アニメ放送から25周年を記念した特設ワールドイベント『Weird展』が2024年6月21日から開催となりました。1998年に放送された『serial experiments lain』は、“Wired”と呼ばれるコンピュータネットワークと、主人公である少女“玲音(lain)”の関わりを描いた作品です。
Weird = 超常的な視点での奇妙な、不気味な、といった意味
Wired = 接続、配線といった意味 スラング的には興奮や覚醒といった形でも使われる
放送時期から考えれば、なぜ今になってなのかと感じるのは自然なことです。しかも『VRChat』で記念イベントが行われることは不思議ですらあります。ですが、本作のストーリーと根強いファンの存在を知れば「確かにぴったりな舞台だ」と思えることでしょう。
『Weird展』開始に合わせて、メディア向けワールドツアーに招待をいただきましたので、そのレポートをお届けします。ツアーにはなんと、当時のプロデューサーである上田耕行(うえだやすゆき)氏と、キャラクターデザインを担当された安倍吉俊(あべよしとし)氏が『VRChat』内に登場。来場者と交わされた質疑の内容にも注目です。
目次
『serial experiments lain』とは?
1998年はゲーム機で言えばゲームボーイカラーやドリームキャストが発売された時期であり、まだプレステ2ではない、そんな時代です。当時の高校生は携帯端末(はじめはPHSの方が主流だったように思います)を持っている方が珍しく、卒業までの3年間で持つのが当たり前となっていった、という状況でした。
スケルトンな筐体の初代iMacが発売された年でもあり、技術的にはインターネットが一般的な民間レベルで利用可能なものとして存在していた訳ですが、世間的にはまだまだ得体のしれない何か、といった印象が強かったのは否めません。
手軽に買い物をできるようなサービスが整備されていた訳でもなく、ましてやSNSは単語どころか考え方すらほとんど共有されていなかったと言ってもいいでしょう。フォーム送信ごとにHTMLを読み込み直して実現する愚直なチャットシステムでさえ、当時は強いリアルタイム双方向性を感じさせるものでした。
『serial experiments lain』はアニメやゲーム、雑誌連載といった複数の媒体で同時展開していたメディアミックス作品であり、おおよその設定は共通しているものの、主人公の行動や登場人物に違いがあるという特徴がありました。
作中には“Wired”と呼ばれる、まさに現在のインターネットに近いものが存在しており、人々がこれに依存している様が描かれます。本作が、時代を予言的に先取りしたような評価を受けているのはこのあたりに関係しているのです。
ここでは深く言及しませんが、主人公である玲音は技術的な特異さを以てWiredに大きな影響力を発揮するようになります。次第に「リアルとWiredの境界が曖昧になる」ような描写が深まっていくという、サイコホラーの要素が強い作品なのです。
しかしながら、当時としては非現実的な描写だったとしても、少し視点の角度を変えてみれば本質的に存在する問題群を示唆しており、まさに今の社会の実相であるようにも見えてきます。
根強いファンを持つSF作品が、科学的・技術的知見を論理的に組み上げた結果として“予言的”な内容を獲得するようにして、『serial experiments lain』もまた多くのファンを魅了し続けています。
進化する『Weird展』へ接続せよ! 『VRChat』内でアニメが視聴可能
『Weird展』は、そんな『serial experiments lain』をミュージアム形式で紹介する構成となっています。会場ワールドである『Anique Musium』の一角にある入口を通ると、大きなキービジュアルがお出迎え。
サイコホラーな作品らしい雰囲気で作られた展示は、もしかしたらホラーワールドが苦手な人にとっては少し大変かもしれません。ですが、あくまでも展示会場としての企画ですので、そんな方は友人を誘って複数人で見て回りましょう。
展示内容は本作の世界観を再現した独特の雰囲気が楽しめます。ここではあえて多くの画像を掲載せず、ぜひご自身の目で体験していただきたいと思います。
毎週3~4話を『VRChat』内で配信! 当時の作品を追いかけよう
『serial experiments lain』本編配信スケジュール
第1~3話: 6月20日 ~ 23日
第4~6話: 6月24日 ~ 30日
第7~9話: 7月1日 ~ 7日
第10~13話: 7月8日 ~ 14日
※上記日程は変更される場合があります。
最新の情報は公式Xアカウントをご確認ください。
視聴方法: 『Weird展』が開催されている『Anique Museum』のインスタンスを作成・入場し、正面の階段を昇った右手に配置されているLD(レーザーディスク)をインタラクトするとスクリーンに再生されます。
当時放送されたアニメ作品を視聴するチャンス!
『serial experiments lain』はゲームのリメイクなどが行われておらず、当時発売されていたゲームソフトはプレミアがついて高額で取引されるなど、ややアクセスの難しい作品でもあります。
今回の『Weird展』では、毎週3~4話ずつ『VRChat』インスタンス内でアニメ視聴が可能となる配信が企画されています。特に1~3話については期間が短いのでお見逃しなく!!
期間中であれば誰でも自分でインスタンスを立ててアニメを視聴できます。インスタンス入場後、正面の階段を昇った右手にLD(レーザーディスク)が配置されていますので、これをインタラクトすると再生されます。
LDはひとことにすればめちゃくちゃデカいCDみたいな存在で、その分容量があり、音楽データ活用が主であったCDに対して、高画質な動画を格納できるデータメディアでした。
当時の映像産業は、家庭用として磁気ビデオテープ、つまりVHSが長らく主流となっていました。VHSは結果的に再生機のシェアを大きく勝ち取り、どこの家庭にも1台は置いてあるようなものだったのです。映画一本分のVHSテープを購入すれば数千円、レンタルならば数百円で楽しめるといった時代でした。
ですが、家庭用の磁気ビデオテープは安価で扱いやすかった反面、データの劣化が速く、それほど画質を確保できませんでした。LDはそうした弱点を補うようなこだわりの位置にあり、高価だけれども劣化に強く、当時としては高画質の映像を楽しめる存在だったのです。秋葉原には、LDの山から目当ての作品を掘り起こすようなお店もありました。
展示内容も拡張し続ける… 写真を撮って記念チケットを当てよう!
『Weird展』のコンテンツは時を追うごとに拡張を続けていきます。
こちらも1週ごとに新たなエリアが追加されていきますので、アニメ視聴で再訪した折にはぜひ探してみてください。
また、『Weird展』期間中は“物理チケットプレゼント”のキャンペーンも開催されています。上記で紹介した追加エリアを含めた指定場所で撮影を行い応募すると、実際に印刷された物理チケットが当たるという内容です。
このチケットはあくまでもグッズとしての景品であり、何らかのイベントの入場に使用する訳ではありませんが、リアルとバーチャルが入り交じった魅力的なキャンペーンだと感じます。
『lain』『Weird展』クリエイターによる質疑応答
メディア向けツアーの最後には、『serial experiments lain』クリエイターの上田氏・安倍氏や、『Weird展』ワールド制作に携わったAnique株式会社のなの太氏との質疑応答が行われました。
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