2020年5月30日---
VR空間上に突如として現れた2人組アーティストがVRChatユーザーを騒然とさせた。
『解釈不一致』
“”技術で音楽をハックする“”と謳う2人組ユニット『memex』が魅せたVRの新しい音楽ライブの様子をレポートする。
目次
存在・演出・音声を同時に複数の空間に配信可能なVRライブシステム「Omnipresence Live」
1つのステージに観客が集まり、同じ空間内で音楽の一体感を楽しむ…。
“ライブ”と言うとおおむね上記のイメージが主なのではないだろうか。
そしてその『一体となれる人数』はライブハウスの大きさによって増減する。
路地裏の小さなライブハウスであればキャパは100人程度、武道館であれば1万4000人の観客が同じ空間内で音楽を共有できる訳だ。
1万4000人が多いか少ないかはさておき、物理的空間を使う以上どうしても『人数』を収容できる上限には限界がある。インターネット回線の課題を抱えるVR空間では尚更であり、VRChatで言えば現在の技術で人が同空間に集まれるのはせいぜい40~50人が限界である。
しかし『存在・空間』が複数存在したならば…?
存在・演出・音声を同時に複数の空間に配信可能なVRライブシステム「Omnipresence Live」を駆使した77万人に配信可能なリアルタイムVRライブの一部始終の様子を以下よりご覧いただきたい。
人数無制限・全世界同時VRライブ『♯解釈不一致』
2020年5月30日15時
何もない空間に突然『-memex、始めます-』というボーカルのアラン氏の掛け声が響き、空虚なpublicワールド(※1)が一気にサイバー感あふれる光に包まれた。
(※1 publicワールド…誰でも入場可能な開かれたワールド)
と同時に中央に現れた2人のアーティスト、左が作曲兼今回のVRライブシステム「Omnipresence Live」を開発したぴぼ氏、右で可憐に歌っているのがボーカルのアラン氏である。
開幕と同時にぴぼ氏とアラン氏のタッグで結成している音楽ユニット『memex』のオリジナル楽曲である『Phantom Destination』を生演奏・生歌で披露。
空間内には#解釈不一致のタグでツイートされたコメントが表示され、他の空間に居る観客の声が視覚的に見れるギミックが実装されている。
並行空間がコメントによって繋がれる事で、ライブの一体感が演出されており、生演奏・生歌と相まってライブの空間を再現していた。
『Phantom Destination』の演奏が終わるとぴぼ氏とアラン氏のMCが入り、ハッシュタグのコメントを読み上げ、来場者に感謝の意を述べていた。
ニコニコ実況やyoutubeライブなどの映像配信ライブでも配信者がコメントに返答をするのは一般的であるが、VR空間で目の前に存在している相手に言葉を掛けられるのはやはり臨場感が格段に違う。
ライブ空間の熱、そしてアーティストの体温まで感じられそうな距離で音楽やMCを聴ける事は他の配信プラットフォームでは味わえない感覚である。
ぴぼ氏がMCで語っていたが、空間内にあるいオブジェクトはいくつか観客が持てるようになっており、ぴぼ氏、アラン氏自身もオブジェクトとして観客が好きな位置に配置することが可能になっている。
観客側は好きな場所に自分だけのオリジナルのステージを組み立てることが出来るのだ。
こちらもVRならではのギミックで非常に面白い。
その後も『memex』は途中MCを挟みつつオリジナル楽曲を数曲生演奏で歌い上げた。
楽曲とともに空間の色や景色がガラッと変わり、仮想空間でしか出来ない映像演出を交えライブを盛り上げていた。
最後の楽曲『Cloud Identifier』の演奏が終わると同時に『memex』はパッと姿を消し、再び空間は空虚に静まり返ったものと化した……
まるで幻を見ていたかのような感覚に襲われた筆者であったが、誰もいない会場にはわずかに彼らが振り撒いた熱気のようなものが残っているように感じられたーーー
まるでVR界のバンクシーのように颯爽と現れ消えていった『memex』
次に彼らに会えるのはいつだろうか。
また近いうち、更にパワーアップした彼らに会えることを信じてこの文章を締めさせていただく。
Omnipresence Liveの技術について
今回のライブで使われた『Omnipresence Live』システム。
こちらは複数の空間上に同時に音声やVR映像を配信する技術となっている。
つまり多数の平行空間それぞれにアーティストの姿・声、そして空間の演出が再現されるシステムであり、複数のライブハウス(ワールド)に同時にアーティストがVRで存在することにより、観客のキャパ上限を気にすることなくライブが再現できるのである。
仕組みとしてはVRライブの構成情報を映像に変換→配信映像から情報を復元して、アーティストの動きやライブ音声、演奏情報に合わせた演出を再生するといった手順を踏んでいる。
現状、アバターの全頂点情報を配信するために必要な情報量を現状の映像配信サービスで安定して配信 / 視聴することが難しいため、アーティストの姿はノイズを含む状態になっているが、今後の開発により、質を損なわず同時にmac, iOS, Androidといった各種OSに映像を提供できる可能性があると述べている。
再生デバイスとしてLookingGlassのような立体ディスプレイを用いることで、VR空間だけでなく物理世界にも立体映像を演出する事が可能で、VRChatのみならずVR・AR問わず様々なプラットフォームでの演出を考えているそうだ。
彼らの活動についての詳細はmemex公式ホームページまたは公式Twitterを参照してほしい。今後の『memex』の活動に注目である。
グッズ販売
今回のライブで披露した楽曲・memexのファングッズなどはBOOTHにて販売中なので気になる方は是非チェックしてほしい。