目次
VR演劇、ここに集結!
読者の皆様はシェイクスピアの『マクベス』が以前VRChatの中で演じられたことをご存知でしょうか?
世を見渡せば「メタバース」「VR文化」とひとくくりに語られてしまいがちではありますが、文化とはそんなに単純なものではありません! そこにはあらゆる現実の文化をVRの中で実現しようと果敢に挑む人たちが存在するのです。
技術的な壁だけでも少し考えてみれば様々な問題が思い浮かびます。しかしながらスポーツや学術など幅広い領域で、「VRで試してみた」と一言では片付けられないレベルへと進化が続いています── 『マクベス』公演もそのひとつと言えるでしょう。
その『マクベス』を主催したぬこぽつさんが、ちょうど一年の時を経て『メタシアター演劇祭』を開催します!! 2023年11月23日~26日の4日間にわたり、たくさんの出演者が様々な演目で舞台を彩ります。
公演に向けて目下着々と稽古・準備が進められています。『メタシアター演劇祭』ではリアルな観劇の雰囲気を味わえる客席付きの劇場ワールドが制作されている他、ヨーロッパ風の街並みの中に出演者や「リアルの場で活躍する団体」の紹介ブースが立ち並ぶ出展ワールドも同時並行で公開される予定です。
出演者募集中! 近日説明会を開催
演劇だけにとどまらず、ダンス、演舞、お笑いライブまでジャンルは問いません。ぜひメタシアター演劇際公式サイトへアクセス、またはメタシアターDiscordサーバへご参加を!!
「興味はあるけどどうしたらいいの?」 とお悩みの方のために、いま進められている準備や稽古の様子を紹介します。また、参加する上で具体的に気になることを直接ぬこぽつさんへ伺ってきました!!
更に、これから参加を希望される方々へ向けて説明会も企画されています! 少しでも興味をお持ちならばぜひとも参加して疑問点を解消しちゃいましょう!
『メタシアター演劇祭』 出演希望者向け説明会
説明会日時: 2023年9月29日 22時より
参加方法 : 『メタシアター』VRChatグループへ加入し 当日インスタンスへ参加
2023年9月26日追記: 説明会・内覧会へのX(Twitter)告知
練習風景を覗いてみよう
Discordで演者を募集し結成!
『メタシアター演劇祭』への参加を予定しているmaropi工房さんの練習会へお邪魔しました。「チョイス」と題するコメディ演目で、なんとオリジナルとのこと!! 練習会は『メタシアター演劇祭』で実際に使用される劇場ワールドの中で行われました。
「maropi工房」のmaropiです。よろしくお願いします。
VR演劇『マクベス』でのドナルベイン役が、私にとってはじめての演技経験となります。リアルでの演技経験はありませんので、本当に全てがはじめての経験でした。
maropi工房のメンバーは、私を含めてVR演劇経験者が2名、そしてリアル演劇経験者が3名という構成です。実のところ「maropi工房」としては初の舞台となります。
団体として初ということは、メンバーの皆さんとの関わりも今回が初になるのでしょうか?
実は今日(※)が私達の最初の練習会だったりします。メンバーのみなさんとは、一度顔合わせを済ませてはいるのですが、ここからがスタートというところですね。
(※取材は2023年9月19日に実施)
今回のためにメンバーを募集したんですね!?
『メタシアター演劇祭』のDiscordには、興味を持たれた方がたくさん参加しています。演者を募集できるチャンネルがありますので、そこで公募し参加して頂きました。
実際に確定したのは8月の終わり頃だったと思います。
ワンワードゲームで「VR遅延」と「個性」を見極めよう!
さっそく練習がはじまりました。ワンワードゲームというルールで、ひとりずつ順番に「ひとこと」を発しながら即興でお話を紡いでいくというものです。ここでは厳密なストーリーにこだわることなく、テンポよくワードを繋げていくことを中心に進められました。
取材の私も混ぜていただき一緒に挑んでみましたが、きちんとしたストーリーにしなければ!と考えすぎるとすぐにはワードが出てきません。特に明確な終わりは定められておらず、何周かワードを繋げたところで終了となりました。
直接的な演技の練習ではありませんが、リアル演劇経験者の皆さんはVRそのものにまだ不慣れだったりします。他の演者のセリフを受けて適切なタイミングでセリフを返すためには、VRChat独特のラグなどといった環境に慣れていく必要があると考えました。
私達はお互いをまだ詳しく知りませんので、即興で言葉を出していくワンワードゲームを通して、その人のちょっとした側面にも触れられたらとも思います。
私は「ストーリーをうまく繋げなければ!」と固く考えてしまいがちでしたが、皆さんは敢えて変わったワードを出して場を乱してみたり、うまく文章として落とし込むワードを選んだり、それぞれ特徴が出て楽しかったです!
短時間でしたが頭も使いますし個性も見える。効果的な練習だと思います。
『演劇祭』なら全てを企画しなくても大丈夫!?
その後は二人一組で「ミラーリング」を行ったり、即興劇を試してみたりと練習が続けられました。アバターという仮想空間で表現される印象と、演者としての個性やクセとを、互いに少しずつぶつけ合いながら理解を深めていきます。
「maropi工房」として『演劇祭』に参加しようと思ったのはなぜですか?
『マクベス』の後もVR演劇を続けていました。何度か挑むうちに、今度は自分で脚本や企画もやってみたいと思うようになったんです。
ちょうど書いてみたい脚本が見えてきたところで『演劇祭』の話が出てきましたので、良いチャンスだと思い参加しました。
ものすごいチャレンジ精神ですね!?
演技だけではなく団体として企画し、脚本まで挑まれるとなるとかなり大変じゃないかと思います。
『メタシアター演劇祭』は、そこにうってつけのイベントだと思います。
何か舞台に立ってやってみたいと考えても、企画したり広報したり場所を用意したりってことまで準備するのは難しい!!って思いますよね。
そのあたりの大変な要素は『演劇祭』がまとめてやってくれるワケです。つまり私達はあくまでも舞台に関することへ集中して進めていけます。人を集める場はDiscordがありますし、広報はぬこぽつさん達が奔走してくださってますし、演技をするためのワールドといった場もそのまま使えちゃうので、利用しない手はないと思いますよ。
とにかく舞台に立ってみたい! 舞台という場を使いたい! ということなら大チャンスってことですね!?
私は演劇に詳しくないのですが、今からだと練習期間に余裕はあるのでしょうか?
私達で言うならば、9月中は今日のようなレクリエーション的なものを週1回程度で行います。10月からは週3回ほどに増やし、脚本を使ったシーン練習を繰り返すことになると考えています。
幸いにしてリアルにしろVRにしろ、少なからず演劇の経験がある方々に集まって頂けましたので、この計画で無理はないと思っています。これから参加を検討される方々でもまだまだ間に合うと思います!
ありがとうございました!
公演を楽しみにしています!!
実際にどうやってVRで演技を進めるの?
いざ「VR演劇」に興味を持ったとしても、実際にどうやって実現するのでしょうか?参加団体の視点になって、ぬこぽつさんへ色々と聞いてみました!
劇場ワールドでできることは?
本日はよろしくお願いします!
「もし自分がメタシアター演劇祭に参加するとしたら?」という視点で、お話を伺いたいと思います。
まず素直に気になるのですが、演技ってどこでやるんでしょうか?
『メタシアター演劇祭』では、VRChatの中でアバターを使って実際に演技を行える劇場ワールドを用意しています。
私達が制作したのは、演技をする人たちだけでなく、観客や裏方も同じワールドの中で実際に参加するという場です。昔ながらの劇場をイメージしたワールドは、大・中・小の3サイズを取り揃えました。
観客席も裏方も舞台の一部!
観客席もしっかり作られているんですね……
お客さんが実際にインスタンスへ入ってきて、ここに座っているという状況で演技をすることになるんでしょうか?
そうです。客席数は劇場によって異なります。小劇場は最大30名、スタンダードな中劇場は40名、そして大劇場は60名を予定しています。
負荷対策の為に観賞用のアバターを用意しますので、そちらに着替えていただいて着席での観劇となります。
お客さんの目線があると思うと…… これは臨場感がありますね!!
そういえばここからスポットライトや幕が見えますが、こうした舞台装置は固定なのでしょうか? 実際の舞台だと、暗くしてみたり、幕を下ろしたりってことがありますよね。
様々な裏方の機能を実装しています。
照明だけでも、舞台中央を集中して照らすスポットライトや、客席も含めて全体を照らすホールライトなどがあります。幕の上げ下げや、場面転換のために暗転させるといった機能も、裏方のための部屋にまとめてあるんです。
舞台だけではなく、客席を含めた劇場全体の様子を確認しながら操作できるモニター画面も付けています。しっかりと打ち合わせてあれば、効果的な演出ができるはずです。
ワールドの中で実際に裏方作業をするんですね!
実際の操作方法を見てみたいのですが……
裏方操作は同じような機能をひとつにまとめています。
どのライトのオンオフを操作するのかも、できるだけシンプルに把握できるようにしました。大・中・小の劇場で少しずつ機能に差がありますが、だいたい同じような感覚で使えるようになっていると思います。
裏方の操作人員を確保しよう
VRChatへログインして、同じワールドの中でアバターを動かし、裏方さんもこうしたギミックを公演中に操作してるってことですよね。
もっとドライな方法かと思っていたんですが、これは裏方も舞台へ取り組んでいる感覚があって面白いですね!
……ということはつまり、裏方を担うだけの人員が必要になりますが、そのあたりはどうしたらいいのでしょうか?
仮に私がスポットライトを活用するタイプのピン芸人だったとしたら……
見ていただいた通り、各劇場に設置されているギミックにはワールドの中で操作する人が必要です。照明のスイッチや各種の演出などですね。
これらの裏方操作を担当する人員については基本的に出演団体でご用意いただくかたちとなります。つまり、このままだとトラスクさんはスポットライトの当たらないピン芸人として舞台に立つことになっちゃいますが、人を集めるのが難しい場合などはご相談ください。
完全にソロは厳しいか……!?
先にスポットライトを付けておいたり、創意工夫で乗り切りたいと思います。相談も可能ということですので、諦めずに模索できそうです。
ただ…… 大きな劇団さんだと大変そうですよね。
いくらVRとはいえ、大サイズの劇場だと場面転換で移動だけでも大変なんじゃ?と思ったりします。
VRだからこそ可能な「大舞台」を使いこなそう!
大サイズの劇場は国技館のような360度展開型の舞台となっています。
舞台の面積も、観客の収容人数もかなり大きいです。この劇場では「舞台袖」にあたる道が5つもありますので、確かに演技する人たちにとっては大変かもしれません。
そこで私達はVR空間だからこそできる工夫を実装し、出演される方々の利便性を確保しました。
舞台袖と裏方部屋は直接繋がっています。どの舞台袖からも裏方部屋へは同じ位置へ一瞬で戻れます。
そして、裏方部屋からは番号の付いた道に触れれば一瞬で対応する舞台袖へ戻れるようになっているんです。
つまり、1番の舞台袖に下がった演者が、一瞬にして反対側の舞台袖から登場するなんてことが実現できます。舞台袖にも裏方部屋にも番号を表示してありますので、しっかりと計画すれば迷うこともないかと思います。
こんなことまでできるんですね!!
お話を伺うまでは、ただ舞台の上に立ってアバターを動かすことしかできないかと思っていましたが、ここまで作り込まれていれば色んな表現に挑めそうです。
本番はどうやって進行するの?
劇場ワールドでできることが見えてきたおかげで「私のやりたいこと」も具体的に構想できるような気がしてきました。
ですが、本番までどのように進めていけばいいのか悩んでしまいます。
日程は2023年11月の23日~26日の4日間ですが、このどこかに公演時間が割り当てられるのでしょうか?
申込みフォームに「出演を希望する日程」を記載する項目を備えています。申込みをされたら、私達のDiscordサーバーへご参加ください。
詳しい時間などについては、他の出演団体や各劇場のスケジュールを見ながら決定させていただきます。
先程も少し伺いましたが、演目ひとつひとつインスタンスが立てられるという形で間違いないでしょうか?
そういうことになります。各劇場のワールドから、出演団体でインスタンスを作成していただき、そこで開催するという流れです。
観客が入るためのJoin先などは出演団体の方で任意に決めてください!
実際の劇場だと開演時間前にお客さんへの説明や前座があったりしますよね?
そうしたことも自分たちで行うことになるんでしょうか?
『マクベス』の時には、入口でお客さんに軽量アバターへ着替えてもらうなんて流れがあったと聞いています。
インスタンスを作成した後の流れも出演団体で自由に決定していただければと思います。軽量化アバターは各劇場に設置しますので、観賞用に着替えていただくことにはなるかもしれません。
申込みから本番までの進め方
どうやって舞台を運営していけば良いのか、だんだんと見えてきました!
実際に本番と同じ環境で練習してみたいと考えるだろうと思うのですが、練習でお借りすることは可能でしょうか?
可能です!
出演をお申し込みいただいた団体ごとにインスタンスURLを発行してお渡ししますので、最初から劇場で稽古していただけます。
申し込んだ後は様々な疑問が出てくると思います。
相談をする機会もたくさんあると思うのですが、どのような体制で進められていくのでしょうか?
正式な申込みフォームは用意していますが、申込みを行う前であってもDiscordへの参加は可能ですので、ぜひご参加ください。様々なやりとりは私達のDiscord上で行っていますので、ご不明な点があればサポートいたします。
わかりました!
劇場ワールドの仕様や機能、劇全体の運び方、運営体制とのやりとりなど、かなり細かく見えてきたので「これならやれそうだ!」と思えてきました。
実際に申し込もうとお考えの方はもっと細かいことが気になるはずですので、Discordへ参加してどんどん聞いていくのが良さそうですね。
出演を考えている方々へ向けて、何か注意点などがあればお願いします。
出演の応募は10月中に締め切る予定としています。
なるべく早めのお申し込みをお願いします。お待ちしています!!
『メタシアター演劇祭』へ込めた思い
「舞台」だけじゃない!? 出展ワールドを併設
『演劇祭』ではパフォーマンスの他に、展示物が立ち並ぶ専用のワールドを準備していると伺いました。こちらは舞台で出演される方々の情報が載るのでしょうか?
劇場とは別に『出展ワールド』も制作しています。
こちらは出演者に限らず展示可能としております。もちろん自分たちの演目情報や、パンフレット的な掲示物を並べていただくことも可能です。
今回の『演劇祭』とは直接的に関係ないイベントの告知や、ジャンル的になかなか展示の機会を得がたい学術系の告知などもお声がけいただいており、むしろ私達の狙いとしては大歓迎です。
『演劇祭』に参加してなくても出展はできるんですね!
「リアル演劇しか知らないなんてもったいない!」という想いがあります。出展ブースという形で門戸を広げて、リアル演劇の人たちにもVR演劇へ目を向けてもらおうというのが狙いです。実際に、いくつかの「リアル劇団」へ声を掛けて出展への誘致に走り回っています。
いきなりVRヘッドセットを使うところからとなると、確かに色々な壁が立ちはだかりますね。リアル演劇もVR演劇もまったく別々の文化ではないはずですが、言われてみればそれらが交わる場というのはあまり思いつかない気がします。
私はVR文化を俯瞰したとき、VR演劇はまだまだ活動がバラバラで独立してしまっていると感じています。自分たちだけで実行するというのは大切なことですが、やはり非効率な面は拭いきれませんし、文化として育ちにくいと思います。
VR演劇に関わるクリエイターが力を合わせられる場をつくり、更にそのうねりの中でクリエイターを支援できる体制を模索したかったんです。マーケット型の出展ワールドを用意しようと思ったのも、そうした理由からでした。
出展ワールドへの参加方法は?
「出展ワールド」が存在する意義がよくわかりました!
もし展示をお願いしたいとなったら、どのように申し込めば良いのでしょうか?
直接、私達のDiscordサーバーへお越しください!!
出演者のように申し込みフォームは用意していません。VRChatに慣れている私たちならともかく、そもそもVRへ出展するというだけでもイメージしにくいはずですので、ひとつひとつ対応させていただきます。
本日は様々ありがとうございました!
最後になりますが、VR演劇と『メタシアター演劇祭』への思いとして、演劇に関わる人達へ向けてメッセージをお願いします。
おそらく世界初のバーチャル上で開催される演劇祭となります。パフォーマーのためのお祭りです。
VRChatの秋の風物詩といったらこれだよね! と言われるような、そんな親しみのあるお祭りにしていきたいと思いますので、一緒に作っていきましょう!
ご参加お待ちしています!
既に「落語」「漫才」「ライブ」といった演劇以外のジャンルも予定されている『メタシアター演劇祭』は、2023年11月23~26日に開催予定です。
開催に向け出演者募集中!! ご不明な点はDiscordへお問い合わせ、または説明会へぜひご参加ください。
説明会は2023年9月29日22時より『メタシアター』VRChatグループでのインスタンスにて参加可能、出演募集は10月中旬頃までの受付となります。
投稿者プロフィール
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全然生活なりたってない人です
記事中でTrasque本人が使用しているアバターは
以下に権利表記を示すとともに、直接使用許諾の確認を頂いております
・『ナユ』『プラチナ』:有坂みと 様
・『キプフェル』:もち山金魚 様
・『ヌノスプ』:©トノダショップ 様
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