人気イベントの裏側を覗いてみよう!VR接客のためのワールドクリエイト『Club Sara’sBuddy』

人と人との交流がメインコンテンツとも言えるメタバース。

RPGやアドベンチャーゲームとは違い、メタバースではワールドの設計も従来のゲームとは異なった“交流メイン”の導線や設計が求められます。

そうした中、隔週水曜日23時、VRChatで開催されている高級クラブ風ユーザーイベント『Club Saras Buddy』では、メタバースでの接客をより快適に行えるよう、独自に開発されたワールドギミックが導入されているそうです。

現実の空間とは異なる、VRならではのワールド設計技術をイベント主催のさらさん、ワールド製作のみきねるさんにお話伺いました。

さらさん(@sara_azura)
ユーザー主体の高級クラブ風イベント『Club Saras Buddy』の主催・運営。
“気になったものはやりたくなる”がモットーの明るくて気さくなタイプ。

みきねるさん(@kemmimilk)
3Dモデリングからソフトウェア開発まで幅広く手掛けているUnityエンジニア兼VRChatユーザー。
BOOTH:https://nmxi.booth.pm/

リクエストインバイト少数招待の高級イベント


『Club Saras Buddy』は、接客をメインとしたユーザーイベントです。

遊びに来る客、接客を行うスタッフどちらともVRChatを遊ぶユーザーですが、集会イベントと異なり“客”対“スタッフ”の役割が明確に分かれていることが特徴です。

ワールドの作りもそういった観点から、スタッフと客のポジションが明確に分かるような設計がされています。

来場者に圧迫感を抱かせない注意事項


ワールドに入り、一番最初に目にするのは注意書きが記載された看板です。

こちらにはイベントのルールと参加の際の諸注意が記載されています。
この看板の説明書きの横にある同意ボタンを押すと、正面のエレベーターが開き、店舗内に進むことが出来るという仕組みです。


単なる注意事項の看板にとどまらず、エレベーターのギミックが作動するギミックボタンとしての役割を兼ね備えているこちらの看板。

こうした工夫を取り入れることで、来場者に圧迫感を抱かせること無く注意書きを読んでもらうことが出来ます。それと同時にアミューズメント体験も提供でき、ワールドの雰囲気を壊さずに来場者を誘導することが可能です。

エレベーターの中にもインタラクティブなギミックが仕組まれています。

高層ビルの最上階にあるという設定の『Club Saras Buddy』

エレベーター内には33階のボタンに判定があり、ボタンを押すとエレベーターのパネルの数字が動き始めます。

入り口の案内板がある空間と実際に接客が行われる空間は地続きにはなっておらず、実際には別々の独立した空間になっています。

この2つの独立した空間を繋いでいるのがこのエレベーターギミックの役割です。
途中で暗転を挟むことでテレポートしたことを感じさせず、シームレスに空間が続いているように演出させています。

テレポートしてエレベーターが開くとキャストが出迎えてくれる、というサプライズが。

エレベーターのギミックは場の繋ぎの他に、来場者に『ここから何が始まるのかな』と期待感を抱かせる心理効果を抱かせることが出来るそうです。

限られたスペースでストーリー性のある空間演出

店内の導線についても来場者の期待を膨らませる導線が引かれています。

いきなり店内に繋がるのではなく、室内庭園風の廊下を歩いて入店、というワンクッション置いた設計になっているのは高層ビルのラグジュアリー感を出したかった為、と語るみきねるさん。

直線の廊下の視線の先には店のロゴマークが視界に入るようにデザインされています。
みきねるさん曰く、ここが一番のお気に入りスポットなのだとか。

先程の室内庭園風の廊下を抜けて店内に入ると、目の前に高層ビルが立ち並ぶ夜景が広がります。

先程の狭い廊下から一気に景観が広がり、場面の変化を演出。

こうした視覚効果を活用することで、限られた空間内でストーリー性のある空間演出を行っています。

心地よい会話を楽しむための独自の音響システム

▲デバック用の数値を表示した店内

接客イベントに一番需要なポイントは“いかに心地よい会話を提供できるか”という点。
プライベートな会話もできるような心地よい空間デザインは接客イベントには欠かせません。

こうした事から『Club Saras Buddyでは独自の音響システムを開発・導入しています。


店内は席ごとに音響がグループ分けされていて、それぞれの席でどれくらいの声の距離減衰を図るか緻密に計算されています。

視覚的にはすぐ隣で別の客が別のキャストに接客されている様子が見えるので、見た目のにぎやかさを演出しつつ、周りの会話はうっすらとしか聞こえないように設定されているため、キャストとの会話に集中できるという仕組みです。

つまり現実では物理的に空間を分けないと音の減衰ができないところを、VR空間ではシステムにより音響管理が可能という訳です。

これによりワールドのデザインと音響管理が別々でデザインできるので、ワールドのビジュアルを自由に作ることが出来ます。

▲音響のテストワールド

こちらの音響ギミックは現在BOOTHで販売されています。

みきねるさん曰く、こちらの音響ギミックは音楽ライブのワールドやクラブイベントなどにも活用できるそうです。

キャストの接客の効率化を図るシステムも


先程までの設計は主に来客側に寄り添ったシステムでしたが、『Club Saras Buddyではキャスト側の接客をスムーズにするためのシステムも導入されています。

カウンター裏手側にはキャストが操作できるパネルが用意されており、接客を行いながら店内管理ができるようになっています。


店内の小物のオンオフ、ライティング設定、誰がどの席を案内したかなどの確認が視覚的に分かりやすくされているため、口頭での業務連絡よりも的確に店内の様子が確認できます。

こうしたギミックにより、大勢いるキャスト同士での連絡コストの負担を軽減することが可能です。


もちろんこれらのシステムは客側には一切見えないようになっています。

来店してくれたユーザーにいかに快適に過ごしてもらうかという点はよく考察される点ですが、VRChatの接客イベントは趣味ベースで活動しているものが殆どなので、キャストがいかに楽しめるかについても考慮する必要があります。

こうしたシステムは、キャストがキャストとして楽しめるような細かな配慮として導入されています。

VRイベントには技術者と接客者の連携が大切

その他にも『Club Saras Buddyでは、独自開発した“色が変わるカクテルギミック”をBarカウンターに導入するなど、VRならではのエンタメ演出でイベントを盛り上げています。

店長のさらさんは『心地よいイベントを作るためには接客スキルも勿論大切ですが、技術を開発するスタッフとの連携も大事です。どちらが欠けてもイベントは回りません。お互いにアイデアを出し合いながらよりよいイベント運営をしていきたいです。』と語っています。

『Club Sara’sBuddy』
Twitter https://twitter.com/SarasBuddy