VR対談:変身する価値観と環境~VR普及の未来像と現実的な問題について~

前回の記事もご好評いただきありがたい限りです。
今回はVRCやVRに関するnote記事で知られるラックさんとおしゃべりしました!

オーエン

ラックさんは前一週間丸々VR空間で過ごされましたけど、現実ってどう感じますか?バーチャルとどういう存在の違いを感じますか?

ラック

どうだろう、かなり難しい質問なんですよね、抽象的な答えになってしまいますけど「前時代の遺物」程度にしか今は思っていないですね。

オーエン

ほぉ!それは大きく出ますね!そんなに古臭いですか?現実って。

ラック

昔は、それこそSecond lifeとかMMOが流行っていた頃も似たような考え方はあったと思いますけど、基本的には三人称視点の物が多かったんです。
今や手と足を動かし、首が動けば視点も動く、文字通りの一人称視点になりましたからね、ゲームの中に入り込むという表現が適切な状況になったと思いますよ。

ラック

私はSkyrimなんかで有名なTESシリーズが大好きなんですよ、実はVRをやり始めたのもSkyrimVRがやりたいからだったりします。
他にも好きなゲームとしてはminecraftやElonaといったゲームがあるんですけど、全て共通して言える事は「ゲームの世界観に入り込むタイプのゲーム」なんですよね、以前からそういった世界観に浸るゲームが好きなのも、VR技術に入れ込む大きな理由ですね。

オーエン

つまり、お話を聞く限り「現実は古臭い」というよりも「現実は飽きる」という感じでしょうか?
それですとすごくわかりますね、僕も平時のつまらないサラリーマン生活に飽きることは良くありますし、軍師やヒーローになりたい時だってあります。

ラック

飽きるというのはかなり的を得た表現ですね、別に私は現実世界が嫌いという訳ではないですからねぇ。
どうして古臭いなんて言葉を使ったかというと、5年か10年か分かりませんが先の未来、現実と仮想現実で過ごす時間が逆転し始める人が多く出てくるんじゃないかと思っているんですよね。

オーエン

なるほど、僕はVR自体は大衆化するしバーチャルの名義で生きていくことも一般化していくと思っているんですが、実業務中や食事などもVR化するかと言われるとそこまで浸透はしないかなと思います・・・ARで友人と食事するとかはありそうですけどね。

ラック

まさしくその通りで、ARで食事をする方は多くなると私も踏んでいます。
ただ、実験を通して現状問題となっているのはVR機器の着け心地や取り回しの問題だけで、例えばこいつが24時間被っていても疲れないだとか違和感を生じない機器になった時、普段日常で使おうと思う人が多くなると思うんですよね、少なくとも私は被り続けます。

ラック

私は現実世界では自分の部屋があり、当たり前の話かもしれないですけど自分が最もくつろげる環境に作るんですよ、ただ、現実だと物理的な制約も多いですし、限界があります。
これがVRの世界になると何も現実世界を模倣する必要は無くなります、海の底でも宇宙空間でも構わないですし、なんなら物理法則なんて軽く無視する事だって可能です。
現実世界以上に落ち着ける空間が仮想現実で作れたら、そこに入り浸るのは自然だとは思いませんか?

オーエン

全くその通りだと思います、ただ、人間ってそれほど効率的な生き物ではなくて、風情とかそういう感覚的なものを大事にするし、ビジネスにおいては仕草とか細かいやり取りを大事にしている人も多いし、人と仲良くなる場として食事を利用している人も居ると思うんですよね、そういう人からすればVRというのは人との距離を詰めるには手間がかかり過ぎるのではと考えてます。

ラック

確かに、現実世界の細かな情報を拾う上では今のVR技術では力不足だと思いますし、将来的に技術が発達したとしてもどこまで実装できるのかは見通しが立たないですね。
アイトラッキングと呼ばれる目線を追従する機能が注目を集めているのもそういった理由が大きいとも思っています。

オーエン

うーん、僕としてはアイトラッキングに関しても操作性や利用者を見る側からするととても良いと思うんですが、見られている側からするとどのくらい便利な実感があるのかが見えないんですよね・・・
少なくとも僕は、胸の谷間見ているのをバレたくはないwww

ラック

まぁ確かに、生々しさというのは良い事ばかりではない事は間違いありませんし、実装されても使いたいかと言われたらちょっとなと思う所はあります。
ただ、それこそ良い事であり、少し表現が難しいですが現実世界の不要な情報を切り落とす事ができると思っています。
よくVR上で会った人同士は仲良くなるのが異様に早いと聞きますが、まさしくここに原因の一端があると思いますね。

オーエン

なるほど、「現実世界の不要な情報を切り落とす事ができる」のが良いところですか、僕は逆にそこは良くない所だと思うんですよね。(自分の過去をパージできるのは素晴らしい所だと思うのですが。)
TwitterでもVRCでもブロック機能ってあるじゃないですか、あれって便利で自分を守るために良い機能だとは思うんですけど、僕はブロックする度に見えない意見が増えるのが怖いんですよね。結局そういう人が居るっていう事実は消えないですし、それに対応する機会や自分を省みるきっかけを失うってすごく怖いことだと思いませんか?

ラック

ブロックもミュート機能も間違いなく必要な物だと私も思いますが、使いようによりけりだと思っていますね。
「どくさいスイッチ」ってあるじゃないですか、まさしくあれに近い形で、相手の情報の一部や全てを意図的に消してしまう事が可能なんですよね。
ただまぁ、これに関しては使う側の人格の問題であって、要は使い方によっては便利でもあるし、怖いものにもなると思っています。

オーエン

そうですね、使う側の問題だとは思います。
ただ、誰しもが最初からうまく使いこなせるわけでもないですし、不要な情報を正しく選別できるわけでもないと思っていて、それは酸いも甘いも色々な経験と成長を経て身に着けていく事だと考えています。
その考えからすると、多感な時期からブロック機能に慣れることは人間の一番成長する機会を逃してしまう気がして・・・臆病な意見かもしれませんが、一歩前に踏み出せないですね。

ラック

概ね同意見ですね、ただ、私は全くそうは思わないです。
これは生い立ちに関わる話もあるんですが、親よりも周りの人達に教えられる形で私は育ってきたんですよ。
その中にはインターネットやゲームがかなり大きい部分を占めていて、疑問を生じた時は逐一ネットで調べましたし、哲学的な考え方や科学的手法、或いは美学といったものもそこから学んできたと思っています。
奇妙に思えるかもしれませんが、昔の人達が辞典を使って意味を調べたり、文学や書物で物を学んできた事と同じ事をして育ってきた訳です。

ラック

そうなってくると成長の機会が失われてしまうというのは杞憂なんじゃないかなと思えてならないですね。
勿論、現在の価値観に当てはめて考えるのであれば概ね同意なんですけど、意見としては少し古いものになっていくんじゃないかと思います。
古代ギリシアの哲学者は本を恐れたなんて話がありますけど、なんとなくそれに近いものがあるんじゃないかなと。

オーエン

確かに人間の適応力もありますし、何かしらの方法で代替していくとは思いますね。
実際成長に合わせて価値観も変わっていくので、変わったら変わったで何とかなるし、その時には僕は老害化してるかもしれません。
近いと思いますよ、実際ギリシアの哲学者が恐れた通り、文字にしたことによって趣旨が間違って伝わっていたり、勘違いでデマになったりという事例は散見されますからね、結局それでも伝えたいから文字に起こしていて、弊害が有ったときは対策をとっているわけで・・・
良い物悪い物と区別するのではなく、メリットはメリット、デメリットはデメリットと認めて、それぞれに適した行動を取っていくのが良いかなと個人的には思っています。

ラック

そうですね、確かに弊害は間違いなくあるでしょうし、それに対する対策も今後必要になってくる事は間違いありません。
VRも使いようによっては使用者全員の三半規管を狂わせる事もできますし、悪用する手段はいくらでもありますからね。

オーエン

そうですね、でもメリットも絶大です。少なくとも僕はバーチャルというレイヤーに夢と希望を感じてますね。

ラック

大変夢ある世界であるとは思いますね、繰り返しになりますけど、現実ではまず不可能な事が容易に可能になるのが良い所ですからね、周りの世界にせよ自らの姿恰好にせよ。

オーエン

ですね。
価値観や自己認識も変わってきますよね、現状のVRCだといろんな職業や立場の人たちと触れ合えて見聞が広がるのもありますが、見た目などで現実よりも自分の置かれた環境を手軽に自分で変えれるからかなと思います。

ラック

良くも悪くも圧倒的な自由度がありますからね、自分の好きな見た目、好きな世界を作れたり、好んで選べるというのは可能性に満ち溢れていると言っても過言ではないでしょう。
当たり前の話ですけど、生まれ持った骨格を変える事はなかなか難しいですし、性別も完全に変えられる訳ではありません。
それを服を着替える感覚でお手軽に変えられるからこそ見えてくる事は多いと思います。

オーエン

そうですね、その見た目にならないとわからないことも知れたり・・・
僕もチェロになって、予想以上にバイオリンと言われることが多くて悲しくなります・・・
なんでみんな区別してくれないのか・・・www

ラック

チェロですもんね、ニーソとハイソの違いが分からんようなもんかもしれません。
まぁ何れにしても、自分の好みやこだわりを突き詰めた格好になれるというのは面白いものです。
面白い物で、好むアバターの恰好やワールドは自分を映し出す鏡だったりもします、自由な世界ではあるものの、意外なまでに相手の本質や好みといった部分を見つけやすいのかなとも思ったりもしますね。

オーエン

やはり僕の本質はチェロであったかwww
そうなるとラックさんはピクトマンが本質なのか、白衣か、はたまた下駄が本質なのですかね?www

ラック

ピクトマンは選ぶアバターの中で最も特徴が無かったというのが特徴でしたからね、コミカルさというのも評価していたポイントです。
白衣は昔から研究者や探求する者に憧れを抱いていたというのはあると思います、子供の頃は地質学者や生物学者になりたいと思っていましたし。
下駄や眼鏡に関しては、日常使っている物を仮想現実でも使いたいという気持ちが大きいですね。
昔からの癖なんです、他MMOでも現実に即してアバターを組みたいんですよね。

オーエン

あれだけ緑で特徴無いんですかね???
日常使ってるものを使いたいは凄くわかります、実際それで僕もチェロを使い始めたわけですし・・・そういう意味だと精神的に現実から離れられてないですね僕www

ラック

扱い慣れているからこその馴染みだとか、安心感というのはありますね。
ただ、その上でも全く別の姿になったりするのはそれはそれで楽しいですし、発見が大変多かった事ではあります、先の実験では特にそれを実感しましたね。

オーエン

そうなると僕も固定概念は捨ててバイオリンとかトランペットとかになってみるべきなんでしょうか?

ラック

やめておいた方がいいんじゃないですか?
いらん勘違いがふえそうな気がしますよ、どの道五月蠅いという評価になるとは思いますがね。