![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/001_thumb.png)
VRヘッドセットとPCを接続する方式はいくつか存在していますが、その中に『Virtual Desktop』というソフトがあります。Valve公式による無線接続を実現するSteam Linkや、Meta Questを直接接続するQuest Linkに、無線接続のAir Linkなどなど。
実は『Virtual Desktop』は、そのどちらに属するでもないサードパーティのソフトウェアで、対応機種はQuestに限りません。しかも有償の製品なので、それだけを聞けば手を出しにくいと考える方もいるでしょう。
ですが、公式かつ無料であるはずの接続方式ではなく、あえて『Virtual Desktop』を購入する方も少なくありません。製品の安定性や、最新技術の取り込み、幅の広い対応機種といったサードパーティだからこそのフットワークが評価されているのです。
目次
Quest本体だけでフルトラできる??
指+フルトラッキングエミュレートに対応!!
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/002_finger.png)
そんな『Virtual Desktop』ベータ版に『Meta Quest』を対象として“INDEXコントローラエミュレータ”と“フルトラッキングエミュレータ”がやってきました!!
今回のアップデートに関する『Virtual Desktop』公式のアナウンスでは、対応機種が『Quest』と表記されています。
本稿では筆者が所持している『Meta Quest 3』でのみ検証を行っています。
最新の安定版『Virtual Desktop』製品そのものの対応機種には
- Oculus Quest 1, 2, 3, Pro
- Pico Neo 3, Pico 4
- HTC Vive Focus 3, XR Elite
との記載がありますが、本稿で紹介する機能が全て対応可能かを保証するものではありません。予めご了承ください。
簡単に言えば、『Meta Quest 3』本体だけでも、Indexコントローラーのような指の動きを細かく反映させたり、腰をひねるような動きを可能とするフルトラッキングに近い状況を再現できるというわけです。
もちろん、『Vive Tracker』などを使用した本格的なフルトラッキングと比較すると制限は多いのですが、VRChat上のデフォルト動作では味気ないし……でもトラッカーを導入するのはコストがかかるし……とお悩みの方にとっては良い選択肢のひとつとなるはず!
どのくらい「いい感じ」になるの? ということで、早速試してみました!!
あくまでもエミュレータだが「ヒジトラ」が入る!
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/003_questonlysit.png)
検証はVRChatでどのような違いがあるかを見ていきます。
まず『Quest 3』のみを装着し、Air Linkで接続。筆者が立った状態でログインし、床に座ってみると、モデルは上記のような姿となります。実際には普通に座っているのですが、VRChatではそのままだと四つん這いのような見た目になってしまうわけです。
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/004_vdsit.jpg)
次に『Quest 3』のみを装着し、『Virtual Desktop』で接続。同じように筆者が立った状態でログインし、フルトラッキングのキャリブレーションを行います。その後、床に座ってみるとモデルは上記のように三角座りとなりました。
筆者が足を伸ばしてみても、あぐらをかいてみてもこの体勢は変わりません。あくまでも下半身は「それらしい追従」をしてくれるという程度に収まっています。
室内で移動してみると、違和感はあるもののそれっぽい歩行モーションを取ってくれますし、格闘技的な動きをしてみても、ある程度は体重移動を感じられるようなヒザの使い方になってくれます。
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/005_questelbow.png)
ヒジは手首の向きに連動して大きく開いてしまう
今回の実装で最も特徴的なのは「ヒジトラ」が入っていることだと感じました。
上記の写真はフルトラッキングなどの機能を使用せず、手首を180度ひっくり返した時の状況です。
手の甲を外側へ向けていればヒジが下がり、内側へ返すとヒジが上がってしまっています。この時、筆者のリアルは左側のヒジが下がった状態が最も近く、右側の写真ではほぼ直角にヒジの位置がズレてしまっていることになります。
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/006_vdelbow.png)
手首を返してもヒジの位置は変化しない
そして『Virtual Desktop』のフルトラッキングエミュレーションを使用すると、ヒジの位置にも仮想的なトラッカーが設定されるので、手首の角度でヒジの位置が変化しません。
上記の写真はリアルのヒジの位置に忠実で、自然な没入感があります。ちなみに、写真の『VRCボクシング』は腕全体にガード判定があるので、ヒジの位置が変化するとガード判定にも影響があったりします。より格闘技っぽさを求めるなら、ヒジの制御ができると楽しいですよね!
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/007_vdelbow2.png)
物理トラッカーは存在しないので、Quest 3本体のカメラによるものだろうか
しかも、そのままの手の位置でヒジだけを上げることも可能です。手の位置はコントローラーが存在しているのでともかく、ヒジの位置が反映されることに驚きました。物理的なトラッカーがヒジには付いていないので、おそらくはQuest 3前面に備え付けられたカメラでヒジの位置を判断しているのかもしれません。
この点については、Vive Trackerを腰と両足に追加した状態の、よく言われるフルトラッキング状態を超えているので、表現力を求める人にとっては強力なツールとなるでしょう。
(※ヒジの位置にもVive Trackerなどを装着すれば同様のことは実現可能です)
なお、リアルのヒジだけをお腹の前へ大きく入れ込み、反対の腕へ強引に近づけようと思っても、真下へ下げたヒジのモデルはほとんど動きませんでした。あくまでもヒジトラは、仮想的なトラッキングの補助として捉えるのがいいでしょう。
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/008_weist.png)
腰トラのようにも思えるが、実際は両手の位置で身体の向きを追従させている
フルトラッキングにおいては“腰トラ”が大事だったりします。腰トラがあれば、きれいなお辞儀もできますし、身体を捻った表現などの幅が広がるわけです。
『Virtual Desktop』のエミュレーションでは、仮想的な腰トラが存在していますので、通常に比べれば自然な体勢を取ってくれます。しかしながら、ヒジトラと同様に実際のトラッカーが存在する訳では無いので、お辞儀などは難しいかもしれません。
上記の写真はボクシングの半身……“L字ガード”と呼ばれる防御スタイルですが、フルトラッキングが存在しない場合、相手にまっすぐ顔を向けていると、上半身も正面を向いてしまうので不自然な体勢となります。
対してフルトラッキングエミュレーションであれば、かなり自然なL字ガードが可能です。ただし、腰の位置はあくまでも両手の位置に向かって追従するだけなので、顔や手を動かさず、この状態でどんなに腰を動かしてみてもほとんど変化はありません。
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/009_vdelbow3.png)
INDEXコンのエミュレーションだが、あくまでもボタン制御か
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/010_finger2.png)
『Virtual Desktop』に実装されたもうひとつのエミュレーションはINDEXコントローラトラッキング、いわゆる“指トラ”です。『Valve INDEX』のコントローラーは本体に埋め込まれたセンサーが常に指の位置を測っていて、5本の指の微妙な動きをそれぞれ検出できます。対応したアバターであれば、指を使った機微も表現できるわけです。
これに対してQuestコントローラーは、基本的に「ボタンを押したか否か(触れたか否か)」の入力となり、指の動きとしては大雑把なものとなってしまいます。ボタンも数が限られているので、あくまでもどのボタンをどのように押したのかの組み合わせに紐づけて、予め手の形を用意しておくといった実装がメインとなっています。
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/011_finger3.jpg)
Valve INDEXコントローラーエミュレータをオンにすると、ワールドのロード中などで表示される画面内のコントローラーがINDEXコントローラーの形状に変化します。
また、トリガーやグリップボタンの「押し込み具合」を反映した指の動きとなり、微妙な曲がり具合を表現できるようになります。
ただ、ボタン制御で行う関係上、全ての指を個別に制御することはできないようです。
- トリガー:人差し指
- グリップ:中・薬・小指
- ボタン(触れる):親指
筆者が試したQuest 3の環境では、コントローラーが上記のように対応していました。グリップボタンを軽く握れば、中指・薬指・小指の3本がまとまって、微妙に曲がってくれるといった塩梅です。
上記の割り振りのため、色々試してみましたが“ピースサイン”をとることができませんでした。細かい設定によっては可能となるのかもしれませんが、今回の検証では速報ということもあり、ご容赦いただければと思います。
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/013_vdmenu.png)
INDEXコントローラエミュレーションと、フルトラッキングエミュレーションはそれぞれ個別にオンオフを設定できますので、ピースサインなどの制御を崩したくないという場合には、指トラ側だけをオフにすることをオススメします。
ヘッドセット画面から直接『Virtual Desktop』のオプションを開くと
- Emulate SteamVR Vive trackers
- フルトラッキングエミュレーションのオンオフ
- Emulate Index controllers
- INDEXコントローラーエミュレーションのオンオフ
をそれぞれ設定できます。設定は『Steam VR』の再起動を行うことで反映されるのでご注意ください。
割り切り部分を把握できれば強力なツール!
![](https://vr-lifemagazine.com/wp-content/uploads/2024/02/012_elbowglitch.png)
『Virtual Desktop』をすでに購入している方であれば、今回のベータ版を導入すればそのまま今回ご紹介した機能を利用できます。
いわゆるフルトラッキングエミュレーションにあたるソフトウェアは他にも存在していますが、やはり別途で購入する必要があったり、複数のアプリを起動する形となるなど、悩ましい状況だったことも事実。
あくまでもエミュレーションであることから、細かい部分では“割り切り”も必要です。VRChatで使用される多くのアバターは、手首とヒジが独立して制御されることを想定して作られていません。
それでも、トラッカーを購入するコストを比較すれば、『Virtual Desktop』に導入されたトラッキングエミュレーションはかなり強力なツールとなりそうです。
今回は『Quest 3』を使用して、『Virtual Desktop』の新機能を速報的に紹介しました。ぜひ皆さんの環境でも試してみてください!
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本機能の紹介は『Virtual Desktop』バージョン1.30.3ベータ版の時点です。導入には通常のアップデートではなく手動によるインストールが必要となります。詳しくは公式Discordのアナウンスをご参照ください。