プロボクサーの年間表彰式で『VRCボクシング』が紹介された!! ……ってどういうこと? 日本選手の凄さと共に“ボクシングの今”を知ろう‼

2024年2月19日、日本ボクシングコミッション(以下 JBC)による『2023年度 年間優秀選手表彰式』が開催されました。

この式典は、ひとことにすれば「日本のボクサーで最も活躍した選手」を称えるもので、毎年執り行われています。プロ部門とアマチュア部門に分かれており、あくまでも日本選手に対するものではありますが、そのレベルは世界トップと言ってもまったく過言ではないのです。

表彰式会場前の広場で体験会が堂々と展開!!

そんな最高峰の舞台で、なんと『VRCボクシング』が直接紹介されることとなりました。会場の入口ではPCとVRヘッドセットが用意され、式典に参加する来場者へ体験会を提供するなど、想像以上に攻めた展開。

一体これはどういう状況なのでしょうか?

普段(リアルでもバーチャルでも)ボクシングに馴染みのない読者の方のために、いま日本のプロボクサーがどれだけ世界から注目されているのかをまず解説します。

併せまして、バーチャルライフマガジン編集部も式典へ参加しましたので、『VRCボクシング』の模様もご覧ください。

文字通り世界中が注目する選手を擁する日本ボクシング界

6年連続そして7度目の最優秀選手賞を受賞した井上尚弥選手

まずはこのことに触れない訳にはいきません。今年の最優秀選手賞に輝いた井上尚弥選手は、いま世界中から最も注目されている選手のひとりです。

多くの格闘技では体重による階級が定められていますが、通常、互いに階級を飛び越えて戦うことはありません。それでも「もし全員の体重が同じくらいだったら誰が最強なのか?」というのは誰しもが語りたくなるというもの。

実際にそんな指標を出してしまおうというのが“パウンド・フォー・パウンド”と呼ばれる概念です。様々なメディアが独自の……言わば「オレの考えた最強の選手ランキング!」を出している訳ですが、そんな中でも有力なランキングには、米国の『ザ・リング』誌や、米国スポーツ専門局ESPNが出しているものがあります。

井上選手は、そのどちらでも1位2位を争う圧倒的な評価を獲得しており、公式の戦績と共に世界のトップを走り続けています。

そうは言っても、これまでボクシングにあまり触れていない読者の方にとっては、その凄さをイメージするのは難しいかもしれません。そこで、いくつか井上尚弥選手の実績などをご紹介します。

  • プロとしてのキャリアはおよそ12年で27戦中27勝の無敗(世界戦を含む)
  • 27戦中24試合をKO勝ち
  • プロ・アマ20年150戦以上一度もダウンしたことのない超強豪オマール・ナルバエス選手と対戦し、1ラウンド目にして2度のダウンを奪い、更に2ラウンド目でKOして勝利した

プロボクシングは3分間の戦いを1ラウンドとし、ラウンドの間に1分間のインターバルを挟むというルールになっている。世界タイトルマッチでは勝敗がつくまで最大で12ラウンド行われる。

「ダウン」とは、相手の攻撃によって足の裏以外の身体の箇所を地に着けてしまうことを言い、ダウン後の10カウントで立ち上がれなければノックアウト(KO)判定。

KO判定が出ず、最終ラウンドを終えた場合はジャッジによる採点で勝敗を決定する。

新鋭賞を受賞した那須川天心選手と共に

実は、2階級4団体統一王者というもっともっと凄すぎる記録を手にするなど、紹介したい実績はたくさんありますが、本稿ではここまでで抑えておきたいと思います。ボクシング界にもこれほど世界に誇れる選手がいるんです!

もちろん井上選手だけではなく、新鋭賞を受賞した那須川天心選手、技能賞を受賞した寺地拳四朗選手などなど、日本ボクシング選手層のいまはとにかくアツい! ぜひご注目ください。

「世界が触れた『VRCボクシング』」という事実

来場していたWBC理事によるアピール

体験会の場では、来場していた世界ボクシング評議会(以下 WBC)の理事がVRヘッドセットを片手に、和やかな雰囲気で『VRCボクシング』をアピールする場面も見られました。

『VRCボクシング』そのものは、『VRChat』に数多く存在するワールド・コミュニティイベントのひとつに過ぎません。

eスポーツという言葉が広まる前は、例えヘビーなゲーマーだったとしても、それを仕事として成り立たせ、市民権を得ていくというような未来を不安なく眺められた人はいなかったのではないでしょうか。

リアルの世界最高峰ボクサーが集う場で『VRCボクシング』が紹介される時代

大きなタイトルとして単体で作られたゲームにおいてさえ、それは簡単な話ではありません。ましてや、VRというまだまだ途上の技術・分野の中で、有志が製作したひとつのワールドが一瞬でも世界の目に留まったという事実は、驚くべき偉業であるように思います。

行き交う来場者の多くは好奇心と戸惑いの表情を浮かべながら『VRCボクシング』の体験ブースを眺めていましたが、なんと表彰に上がった選手の何名かが実際に対戦を体験していました。

『VRCボクシング』を体験し、力強く俊敏な動きを見せる寺地拳四朗選手

寺地拳四朗選手は『VRCボクシング』での試合がはじまると、本格的なシャドーボクシングのようにかなりのスピードで動いていました。不慣れなはずのVRヘッドセットを装着した上でこの動きならば、普段はどれだけ凄いのだろう……。と、思わずにはいられない力強さに感動しました。VRが未体験の場合、すぐに体を動かすのは難しいものですが、鍛え抜かれた一流の実力を垣間見た思いでした。

そして『VRChat』の中で待機していたプレイヤーは、まさにVRを通して寺地選手と直接対決していることになります。ファンならば一度は体験してみたい状況かもしれませんね。

『VRCボクシング』の挑戦はまだまだここから

『VRCボクシング』主催のとりさんは、かつてバーチャルライフマガジンのインタビューで「新しいeスポーツを作りたい。こんな夢を大人になっても恥じずに語れる場所を築きたい」と熱く答えていました。

実際のスポーツをたしなむ人の視点でみれば、『VRCボクシング』は……。否、VRそのものがまだまだ未熟なものと思われてしまうのかもしれません。今回のように世界の目に触れるのも、もしかしたら一瞬の出来事なのかもしれません。

それでも、式典のスーツ姿のまま『VRCボクシング』体験を楽しむ人達が思いのほか幅広い年齢層であったことから、VR文化はただ次世代であるというだけではなく、多くの人にとって新しい概念を与えてくれるものであるように感じます。

ひとりのVRプレイヤーとして、WBCやJBCといった極めて現実的な世界だとしても、挑み続ければ懐を広く受け入れてもらえるのだということを忘れずにいたい、そんな思いを持つに至った取材でした。

『VRCボクシング』は、ワオスポーツ株式会社によるバーチャルスポーツ大会の公式競技として採用されたことが発表されました。『VRChat』内におけるワールドの運営は変わらず『VRCボクシング』によって続けられます。

ですが、ワオスポーツ株式会社が『VRChat』社とのパートナーシップ契約を結んだことで、一般の『VRChat』プレイヤーでは触れられないような機能や権限を活用できるようになります。

より幅広い活動を展開するための着実な土台を整えることとなった『VRCボクシング』は、ここからが本格的なスタートと言ってよいでしょう。誰でも気軽に始められ、そして誰もが真剣に取り組める『VRCボクシング』が、更に深みを増し進化していくことを願って止みません。

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