身体に縛られず表現できるバーチャルでのダンスの魅力について。VRパフォーマーyoikamiさんインタビュー

ニコニコ動画の“踊ってみた”を筆頭にMMD(ミクミクダンス)などダンス文化はサブカルチャーと根強く発展していますが、その最先端とも言える、バーチャル空間でアバターの姿をまといながらダンスをするパフォーマーがVR空間で活躍しています。

バーチャルの姿になってダンスを踊る、『VRパフォーマー』のyoikamiさんにバーチャルでダンスをしようと思ったキッカケやバーチャルでのダンスの方法、機材についてなどお話を伺いました。

【プロフィール】
yoikami(よいかみ) VRChatを筆頭にVR空間で活動するVRパフォーマー。2018年にVRでダンスを始めてから様々なイベントや大会に出場。2020年8月には日本最大級の踊りのイベント“第23回にっぽんど真ん中祭り”(テレどまつり)に『V踊団 Break Through!』というチーム名で出演し特別賞を受賞しました。

VRでダンスを始めたきっかけについて

ーーーVRでダンスをやろうと思ったキッカケは何ですか?

…とある事でちょっと左側の軽麻痺になってしまい、力が弱かったりペットボトルが持てなかった時があったんですね。

そんな時にyoutubeで『ILL-Abilities(イル・アビリティーズ)』というダンサーの事を知ったんです。
みんな体のどこかが無かったり、動かなかったりするんですが、でもこういう身体だからこそ俺たちはカッコいいんだって踊っている動画を見て、それで『yoikamiもやれるじゃん!』と思ったんです。

それまでダンスなんてやったこと無かったんです。
でも身体が不自由だからこそダンスをするっていうのがめちゃくちゃかっこいいなって。

ダンスを学びに行きたくても身体もこのザマだったんで、完全独学で、家の中で練習し始めたんですけど、家にVR機器があったのでせっかくならVRで踊ってみようって思ったら、もう既にVRの中でダンスをしている海外のコミュニティがあったんですね。

その人たちに『一緒にやろうよ!』って誘われて。世界中のすごいダンサーさんに教えてもらいながら1年2年とやっていたらこうなりました!
VRで全部ダンスを学びましたね。現実で誰かに教えてもらった事もないし。
VRのダンサーさんは殆ど海外の人たちなので言葉も通じないし、全部見て覚えました。

あ、今は体の麻痺はほぼほぼ完治しているんですがね!

VRでダンスを踊るための機材・道具について

ーーーVRでダンスをする際に必要な機材や道具について教えてください。

VR機器はHTC VIVEとVALVE INDEXの2つを持っています。
頭に被ってるHMD(ヘッドマウントディスプレイ)と、両手にコントローラー、そして腰、両足にトラッカーを付けて6点トラッキングで踊っています。

足のトラッカーはシューズの靴紐に、バイクとか自転車にカメラを取り付けるカメラマウント(500円くらい)を靴紐に上手いこと結んで、トラッカーの裏にあるカメラマウントネジ(1/4インチサイズ)で固定してますね。

これでアクロバットしたりバックフリップしたりしてますけど外れたことは一度もないですね。

腰は『タクティカルベルト』と言うのを付けてます。
軍人さんがよくマガジンポーチとか水筒とかを付けているベースとなるやつですね。
伸びたり縮んだりしないですし、バックルなのでカチャンとはめれるんですね。

踊る人は伸縮系のベルトをすると、ジャンプしたりするとトラッカーの重みでブルブル揺れちゃって腰がうにょうにょになっちゃうので固めのベルトでしっかり固定して上げるのが大事だと思います。

汗の吸収も大事!

ヘルメットキャップというものがあって、ダンスでもよく使うんですが…。
タオルを巻くより楽に頭をすっぽり覆うことが出来て、汗を吸ってすぐ揮発してくれるものです。
ジャニーズのアイドルの人がダンスの練習とかでよく被ってたりしますね。

HMDってどうしても汗だくになっちゃう人多いと思うんですよね。でもこれを被ってればヘルメットキャップの方で汗を吸ってくれてすぐ蒸発してくれるのであんまりHMDが汚れずに済みます。
しかも2枚セットで500円くらい!費用もそんなに掛からないのでおススメです。

あとはウェアですね。
Tシャツよりもちゃんとしたスポーツウェア、といっても2000円くらいで買えるので、そういうのを着ないと夏場なんかは汗がバーッと出てしまうので…。
何が怖いかと言うと汗冷えですね。
踊り終わった後にみんなで雑談したりすると思うんですけど、そうすると知らないうちに汗が冷えちゃって体温が急激に下がります。その際にすごく風邪をひきやすかったり、体調不良になってしまったり、次の日の疲れにもつながってしまうので…。
出来るだけ速乾性のあるウェアを着るのがおススメです。

汗をかきやすい体質の人は2枚着で、汗を外に出すインナーウェアと汗を吸って乾かすアウターウェアの2枚を着るといいと思います。

部屋の環境は?

ーーーVRでダンスを踊る際の部屋の環境はどんな感じですか?

yoikamiの部屋の環境はめちゃくちゃ悪いです(笑)
VRでダンス踊れるくらい部屋が広いんだね~、とか、ダンス専用のスタジオでやってるのかな~?ってよく言われますけど、VRを遊ぶスペースの隣にすぐ衣装ケースがあって、その反対側は机があるので、踊れる広さは1.4m×1.3mくらい…両足を広げた広さくらいですかね。

でもこれくらいの広さで踊れちゃうので逆に言うとみんな誰でも踊れるよ!って事です。

HMDのケーブルは天井に吊るしています。
なのでぐるぐる回っても大丈夫!大丈夫ですけどあまりぐるぐる回りすぎるとケーブルがねじれて断線しちゃうので右に2回回ったら今度は左に2回回るとか、考えながら計算して踊っています。上手いこと踊ってる間にそれを悟られない感じで右に1回回ったら『+1』って覚えておいて、左に回ったら『-1』、踊り終わるころには0になっているようにダンスを構成してます。

ロック、ガールズダンス、VRなら現実の身体に縛られずどんな踊りも踊れる!

ーーーVRでダンスをすることの魅力について教えてください!

バーチャルでダンスする事のメリットは、アバターを変えればいくらでも好きな姿になれるので、身体能力に自信が無くても、体のコンプレックスがあったりしても好きなダンスを踊れるところです。

例えば現実だと男性がKawaiiダンスだったり、セクシーなダンスを踊ってると違和感が出てしまう事がありますが、バーチャルのアバターの姿なら容姿や体格関係なく、ダンスに合わせてアバターを変えられるのがいいですね。


実はダンスの歴史もそういった感じで進化していて、最初はオールドスクールっていって、ダンスは生活に余裕があって身体にも恵まれた人が踊る物だったんですけど、それがだんだん誰でも楽しめるようなヒップホップをはじめとしたストリートダンスが生まれて、最近はシャッフルダンスが流行ってるじゃないですか。Tiktokとかで流行ってますよね。
あれが流行った理由っていうのは顔を見せなくてもいい所なんですよ。
なので顔を見せたくない人だとか、顔を見せると誰だかバレちゃうって人でも踊れて、胸から下が映ればシャッフルダンスは出来るし、動画映えするという事で若者に人気になったんです。

こういった感じでダンスはどんどん体のコンプレックス関係なく、恥ずかしくなく誰でも出来るように進化していっているんですね。

さらに今はもうVRに進化して、VRならリアルの身体どこも見せません!
どんな表現だってできるんです!

男性でもガールズダンスが出来ますし、やりたいダンスをやりたいだけ、しかも自分の身体は晒さずに出来るという。本当に最先端のダンススタイルだと思います。

それからアバターでしかできない表現もあるんですよ。
例えばダンス中に顔を伏せて、パッと顔を上げたら目の色が変わってるとか。
モードチェンジみたいでかっこいいですよね!
これだけで一気にバズります(笑)
衣装もダンス中にすぐ変えられますし、ダンスそのものだけじゃない表現も付け加えられるのが面白い所です。

yoikamiさんの最近の活動について

普段はVRChatの中をふらついてストリートパフォーマンスをしたりしているのですが、今年の3月初めにはMSSっていうダンスチームも作って、VRでダンスの楽しさをみんなで共有したり、仲間と一緒にVR上でのいろんなイベントに出演したりしています。

最近では愛知県名古屋市を中心に行われている日本最大級の踊りのイベント“第23回にっぽんど真ん中祭り”(テレどまつり)に『V踊団 Break Through!』というチーム名で出演して特別賞を頂きました。

日本の文化だとダンスを踊るっていうのは恥ずかしいと思ってしまう人もいるかもしれませんが、身体を動かして音に乗って遊ぶだけで自然とダンスになるし、アバターの姿なら恥ずかしさも少ないのでVRを通してダンスと言わずとも音に乗って動くのを楽しいんでくれる人が増えるといいなと思っています。自分の好きに自由な動きを表現するのは楽しいですよ!

取材・文 みつあみやぎこ