますね。

自分の声が相手にどう聞こえているか、自分で確認することは難しいです。そのため、フレンドが少ない初心者の時期は、オーディオ設定の不備を指摘してもらえるタイミングも少なくなります。それが原因でコミュニケーションが取れないって人は、よく見かけます。

anatawa12

『VRChat初心者集会』でも2回に1回か、それ以上の頻度で見かけますね。よく自分が技術サポートしています。

ライル

以前は、自分から発した声がループバックして返ってくる音声チェックワールドがあったんですけど、いつごろからか壊れちゃって使えなくなったんですよね。便利だったのに……。

anatawa12

そんなワールドがあったんだ。たぶん自分は知らない世代ですね。

ライル

あったんですよ。もし、あのワールドの機能を実現できたワールドがあったら、けっこうな人が利用すると思いますね。

あと、このイベントについてよく「User以上になったら参加できない」と思われている方は多いです。最近は1か月でKnown Userまで届くことがザラにありますし、それくらいならまだまだ初心者のようなものだと思いますので、遠慮せず参加してほしいですね。そもそも初心者と交流したいベテランユーザーも『VRChat初心者集会』は参加を歓迎していますので。

――スタッフのみなさんは、初心者が困っていることや誤解など、思いつくものはありますか?

『VRChat初心者集会』会場には、集合写真撮影用にカメラ設置位置のマーカーがある
みかんるい

“不慣れで困りがちな操作”の代表格に、集合写真のカメラ設置があります。『VRChat初心者集会』には集合写真のカメラを置くマーカーがあるので、初心者でも困りにくいんです。逆に、マーカーがない場所ではカメラの設置に戸惑う方は一定数います。あと「写真をハッシュタグつきで投稿する」も慣れないと難しそうです。

anatawa12

「人がいる方向を見ると重くてつらい」と訴えたり、傍目から見てカクついていて重そうな人も多いですよね。最近の『VRChat』ではいろいろな設定で負荷軽減できますけど、その方法を初心者さんは知らないことが多いです。「軽くできること」自体知らないので、ただ負荷が高いことに途方に暮れている印象です。

応急処置として「壁を見て!」ととりあえず伝えたりするのはあるあるです。

みかんるい

さきほどライルさんが挙げた「話し声が途切れる」も、原因を切り分けていくと「負荷が重かったせいでそもそもの動作がカクついていた」なんてこともありますからね。

初心者もまた、同じ『VRChat』ユーザー

――『バチャマガ』の読者は、多くが『VRChat』に暮らす人々です。そして、『VRChat』で過ごしていると、おそらく何度か初心者と遭遇する機会があります。中には、困っている様子の方もいるかもしれません。そんな初心者の方に、現役『VRChat』ユーザーはどんなことをするのがよいのでしょうか? 初心者に接触してきた経験の長いみなさまの見解をお聞かせください。

anatawa12

そもそも、初心者かどうかは、『VRChat初心者集会』の外では特別意識はしていないですね。フレンドだったらフレンドとして接するでしょうし。

ライル

初心者系のイベント以外の場であれば、そこにいるのは同じ『VRChat』ユーザーですし、交流したい人がいるならば交流するスタンスで問題ないと思います。

そもそも、輪になって話しているとき、後から入ってきた人に気づいたら、輪を少し崩して入りやすいように調整しますよね。初心者の人だろうと、同じように接するのが自然。

みかんるい

操作方法や設定を付きっきりで教えないといけない状況も、お互いに良くはないことがありますからね。初心者でなくたって、操作や設定について教えて解決するならば、普通に教えますし。

ライル

慣れている人ですら「これどうするんだっけ」となる世界ですから。

みかんるい

誰かしらスタッフのいるイベントであれこれ教えたり出しゃばったりするのも、ちょっとよくないですし。

――そもそも「初心者であること」に振り回されることもよくないのですね。

ライル

多くの場合、『VRChat』については初心者でも、人生やコミュニケーションの初心者ではないですから。他人に気を遣ってあげて、あいさつをして、相槌を打つ、ごく普通のコミュニケーションをしていれば、大丈夫です。相槌は特に重要だと思いますけどね。

みかんるい

表情が伝わりにくいぶん、リアクションが伝わる相槌はたしかに大事ですね。そこは現実のコミュニケーションとちょっと違うところですね。

ライル

それと個人的に、操作方法だけでなく、この世界の文化に関しても、遊んでいれば各々自然とおぼえていくものも多いでしょうし、こちらから積極的に教えるのもなんか違います。もちろん、向こうから話題に出されれば答えますけど、積極的には伝えなくていい。今日出席してもらってるスタッフも、同じスタンスだと思います。

――初心者の人を支えてあげたい気持ちが強くなりすぎることで、操作方法や文化などを、ついつい多めに教えてしまう人もいそうです。いろいろと教えられすぎると、それだけで疲れてしまうこともあるでしょうし、適度な距離感で支えていくこともまた大切かもしれませんね。

ライル

これが正解でもなく、人やイベントごとによると思います!

新たな初心者向けイベントと、『VRChat初心者集会』の今後

――先ほども話題に挙がりましたが、『VRChat初心者集会』以外にもライルさんは新しいイベント『VRC初心者の待合所』をスタートしています。これはなぜ開催しようと思ったのでしょうか?

ライル

トラストランクの上がり方が早まったこともあり、一ヶ月に一回開催だと、時期によっては始めたばかりの初心者を『VRChat初心者集会』では拾いきれなくなりました。なので一週間に一回、それも参加条件を「Visitor、News User、およびUserになってから一週間以内の人」として開催することで、常連を作らず身内感を出さない初心者向けイベントをつくろうと考えたんです。

そんな場で、同じ時期に始めた人で集まり、フレンドになって仲間を見つけてもらうのが、『VRC初心者の待合所』の目的です。そのうえで、月に1回開催し、縦のつながりを重視している『VRChat初心者集会』にも来てくれたらいいなぁと考えています。ちなみに、イベント後にはアフターとして1時間後、私の趣味のワールド巡りも行います。綺麗なワールドをいっぱい知ってほしいですからね!

――イベントを開始してみてから、狙った効果は出ていますか?

ライル

イベント開催後も、同じ時期に始めた人たちが固まって動いていることが、フレンドロケーションから確認できており、「よしよし」と思いながら見ています。また、週一回開催にしたことで、毎日開催されている初心者向けイベントのひとつになれているはずです。行きやすいイベントが増えたことに、初心者さんが喜んでくれていたらうれしいですね。

――少し未来のお話になりますが、ライルさんは今後『VRChat初心者集会』をどう運営・発展させていきたいですか?

ライル

縦のつながりを強くしていきたいですね。すでにあるコミュニティと『VRChat初心者集会』をつなげて、流動的なコミュニティ形成ができるとよいなと考えています。

特に、イベントを主催されている方などに『VRChat初心者集会』に来ていただいて、自分のイベントを紹介いただけるとうれしいですね。初心者さんにはイベントを知った上で、交流を通して心理的にイベントへ行きやすくなると思いますから。こちらから営業をかけるほどではないと思っていますが、もしお時間が合えばぜひ『VRChat初心者集会』にご参加いただければと思います!

――この記事がそのお手伝いになれれば幸いです。本日はありがとうございました!

BOOTHコラボイベントが開催!

7月12日(金)、『VRChat初心者集会』と『BOOTH』のコラボ集会が開催されます! 開催時間は21時〜23時(入退室自由)。参加するには、ライルさんへ事前にフレンド申請の上で、時間になったらライルさんのいる会場へ入場(Join)してください。

参加対象者は、『VRChat』の初心者のほか、初心者の引率の方、初心者と交流したい方。コラボ回ならではの企画として、『BOOTH』公式ワールド“BOOTH Cafe”などのツアーが予定されています。“BOOTH Cafe”制作関係者も参加予定なので、いろいろなお話が聞けるかも……? この記事を読んで『VRChat初心者集会』に興味を持った初心者の方も、そうでない方も、奮ってご参加ください!

取材・執筆担当
浅田カズラ

フリーライター・編集者
浅田カズラ(@asada_kadura_vb

xR、VTuber、ソーシャルVRなどを軸に取材・執筆を行うライター。バーチャルライフマガジンもふくめ、さまざまな媒体で活動中。

投稿者プロフィール

BOOTH
BOOTH
BOOTHの3Dモデルカテゴリが、ますます盛り上がっています!

これまでBOOTHは、ギフト機能やスキリストの追加、『VRChat』との連携、BOOTH HouseやBOOTH Cafeの企画制作など、たくさんのことに取り組んできました。

『バーチャルライフマガジン』でのインタビューや特集記事を通じて、3Dクリエイターの皆さんの活動を応援していきます。一緒にもっと楽しいバーチャルライフを作りましょう!